切ないメロディーと
儚げなヴォーカルが
リスナーの心を打つ
ジェイホークスの名作
『ハリウッド・タウン・ホール』

ジェイホークスというグループ

ジェイホークスは1985年にミネソタ州ミネアポリスで結成された。86年にデビュー作の『ザ・ジェイホークス』(別名:バンクハウス・アルバム)を地元のインディーズレーベルであるバンクハウス・レコードからリリースする。その内容はカントリー音楽をベースにバーズやフライング・ブリトー・ブラザーズのようなフォーク&カントリーロックをスパイスにした、一見すると時代の流れとは逆行しているかのようなサウンドだった。このデビュー作には光るものは感じられるものの、カントリーに寄りすぎていてオルソンとローリスの瑞々しい感性はまだ見られない。この後、デモテープ作りに励むが、ローリスが自動車事故で一時期脱退するなどのトラブルもあって、ツイントーンから次作『ブルーアース』をリリースするのは89年になってからのことであった。

91年のある日、ツイントーンの代表デイブ・エアーズがデフ・アメリカン(現アメリカン・レコーディングス)のナンバー2で友人のジョージ・ドラクリアスと電話で話している時、たまたまジェイホークスの『ブルーアース』をBGMで流していた。ドラクリアスは「これは誰だ?」とエアーズに尋ね、エアーズは「うちのジェイホークスだよ」と返した。この後、ジェイホークスはデフ・アメリカンと契約することになるのである。念願のメジャー契約を果たしたジェイホークス、この時のメンバーはマーク・オルソン(ギター&ヴォーカル)、ゲイリー・ローリス(ギター&ヴォーカル)、マーク・パールマン(ベース)、ケン・キャラハン(ドラムス)という面子であった。

本作『ハリウッド・タウン・ホール』に
ついて

メジャーデビューとなる本作『ハリウッド・タウン・ホール』は、ジョージ・ドラクリアスのプロデュースによりロスとミネアポリスのスタジオで録音された。タイトルにハリウッドとあるが、これ実はカリフォルニア州のハリウッドではなく、ミネソタ州のハリウッド町にある教会のこと。

ドラクリアスは本作のレコーディングにあたり、彼らにキーボードを付け加えるべきだと助言し、ロック界屈指の名ピアニスト、ニッキー・ホプキンスとトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのメンバーで、セッションマンとしても有能なベンモント・テンチのふたりを起用している。彼らの参加により、サウンドに深みが出ただけでなく、より引き締まったサウンドになった。ドラクリアスはドラムの弱さ(ジェイホークスはグループ結成当初からドラムに恵まれず、アルバムリリースごとにドラマーが変わっている)が気になっていたので、著名なセッションドラマーのチャーリー・ドレイトンを呼び寄せ、リズム全体のコーチとしても使っている。

収録曲は全部で10曲(オリジナル盤)。前作『ブルーアース』に収められていた「Two Angels」と「Martin’s Song」の2曲を再録音している。ブレンダン・オブライエンをはじめとする有能なエンジニアたちによって、オルソン&ローリスの儚げなヴォーカルと彼らの繊細な音楽性が緻密に演出されている。傑作中の傑作「Waiting For The Sun」をはじめ、どの曲も名曲と呼ぶに相応しい仕上がりであり、ジェイホークスが90sオルタナティブシーンを代表する名グループであることがよく分かる。彼らのことをオルタナカントリーのグループだと言う人がいるが、彼らの音楽はグラム・パーソンズと同様、狭いジャンルに閉じ込めておけるほど小さくはない。

本作をリリースしてからジョー・ヘンリーの『Short Man’s Room』(’92)に全員で参加した後、キャラハンが脱退し、ドラムが不在になる。ドラクリアスの助言を聞き、女性キーボード奏者のカレン・グロッバーグを迎え、次作『トゥモロー・ザ・グリーン・グラス』(‘95)をリリースする。相変わらずドラムは不在で、昔馴染みのドン・へフィントンがゲスト参加している。内容は本作と双璧をなす名盤で、『トゥモロー・〜』を代表作に推す人も少なくない。マーク・オルソンは難病の妻(女性アーティストのヴィクトリア・ウィリアムス)をサポートするため、このアルバムを最後に脱退することになった。

僕の中ではこの時点でジェイホークスは終わったのだが、2011年にリリースした『モッキンバード・タイム』で短期復帰(このアルバムリリース後、すぐに脱退)を果たし、変わらぬ儚げな歌声を聴かせてくれた。

もしジェイホークスを聴いたことがないなら、これを機会に『ハリウッド・タウン・ホール』か『トゥモロー・ザ・グリーン・グラス』をぜひ聴いてみてください。きっと、何か新しい発見があると思うよ♪

TEXT:河崎直人

アルバム『Hollywood Town Hall』1992年発表作品
    • <収録曲>
    • 1. 太陽を待ちながら/Waiting For The Sun
    • 2. クラウデッド・イン・ザ・ウイングス/Crowded In The Wings
    • 3. クラウズ/Clouds
    • 4. ふたりの天使/Two Angels
    • 5. 僕をおいていかないで/Take Me With You (When You Go)
    • 6. シスター・クライ/Sister Cry
    • 7. 雨の如く降りそそぎ・・・/Settled Down Like Rain
    • 8. ウィチタ/Wichita
    • 9. ネヴァダ、カリフォルニア/"Nevada, California"
    • 10. マーティンの歌/Martin's Song
『Hollywood Town Hall』(’92)/The Jayhawks

OKMusic編集部

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