【阿部真央】人の思惑通りに動くのが
好きじゃない

“アートな感じを大事にしたかった”という針金で頭部を覆った鮮烈なジャケット。そして、その向こう側から聴こえてくるのは、ヘヴィなワードの連射とザラ付いたタフなロックンロール。再始動、“攻め”で撃ち抜く作品だ。
取材:竹内美保

今までシングルでは発表してこなかったタイプの楽曲ですね、「Don’t let me down」は。ヘヴィな詞世界とエッジの効いたサウンドで、アルバムの中で発表してきたものに近いというか。

そうですね。この曲の原曲は去年の夏にできたんですけど、2016年の5月に産休からの復帰作を出すことが決まった時、私から“この曲、すごくいいと思うのでシングルで出したいです”とお願いしたんです。その頃の予定では、結婚して子供も産まれて、離婚なんてするとは思ってませんでしたから(笑)。周りのイメージ通りに“ハッピー♪”みたいな幸せな歌を出すことは、逆にちょっと怖いなと思ったんです。

怖いと思ったのは、アーティストとしての嗅覚から?

“嗅覚”と言うとカッコ良いですけど、人の思惑通りに動くのが好きじゃないので、そういうところのほうが強いかも。我が侭というか、自我のほうが強いかもしれないですね。

でも、タイミングが合いすぎて、赤裸々で辛辣だなと。

あははは。図らずともそういうタイミングでのリリースになったので、パブリックイメージとしてはそう見えますよね。元パートナーの彼へのメッセージとして書いたわけではないので、ちょっと面白いなと思います。歌入れも臨月の時でしたからね、この曲。

そうだったのですね。でも、こういう辛辣なメッセージをストレートに歌う楽曲がシングルにできるのはいいですよね。

そういうことができるようになってきましたね。私自身が“シングルはポップでキャッチーであったほうがいい”と思う反面、アルバムを作れば作るほど“そういう曲ばかりじゃないのにな”というジレンマを感じて苦しい想いもしていたので、こういう曲をシングルで出せるのはすごく嬉しいですね。でも、音楽に限らないですけど、最近いろいろやってみようと思っているんですよ。緩いというか、楽しく余裕を持つことが私には必要だと思ったし、そういうふうに生きてもいいのかなーって。

楽しいと思えることを見つけていく過程も楽しいですし。

ね。今まで全然そんなこと思わなかったんですけど。どっちかと言うと安定主義っていうか。

というか、ストイックすぎたのかも。

そうかな? そう言われれば、自分自身に対してはそうだったかもしれないですね。でも、それじゃ前に進めないかもって。変わってきましたね。

“楽しく、緩く”というふうにプラスの変化があった人が、この曲では“shit!”って歌っている(笑)。

“嫉妬”ですよ、“shit!”じゃないよ(笑)。

あー。歌詞カードの《sh !》は伏せ字にして表記しているのかと思ってた(笑)。でも、そう聴こえるくらいの攻めの姿勢が感じられる。カッコ良いと思います!

ありがとうございます。この曲を書くきっかけになった出来事があって…ある怒りをもとに書いたんですよ。“よくここまで書けますね”って、これまでも怒りの曲にしても恋愛の曲にしても言われてきた…恋人と喧嘩して、その人と付き合っていようが“死ねよ”くらいのこと書いてましたからね(笑)。なんで今までそういうことをやってきたのかな?ってふっと思ったら、完全に歌と自分自身の生活を公私混同しまくってるんですよ。そういうものの中から生まれている、歌がね。なのに、出来上がった作品はまったくそこから切り離して考えちゃっていて。だから、こういうことも言えちゃったりするんですよね。でも、それはそのままでいこうと思っていて、“sh!”っ…“黙れ!”って入れちゃった(笑)。

でも、それが一番適切な言葉だから使ったんでしょ?

たぶん。合ってたんでしょうね、メロディーにも。

“嫉妬”と“黙れ”の“sh!”ね(笑)。でも、聴覚上どう聴こえるかは自由? 私みたいな聴こえ方をする人もいるでしょうし。

うん。そう聴こえるのも分かりますしね(笑)。

歌い方で言うと、最後の《Don’t let me down》は意外にやわらかいという。吐き捨てる方向になりがちだと思うのですが。

あっ! それ、よく気付いてくれましたね。歌っていて、最後はちょっとかわいく終わろうかなっていうのはあって。ガル!っていくとちょっとカッコ悪い…トゥ・マッチになるなと思ったんです。そういうところとかこだわりがあるんですよね。

サウンドはシンプルだけどエッジが効いていて、ガッチリしていますよね。アレンジ面のリクエストはしました?

“カッコ良くしてください”って。ただ、どっちかと言うとakkinさんの音作りはクリアーで壮大に広がる感じで、ちょっとだけ洋楽っぽい音になるんですよ。だから、そのakkinさんの洗練された感じは今回は封印してもらって、少し泥臭くしてほしいっていうお願いをしました。でも、今回一番大きかったのは人選ですね。ドラムの佐野康夫さんとベースのAqua TimezのOKP-STARさんの相性がすごく良くて。あと、音質ではエンジニアさんの力も大きくて。ザラッとしているんだけど、存在感のあるサウンドになってます。

カップリングにはライヴ音源が。こちらは楽しいですね。

いい音で録ってくれているしね。この国際フォーラムのライヴは6月にDVD&Blu-rayでリリースされるんですけど、音源としても発表したくて。特に「じゃあ、何故」は弾き語り音源として残すことにものすごくポイントを置いています。

弾き語りはじっくり聴けて、メドレーは楽しめる。あの日のライヴのシーンが蘇ってきましたよ。ファンの人たちの大合唱とか、思わずウルッときたり。

あー、嬉しい!

今作で本格的な再始動となるわけですが、ここからの予定もぜひ教えてください。

まずは体力の回復と、7カ月ぐらい歌っていなかったので少し喉のリハビリもしなくちゃいけないんですけど、一番近いところで言うと、夏フェスでみなさんにお会いできます。超緊張してますけど(笑)。あとは、できれば年内にアルバムを出したいと思ってるので、楽曲制作を。しばらくは水面下での動きが多いですが、バイタリティーにあふれてます(笑)。
「Don’t let me down」2016年05月25日発売PONY CANYON
『阿部真央らいぶNo.6@東京国際フォーラム』2016年06月01日発売PONY CANYON
    • 【DVD】
    • PCBP-53557 5400円
    • 【Blu-ray】
    • PCXP-50557 5940円
阿部真央 プロフィール

アベマオ:1990年1月24日生まれ、大分県出身。06年、高校2年生の時に『YAMAHA TEENS' MUSIC FESTIVAL』の全国大会で奨励賞を受賞。09年1月にアルバム『ふりぃ』でデビュー。感情的なアコギで押し出す、等身大でリアルな歌詞、表現力豊かなヴォーカル、バラエティーに富んだ楽曲、同世代の女性を中心に、幅広い層から注目と共感を集める。14年10月にデビュー5周年を記念して初の日本武道館公演を開催。16年5月、産休明け第一弾シングル「Don’t let me down」で完全復活を果たし、デビュー10周年となる19年1月にはベストアルバム『阿部真央ベスト』を発表し、2度目の日本武道館公演を成功させた。阿部真央 オフィシャルHP

OKMusic編集部

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