取材:森 樹

この日の武道館には、開演前からしびれるほどの緊張感が漂っていた。これから始まる演奏への期待感と、終末を信じたくないファンの感情が入り混じっていたからだろう。10年以上に渡り、感傷的で憂いある世界を提示してきたSyrup16gの最期には相応しい雰囲気だった。 突如としてSEが止み、一気に照明が落ちる。そして、「無効の日」「負け犬」など初期の名曲から、「明日を落としても」「パープルムカデ」「天才」といったドラマティックな楽曲を、彼らはMCなしで次々と繰り出していく。ドライに見えるほど闇雲に疾走する3人のステージングは、解散の悲壮感を吹き飛ばしていくかのような迫力だった。本編を終えると、堰を切ったように感極まった“ありがとう”の声が客席から次々に響く。それに応えた3度のアンコールでは「さくら」を始め、最新アルバム『syrup16g』から多数の楽曲を披露。最後には明日への希望を込めた「reborn」をパフォーマンスし、3時間超に及ぶステージは終了した。 Syrup16gは、孤独や絶望を歌い続けてきた。その果てにやってきたこの日のライブは、むしろ前向きな思いが伝わる美しいステージだった。もちろん僕らの心には、不安も絶望も苦しみも痛みも消えていない。だけど、同じようにSyrup16gの音楽はこれからも存在し続けるし、彼らは“それでいいんだよ”と伝えてくれる。終演後、ライヴでも披露された「生活」にある言葉、“生活はできそう? それはまだ 計画を立てよう それも無駄”が心に残った。
Syrup16g プロフィール

世の中がいかにクソであるかをストイックに奏でる3ピース・ロック・バンド。「絶望90%、希望5%、やるせなさ5%」——主成分はそんな感じ。とにかくテーマが重い。生と死、神、終わりなき退屈な日常、青春の終焉……。誰もが見て見ぬフリをしてた人生の真理/事実を次々と暴いていく。ロック最大の魅力のひとつネガティヴ・リアリズムをまざまざと見せ付けられたような気分だ。ただし、お気楽ポップ・チューンを聴いて楽しい気分になれるマジョリティには、まったく不必要なバンドであることは確か。
結成は93年。インディーズで2枚のアルバムをリリースする。そして02年、『coup d'Etat(クーデター)』でメジャー・デビュー。以降も、その研ぎ澄まされた表現衝動はまったくブレていない。素晴らしい。オフィシャルサイト

OKMusic編集部

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