【中島卓偉】人生の中で感じたことを
ちゃんと提示したかった

10代の頃にもろに影響を受けたブリティッシュロックを基盤に、30代になった今の自分が感じる全てを注ぎ込んだアルバム『煉瓦の家』をリリースした中島卓偉。ストレートで熱くて人間臭いメッセージが刺さりまくる。
取材:山本弘子

アルバム『煉瓦の家』には卓偉くんの迷いのない“今”がパッケージされていて、強くて温かくて人間臭いメッセージが印象的でした。

自分の中では前回のアルバム『BEAT&LOOSE』と『煉瓦の家』は、vol.1とvol.2みたいに2枚でワンセットというイメージがあるんです。ビートルズの『ラバー・ソウル』と『リボルバー』みたいにセット感のある作品を作りたいという憧れもあって、曲数は前から揃っていたんです。前作がギターロック中心なのに対して、『煉瓦の家』はベースが主張している曲が多いですね。

ということは、グルーブを重視した曲が多い?

そうです。前作がわりとカッチリ作ったのに対して、今回はクリックも使わずにスウィングする…揺れる感覚を重要視したので、ライヴ感が強いですね。それと結果論ですけど、『煉瓦の家』は今までのどの作品よりもブリティッシュロック色の強いアルバムになりましたね。今まで自分がやってきたこと、大好きなブリティッシュソウルやロックにリスペクトを掲げられるものにしたいなぁって。鳴らしたい音が見えていたから、ギターも今回は3本ぐらいしか使ってないんです。

ブリティッシュロックというところから“煉瓦の家”というタイトルにつながったのですか?

イギリスって言うと煉瓦の街並が浮かぶじゃないですか。1960年代の向こうのバンドのアーティスト写真やジャケット写真は煉瓦バックのものが多いんですよ。タイトル曲の「煉瓦の家」でも歌っているんですけど、煉瓦作りってひとつひとつ時間をかけてブロックを積み上げていきますよね。その様が人生にも置き換えられるなと思ったんです。

シングル「続けろ」でパワフルなメッセージを放った卓偉くんの人生観が出ているのが「煉瓦の家」ですよね。諦めずに人生という名の煉瓦を積み上げていきたいと歌っているし。

嬉しいですね。詞で何を書きたいかと言うと、今は“人生観”しかないんですよ。30代になって自分自身、音楽に限らず、映画を観ても本を読んでも、人となりが分かる作品に感動するようになったし、今まで生きてきて感じたことをちゃんと提示できるものを作りたかったですね。結局、また1曲もラブソングがないアルバムになったんですけど(笑)、大人のラブソングが書ける時期もいつか来るだろうし

そういう意味で、今の自分だから書けたという楽曲は?

「続けろ」もそうですし、「東京タワー」という曲も長く東京に住んでいないと書けなかったと思います。「次の角を曲がれ」という曲もそうですね。20代前半で“辛かったら次の角を曲がれ”って歌っても説得力がないと思うし。

若い時はむしろ、“お前の信じた道を真っ直ぐ行けよ”って歌うベクトルですよね。

そうそう。曲がることが許せないのが若さだと思うんですよ。でも、曲がったって次の道はあるし、見たことがない星空が広がっているかもしれない。こういう歌詞は20代の頃には書けなかったでしょうね。「忘れてしまえよ 許してしまえよ」には《いつかすべてを 笑い話にしようぜ》という歌詞が出てくるんですが、時間が経たないと笑えないじゃないですか。だから、若さだけで突っ走るような歌詞は1曲もないかもしれないですね。

人生観が伝わると同時に孤独感、疎外感を感じている人や悩んでいる人に届けたいことがあるという卓偉くんの想いが伝わってきます。「いじめられっ子」という曲では、いじめに対してかなり突っ込んで歌っていますよね。

テーマはヘヴィですけど、最近、いじめ問題が度を超してるじゃないですか。自分も中学生の時は結構ハードにいじめられてたんですよ。

この曲の前半に書かれているのは実体験なんですね。

そうです。“んなわけないじゃん。卓偉くん、ガキ大将だったでしょ?”って言われるけど全然そうじゃない。周りの友達も見て見ぬふりだったし、先生も気付かなかったし、親には恥ずかしくて言えなかったし、誰も救ってくれなかった。顔は殴られないけど、身体は痣だらけで、心の中で“誰か気付いてくれ”って叫んでましたね。歌詞のように自分はビートルズとパンクとロックンロールに救われたけど、そういうものすらない子たちはヘタしたら死んでしまう。歌詞では遺書を“見せてみ、こんなんじゃ誰も泣いちゃくれないぜ”ってギャグっぽく歌ってますけど、要するに死ぬなよって。いじめられた経験のある自分にしか書けない視点だと思います。

そうですね。それと9分を超えるスケールのバラード「PUNKY SIXTEEN BOY」は卓偉くんの半生を描いた赤裸々な歌詞ですが、なぜ、こういう曲を今、残そうと?

きっかけは“デビューして16年か”と思ったことなんです。東京に出てきたのは15歳ですけど、16歳だった頃の自分を書いてみようと。『BEAT&LOOSE』に収録されている「高円寺」では7年住んでいた高円寺の思い出を描いたので、さらに開けていない引き出しを開けた感じですね。東雲で住み込みで新聞配達の仕事をしていて、信頼できる人も友達も彼女もいなくて、ミュージシャンになる夢だけがあった。当時はどんな人間も、敵だと思っていて心が荒んでいたんです。その頃の2年間が報われないまま自分の中に残っていたので、歌で救うことができないかなって。それと都市開発でどんどん変わっていく街を見て、記憶が鮮明なうちにかたちにしたいという気持ちもありました。

このラスト曲のエンディングがビートルズのオマージュになっているのも含めてグッときます。

この曲に限らず、今はライヴで歌っていても何かしらメッセージを持ち帰ってほしいと思っているし、詞で切り開けるような曲を今後ももっともっと作っていきたいですね。
『煉瓦の家』
    • 『煉瓦の家』
    • EPCE-7108
    • 2015.04.08
    • 3000円
中島卓偉 プロフィール

ナカジマタクイ:1999年10月21日、シングル「トライアングル」 でデビュー。ソロでありながらロックやパンク、バンドにこだわったサウンドメイクといった楽曲のみならず、ファッションひとつからも随所に施されたブリティッシュテイストは、UKロックへの敬意を感じさせる。06年、アーティスト表記をTAKUIから本名の中島卓偉に改めた。14年にはデビュー15周年を迎え、15年4月8日に通算15作目となるニューアルバム『煉瓦の家』をリリースした。中島卓偉 オフィシャルHP

OKMusic編集部

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