型破りを正統派にする。ももいろクロ
ーバーZ「アイドルらしさ」の秘密

彼女たちは、他のアイドルとは様々な意味で違っている。握手会などを行わずライブに軸足を置いた活動、生歌へのこだわり。プロレスや格闘技を意識したパフォーマンスと活動方針は、彼女たちを育てたマネージャー(現・プロデューサー)による戦略でもある。
しかし彼女たちがアイドルらしくないかといえばけしてそうではない。むしろ「アイドルらしい」と言える。それは彼女たちが出した「アイドル像」への答えでもあった。

ももクロ流で日本を元気に!『Z伝説~終わりなき革命~』


精神的支柱であった早見あかりの脱退を受け、新たにグループ名に「Z」を加え再始動して最初の曲が『Z伝説』だ。水木一郎のZコール、ナレーションは立木文彦。作詞作曲は前山田健一というパワー溢れる布陣で、2011年にリリースされた。

“RED!!! YELLOW!!!...”とそれぞれのカラーが叫ばれる部分はまさに戦隊ヒーローのそれだ。MVではイエローの玉井詩織が自身の食いしん坊キャラと相俟ってカレーを食べるシーンもある。「五人組の黄色」で「カレー」といえば、スーパー戦隊シリーズの「ゴレンジャー」ネタであり、その世代の人なら思わずニヤリとしてしまう演出ではないだろうか。

東日本大震災のあとに彼女たちに課されたのは、こんなにも明確な「ヒーロー像」だったのである。そしてこの曲は、ただのももクロ紹介曲ではない。これは彼女たちなりの応援歌であった。



「ヒーロー」とは何か?それはアイドルとは何か、を問うことに似ている。

当時全員が未成年だったももクロは、ひたすらがむしゃらに突き進むのが取り柄の、まだ知名度も低いアイドルグループのうちのひとつだった。彼女たちは週末だけ「アイドル」という「ヒーロー」になる。それは彼女たちの戦いの場であり、困難を乗り越え限界の先でひたむきに汗を流す姿は、見る者に夢や勇気や希望を与えた。たとえそれが綺麗事に聞こえても、彼女たちのパフォーマンスがその言葉を証明してみせる。
“会いに来てね 会いにいくよ いつだって 味方だから”



アイドルとは笑顔を与える者であり、守る者でもあるのだ――それが、『Z伝説』に描かれた新生ももいろクローバーZの姿だった。


怪盗少女がメイクアップ!戦うヒロインの『MOON PRIDE』
2012年末紅白に出場を果たした彼女たちは、それまでの苦労が報われていくかのように一気に国民的アイドルグループへと駆け上がっていく。国立競技場でのライブを終えた2014年の夏、彼女たちはあの国民的アニメとタイアップすることになった。それが「美少女戦士セーラームーン」である。
楽曲は詞曲ともにアニメ「進撃の巨人」主題歌『紅蓮の弓矢』などで知られるRevoが担当。アイドルの楽曲とは違った複雑なハーモニーを使用するなど、アニメソングとして成立させている。またギター演奏にはマーティ・フリードマンが参加し、熱い音色で「アニソンらしさ」を増幅させた。



かつて少女たちを湧かせたあの作品が、新シリーズ「Crystal」として帰ってくる。その主題歌に選ばれたのがももクロだった。彼女たちのイメージが作品の世界観に合っていたとアニメ版の監督は語る。

プロレスを意識したパフォーマンスは、見事にアイドルのファン層としてはメインターゲットとなる男性たちを撃ち抜いていたが、肝心の彼女たち本人はイマイチ理解できないままお客さんが喜ぶなら……とその教えについていっていた。
かくして彼女たちはついに戦隊ヒーローとまでなり、その諦めない心で邁進。彼女たちの露出が増えるにつれ、彼女たちがプロレス心理で開拓してきた以外のファン層にも広がっていく。

そして2014年、メンバーも一部成人し段々と大人になってゆく彼女たちは、女性心理を歌う曲でその力強さを示せるようになったのである。



少女たちに夢を与えた「美少女戦士セーラームーン」。戦うヒロインの姿が、歌って踊る彼女たちに重なる。“女の子にも譲れぬ矜持がある”“ただ護られるだけの か弱い存在じゃないわ”のフレーズは、パワフルな彼女たちのイメージにぴったりだ。



セーラームーンは、かつて少女たちの「アイドル」であった。普段は学生生活を送る普通の少女たちが、「メイクアップ」して悪を打ち倒す。美しく、気高く、強くあったその姿は、多くの少女の心を「自分もセーラー戦士になりたい」と震わせたものである。
週末ヒロインだった怪盗少女は、成長してゆく過程でヒーローという明確なビジョンを見つけた。そして彼女たちが少女から女性になってゆく中で、戦うヒロインという「憧れの存在」に変身する機会を得たのだ。

非常に偶像的であるアイドルという存在は、偶像であるアニメというものに親和性が高い。しかしももクロがここまで来ていなければ、この作品のタイアップは難しかったのではないだろうか。少なくとも、彼女たちが戦ってきた道程は間違っていなかった。



女優業やソロコンサートなどの傍ら、変わらずももクロは五人でアイドルとしてのパフォーマンスを続けている。彼女たちが「アイドル・ももクロであり続けたい」という絆で繋がっているからだ。

“新しい伝説が 今ここから始まる”

Z伝説が、ももクロの道の先にまた新しい道を作っていた。

ももクロは、ヒーローでありヒロインであることにアイドルとしての答えを見出した。曖昧な偶像であるからこそ、何でもできる、奇跡も起こせるという無限の可能性を秘めた存在。誰もがどこかでその存在を信じ、憧れ、勇気をもらう。アイドルとは現実において、アニメの中のヒーローと相似だといえるだろう。

国立競技場ライブで、リーダーである百田夏菜子は「みんなに笑顔を届けることにゴールはないと思う」「みんなに笑顔を届けるという部分で、天下を取りたい」と語った。確固たる信念に基づき作り上げられてきた彼女たちの姿は、どこかいつも物語的で二次元性を含んでいる。しかし同時に、彼女たちが汗と涙にまみれながら走ってきた時間は紛れもないリアルだ。

その成長と勢いは未だ留まることがない。彼女たちの「アイドル」としての矜持により、これからもこの現実を生き抜くすべての人たちに、夢と希望と笑顔を届けていくことだろう。


TEXT:祈焔( https://twitter.com/kien_inori )

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