POLYSICSのメジャーデビュー作
『NEU』からあふれ出る
ニューウェイブ本来のスピリッツ

サウンドはロックの保守本流

M1「go ahead now!」は短いが小気味のいいリズミカルな電子音から始まるので、パッと聴き、“確かにこれはテクノポッ…”くらいまで思うはず。だが、そこからのシンバル連打~エレキギターのかき鳴らし、さらにはノイジーかつダイナミックなバンドサウンドが聴こえるに至っては、これがロックの本流のスタイルであることが理解できる。続くM2「MS-17」はイントロからエレキギターのストロークなので、ギターバンドの王道とも言えるサウンドだ。ともに電子音中心のバンドサウンドではなく、バンドサウンドに電子音をあしらったという印象で、爆裂感と疾走感が楽曲全体を支配している。1stシングル曲でもあるM3「XCT」とM4「S.V.O」とは、いわゆる“ロボ声”を取り入れたりしていて、M1、M2に比べると比較的デジタル系の音が前面に出ている印象ではあるものの、やはりベーシックは3ピースのアンサンブル。M4の間奏などでは伝統的なギターソロ(?)を聴けて、ロックの本流であることを余計に確信する。

以後、M5「MAKING SENSE」もM6「each life each end -sputnikless mix」、M8「CY/CB」も同様の聴き応えなのだが、特筆したいのはM7「DISORDER」のリズム。ちょっとジャングルビートっぽくもあるので完全なセカンドライン…とは言わないけれど、どこかニューオーリンズ風のビートが根底を支えているのが面白い。シーケンサー、リズムマシンが積極的に取り入れられることになり、それまで以上にきっちりとしたパルスや、定期的な拍が作れるようになったことに起因しているのだろうが、テクノポップの隆盛をリアルタイムで体験しているリスナーには、デジタル系サウンドを司るアーティストは無機質さを標榜しているものだという先入観を拭えないところはないだろうか。DEVOにしてもYMOにしても凄腕のドラマーがいて、生ドラムが発散するグルーブは楽曲において重要であるので、それこそオールドリスナーの偏向した印象論でしかないのだけれど、M7「DISORDER」はそんなオヤジの戯言を完全看破しているようでかなりグッとくる。シンセもノイジーで、テクノはテクノかもしれないが、そこに“ポップ”を付け足すことはできない印象で、(これは称賛の言葉として受け取ってほしいのだが)結構気持ち悪い。でも、そこがすこぶる新鮮だ(った)。

気持ち悪い(褒めてます!)と言えば、M9「X-RAYS (this is my life)」もそう。ベースラインが全体を引っ張るところにギターのフィードバックノイズが重なってサウンドが構築されていく様子は、まさにバンドのマナーに則った、これもまたロックの本流といった感じなのだが、左側でリズミカルに鳴っているシンセの音色はそのバランスも含めて何とも気持ち悪くて最高だ。耳の奥に虫か小動物が居座って鳴いてるような…。これをポップと呼んでいいものかどうか分からないけれど、バンドマジックのひとつの発露ではあろう。次のM10「WHAT」は比較的ゆったりとしたテンポで、言わば横ノリといったリズム。わりとフリーキーに演奏されるドラムとは対象的に、ブザー音のような電子音が淡々と並走していく様が、M9ほどではないにしろ、こちらも微妙にノイジーで変な雰囲気を醸し出している。M10は途中からアップテンポに展開していき、以降、M11「PLASTER CASTER」、M12「URGE ON!! -velocity2」、M13「I'm a worker」と、グイグイと迫る怒涛のアップチューン3連発でアルバムはフィナーレ。全13曲で収録時間は41分と比較的短めの楽曲が並ぶ作品ではあるが、この時点でのPOLYSICSの勢いと彼らのロック感がギュッと凝縮された秀作に仕上がっている。シンセやデジタル音は目立つものの、それを上手くバンドサウンドに取り込んでいることは間違いなく、それがテクノポップと言ってしまえばそうなのかもしれないが、1970年代のテクノサウンドをさらに次のステージに進めた印象である。その取り組み方において、それは文字通り“ニューウェイブ”という言い方がぴったりくる。

OKMusic編集部

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