Every Little Thingが
時代に即した要素を過不足なく
楽曲に詰め込んだ大ヒット作
『Time to Destination』

女心をリアルに描写した歌詞が魅了

歌詞にも偏った印象がない。全て恋愛をモチーフとしており、おそらくそこに思想はないだろうし、メッセージ性は皆無だろう。

《これほどに相手を好きになること/今までなかったから/潤してほしい この熱い身体/ずっと抱きしめていて》《友達から聞いたあなたの噂話/信じたくないけど…》《今 誰かのそばにいるの?/なんて変な想像して/不安だけが駆けめぐるよ/かなり嫉妬してる》(M1「For the moment」)。

《黒いベロアのワンピース/欲しくておねだりよくしたね/「お前が着ても似合わない」と/ひやかすばかりで…》(M3「Face the change (Album Mix)」)。

《My Love is Forever/あなたと出逢った頃のように/季節が変わっても/きっと色褪せないはずだよ》《ダイアリー会える日しるしつけてる/なんだか不思議ね/今まで以上に夢中になれるのは/夏の恋の魔法のせいかしら》《どれくらい電話で話したのかな/足りないくらいね/明日のデートの服は何にしよう/おかしいほどまじめに悩んでる》(M8「出逢った頃のように」)。

《内気な自分直せば/デートの約束も/照れずに言い出せるのに》《受話器握りしめて/彼にダイヤルした/友達以上になれるかな?》《形のないものだから/いつも行方知れずの恋/このままチャンス逃さない/二度と無い青春だから》(M9「Shapes Of Love」)。

特筆全ては所謂、女心を綴ったと思しきフレーズが散見できるところだろう(筆者は女心がよく分からないので“思しき”と書かせてもらう)。《かなり嫉妬してる》とか《ダイアリー会える日しるし》とか《受話器握りしめて/彼にダイヤルした》とかはまだしも、《黒いベロアのワンピース》辺りは、たぶん普通の男なら簡単には出てこないフレーズではなかろうか。こうした描写のリアルさに惹き付けられたリスナーは少なくなかったと思われる。

『Time to Destination』のメロディー、サウンド、そして歌詞の特徴を振り返ると、そのほとんどを手掛けていた五十嵐充(Key)の手腕の確かさとすごさをまざまざと見せられる思いだ(M6「All along」の歌詞が唯一、持田香織との共作)。時代に即していたであろう要素を過不足なく、その楽曲に搭載。これをほぼひとりでやっていたとなると、これはもうほとんど職人技だったと言える。もしかすると、本作は一見“吊るしの背広”的な、パターン化された工業製品のように思えるかもしれないが、その制作背景から考えると、優れたオーダーメイド作品であったことは言うまでもないだろう。

また、五十嵐充の才能だけでは『Time to Destination』は完成しなかったであろうし、ひいてはELT自体が成り立つことはなかったであろう。最後にそこを強調しておきたい。改めて言うまでもないが、持田&伊藤両名のポテンシャルを忘れてはならない。音楽的主柱とも言える人物が抜けたら普通そのグループはなかなか続かないものだ。比べることでもないかとは思うが、五十嵐はELT脱退後、いくつかのグループのプロデューサーを務めているものの、そのグループはいずれも活動休止している。そんな中でELTが今も継続しているのは彼女らの才能が開花したことに他ならない。テレビのバラエティー番組でも活躍するようになった伊藤のキャラクターもすごいが、ライヴで凛々しく立ち回る持田の逞しさも特筆すべきだろう。いつだったか、野外ライヴイベント『a-nation』でELTを観た時、彼女の力強いパフォーマンスに正直言って面食らった記憶がある。300万枚を超えるセールスを記録するアーティストの性根みたいなものを見せつけられた気がして、正直言って、その日出演していたどのアーティストよりもカッコ良く思えたことを覚えている。

TEXT:帆苅智之

アルバム『Time to Destination』1998年発表作品
    • <収録曲>
    • 1.For the moment
    • 2.今でも・・・あなたが好きだから
    • 3.Face the change (Album Mix)
    • 4.Old Dreams (Instrumental)
    • 5.モノクローム
    • 6.All along
    • 7.Hometown
    • 8.出逢った頃のように
    • 9.Shapes Of Love
    • 10.True colors
    • 11.Time goes by (Orchestra Version)

OKMusic編集部

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