取材:石田博嗣

まずは先日の武道館の感想をうかがいたいのですが。

自覚はないんだけど、きっと緊張してたんでしょうね。前日あんまり眠れなかったし、ライヴが終わった後にゲストの人からいろいろ感想を言われたんですけど、あんまり覚えてないんですよ。武道館っていうより、結成20周年っていうアニバーサリーに弱いんですよ、僕は。すごく心を揺さぶられるタイプなんで、感極まってしまうんだよな(笑)。あと、武道館をやることが決まって、“そんなことがthe pillowsにあり得るんだろうか?”と思ったんですけど、チケットがすぐに売り切れたんで、それでもう気が済んだんでしょうね(笑)

チケットが売り切れたことで、もう武道館を制覇したような気になった?(笑)

そうですね。音楽的なところでは客がいようがいまいが、いいライヴを何度もやってきているので、そこでの自分たちの価値は知っているから、自信がないのは人気だけだったんですよ(笑)。そこがようやく武道館ってことで、ちょっと自信を付けさせてもらったという。

前回のインタビューの時に、感謝はしないっておっしゃってましたが、当日は感謝の言葉を述べてましたよね。

感謝しちゃいましたね(笑)。やっぱり、感謝してるんですよ。僕、能書きが多いんですよね。“理屈上、こうあるべきだ”って頭で考えてるというか。でも、感情は別という。だから、“俺、普通なんだ”って思いました(笑)

武道館をやったことで、自分の中で何か変わったりは?

ありますけど、それは音楽的なことではないですね。人気があるかないかでしか判断できない業界人の横っ面を張ってやったって感じです。

なるほど! では、ニューアルバム『OOPARTS』について訊いていきたいのですが、今作もストックしていた曲に最近歌詞を付けたものになるのですか?

いろいろありますね。古い曲を意識的に選んだりして…歌詞は最近書いたんですけど、『Lemon Drops』と『ジョニー・ストロボ』は10年ぐらい前の曲なんですよ。

それはアニバーサリーということで?

アニバーサリーというのは武道館で終わって、9月17日からは普通の日だと思っているんですけど、曲はアニバーサリー真っただ中の時に作ってるので、やはりその意識がすごくあったんですよ。今回はノスタルジックな気持ちがあったから、ストックしてる曲を全部聴いてみようと思って…100曲ぐらいあるんですけど、イントロだけとか、Aメロだけ、サビだけとかなんでね。で、『Lemon Drops』を聴いた時に“そうだ、この曲はシングルにしたいぐらい気に入ってたんだ”って…コーラスとかも入れて、アレンジまで作り込んでいたんですよ。でも、シングルにしたかったから日本語でやりたいと思ってたんだけど、歌詞が書けなかったんです。日本語がとても乗りづらい曲だったんですよ。今回はシングルにするつもりはなかったから、英詞でやろうと思って書いたらすぐにできましたね。『ジョニー・ストロボ』は…最初は『ジョニー・ストロボ』なしの9曲で、もう1曲はインストを入れようかなと思ってたんですけど、完成図を想い描いた時に『雨上がりに見た幻』がめちゃくちゃ浮いてたんですよ。どうしても『雨上がりに見た幻』を活かす名脇役が必要だと思ってたんで、『ジョニー・ストロボ』がすごく合うなって…『ジョニー・ストロボ』からだと『雨上がりに見た幻』のイントロがスカッとくるんです。

今作はサウンドの趣向はオルタナ色が強く、それもシンプルなものになってますね。ビートルズっぽいものもあるし。

メンバー同士でも“一周回って、こっちの方がオルタナじゃん。過激じゃん”ってことをよく言うんだけど、“いやいや、一周回るなよ。オルタナの入口をもう一回やろうよ”って(笑)。だから、ソングライターの意識としては、すごくオルタナなものを作ろうと思ってました。僕の好きなオルタナの人って、だいたいがカントリーになっていってるんですけど、それは危険だと思ってて…“一周回って過激なのかもしれないけど、もうちょっと軟派でもいいんじゃないかな”と思うんですよね。THE PIXIESとかに出会った時の感じでいいんじゃないかって。ギターが歪んでてもいいじゃないかって。そういう感覚があったかな。オルタナっていうか、ロックとしてね。10代の子が聴いてもロックだと感じるものが楽しいかなって。普通にロックと感じる範囲の中でオルタナをやりたくなったんですよ。

そんな今回のアルバムのタイトルの“OOPARTS”ですが、“時代にそぐわない遺物”という意味なんですよね。で、アーティスト写真もカウボーイだと。

“場違い”という意味もあって…でも、アー写だけを見るとただのカウボーイだけど、ジャケットはソファにタイヤとハンドルが付いてて、それで高速をぶっ飛ばしているんですよ。だから、未来っぽいのにカウボーイってことで“場違い”なんです。ただのカウボーイではないんですよ。まあ、そのままウエスタンレストランにいそうな人がひとりいますけど(笑)。アルバムのタイトルって今年のthe pillowsのキャッチコピーみたいな気分で付けるので、今年のthe pillowsにキャッチコピーを付けるのなら“OOPARTS”かなって。“その時代に合った高等な技術”っていうニュアンスもあるそうなんで、図々しく付けてみました(笑)

でも、このタイトルが掲げられるということは、時代うんぬんではなく、自分が信じたものをやり続けているという証でもありますよね。

10年ぐらい前から半信半疑で一歩ずつ踏み出してるような感じがあって、“自由になった”とか“自信が付いてきた”って毎年言ってきたんですけど、本当にちょっとずつ評価も上がってるんですよね。去年も“the pillowsは自由だな”って思ってたのに、今年はもっと自由になってるし。だから、強気になってますね。the pillowsみたいなバンドが20周年で武道館ができたので、どこかで音楽シーンをバカにしているけど、どこかでは信じていて…その比率がちょっとずつ信じられるものになっていけばいいなって感じですね。
the pillows プロフィール

1989年、山中さわお(Vo&Gt)を中心に結成。既存のJロックとは一線を画した、洋楽的な視点を持つギター・ロック・バンドの先駆者的存在。91年5月にシングル「雨にうたえば」で<ポニーキャニオン>よりデビュー。1993年にリーダーの上田ケンジが脱退し、表立った活動が休止状態になるも、翌年<キングレコード>に移籍し、残った3人で活動を再開。バンド・ブームの余韻が残る90年代前半、過小評価されていた彼らの音楽だったが、97年1月発表の5thアルバム『Please Mr. Lostman』より、徐々に状況が変わっていく。60's風のテイスティなメロディ、シンプルかつラウドなサウンドが耳の肥えた若いロック・リスナーを中心に話題を呼び、99年1月に傑作の誉れ高い7thアルバム『RUNNERS HIGH』をリリース。ロック・ファンを中心に絶大な支持を獲得していった。00年7月発表の「Ride on shooting star」はOVA『フリクリ』の主題歌、11月発表の「I think I can」が『スポーツMAX』のEDテーマに起用。その後もコンスタントにリリースやライヴ活度を続け、06年より<avex trax>に移籍。09年に結成20周年を迎え、結成20周年記念日となる9月16日には初となる日本武道館単独公演を敢行。チケットは一般発売後10分で完売したため入手困難なプレミアムチケットとなり、会場には全国から1万人のファンが集結した。また、そんな彼らは多くのミュージシャンから支持を得ており、14年2月には結成25周年を記念したトリビュートアルバム『ROCK AND SYMPATHY』がリリースされた。オフィシャルHP
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