チェッカーズ、
大ブレイクの最中に制作された
『絶対チェッカーズ!!』に見る
ロックスピリット

“チェッカーズカット”の必然?

アルバム『絶対チェッカーズ!!』からうかがい知ることができる音楽性は後述するとして、初期チェッカーズと言えばそのファッション性を切っても切り離せないので少し述べてみたい。何と言ってもメンバーの髪型である。サイドが短く刈り上げられたツーブロックで、トップと前髪は無造作な感じで、さらにそのふぞろいの前髪が少しばかり鼻にかかるように垂れ下がったスタイル。いわゆる“チェッカーズカット”である。当時、巷で相当に流行ってた記憶があるが、今になって思うと、あのタイミングであのスタイルを提示した戦略は実にお見事だったと言わざるを得ない。

チェッカーズのデビュー前まで、ロックバンドのメンバーの髪型と言えば、リーゼントか長髪であった。まぁ、1980年代前半にもなると、それまで定番だった長髪は敬遠されがち、リーゼントもやや衰退傾向で、忌野清志郎や遠藤ミチロウがそうであったように、パンクロックの影響から短めでツンツン立てるようなものが流行っていたように思うが、それは好事家の見立てで、ハードロック勢の長髪、キャロルから横浜銀蝿へとつながるロックンロール勢のリーゼントというのが一般的な(平均的な)ロックバンドの見方ではあったと思う。デビュー前のチェッカーズはオールディーズをやっていたというから、そのマナーに則っていたのだろう。彼らもリーゼントだったが、デビューにあたって全員が髪を切られた。泣く泣く応じたメンバーもいたという(そう思って、シングル「ギザギザハートの子守唄」のジャケ写を見ると、笑顔で写っていないメンバーが自身の髪型に納得いかないように想像できて面白い)。“たられば”は禁物であるが、もしチェッカーズがメジャーデビュー後もリーゼントであったらどうなっていたであろうか? 

《ちっちゃな頃から 悪ガキで/15で不良と呼ばれたよ/ナイフみたいにとがっては/触わるものみな 傷つけた》《仲間がバイクで死んだのさ/とってもいい奴だったのに/ガードレールに花そえて/青春アバヨと泣いたのさ》《熱い心をしばられて/夢は机で削られて/卒業式だと言うけれど/何を卒業するのだろう》(M5「ギザギザハートの子守唄」)。

メロディーはともかく、「ギザギザハートの子守唄」の歌詞はリーゼントに似合いすぎている。横浜銀蝿に端を発した“銀蠅一家”が盛り上がったのが1982年。同年には近藤真彦主演映画『ハイティーン・ブギ』の同タイトル主題歌もヒットしているので、もしかするとチェッカーズがデビューした1983年には“ツッパリ”というキーワードや、リーゼントに革ジャンといったファッションはまだイケたかもしれない。だから、チェッカーズがリーゼントに革ジャンであったら、もしかして「ギザギザハートの子守唄」はいきなり売れたのかもしれない。しかし、もしそうであったら大ブレイクのきっかけとなった2ndシングル「涙のリクエスト」は生まれていたのだろうか。正直言ってそれには“?”で応えざるを得ない。仮の話のさらに仮の話で恐縮だが、「ギザギザハートの子守唄」が売れていたら、次作は「涙のリクエスト」ではなく、おそらくもっと“ツッパリ”要素を踏襲、強調していただろう。デビュー時のポップなルックスであったから「ギザギザハートの子守唄」は届くべきところに届かなかったのだろうし、「涙のリクエスト」は届くべきところへ届いたと考える。

そんなふうに想像すると、“チェッカーズカット”はバンドにとっても、音楽シーンにとっても、シンギュラーポイントみたいなものだったと考えられる。ちなみに“チェッカーズカット”を手掛けたのは代官山の美容院のオーナー、本多三記夫氏。1979年にYellow Magic Orchestraの“テクノカット”も手掛けていた人である。そんな人がブレーンのひとりであったのだから、チェッカーズが当時のポップカルチャーシーンでアイコンとなり得たのも十分納得である。

OKMusic編集部

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