【伊吹留香】「綺麗な先生は好きです
か?」「ハイ!!!」


取材:加藤 普

伊吹留香の最新アルバム『反面教師』。まずビジュアルが良い。まるでバラ線に囲まれたように見える、顔に文字を大胆にかぶせたメインビジュアル。隙間から覗く目にはサディスティックなほどに力がある。タイトルになぞらえて“綺麗な先生が好きです”と言いたくなるような、ある種のエロスも感じる。なぜ“綺麗な先生”なのかと言えば、ベッピンさんというばかりでなく、表裏一体の裏に潜む“汚れ”を知っているから、とまで話は広がる。それにしても。綺麗な伊吹先生は、一体ボクらに何を教えてくれるのだろう? 期待を込めて聴き始めたアルバムからは、“あの頃の音”がする。
「今までは気心の知れた仲間と音を作ってきたけれど、今回はプロデューサーに参加してもらったんです」
 参加したのはジミ・ヘンドリックスのプロフェッショナル・トリビューターとして世界的に名高いJIMISEN。最初はどこに接点があるのかも分からなかったという。
「でも、やり始めたら、私では思いも付かないアプローチで新鮮でした。「George George」が王道のR&Rになったりして」
JIMISENらしく、ジャニス・ジョプリンへのオマージュのような音があったり、フリーのリフがストレートに飛び出してきたり、ブルースをベースにした1960年代後半のUK、USサウンドが随所に。それが、違和感がないどころか伊吹留香の血肉になって、まるで彼女のために最初から設えた音のよう。
「その当時の洋楽ロックと同じように、私、昭和歌謡ってしっくりくる。昭和の音楽の持っている哀愁に共鳴するんです。言葉が大事にされていた時代で、言葉のメロディーへの乗り方も綺麗」
60年代のブルースベースのロックと、昭和歌謡にはある種の共通項もある。“型をも大切にする美しさ”とでも言おうか。平成になってからの若者向けの音楽、歌には、そんなこだわりはなくなった。だが、伊吹留香の歌にはそれがある。
「今度のアルバムの中で、ロック創世記のブルージーな音と、昭和歌謡のエッセンスのようなものとが、うまくマッチしたと思う」
それにしても、伊吹留香はただ者ではない。詩人としての資質は、群を抜いている。
「今度のアルバム、朗読するだけでも気持ちの良い詞、誰が聴いても気持ち良く感ずるリズムで作っています」
こう言い切れることは、素晴らしい。実際のところは、自分の耳で確かめてほしい。伊吹留香の今度のアルバムが、気持ち良かったり、美しかったりするのは、つまりは裏側の負の部分とも向き合って折り合いを付けてきたからこその気持ち良さ、美しさとでも言えばいいか。本当のところ、伊吹留香へのインタビューでは、もっと別の話をしていた。例えば、以前は“歌っていて孤独。私のことを人が分かるわけない。分かってたまるか、苦しい気持ちは苦しいまま、どれだけ忠実に表現できるか考えていた”というような、自己表現も含めた自分自身の生き方の軌跡のようなこと。
だが、今回の伊吹留香のアルバムには、それは似合わないのだ。なぜなら、鎧をまとい、内に籠り、自分を傷付けることで存在証明して見せるような在り方ではなく、自分を笑い飛ばしたり、人を面白がらせたりすることを楽しめる伊吹留香がいるから。話を初めに戻してみる。とても素直に“綺麗な先生を好きだ”と言える雰囲気が今度のアルバムにはあるのだ。そして、それを意外にも受け止めてくれそうな、ちょっとルーズで綺麗な伊吹先生もまた、そこにいるのだ!
『反面教師』
    • 『反面教師』
    • OMCA-1161
    • 2013.04.24
    • 2800円
伊吹留香 プロフィール

イブキルカ:7月10日7時10分誕生。7歳の頃から作詞や作曲を始めたシンガーソングライター。“痛みから学べるように、苦しみすら笑えるように。”と紡がれていく詞の数々は強い個性とメッセージ性を持ち、表情豊かな声と音に乗ることで味わい深くなっている。5月22日、月見ル君想フ『AKATSUKI』出演。公式サイト(アーティスト)
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