【近藤晃央】聴けば高校生の時の気持
ちに戻れるタイムカプセル

約3年振りにリリースとなるアルバム『アイリー』は、「ブラックナイトタウン」や「あい」などシングル曲の他、“嬉しさ”をテーマにした多彩な楽曲を収録。近藤晃央のルーツも感じられる作品となった。
取材:榑林史章

“アイリー”というタイトルは、ジャマイカ語で“嬉しさ”とか“喜び”という意味だそうですね。

はい。アルバムは「心情呼吸」というシングル曲が中心になっていて、そこから“嬉しさ”とか“喜び”というテーマを見出していて。なおかつ、“アイ”から始まる言葉にしたかったんです。前回のアルバムタイトルが“YOU &(ゆえん)”で、対する“キミ”とか、対する“誰か”をテーマに作ったので、それができた時から“YOUの次は自分”…つまり、“I”だろうと、漠然としたテーマを浮かべていました。だからこそ、前回のアルバムの次に出したシングルが「あい」だったし。それで、“アイ”から始まる言葉を調べて、意味合い的に一番合ったのが“アイリー”だったんです。

嬉しさ、喜びをそのまま表現するのではなく、逆説的に使った感覚の曲や、ダークな世界観もあったり、決して一辺倒ではないですね。

いろいろな嬉しさがあると思うんです。誰かが笑ってくれることで感じる嬉しい気持ちもあれば、今の競争社会というところでは、誰かが喜んでいる陰で泣いている人だっている。一緒に喜び合える嬉しさもあれば、誰かの悲しみによって生まれる喜びもある。だから、きれいな曲もあれば、ドロドロとした曲もあります。「心情呼吸」の歌詞に《悲しさだって 素直に悲しいと言えるなら 嬉々 嬉しくなるよ ありのままを》とあるのですが…つまり、ありのままの気持ちを素直に表現できるだけで、幸せなことじゃないか、と。泣けることも怒れることも、気持ちを隠さず本音をこぼせることが、嬉しいことなんじゃないかな、と。

ドロドロとしたという部分では、「理婦人ナ社会」は女性視点の歌詞で社会に対する不満を爆発させていますね。

自分目線で書くと単なるストレス発散になってしまうので、あえて女性視点にしてワンクッション置きました。まぁ、男女に限らず誰もが持っている、社会に対するストレスを題材にしているんですけど。僕自身、ミュージシャンではあるけど、事務所やレコード会社という組織に属して社会生活を行なっているわけで、デビュー前にサラリーマンをやっていた頃と、何かが違うわけではないですからね。結構アッパーな曲なので、モヤモヤしたものをぜひスカッとさせてほしいです。

そういうストレートなものもあれば、お姉さんの結婚式に寄せてプレゼントした「六月三日」をはじめ、近藤さんのプライベートな部分を題材にした曲も多いと思いました。

前は抽象的で、感情に対する歌が多かったけど、最近では第三者が聴くことを前提にしたものを多く書くようになりましたね。自分が曲の当事者であるというスタンスは変わらないけれど、感情の部分だけでなく、情景やシチュエーションも描くようになったというか。

「なんのおと?」もそうですね。

2〜3年前なら、決して書かなかった曲です。姪が3歳になって、何か音楽でコミュニケーションがとれないかと考えて作りました。ただ、単に子供向けの曲を作ってもしょうがないので、どうせなら自分に関係のある“音”を題材にして、大人も楽しめるものにしようと。それで日常にあふれている音、擬音を題材に作ってみました。例えば、スヤスヤって聴いたら、みんな寝てる音と答えると思うのですが、じゃあ何のために寝てるのか?と考えると、明日を始めるためなんです。そうやって、もう一歩先の情景を想像することで、大人が聴いても“なるほど”と発見してもらえるものになればいいなと思って。姪に聴かせたら、2回くらいでもう覚えて一緒に歌ってくれて、すでにアレンジを加えて、オリジナルの歌詞で歌ってます(笑)。子供ってすごいなと思いました。

また、過去の自分に宛てた「月光鉄道」という曲もありますね。

僕は小6から約3年間不登校児だったんです。それで、引きこもっている時は近所の人に会いたくないから、深夜に公園の芝生に寝転がって、よく星空を眺めていたんです。その時代に感性が磨かれたと言うと、引きこもりを肯定するみたいで嫌だけれど、歌詞が書けるようになったのは、その頃に頭の中でひたすら言葉を重ねていたからで。でも、その時代があって良かったと思えるのは、今こうして外で活動していられるからなんです。逆に、今もまだ外に出れていない人がたくさんいて、そういう人に外の世界に目を向けてほしいと歌うのは、上から目線になってしまって逆効果なので、引きこもり経験のある僕が自分なりに伝え方を考えて、当時の自分に伝える気持ちで書きました。こういう歌詞が書けるようになったのも、僕の中での大きな変化でしょうね。

あと、バラードのラブソング「恋文」も。

タイトルこそ古風ですが、僕の中では珍しくすごく今っぽいシチュエーションで、言ってみれば現代の恋文です。手紙の時代は、書いて読まれるまでに数日かかったけど、今はリアルタイムで相手のことを知れる。リアルタイムが知れるからこそ、相手のことを知りたいと思う欲求が強くなるし、知らないことが不安になる。それが、今の恋愛における葛藤なのかな、と。ここで描いているふたりの関係性は、恋愛に発展する前の段階なので、距離感の掴み方がまだ分からない。訊きたいことはたくさんあるけど、訊きすぎて嫌われてしまうのが怖いんです。“好き”という2文字すら伝えられない。そういうもどかしさが、今っぽい恋愛なのかなと。

非常にバラエティーに富んで、聴きやすく以前より分かりやすいアルバムになりましたね。

前作から引き継いでいる部分もあれば、新しくやってみようと思えた部分と両方ありますね。ソングライティングという部分では、すごく成長できたと自分では思っています。この約1年は自分の中で考えることも多く、周囲でさまざまな変化もあったので。それらがプラスになったと思います。
『アイリー』2016年04月27日発売Ariola Japan
    • 【初回生産限定盤A(DVD付)】
    • BVCL-716~7 3600円
    • 【初回生産限定盤B】
    • BVCL-718 3300円
    • 【通常盤】
    • BVCL-719 3000円
近藤晃央 プロフィール

コンドウアキヒサ:中学時代に聴き始めたパンクをきっかけに、邦洋問わずさまざまな音楽を聴いていく中、昭和歌謡にはまり、傾倒。そこから影響を受けた独自の“和メロ”をベースに、歌とアコーステックギターをかき鳴らし、さまざまな音楽性がクロスオーバーし、懐かしくも新しい独自の音楽を生み出している。2012年9月19日にシングル「フルール」でメジャーデビュー。近藤晃央 オフィシャルHP
近藤晃央 オフィシャルYouTube
近藤晃央 オフィシャルTwitter

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