日本のAORファンに
熱狂的に支持された
ボビー・コールドウェルの
『イヴニング・スキャンダル』

本作『イヴニング・スキャンダル
(原題:Bobby Caldwell)』について

マンハッタン生まれでマイアミ育ちのコールドウェルはジャズやポップスを聴いて育ち、思春期にはロックンロールを始めている。ヴォーカルをはじめ、ピアノ、ギター、ドラムなどもこなす早熟さで、17歳の頃にはラスヴェガスでスタンダードジャズやR&Bを演奏していたそうだ。78年初め、TKレコードと契約する。このレコード会社のリリースする作品の主なリスナーは黒人であったから、会社の幹部たちは彼の黒っぽいフィーリングを武器にしようと、彼の顔をアルバムジャケットには載せなかった。そして、彼のデビュー作となる本作『イヴニング・スキャンダル』がリリースされる。数曲の共作はあるが彼の作品が中心で、アレンジはCS&Nやロッド・スチュワートを手がけたマイク・ルイスが、プロデュースはTKレコード専属のアン・ホロウェイとマーシャ・ラドクリフが担当している。

収録曲は全部で9曲。ポップソウルの軽快なリズムと華美なストリングスをメインにした冒頭の「スペシャル・トゥ・ミー」は、伸びやかなコールドウェルのヴォーカルにマッチしたナンバーで、ディスコでも大ヒットした。間奏のサックスが夜の都会を見事に表現していて、彼の代表曲のひとつとなった。「ラブ・ウォント・ウエイト」も同傾向の曲。彼を代表するというかAORを代表する「風のシルエット(原題:What You Won't Do for Love)」は日本のニューミュージックにも大きな影響を与えたナンバーで、彼の黒っぽいヴォーカルが生かされたキレの良いミディアムテンポの名曲。「マイ・フレイム」「カム・トゥ・ミー」「テイク・ミー・バック・トゥ・ゼン」などのバラードは彼の端正なヴォーカルを味わうにはもってこいの楽曲群だろう。ラストの「ダウン・フォー・ザ・サード・タイム」はシンプルな構成で、どこかスティーリー・ダンを思わせる仕上がりになっている。

この年、ジョン・トラヴォルタ主演の映画『サタデー・ナイト・フィーバー』が日本でも封切られ、ディスコの人気が高まりつつあった時期でもあるので、本作も日本のディスコファンに大いに愛された。しかし、ディスコブームが終わっても彼の音楽は聴き継がれ、今でも多くのファンが彼の歌を愛している。彼は、単に流行だけを追いかけたのではなく、確かな音楽性に裏打ちされたヴォーカルテクニックとソングライティングのセンスが素晴らしかったからである。

TEXT:河崎直人

アルバム『Bobby Caldwell』1978年発表作品
    • <収録曲>
    • 1. スペシャル・トゥ・ミー/SPECIAL TO ME
    • 2. マイ・フレイム/MY FLAME
    • 3. ラヴ・ウォント・ウエイト/LOVE WON'T WAIT
    • 4. キャント・セイ・グッドバイ/CAN'T SAY GOODBYE
    • 5. カム・トゥ・ミー/COME TO ME
    • 6. 風のシルエット/WHAT YOU WON'T DO FOR LOVE
    • 7. カリンバ・ソング/KALIMBA SONG
    • 8. テイク・ミー・バック・トゥ・ゼン/TAKE ME BACK TO THEN
    • 9. ダウン・フォー・ザ・サード・タイム/DOWN FOR THE THIRD TIME
『Bobby Caldwell』(‘78)/Bobby Caldwell

OKMusic編集部

全ての音楽情報がここに、ファンから評論家まで、誰もが「アーティスト」、「音楽」がもつ可能性を最大限に発信できる音楽情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • PunkyFineのそれでいきましょう!~V-MUSICジェネシス日記~
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • Tsubasa Shimada presents / 「Wet Crate」
  • SUPER★DRAGON / 「楽楽★PAINT」
  • OLDCODEX / 「WHY I PAINT ~なぜボクがえをかくのか~」
  • みねこ美根 / 「映画の指輪のつくり方」
  • 高槻かなこ / 『PLAYING by CLOSET♪♪』

新着