【ピコ】ボカロアルバムは、僕にとっ
て原点回帰

ピコ初のボカロ・カバーアルバム。人気プロデューサーDECO*27の書き下ろし、ピコ自身がボカロP(ボカロ曲を作る人はP<プロデューサー> と呼ばれる)となって作ったボカロ曲を収録するなど、ボカロを基盤としつつもピコにとって新たな一歩を感じさせるコンセプトアルバムだ。
取材:大庭利恵

ピコの歌声が初めて世の中に放たれたのは、ボーカロイドを使って作成された楽曲・ボカロ曲を歌い、それをニコニコ動画にアップする“歌ってみた”でのこと。男性なのに女性の音域まで歌いこなせることから“両声類”と呼ばれ、中性的なルックスも手伝って一躍ブレイク。その後、メジャーデビューを果たした彼が、初のボカロ・コンセプトアルバム『ヒトコエ− 42701340 −』をリリースする。

もともとピコは、ネット文化のものをJ-POPの世界に引っ張り出して融合させられる存在だという意識があったので、カップリングやアルバムの中でボカロ曲を歌ってきてはいたんですね。でも、ボカロ曲がメインになったCDをリリースしたことはなかったから、自分がやったらどうなるんだろうっていう興味もあったし、ボカロ曲をあまり聴いたことがない人たちには、J-POPとはまた違う、特徴的なサウンドと曲調は新鮮に感じてもらえると思ったんで、“歌ってみた”投稿から5 年目のタイミングで企画してみました。

通常盤では、中川翔子への楽曲提供や柴咲コウとのユニット・galaxias!のメンバーで知られるDECO*27の「モザイクロール」や、3月よりミュージカル公演されることでも話題の「千本桜」(黒うさP)、また「セツナトリップ」(Last Note.)や「人生リセットボタン」(kemu)などの人気ボカロ曲をカバー。完全生産限定盤では、アルバムに収録されている「言葉メテオ」や「天ノ弱」など、さらに4 曲(全10 曲)を収録している。

ボカロ曲っていうのは、基本的に人が歌うことを想定して作ってないんですね。Pによっては、それこそがボカロの魅力だという人もいますし、だからこそ歌い手によって表現が変わることも面白さのひとつだと思うんです。今回、収録した曲はどれも本当にボカロ曲としては有名すぎるぐらい有名な曲ばかりだったので、実は僕が歌いたいと言った時にOKしてもらえるか心配だったぐらいなんですよ(笑)。でも、みなさんすんなり了承してくれたので、ピコとしてどれだけ表現できるかも挑戦していて楽しい部分だったと思います。

そして、このアルバムには男性アーティストへの書き下ろしは初めてだというDECO*27が手がけた「Tears In」と、ピコ がボカロPとして作り上げた「ウタカタストロフィ」も収録されている。

一枚の作品として、“歌ってみた”で動画を上げただけとは違うという側面からのアプローチをしたかったというのもあって、DECO*27さんに書き下ろしをお願いしたんです。“エモっぽく、曲調はロックにしてください”というリクエストだけさせてもらった結果、かなりロックテイストの強い曲に仕上げてくださって。1 曲の中に喜怒哀楽が全て入ってるので、3分の中で全てを出し切るのは大変でしたけど、かなりいい感じに仕上がったと思ってます。歌詞はピコとして5年、いろいろと悩む時期に差しかかってきている僕の心情にぴったりに仕上げてくれました(笑)。

 「ウタカタストロフィ」は、春をテーマにした和テイストの楽曲で、切ない恋心が描かれている、まさにボカロテイスト満載の一曲。

僕が作ったボカロ曲をセルフカバーというかたちで収録したんですけど、平安室町のお姫様的な感じで、お城から出ない人が恋をするという雅なイメージで描きました。なんか、今の時代って本人の顔も知らないけどTwitterの文章に恋をしてる人とかいて、それって昔の短歌に想いを寄せる感覚に似てるんじゃないかなと思ったところから書き始めた曲ですね。もともと“歌ってみた”を始めたのも、大学でヴォーカリストとしていろんなバンドに参加していく中で、“上手いね”なんて言ってもらってるけど、これってあくまでも身内評価でしかないよなと思って、本当の僕の歌の価値を知りたいと思ったことがきっかけだったんですね。今回、Pに挑戦しようと思ったのも、それと同じ感覚のような気がします。普段から楽曲は作ってますけど、その曲の評価は、どうしても僕の声を含んだものになっちゃう。だとしたら、曲だけアップしたらどういうジャッジになるんだろうという部分への興味と挑戦ですね。

と、真剣な表情で話す彼のPネームは“ちゅうとろ”だ。

そうでした。すいません、なんか劇画タッチなこと言っといて(笑)。ピコという名前も、昔飼ってた犬の名前から取ったものだったので、今回も動物がいいなと思って、僕が以前飼ってたハムスターの名前にしました。なんか、恥ずかしいんですよね、カッコ良い名前って。逆に、ちょっとふざけた名前にしておいて、サウンドを聴いた時に“おっ!?”となってもらえるギャップがカッコ良いと思ってるところもあるのかもしれないんですけど。

そんな彼が、このアルバムに付けた名前は“ ヒトコエ -42701340-”。タイトルの“ヒトコエ”はボーカロイドの曲を人の声で歌うという意味なのかなと想像できるが、その後の数字の意味がどこをどう考えても出てこない。

これは、僕がこのアルバムの情報を発表した日までの“歌ってみた”の動画再生回数なんです。ニコ動の歌い手から始まってメジャーデビューし、アルバムで楽曲を発表することができた。さらに、こうやってPとして活動ができるのも、全てこの動画を再生してくれた人たちのおかげなんです。ただ、全てがいい評価だったわけじゃなく、激しく落ち込むような言葉を言われたこともあったし、悔しさに負けそうになったこともあった。ただ、それも聴いてくれなきゃ始まらないことですからね。そういう意味でも、このアルバムは僕にとって原点回帰だと思います。
『ヒトコエ-42701340-』2013年02月20日発売Ki/oon Music
    • 完全生産限定盤 (ミニマウスパッド付)
    • KSCL-2175~6 2300円
    • 通常盤
    • KSCL-2177 2000円
    • ※5月31日までの期間限定盤
ピコ プロフィール

男性ながらも女性の音域まで出す事ができるため「両声類」と呼ばれ、ネット界を中心に不滅の人気を誇っている男性アーティスト、ピコ。07年12月に<ニコニコ動画>にて「メルト−男性キーVerを女性歌詞でうたってみた−」でデビュー。08年3月にニコ動へ投稿した「初音ミク−恋は戦争−うたってみたァアアアアアアアッ!!!【ピコ】」がスマッシュ・ヒット、後に初の10万再生を記録した。同年夏に開催された『niconico WINTER LIVE '08』へ出演して以来、ライヴ・イベントにも数多く出演するようになり、その縁も手伝ってかコラボ作品への登場機会も増大した。

そして、09年7月に1stシングル「タナトス feat.ティッシュ姫」でインディーズ・デビューを飾り、9月には1stアルバム『INFINITY』をリリース。<ニコニコ動画>での認知度を絶大なものになり、10年3月SHIBUYA-AXで行われた初のワンマン・ライヴでは約1,200人を動員。その会場では、<キューンレコード>からメジャー・デビューすることが発表された。オフィシャルHP
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