『jupiter』で教えられた実直さーー
個人的BUMP OF CHICKEN回想録

曲を最も良く聴かせるバンドサウンド

しかも、だ。これでサウンドが、例えばストリングスやブラス、シンセといった外音をふんだんに取り入れていたり、そこまでじゃなくとも、リズムパターンが豊富にあったりしたら、ボーッと聴いていたにしても、“なるほど”と思ったのかもしれない。みなさんご存知のことかと思うが、BUMPのバンドサウンド、その構造は比較的シンプルだ。以前、インタビューした時、藤原が作ってきた曲を他の3人(=増川弘明(Gu)、直井由文(Ba)、升秀夫(Dr))で一番良く聴かせるかたちに仕上げていく──このバンドのスタイルを彼らはそう語っていた。そういうことなのだろう。M9「ダイヤモンド」のアウトロ近くに逆回転が入っていたり、M1「Stage of the ground」もアウトロで若干サイケな感じがあるにはあるが、基本的に外音はほとんど使われていない。「ダイヤモンド」のそれにしても控えめな印象だ。ギターはオーバーダビングしているだろうが、あくまでもそのアンサンブルは4人で再現できるものにこだわっているように思える。そのギターもディストーションの効いたストロークとクリアトーンのアルペジオという対比がほとんど。楽曲毎にその旋律が異なるのは当たり前として、音色などもそれぞれの楽曲でのアプローチを変えているものの、それにしても突出したアプローチがあるかと言えばそうでもない。だから、ボーッと聴いていると、どれも似た感じに聴こえると言うと語弊があるだろうが、そういう羽目に陥ることになる。


しかしながら、ヘッドフォン着用の上でしっかりと音源を聴くと、4人でのアンサンブルにこだわったと思われるサウンドの良さが分かってくる。厳密に分かったかどうかはともかく、そんな気はした。はっきり言えば、『jupiter』のサウンドはやや粗いと思う。レコーディングの頃はたぶん21~22歳であったであろうからそれも止む無しであっただろう。具体的に言えば、生真面目気味な升のビートに対して直井のベースが実に奔放なフレーズを弾いているところなどが随所に見受けられるのだが、そこがいいのである。そのやや粗い感じが、藤原の描く歌詞と相性がいいように思えるのだ。

BUMPの歌詞は時間が不可逆であることを意識させるものが多いと前述した。そこで綴られている中身は、上に記した歌詞からだけでも想像してもらえるかもしれないが、ポジティビティ──楽観的視線こそ薄いが、“前向きな感情を引き起こす肯定的な意味付け”といったものがほとんどである。バンド名である“臆病者の一撃”からの流れであろうか、“悔恨からの復活、再生”といったテーマも見受けられる。派手さはないものの、誤解を恐れずに言えば、愚直な印象すら受けると思う。そういう内容であるからこそ、少なくとも浮世離れしたサウンドで彩ることはないし、多少不器用な感じであっても手作り感のあるバンドアンサンブルが合うのである。

そして、それらが一体となった楽曲たちは、BUMPにまったく興味を示さない人へは届かなかったろうが、彼らに少なからず興味を持ったり、彼らに近い思考、指向を持った人にはその深いところへ刺さるものだったのだと思う。2002年頃、何かそんなことを思ったことを思い出した。

TEXT:帆苅智之

アルバム『jupiter』2002年発表作品
    • <収録曲>
    • 1.Stage of the ground
    • 2.天体観測
    • 3.Title of mine
    • 4.キャッチボール
    • 5.ハルジオン
    • 6.ベンチとコーヒー
    • 7.メロディーフラッグ
    • 8.ベル
    • 9.ダイヤモンド
    • 10.ダンデライオン
『jupiter』(’02)/BUMP OF CHICKEN

OKMusic編集部

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