Sou インタビュー 「自分にとっての
分岐点」となるアルバム『深層から』
を語る

3年8ヶ月ぶりとなるアルバム『深層から』を7月31日にリリースするSou。アルバムには、自身初の作詞・作曲となるオリジナル楽曲に加え、Eve、羽生まゐご、有形ランペイジsasakure.UK)、蝶々Pからの提供曲などが収録されている。

“歌ってみた”を楽しむことから“音楽”を楽しむようになった彼が、「自分にとっての分岐点」と語る今作について話を聞いてみた。
――7月31日にリリースする2ndアルバム『深層から』は、2015年12月にリリースしたメジャーデビューアルバム『水奏レグルス』以来、3年8ヶ月ぶりとなるアルバム。その間、ナユタン星人さんとのコラボレーションアルバム『ナユタン星への快爽列車』やEveさんとのコラボレーションアルバム『蒼』をリリースし、動画も多数投稿、数々のライブ出演を重ね、今年5月12日にはマイナビBLITZ赤坂にて初のワンマンライブ『Salir』を開催と精力的に活動されてきましたが、環境や気持ちの面でどんな変化を感じていますか?
『水奏レグルス』をリリースしたころは、“歌ってみた”楽しい!という気持ちが大きかったんですけど……徐々に音楽そのものが好きになっていったし、ほかのアーティストとも一緒になにかやってみたい、自分で曲も作ってみたい、という想いも芽生えていって。歌うだけでなく、音楽を楽しんでいる、というように変化してきたんじゃないかなぁと思います。
――コラボして作品制作をしたり、ライブ共演したりする方たちはじめ、周りからたくさんの刺激をもらったことも影響しているのでしょうか。
それはあると思います。周りの人から、パワーをたくさんもらっているので。ただ、刺激を受けていろいろな興味も湧いてくるんですけど、こんなに好きでこんなに強い気持ちがあるのにうまくいかないな、ということも正直言えばあって。悩むことも多いんですよ。
――しかし、そうした手強い壁が立ちはだかるからこそ……。
そうなんですよね。どうにか乗り越えてやろう!とも思うし、壁を乗り越えたときの達成感は大きいです。
――といったことも踏まえ、2作目となるアルバム『深層から』はどんな想いを原動力に、どういった作品にしたかったのでしょうか。
これまでの自分の活動の主軸は“歌ってみた”だったわけですけど、そこからもう一歩踏み出して、音楽を自分で作ったりもしたかったし……これまでの僕はもちろん、これからこうなっていきたいという方向性も示せるような、自分にとっての分岐点となる作品にしたいな、という想いはありました。
――実際、初めて作詞・作曲したオリジナル曲「愚者のパレード」はファンキーでいて愁い色をたたえ、アルバムリード曲である「ノイド」は疾走感あふれるナンバーと、コンポーザーとしての才能開花も感じています。
そんな……ありがとうございます。
――人それぞれいろいろな手法があると思うのですが、Souさんの場合はどうやって曲を生み出していくのでしょうか。
基本的にはサビのメロディを考えて、コードをはめていって、そのサビにつながるようにAメロやBメロを考えていくっていうやり方をしています。
――そのサビは、よく言うように“降りてくる”わけですか?
それ、よく言いますよね。僕の場合はそんなすごい感じじゃないかな(笑)。次々思いつくメロディをどんどん口ずさんでいって、忘れてしまうものもあるんですけど、その中で印象強いメロディっていうのがあるので、そこからふくらませていくんです。
――通りで、曲調は違えど「愚者のパレード」も「ノイド」もメロディに力があります。
わ、嬉しいです。ただ、形にするまではだいぶ苦労したんですよ(苦笑)。これまでは、サビが思い浮かんだら1番のAメロとBメロを考えて、っていうところくらいまでは曲作りをしたことがあったんですけど、ちゃんと1曲通して作ろうと思うと、間奏やイントロをつけていくのが思いの外大変だったし……曲がやっとできたと思ったら、今度は歌詞がなかなか書けなくて。作詞では相当苦戦しました。
――それは意外です。「愚者のパレード」では“望んだように生きたい自分と、そんな気持ちを偽りながら生きている自分”、「ノイド」では“近未来のロボットと人類”を描いていて、どちらの世界にも引き込まれてしまいます。
「愚者のパレード」は、自分が初めて書く歌詞ということもあって、そのときの心境がすごく反映されていると思います。最初のころは単なる趣味で“歌ってみた”を投稿してきたわけですけど、気づいたらものすごくたくさんの人に聴いてもらえるようになって。嬉しい反面、ハードルが上がったようにも思うし……自分の理想にどうやったらたどり着けるのかっていう葛藤の歌です。
――理想と現実の狭間でもがく人にとって、気持ちが重なる歌でもあり、心のよりどころにできる歌でもあるのではないかなと。
そうなったらいいなと思います。いっぽうの「ノイド」は、自分のことを書くのではなく、大好きなSF作品のようなAIをテーマに歌詞を書いて。
――個人的に、映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』の世界観がオーバーラップしたりもしました。
あ、そうですね。あと、映画『ブレードランナー』とか。そっち系の作品は結構意識しました。
――「愚者のパレード」がリアルな世界なら「ノイド」は空想的な世界で、ガラっと異なるのも面白いところですよね。
作風が固まっていないまっさらな状態だからこそ、いろいろな表現を躊躇なくできるというか。そこは、これまで曲を作ってきていないことの利点なのかもしれないです。
――なるほど、納得です。また、盟友であるEveさんはじめ、羽生まゐごさん、有形ランペイジ(sasakure.UK)さん、蝶々Pさんといった個性&才能あふれるアーティストからの提供曲も鮮烈だなと。
単純に自分の好きな人、曲を書き下ろしてほしいなと思った人に、楽曲提供をお願いしました。
――中でも、羽生まゐごさん作の「鯰」は、サウンドにも歌詞にも和情緒漂うナンバーですね。
一度お会いしたときに仲良くなったので、今回ぜひ!ということでお願いしたら、和テイストのとても素敵な曲を書いていただけて。だからといって変に気合いを入れすぎても自分らしく歌えないと思ったので、いつも通りに歌いつつ……たとえば<人には寂しいなら泣いてはいかが>のところなんかは、羽生さんからもらったボーカロイドのデモ曲の、和っぽい“ゆらぎ”のある歌い方を意識しました。
――それがまた素敵です。Sasakure.UKさん作詞・作曲、sasakure.UKさん率いるバンド・有形ランペイジが編曲と演奏を手掛けた「シンソウ」は、スリリングなバンドアンサンブルもエモーショナルで。
有形ランペイジさんは僕が一番好きなアーティストさんだし、曲も僕の好みのドストライクを突きすぎていて、とことん気持ちよく歌わせていただきました。
――<サヨナラに僕は“添う”と答えた>、ラストの<-その色を僕は“蒼(Sou)”と名付けた>などSouさんの名前を入れ込んでいたり、<不器用な僕の人間讃歌>というフレーズにしても然り、これは“Souさんの歌”ですよね。
楽曲についての打ち合わせをSasakure.UKさんとしたとき、現在の心境やさっきお話しした今作のキーワードである“分岐点”を伝えた上で、まさに“僕自身の歌”にしてほしい、というオーダーをしたら……それをすべてはめ込んだ、最高の曲にしてもらえました。<-その色を僕は“蒼(Sou)”と名付けた>というフレーズを最初に読んだとき鳥肌が立ちました。さすがです!
――同感です。Eveさん作詞・作曲の「グレイの海」は、深くを漂うような、実にEveさんらしい幻想感のあるナンバーにSouさんの歌声がとても似合っていて。SouさんとEveさんの組み合わせはやはり耳に心地いいなぁと、あらためて思わされます。
僕にとっても、安定のEveくんなので。Eveくんとのコラボレーションアルバム『蒼』でEveくんが僕に書き下ろしてくれた「チョコレートタウン」然り、「グレイの海」に関してもほとんどディスカッションをしていないんですよ。アルバムのジャケットイラストみたいな“海の底”っていうイメージだけを伝えて、「あとは好きなように頼んだ!」ってお願いしてだけで。
――お互いに信頼感があればこそ、ですね。
本当に。歌っていても最高でした。
――<貴方の涙が海の雫となるなら 誰かに望まれて生きてもいいんだと 思えるかな>というフレーズには、救いを感じられたりして。
ほぼ暗闇の中なんだけれども、一筋の光が射し込んでいるいるっていう。僕も、そのフレーズに救われました。
――ちなみに、Souさんにとって音楽以外で“光”をもたらしてくれるものはなんですか?
なんだろう(しばらく考えて)……スマホとかのソーシャルゲームで、あまり課金をせずに出た良いアイテムです(笑)。最近のソシャゲってなかなか当たらない中で、課金せずに配られたガチャのポイントだけでいいアイテムに巡り合えたときの光たるや、それだけで僕に救いをもたらしますから(笑)。まさか、「グレイの海」からこんな話になるとは(一同笑)。
――Eveさんもびっくりしてしまうかも(笑)。そういえば、<世界が僕を置き去りにしてしまって 形あるものは何処かへ消え去って泡沫の光も 裏切られてしまうよ あまつさえ誤魔化すばかり>はEveさんが歌唱しているのでしょうか?
いろんな人に間違われるんですけど、実はそこも僕が歌っているんです!
――声色を変えて?
そうです。ちょっと暗めに歌って。
Sou『深層から』
――今回のアルバムで、Souさんはいろいろな声の表情を持ち、多彩な表現ができるボーカリストであることも再確認できます。そして、「心做し」の<「それはね、ここにあるよ」>という“君”の言葉から続く物語のようにもとらえられる、蝶々Pさん作詞・作曲の「証として」。Souさんはどう解釈したのでしょうか。
僕も同じような解釈をしているんですけど、「心做し」も「証として」も、蝶々さんにとってとても思い入れのある曲だと思うので、あまり自分の色をつけすぎないように、どちらも直感で歌いました。
――「心做し」は聴き手の胸が苦しくなるほど感情的に歌っていますけど、「証として」は<決して変わりやしない現実とか いつか置き忘れて消えた夢とか 嫌な事だらけのこんな世界で せめて僕らしく居たいじゃないか> <醜い姿こそが 人という形ならば> <張り裂けた心が痛くても 繰り返す呼吸が苦しくても この手の温かさが 君であり僕である それぞれの証なんだ>といったフレーズ、歌声に“希望”を感じます。
人のマイナスな部分もすべて肯定して、それでいいんだよっていう。“その先”に進んでいけるような色は確かに僕も感じて、それが伝わるように歌ったつもりだし……「心做し」から「証として」への流れ、本当に最高です。
――それにも同感です。それから、キャッチーだけれどダークな「トーキョーゲットー」、軽やかな「ハングリーニコル」、R&Bテイストでおしゃれな「flos」、独特の浮遊感にSouさんの透明感ある歌声が映える「波に名前があること、僕らの呼吸に終わりがあること。」、侘しさに満ちた「エリカ」、今は亡き椎名もたさん作、あまりにも衝動的な「Q」など、ボカロナンバーも色彩豊かですが、今回歌ってみて特に印象深かった曲を挙げるとするなら?
どのボカロ曲も大好きなんですけど……「Q」ですかね。「心做し」と同じく、以前に一度“歌ってみた”を投稿していて。もたさんの曲はずっと好きで、5年前に歌った「Q」をどう歌いなおせるのかなっていう興味もあって、今回再録したんですよ。もたさんが亡くなってしまったことは、いつまで経っても本当に悲しい。でも、音楽はいつまでも残るし、今回は5年前とは違う新しい「Q」を歌えたんじゃないかなという気はしています。
――なにしろ、『深層から』には心動かす歌声が詰まっているわけですが、ここからどんな活動をしていきたいと考えているのでしょうか。
『深層から』は、特にボカロ曲に関しては言ってもらったみたいに色彩豊かな作品になったので、今度アルバムを作るとしたら、コンセプトアルバムに挑戦してみたいですね。1枚通して、タイトルからなにからテーマに沿った作品を作っていけるように、これから自分での曲作りも頑張っていきたいなと思います。
――歌詞を書くのが大変でも、やはり自分で音楽を生み出すのは楽しいし、好きなのですね。
うん、好きですね。音楽は自分の中で変わらずにずっと好きでいられるものだと思うし、そういうものが見つけられて本当によかったです。
――であれば、一生かけて音楽の道を歩んでいくことになりますね。Souさんの音楽を力や救いにするリスナーの方たちのことも、大切にしながら。
もちろん。自分についてきてくれる人たち、応援してくれる人たちがいなかったら、こういう気持ちにはならなかったんじゃないかなとも思うので。自分の気持ちだけでなく、リスナーさんのことも大切にしていきたいです。
――『深層から』をリリース後、8月に東名阪で開催する『Sou 2019 Summer Tour「深層から見た景色」』も楽しみにしております。
相変わらず人前に立つのが得意じゃないんですけど(苦笑)、5月にワンマンライブをやってみたら、それでもみんなが受け入れてくれて。そういう温かい気持ちにも応えたいし、少しずつ慣れていけたらいいな、と思っています。

取材・文=杉江優花

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