TK from 凛として時雨

TK from 凛として時雨

【TK from 凛として時雨
インタビュー】
他者を介在させることで
自分を壊し、再構築した

又吉さん歌詞監修の「copy light」は
とても大切な曲になりました

では、「鶴の仕返し」は鶴田さくらさんとどのような役割分担で作られたのでしょうか? やりとりの中で印象的だったこと、完成した曲の感想を教えてください。

鶴田さんはトラックメーカーなので、目の前でパッドなどを接続して、一緒に0からその場で作り始めました。ソフトも違ったので、思考回路が全然別の働き方をするんです。僕も思い付いたら彼女のパッドで演奏させてもらって、一緒に音を重ねていきました。ソフトや音が違うとものすごく不自由を感じるんですが、その分可動域が狭くなって、より音にフォーカスしやすくなるんです。最初はもっとエレクトリックなトラックという印象だったんですが、僕のこだわりでそれを極力人力のものに差し替えていくスタイルを取りました。無機質なデモから、そこにグルーブや人間の訛りが付加されることによって、今まで聴いたことない音像になったと思います。河野 圭さんの弦アレンジや言葉が合わさって、完全に音楽全体がトリップしました。“求めているものに近づける”というのは、ある種自分のイメージの限界に向かっていますが、求めているものでも見たかったものでもないものに辿り着くっていうのはかなり刺激的でした。まだまだあるんだなって。

「melt」はプログラミング主体で作られていますが、他の曲はすべて生ドラムが入っています。「melt」を作って、プログラミングでの曲作りの可能性をどう感じたか、もしくは、改めて生ドラムの重要性を認識したのか、感想を教えてください。

このとき僕は“ツアーに向けて新曲を出したい”と提案したんですが、配信シングルだったので、驚くほど予算が無かったんですよね(笑)。ドラムも録れないくらいだったので、面白がって逆に全部打ち込みにして、それで成立させられるのかトライしてみたんです。バンドもそうですが、ある種縛りがある中での可能性を探るのって、とてもクリエイティヴなんです。無限の中から何ができるかを模索するのももちろん楽しいんですが、バンドを始めた頃は公民館で録ってましたから(笑)。でもこれから配信リリースなども増えていく中で、もっと予算を掛けられないアーティストは多いでしょうし、そういった現実的な部分は少しどうなっていくんだろうと考えましたね。宅録が多くなったとはいえ、その状況をしっかりとしたクオリティーで乗り切るのは結構大変ですから。生ドラムの重要性は普段から感じているので、この制作で感じたのは、打ち込みのコントロールのしやすさとともに、全てがコントロールできてしまうために、ちょっとしたジャッジの積み重ねがトータルのクオリティーをとても左右してくる、という部分ですね。“縛り”の話にも通じてきますが、低音が欲しければそういったキックに差し替えられるし、楽器が重なってきて違うと思えば、フレーズも何もかもを変えられる。近道はたくさん用意されてますが、そこでどういった選択をするか、プログラミングに慣れていなかったので、その難しさもありましたね。

「reframe」について、資料によると、アレンジを手掛けたトオミヨウさんとは以前から親交が深かったそうですが、どういったご関係なのでしょうか? 曲作りのやりとりの中で印象的だったこと、完成した曲の感想などを教えてください。

もともとトオミさんがプロデュースなどをする前にソロで出されていた『Six Raves Render』をよく聴いていたんです。ツアーの移動中に聴いていたので、メンバーも聴けば思い出すと思います。トオミさんは今J-POPを中心に活躍されていますが、一見交わらないフィールドでやっていても、根っこにある部分がつながっている気がしたので、ものすごくネイキッドな状態のデモを渡したんです。本当に弾き語り程度の。それに対して自由にアレンジしてもらって、面白かったのは、僕がそれをもう一回壊しつつ、アレンジを戻したってことですかね。基本的にこういった作業って多少リクエストは伝えたとしても、アレンジしたものをアレンジし直すっていうのはあまりないと思うんです。ピアニストが弾いたフレーズを僕がちょっと弾き直したりとか(笑)。でもトオミさんは“自由にやってほしい”と言ってくれて、“どういうアレンジを返してくるんだろう?”みたいに期待してくれてる部分もあったので、とてもストレートにぶつけあえましたね。

「copy light」の歌詞についてなのですが、作詞監修の又吉さんとどんなやりとりがあり、完成した楽曲に対してはどんな感想をお持ちですか?

“どんなかたちでもいいので、一度僕が書いたものを見てください”とお願いしたんです。誰かに書いてもらうという案もあったのですが、自分が一度完結させた物語を独自の視点で読み取れる人に見ていただきたくて。“この言葉はどうですか?”というやりとりではなく、“TKさんはこことここに対でメッセージを置いてるので、ここもこうするときれいかもしれないです”とか“問いかけだけで終わるのも素敵だけど、そこにTKさんの強いメッセージがもっと入っていてもいいんじゃないでしょうか?”とかお話しさせてもらったんです。やりとり全てが僕にとってはこの作品と次にもつながる瞬間ばかりで、自分が書いたものへの自信にもつながりましたし、それに対して伝え切れてなかったものも浮き彫りになりました。MVへの出演やシナリオのアドバイスなどもいただいて、とても大切な曲になりました。

『彩脳』は完成するまでTKさんご自身もどんな作品になるのかはっきりとは見えていなかったのではないかと思います。実際に作品が完成して、TKさんのキャリアの中でどんな意味を持つ作品になったと感じていますか?

他者を介在させることによって、自分自身の濃度を高くして、壊して、再構築するような、そんな作品でした。誰かが入ることによって、それが誰かの作品になるのではなく、それをもう一度自分で飲み込むというような作業でしたね。何度も飲み込まれるかと思いましたが、結果丸飲みできたんじゃないかなと思います(笑)。

取材:金子厚武

アルバム『彩能』2020年4月15日発売 Sony Music Associated Records
    • 【初回限定盤】(2CD)
    • AICL-3886〜7
    • ¥4,545(税抜)
    • ※豪華BOX仕様
    • 【通常盤】
    • AICL-3888
    • ¥3,000(税抜)

『TK from 凛として時雨 彩脳 TOUR 2020』

5/23(土) 大阪・なんばHatch
5/24(日) 香川・高松MONSTER
5/29(金) 愛知・名古屋 DIAMOND HALL
5/31(日) 宮城・仙台Rensa
6/04(木) 東京・中野サンプラザホール

TK from 凛として時雨 プロフィール

ティーケーフロムリントシテシグレ:圧倒的なライヴ・パフォーマンスと確かな演奏力で絶大なる支持を誇る3ピース・ロック・バンドの凛として時雨で、全作曲作詞、エンジニアを担当するブレーンであり、ヴォーカル&ギターのTK(Toru Kitajima)のソロ名義。2011年にソロ・デビューを宣言し、同年4月に処女作となるPHOTO BOOK+DVD『film A moment』を発表。以降、シングル、アルバムを精力的にリリースしながらライヴ活動も行っている。20年に4thアルバムを発表し、ビルボードにてアコースティックライヴを実施した。21年4月にEP『yesworld』とBlu-ray+CD『Acoustique Electrick Sessions 2020』を同時リリースしツアー『TK from 凛として時雨 TOUR 2021 “yesworld”』を開催。凛として時雨の活動をこなしながら、ソロでのバンド・スタイルを模索し続けている。TK from 凛として時雨 オフィシャルHP

「copy light」MV

OKMusic編集部

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