取材:田中 大

動き続ける男たちの、悲喜こもごもの人
生讃歌

人生観がすごく表れている1枚だと思いました。

武藤
俺なんて今年で40歳。若い頃のガムシャラって、夢に向かって行くようなところがあるけど、この歳になってくると、もしかしたら死を意識し始めるところがあるのかなとも思う。あと20年経ったら60歳で、会社員で言えば定年ですよ。逆に追い込まれて、“ここから一生懸命何をやろうか?”っていう心境になる。そういう視野からのガムシャラさみたいなものを表現したアルバムなんじゃないかと思います。大好きなアーティストも、今の俺よりも若くして死んだ人がいっぱいいる。“自分はこの先生きて、何ができるんだろう?”っていうような想いはすごくあるんですよね。

アルバム全体の構成は、最初の方の「ヴァニタス」や「マイ・ライフ...」で人生の不条理や理不尽を見つめて、そこを経た上で人生の悲哀や喜びを描く曲が並んでいきますが。

武藤
出来上がった曲を集めたら、そういうものになってました。“マイ・ライフ”っていうキーワードで成り立つアルバムだなと後から思って。移籍第1弾ですし、いろんな心境が重なって、こういうものになったんですかね。“畜生!”って酒を飲み歩く曲も出てきますけど(笑)、最終的には前に進むしかないっていう気持ちになっていきますし。
飯島
今回もいろんなチャレンジをしているアルバムですよ。ドラムがない曲とかもありますから。勝手にしやがれが、まだまだチャレンジをヤメてないことが伝わると思います。
武藤
前はアレンジを固めてからレコーディングしてたけど、今回はその場のアイディアも反映するようにしたんですよ。例えば「リトル・メリールウ」は、いつもだったら冒頭でのテーマを4管でバシッと聴かせるところを2管にしたり。
飯島
この前出したサントラはいろんな編成を試しましたけど、そういう流れが今回のアルバムにも出たんじゃないでしょうか。
武藤
「リトル・メリールウ」は、もともとは歌モノじゃなかったんです。でも、レコーディングの途中で“これ、歌モノにしたらどう?”っていう提案がスタッフからあったんですよ。この“メリールウ”ってジャック・ケルアックの小説の『路上』に出てくる、ディーン・モリアーティっていう行き当たりばったりの男の恋人の名前。だからこの曲の中では、“メリールウ、今から帰るから待っててね”って言ってますけど、ディーンのことだから、本当に帰るかは分からない(笑)。

(笑)「ヴァニタス」は“虚栄”をテーマとして描く静物画のことですし、歌詞の中に登場する言葉を掘り下げると、一層楽しめますね。そういえば飯島さんが作曲したインストの「オルメカ」は、メキシコの古代文明のことですが。

飯島
僕、メキシコが好きなんですよ。テキーラも好きですし。
武藤
この曲、最初は“テキーラ”ってタイトルだったよね(笑)。

(笑)歌詞は「ドライ・ボーン・ブルーズ」も素敵です。酔っ払ってるくせに酔っ払ってないと言い張る感じとか、すごく愛すべき人間像があるなと。

武藤
“背もたれをくれよ”ですからね。これは素直な酔っ払いの歌が作りたくて。酔っ払ってる感を表現するために思い付いたのがそのフレーズなんです。俺の行きつけの店の椅子は、背もたれがないんですよ。泥酔して2回くらい椅子から転落してます(笑)。酒よりも背もたれが欲しいって心境になりました。

シリアスな心境から酔いどれ状態まで、人生のいろんな局面を描きつつ、アルバムの最後で「レディー・ステディー・ゴー」みたいな曲が来るのもホッとします。

武藤
“遊んで、楽しんで、踊って、寝よう”って曲ですからね。

人生の理不尽を認識しながらも、止まらずに生き続けて、時には酔いどれ、踊って、寝るのも良しっていう、こういうのはやっぱり現在の武藤さんの年齢なりの人生観ですか?

武藤
常に等身大のものを作りたいんです。作る上での根本の気持ちとか、何かを吐き出そうとする衝動は20歳の時と変わってないと思いますけど、40歳なりの出し方をしているのが今なんだと思う。俺の根本の衝動と、その年齢なりの出し方っていうのは、今後も作品につなげていけたらいいですね。やっぱり、そういう歩み方をしてる先輩方を見て、憧れてきましたから。

「マイ・ライフ...」に“泳ぎ続けるサメのよう”というフレーズが出てきますが、今後もサメのように動き続けますか?

武藤
泳ぐのをやめて止まったら、サメのように死んでしまうかもしれない(笑)。止まったら復活の仕方が分からないですし、ここからどんどんやっていきます。新曲も既に結構書き始めてますし、次を始める準備は整ってますよ。
勝手にしやがれ プロフィール

カッテニシヤガレ:ジャズやスウィングをパンクの精神で男気あふれる唯一無二の音楽に昇華させ、ギターレスでドラムスがヴォーカルをとる独特のスタイルで圧倒的な存在感を醸し出す7人組。今年4月にteabridge records/avexに移籍、ますます精力的に活動中。勝手にしやがれ オフィシャルHP

OKMusic編集部

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