ハイレベルのポップサウンドを
提示したゾンビーズの
『オデッセイ・アンド・オラクル』

本作『オデッセイ・アンド・オラクル』
について

アージェントにとって、この作品がゾンビーズとしての最後のアルバムになるのではないかと感じていたと思う。なぜなら、ソングライターとしてのギャラが入るアージェントとホワイト以外のメンバーたちは生活ができないほど困窮しており、本作のレコーディング中に脱退を表明しているぐらいである。しかし、アージェントは諦めなかった。『サージェント・ペパーズ』と『ペット・サウンズ』を頭に叩き込んだ上で、セルフプロデュースで自分たちに今できる最上のことを最後にやろうとしたのだ。苦しみながらも録音は終了し、同時にこの時点でゾンビーズの解散も決定している。

やはり、本作からのシングルはどれも売れず、アルバムのリリースすら見送られることになった。助け舟を出したのが当時CBSのプロデューサーで、天才アーティストのアル・クーパーだ。当時の彼の発言は業界内外で大きな力を持っており、結局一度イギリスで失敗した「二人のシーズン(原題:Time Of The Season)」を69年になってアメリカで再リリースすると、あっと言う間にチャートを駆け上がり、3位まで上昇する。アル・クーパーがいなければ、おそらくお蔵入りしたであろうアルバムだが、本作は間違いなく傑作であり、ビートルズやブライアン・ウィルソンにも大きな影響を与えた作品なのである。ただ残念なのは、アルバムがリリースされた時にすでにゾンビーズは存在しなかった(ゾンビ化していたと言うべきか…)ことである。

収録曲は全部で12曲。駄曲はひとつもない。それどころか、何年聴き続けても飽きない魅力がある。豊潤で格調さえ感じられるメロディー、美しく編まれたコーラス、各々は主張こそしないがツボを押さえた演奏など、どれをとっても一級の仕上がりである。ひとつだけ難点があるとすれば、ジャケットに手書きで描かれたアルバムタイトルのオデッセイの綴りが間違っていることぐらいか。正しくは“Odyssey”なのだが、描かれているのは“Odessey”となっている。だからタイトルも『Odessey And Oracle』なのだ。

本作リリース後のメンバーとその活動

中心メンバーのロッド・アージェントは自身の名前を冠したグループ、アージェントを結成し8枚のアルバムをリリースする。コリン・ブランストーンは保険会社に勤務した後、ソロアーティストとなり、通のリスナーに好まれるSSWとして活動する。ソロデビュー作の『1年間』(‘71)は名盤として今も語り継がれており、日本盤も何度かリリースされている。クリス・ホワイトはプロデューサーやソングライターとしてアージェントやブランストーンを支えている。ポール・アトキンソン(2004年に58歳で逝去)は音楽出版社でA&Rマンとして、ヒュー・グランディはコロンビアレコードのA&Rマンとしてそれぞれ勤務していた。

2008年には『オデッセイ・アンド・オラクル』40周年記念コンサートを行ないCD&DVDをリリース。昨年は念願のロックの殿堂入りを果たし、ブライアン・ウィルソンとゾンビーズのツアーで本作の曲を演奏するなど精力的に活動している。今年もツアーは予定されていたが、新型コロナウイルスの影響で現在は休止中である。

TEXT:河崎直人

アルバム『Odessey and Oracle』1968年発表作品
    • <収録曲>
    • 1. 独房44/Care of Cell 44
    • 2. エミリーにバラを/A Rose for Emily
    • 3. 彼去りし後には/Maybe After He's Gone
    • 4. ビーチウッド・パーク/Beechwood Park
    • 5. ローソクの様に/Brief Candles
    • 6. 夢やぶれて/Hung Up on a Dream
    • 7. 変革/Changes
    • 8. 私と彼女は/I Want Her, She Wants Me
    • 9. 今日からスタート/This Will Be Our Year
    • 10. ブッチャーズ・テイル/Butcher's Tale (Western Front 1914)
    • 11. フレンズ・オブ・マイン/Friends of Mine
    • 12. ふたりのシーズン/Time of the Season
『Odessey and Oracle』('68)/The Zombies

OKMusic編集部

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