【木村カエラ】ロックファンを自認す
るなら聴き逃すな!

国内外12組のアーティストとのコラボレーションで60~ 80年代の洋楽をカバーしたアルバム『ROCK』。木村カエラにしかできないことをシーンのど真ん中で堂々と奏でる──ロックの名盤がまたここに生まれた!
文:帆苅竜太郎

 今年6月に新設したプライベートレーベル“ELA”からのリリース第一弾は60~ 80年代の洋楽のカバー集で、全曲国内外12組のアーティストとのコラボレーション楽曲。しかも、そのアルバムタイトルはズバリ“ROCK”と、相変わらず音楽ファンを楽しませてくれる木村カエラである。80年代末、小泉今日子が“ナツメロ”というタイトルでアイドルソングのカバーアルバムをリリースしたことがあった。この『ナツメロ』は、「なんってたってアイドル」で自らのキャラクターを相対化することでそれまでになかったアイドル像を作り上げた彼女が、フィンガー5、ピンクレディー、キャンディーズ等の歌謡曲をKYON2らしさ全開でカバーした名盤なのだが、ジャンルやテーマ性こそまったく異なるものの、“シーンイチのポップアイコン”たりうるアーティストがそのシーンのど真ん中で自分にしかできないことを堂々と、しかも絶妙なタイミングで開示するという点で、木村カエラの『ROCK』は『ナツメロ』に近い話題性を感じさせる。概要を聞いただけで名盤を予感させる作品は稀だが、『ROCK』はその稀有な例そのものなのではなかろうかと思う。サウンドを云々する以前に、この企画のキャッチーさに拍手である。
 さて、肝心のその中身はと言うと──。事前情報だけで勝手に期待値を上げすぎていると実物に接した時に“あら、がっかり…”なんてことが人生には少なくないが、この『ROCK』にそんな心配は無用だ。何しろ今回コラボした面子が面子なのだ。以下参加アーティストを列挙する。岡村靖幸、N’夙川BOYS、石野卓球、Chara、チャットモンチー、斉藤和義、細野晴臣、奥田民生、CSS、POP ETC、岸田繁(from くるり)、Predawn。名うてのアーティストばかりだ。それゆえに木村カエラとの化学変化が興味深いし、実際、いずれも素晴らしい楽曲に仕上がっている。セレクトされた楽曲はいずれも名曲揃いなので、“原曲が良いのでどう料理しても一定の水準をキープできる”と思われるかもしれないが、そればかりではない。各々アレンジの妙が発揮され、名曲を名曲としてしっかりとカバーしている──この点が今作のポイントであると思う。アレンジの妙と言っても──誤解を恐れずに言えば、歌メロはもちろんのこと、ギターやキーボードで奏でられるその楽曲のリフレインやビートパターンにオリジナルからの改編はほとんど見当たらない。奇をてらわない“素直なアレンジ”と言ったらいいだろうか。無論、今回の収録曲とオリジナルとを聴き比べればその差異は確認できるのだが、何と言うか、『ROCK』収録曲はいずれも聴いた印象がいい意味で原曲と大差ないのである。かと言って没個性なのかと言えば、まったくそんなことはなく、M1「TakeOn Me」(a~ha/岡村靖幸とのコラボ)では岡村ちゃんならではのファンキーなノリが感じられるし、M3「FUNKYTOWN」(Lipps, Inc./石野卓球とのコラボ)の腰にビシビシくる重低音には卓球らしいテクノの香りを感じざるを得ない。そんな具合に参加したアーティスト性がさり気なく、それでいてしっかりと注入されているのである。M5「Heart Of Glass」(Blondie/チャットモンチーとのコラボ)、M6「Crazy LittleThing Called Love」(QUEEN/斉藤和義とのコラボ)、M8「You Really Got Me」(THE KINKS/奥田民生とのコラボ)辺りは、楽器の響きにコラボしたアーティストらしさが感じられて実にいい感じだ。これはそんじょそこらのミュージシャンにできるものではない。この面子だからこそ成し得た、大げさに言うなら“偉業”ではないか。ロックの偉人たちへのリスペクト、オマージュも存分に感じられ、まさにアルバムタイトルを体現したサウンドであると言える。
 そのサウンドに乗る木村カエラのヴォーカル──これがこのアルバム最大の肝であることは間違いないが、相変わらずの多彩さ、多芸ぶりを魅せつけてくれている。M2「Girls JustWant To Have Fun」(Cindy Lauper/N' 夙川BOYSとのコラボ)やM3「FUNKYTOWN」辺りの、まさに弾けるようなポップ感は“これぞ、木村カエラ!”と言える真骨頂であり、聴いていてとても楽しいし、M8「You Really Got Me」やM9「Fight For Your Right To Party」(Beastie Boys/CSSとのコラボ) でのワイルドで男前な歌いっぷりもカッコ良い。個人的に特筆したいのはM10「SWEET DREAMS(Are Made Of This)」(Eurythmics/POP ETCとのコラボ)だ。この楽曲で聴かせる彼女の歌は、オリジナルのアニー・レノックスに負けず劣らず、実に妖艶だ。正直言ってこの表現力は想像してなかったので(失礼)、この声を聴いて思わず唸ってしまった。もちろん全曲オススメなのだが、M10「SWEETDREAMS (Are Made Of This)」は歌い手として確実にステップアップした姿を見せつけた傑作として特にお薦めしたい逸品である。
 最後にもうひとつ記しておきたいのはラストに収録されている「Rainy Days And Mondays」(Carpenters/Predawnとのコラボ)。“ROCK”というタイトルなのに何でカーペンターズ?と思われる向きがあるかもしれないが、“ROCK”というタイトルのアルバムだからこそ締めはカーペンターズで正解なのだ。ロック全盛期の70年代に、美しいメロディーとハーモニーで構築されたポップスを歌い、世界的に支持されたカーペンターズ。その姿勢はむしろロック的であったと言えるし、これをラストに持ってくる辺り、“分かってるなぁ”と、これまた唸ってしまった(しかもこの楽曲を、独自の世界観を持つ女性ソロシンガーソングライター、Predawnとコラボしているのにもしっかりとした意志も感じられる)。まぁ、この辺りは筆者の穿った見方かもしれないが、これ以外にも選曲やコラボしたアーティストの選考等、その理由をあれこれ思い巡らすことができるのもこのアルバムの楽しさではあると思うし、こういった考察の余地のある作りは、古今東西の名盤がそうだったように、優れたロックアルバムの必要条件でもあると思う。ロックファンを自認するリスナーには必ず聴いてほしいアルバムである。
『ROCK』2013年10月30日発売ELA/ビクターエンタテインメント
    • 【完全生産限定初回盤A】
    • VIZL-601 4800円
    • ※レコードサイズ見開き紙ジャケット+木村カエラデザイン、Sexyレコード&クラッチBag+ポスター
    • 【初回盤B】
    • VICL-64080 3300円
    • ※レコードサイズ見開き紙ジャケット+ポスター
    • 【通常盤】
    • VICL-64050 3150円
木村カエラ プロフィール

キムラカエラ: 1984年10月24日生まれ。東京都出身。血液型A型。04年6月、シングル「Level42」でメジャーデビュー。ワンマンツアーのみならずフェス・イベントにも積極的に参加する一方で、CMにも多数出演。そして、13年6月23日、デビュー9周年の日に自身が代表を務めるプライベートレーベル『ELA』を設立。第一弾として、国内外12組の豪華アーティスト陣が参加するコラボレーションカバーアルバム『ROCK』を10月30日にドロップ!木村カエラ オフィシャルHP
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OKMusic編集部

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