【倭-YAMATO】和太鼓って1発! それ
が人の心の中に何かを生む!

今年で結成20周年を迎える、和太鼓パフォーマンスチーム・倭-YAMATO。その代表であり、舞台監督である小川正晃に、現在展開中の全席無料という『倭-YAMATO結成20周年記念日本ツアー』について、また彼の和太鼓に対する想いを語ってもらった。
取材:石田博嗣

結成20周年おめでとうございます。まずは結成のいきさつから教えていただきたいと思います。

結成は1993年で、たまたま母親が自分たちの住んでる町の神社で大きな太鼓を見つけてきたんですよ。で、“この太鼓を使って、神社のお祭りであんたらでなんかしなさい”と命令されて(笑)。それで兄弟と親の仕事場で働いていた人と4人で、“こんな感じかな?”って見よう見まねで曲を作って、そのお祭りに出たのがきっかけと言えばきっかけですね。最初はその1回のためで、続けるつもりはまったくなかったんですけど。お祭りに出て演奏したことや、拍手をもらったり、演奏を聴いてくれた人が涙ぐんでくれたことに感動はしたんですけど、やって良かったなぁって思っていたぐらいで。でも、そのお祭りを観た人から老人ホームで叩いてくれないか?とか、幼稚園で叩いてくれないか?とかの依頼の話が来たりして、“せっかくだから行こうか”と続けてきた感じです。もちろん、当時は“倭-YAMATO”という名前ではなく、ただ太鼓を叩く人たちでしたけど(笑)。

和太鼓は神事やお祭りで使用される楽器のイメージが強いのですが、倭のパフォーマンスがそこに縛られていないのは、最初からオリジナルだったからなのでしょうね。

普通は和太鼓をやるとなったら、言い伝えなり、伝承のリズムがあったりすると思うのですが、僕らはまったくなかったので、僕自身が聴いてきた音楽のリズムを和太鼓風に直して曲にしたり…今でもそうですけど、申し訳ないんですが伝統とはまったく無関係ですね(笑)。

今や1年のうち半年から10カ月は海外を回わっているわけですが、そのきっかけというのは?

太鼓って文化交流みたいな感じなんで、地域の団体から声がかかるんですね。一番最初に行ったのは中国だったんですけど、それは当時住んでいた奈良の橿原市から文化交流で声をかけてもらったんです。あと、当時太鼓を習いに来ていた日系ブラジル人の子が、ぜひブラジルでやりたいっていうことで、それなら行こうかと。一生懸命お金を貯めて、1997年に初めてブラジルに行きました。飛行機で24時間かけて、太鼓も持って行って、現地でバスを借りて、1カ月ぐらいで1万数千キロ走って、十何回公演してって。持って行ったお金を全部使ってきただけなんですけど(笑)。でも、それを経験して怖いものないなってなりましたね。地球の裏側にも行けるんだから、それならとことん行こうって。で、世界に打って出るにはエディンバラ・フェスティバル(スコットランドの首都エディンバラで毎年8月の同時期に開催される複数の芸術と文化の祭典)だってことになって、またみんなで一生懸命お金を貯めて参加したのが、ワールドツアーをするようになったきっかけですね。

そんな倭-YAMATOのパフォーマンスなのですが、演奏を聴かせるというより、魅せる要素が強いと感じたのですが。

僕らはその要素が強いと思います。和太鼓のリズムを聴かせるとかよりは、人がバタバタしているところが見えるみたいな(笑)。和太鼓ってすごい爆音なんで、聴いててもグッとくるし、感じるところもあるんですけど、人が動くのとリンクした時に本当にすごいインパクトで伝わるので、僕らはそっちを重視しています。

それは最初からそういうスタイルだったのですか?

やっぱり和太鼓ってストイックなイメージがあるので、最初は自分たちもそういう感じの演奏が多かったんですけど、やっぱり関西人の血なのか、やっていると面白いことを思いつくんですよ(笑)。それがどんどん膨らんで、今はちょっとお笑いのグループみたいな感じになってますけど、外国の人は倭-YAMATOって笑って観られるのが楽しいと言ってくれますね。まずは笑ってもらってなんぼ(笑)。

それは逆に言えば、“喜んでもらってってなんぼ”ということなので、そこを追求するからこそ魅せる要素が強くなったのでしょうね。

僕らのやりたいことは当然あるけど、その前に楽しんでもらう。なので、新しい人が入ってきたら、まずはホスピタリティ…どうやってお茶を出すのかから、みたいなね。“美味しいお茶だから飲むわけではない、君の笑顔で飲みたくなるんだ”ってところからやってます。

ライヴ以外にもCDを出されていて、2012年9月に発表された『YAMATO BEAT Vol.1』は中孝介さんやジェロさんをフィーチャーし、歌が入っていたのが新鮮でした。

和太鼓のリズムだけのCDって、自分らが聴いてあんまり面白くないし(笑)。やっぱり、歌を入れなければいけないのではと。でも、僕らは歌えるわけではないので、まずプロデューサーの本間昭光さんを紹介していただいて、ライヴも観に来ていただいて、一緒に何かを作ろうかと。そこから本間さんといろいろ話し合って、本間さんが僕らの太鼓のリズムで歌ってくれる人を探してくださり、曲書いてくださって、この音源ができました。

そもそも歌物の音源を作ろうと思った動機は?

やっぱり間口を広げたいというか。今までに世界各国で2600公演ぐらいやってきたんですけど、日本でやったのは数えるほどしかないんですよ。なぜかと言うと、日本だと自分の親でこそ観に来てくれるのですが、友達くらいになると観に来てって言っても観に来てくれない。“和太鼓を2時間!? それはきついな”ってね。で、僕らはチケットを売ってやっているので、“お金かかるの?”って。それだけ和太鼓って、一般の人は興味がないという現実があるんです。なので、歌を聴いてもらって、“いい曲だな。これをやってるのが倭-YAMATOか”って少しでも興味を持ってもらう狙いがあってやってみました。

実際やってみてどうでしたか?

アイディア自体はいいと思うんですよ。歌ってくれた人のファンの方が聴いてくれたり、町中で流れたりして、ちょっとした反応はあったので。でも、それで和太鼓の音楽を普段道を歩きながらヘッドフォンで聴くとかにはまだ至っていない。ラジオから流れたり、ドライブ中に聴いたりして、“和太鼓ってすごいね!”というふうになるテクニックやシステムを探したり、構築していかなければいけない…今はそんな段階です。本間さんと仕事をしたことで、次を追求していかなければならないと思っています。和太鼓には課題があるなって。なんか、和太鼓は特殊なんですよ。芸術とか音楽とかにカテゴライズされていない。和太鼓は単に和太鼓で、ロックでもポップスでないし、歌舞伎や能のような伝統芸能でもなくて、もっと民俗芸能っぽいというか。なので、まず和太鼓を音楽としてなのか、芸術としてなのか分からないですけど、カテゴリーとして見てもらえるところまで持っていって、たくさんの人が足を運んでくれるようなればいいなと思っています。

その一貫のひとつが20周年記念の日本のツアーですね。全席無料という。

もうこれ以上のことはできません!(笑) でも、舞台上からもろに言いますからね。“無料で公演ができると思います? 考えたら分かりますよね? 箱が置いてあるからちゃんと帰りにお金を入れて帰りましょう”って(笑)。お金のある人はある人なりに、ない人はない人なりに考えていただいて(笑)。やっぱり、まずは足を運んでもらいたいんですよ。とにかく一回足を運んでいただいて、“和太鼓ってこんなこともできるんだ!”って思ってもらいたい。アマチュアで和太鼓をやっている人の公演は当然無料だし、いろんなところで観る機会もある。でも、それって非常に言いにくいんですけど、次もまた観たいかってなると、なかなか難しいものがある。それだけ僕らがすごいっていうわけじゃないですけど、僕らは2回も3回も観に来てもらえるようなものを常に考えてやっている。そういう意味でも、間口を広げるためにはいろいろなことをしなければいけない。こちら側が“これだけの価値があるからこの値段で!”と言い続けていると微増しかないから、20周年は全席無料で全国47都道府県に行く…ただ、よくよくスケジュールを見たら、今年だけで回れないことに気づいたんで(笑)、来年にも分けて絶対に全都道府県に行きますって。

笑ってもらってなんぼの精神ですね!

本当に、そうなんです! 綺麗事になるけど、お金じゃない。劇場を借りたら正直な話、100万、200万かかってしまうから、なかなか無料ではできないけど、今回のツアーは公園で寝泊まりしながらでもとにかくやり切る!

そこまで小川さんを突き動かせる和太鼓なのですが、小川さんご自身は和太鼓はどういうものだとお考えですか?

本当に思うのですが、和太鼓で日本を元気にしたい! 今の元気がなくなった日本に何か与えるのは和太鼓しかないと思っています。和太鼓は言葉にならないものが、相手の体の中に入った瞬間に言葉に替わるというか、自分が必要なものを言葉に替えてくれる。自分が言いたかったことが、その音に乗って相手に伝わった時に、相手の心の中で爆発する。和太鼓ってそういうものだと思います。

確かに、和太鼓にはドラムとかパーカッションとはまた違うビートがありますよね。

ドラムは音符が連なって、4小節、8小節あって初めてビートになりますよね。和太鼓って、1発なんですよ。目の前で筋肉がぐーっと盛り上がってきて、そこでドーン!って。その1発が次の1発につながって、人の心の中に何かを生んで、それが他へ伝播する。1発でいいんですよ、和太鼓って。いろんなことがあっての、この1発。そして、それは倭-YAMATOのコンサートにもあります!
『YAMATO BEAT Vol.1』
    • 『YAMATO BEAT Vol.1』
    • UMCF-1081
    • 2012.09.05
    • 2000円
倭-YAMATO プロフィール

倭-YAMATO:1993年に奈良県明日香村にて結成。毎年のように半年から10カ月に渡って世界各国でツアーを展開し、これまでに50カ国以上、2600回以上の公演を行ない、600万人以上を動員。常にオリジナリティーを追求し、新しい楽曲、新しい舞台を創造し続けている。国内外での公演ツアーはもちろん、学校公演や太鼓演奏指導などの活動を行なっている。オフィシャルHP

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