ロックの進化に貢献した
ムーディー・ブルースの
絶頂期の作品のひとつ『童夢』

コンセプトアルバム

インターネットや携帯電話が普及する前、ロックやポップスを楽しむということは、ヒットしたシングル曲を聴くことの他に、アルバム1枚(だいたい10〜12曲程度収められている)をじっくり聴くという行為が存在した。特に音楽ファンと呼ばれる人はアルバムを聴くことが主であった。このことはLPの頃だけでなく、CDになってもそう変わらなかったことである。しかし、気に入ったものを1曲ずつダウンロードして携帯で音楽を楽しむことが普通の今、アルバムを聴くという行為は若者にとっては理解しにくいのかもしれない。

アルバムに収録されるのはだいたい10〜12曲だから、シングルヒットが見込まれるアーティストの場合には2、3曲のヒット性がある曲(ラジオで紹介しえもらうため、3分から長くても4分程度にしておく)をアルバム内に適度に分散させておく。シングルヒットを考慮しなくてもいいアーティストの場合は一曲一曲が長くても支障はなく、アドリブ演奏が多いアーティストの場合には、LP片面で1曲のみという場合もある。いずれにしても多くのアルバムにおいて曲と曲の間に関連はなく、それぞれ独立した内容を持っていた。

ところが、この『デイズ・オブ・フューチャー・パスト』は収められた7曲が全て“ある人の1日”をテーマにした内容が歌われており、ひとつのコンセプトをもとに収録曲は書かれているのである。この作品はクラシックとロックを融合させることと、それに加えて全体のテーマに沿って曲同士が相互に関係し合うという、ふたつの重要な要素を持っていたのである。当時、ロック界では非常に珍しい手法でこのアルバムは制作されており、それは画期的なことであった。

独自の音楽表現を獲得する時期

彼らはこの『デイズ・オブ・フューチャー・パスト』の経験と、同じく67年にビートルズがリリースしたコンセプトアルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリーハーツ・クラブ・バンド』や、ヴァン・ダイク・パークスの『ソング・サイクル』などをおそらく参考にしながら、ムーディー・ブルース独自の音楽を確立していく。

68年にリリースした3作目『失われたコードを求めて(原題:In Search Of The Lost Chord)』(全英チャート5位)から、アルバムジャケットのアートワークはフィル・トラバースが手がけ、トニー・クラークがプロデュースすることになった。これは4作目の『夢幻(原題:On The Threshold Of A Dream)』(‘69)(全英チャート1位)、5作目『子供たちの子供たちの子供たちへ(原題:To Our Children’s Children’s Children)』(’69)(全英チャート2位)、6作目『クエスチョン・オブ・バランス(原題:A Question Of Balance)』(‘70)(全英チャート1位)、本作『童夢』(’71)(全英チャート1位)、8作目の『セヴンス・ソジャーン(原題:Seventh Sojourn)』(‘72)(全英チャート5位)まで変わらず、この時期にリリースされたアルバムはどれも甲乙付け難い秀作で、ムーディーズの絶頂期にあたる。ソングライティングは全員が担当しているものの、最終調整はメンバー全員で行なっているのだろう、ひとりで書いているような統一感がある。

OKMusic編集部

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