『LOVE GOES ON…』の
歌声を聴けば誰もが納得、
DREAMS COME TRUEが
愛され続けている理由

1曲目から吉田の魅力がさく裂

吉田美和の圧倒的な歌唱力、メロディメーカーとしての資質、そして独特な歌詞世界を描く作家的才能は、早くから発揮されていたことは誰もが認めることであろうし、メンバー、スタッフもその言わば“吉田推し”を意識していたことは初期作品──今回取り上げる2ndアルバム『LOVE GOES ON…』からもはっきりと見て取れるところであろう。筆者は熱心にドリカムを聴いてきたわけではない、完全なる半可通であるが、オープニングM1「うれしい!たのしい!大好き! ('EVERLASTING' VERSION)」から本作が“吉田美和での一点突破”のアルバムであることはよく分かる。3rdシングル「うれしはずかし朝帰り」C/Wである「うれしい!たのしい!大好き!」は、本作収録にあたってレコーディングし直しており、コーラスの一部も変わっているそうだが、誰の目にも明らかなのはイントロ前の吉田のシャウトが加わっていることであろう。シングル収録版とのバージョン違いは別に珍しいことではないけれども、若干マニアックとも思えるソウルフルな歌唱をアルバムの冒頭も冒頭に持って来る辺り、どう考えても“まずこのヴォーカルを聴いてほしい”ということだと思う。

そもそも「うれしい!たのしい!大好き!」は吉田の歌唱を含むメロディーを重視した楽曲である。“本来のイントロ”という言い方でいいのかどうか分からないが、アルバム収録版では吉田のシャウトのあとでシンセが奏でるブラスっぽい部分のメロディーは、この楽曲のサビメロそのもので、サビをよりキャッチーに聴かせる常套手段を用いている。それにもかかわらず、別イントロ──しかも、メロディーというよりもヴォイスパフォーマンスに近いヴォーカルを収録している辺り、念押しというよりもほとんどダメ押し、止めを刺しにきているくらいの印象だ。下手にバンドらしさを重視したりすると、突飛なイントロを加えて蛇足も甚だしくなる恐れもある。誰とは言わないが、そういうケースがないわけでもない。「うれしい!たのしい!大好き!」はそうなっていないだけでなく、発表から30年経った今聴いても、これ以外にない大正解に思える。それは無論、吉田の素晴らしさもさることながら、彼女以外のメンバーの慧眼によるところとも言える。

そのM1「うれしい!たのしい!大好き!!」に続いては、シングルの表題作であるM2「うれしはずかし朝帰り」が、シングル曲らしくアルバム2曲目という位置に収まっている。C/Wであった「うれしい!たのしい!大好き!」が今やドリカムの代表曲のひとつとなっていることで若干影が薄い気もする「うれしはずかし朝帰り」であるが(あくまでも個人的には…です)、この頃の吉田の声質がそうであったのか、この歌唱にはどこか幼い印象があって、そこがとてもよい。以下のような歌詞がある。

《ショーウィンドウに映る姿 気にしながら/ちょっとむくんだまぶたを 右手で押さえる/人が見たら 朝帰りってわかるかしら/髪もイマイチきまってないし》《電車の中で思い出し笑い 人に見られて/赤い顔して 眠ったふり》(M2「うれしはずかし朝帰り」)。

文字面だけ見るとこちらのほうが赤面してしまうようなかわいらしい内容。嬉しさだけなら上滑りするだろうし、恥ずかしさだけならコミックソングだろう。ポップに歌われることで、まさに嬉しさと恥ずかしさがない交ぜになった感情を表現している点は実にお見事だ。それが少し幼い感じの吉田の歌唱が加味されることで味わいが増していると思う。ちなみにM6「自分勝手な夜」においても、特に後半のスキャット部分で少女っぽさの残る歌声を聴くことができるが、こちらは歌詞の内容がタイトル通りなので、共感できるかどうかは人それぞれのような気がする。

OKMusic編集部

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