サイケデリックロックから
転向を果たした
グレイトフル・デッドの
『アメリカン・ビューティー』

本作『アメリカン・ビューティー』
について

そして、前作から約半年弱でリリースされたのが本作『アメリカン・ビューティー』である。アメリカン・ビューティーとはバラの名前でもあって、ジャケットにはバラが描かれ、その上下に当時の流行りであったサイケデリック風のフォントでタイトルが描かれている。イラストレーターによれば、「文字はアメリカン・ビューティーともアメリカン・リアリティーとも読めるように描いた」とのことである。

ゲストには、その昔ガルシアとブルーグラスをやっていて、ニュー・ライダース・オブ・ザ・パープル・セイジ(以下、NRPS)のメンバーであるデビッド・ネルソンと、同じくNRPSのデイブ・トーバート、そしてイーブン・ダズン・ジャグバンドやアース・オペラのメンバーで、優れたマンドリン奏者デビッド・グリスマンらが参加している。

収録曲は全部で10曲。録音はほぼスタジオライヴの形式で行なわれた。冒頭の「ボックス・オブ・レイン」はフィル・レッシュのリードヴォーカル、ギターソロはガルシアでなくNRPSのデビッド・ネルソンが弾いており、バーズのクラレンス・ホワイトに似た味わいのあるソロが利いている。デッドの代表曲とも言える「シュガー・マグノリア」「トラッキン」はウィアのヴォーカルで、この2曲はのちに彼が結成するキングフィッシュの音作りの基礎ともなっている。「さざ波(原題:Ripple)」と「ブロークダウン・パラス」の2曲はデッド渾身の名曲だ。「さざ波」は世界のアーティストたちがネットで同時演奏する『ソング・アラウンド・ザ・ワールド』シリーズでも取り上げられており、「ブロークダウン・パラス」は数年前にワトキンス・ファミリー・アワーが1stアルバムで素晴らしいカバーを披露していた。「フレンド・オブ・ザ・デビル」と「人生の裏側(原題:Attics Of My Life)」はガルシアのルーツであるブルーグラスの要素を持った曲。ジャグバンド風ブルースナンバー「オペレーター」はピッグペンの朴訥なヴォーカルとマウスハープが聴きもの。「キャンディマン」「ブロークダウン・パラス」「人生の裏側」など、少し暗めの曲については、これは本作録音中にガルシアの母親が亡くなったこともあって、追悼の意味が込められているようだ。なお、本作は全米チャートで30位まで上昇し、デッドのスタジオ作品としては好セールスとなった。ローリングストーン誌の史上最高のアルバム2012年版では261位である。

本作はきっちり制作されたロック作品と比べると、ゆるいサウンドだと思うかもしれない。僕も初めはそう思っていたのだが、何度も聴いていくうちに不思議と病みつきになるのである。これがグレイトフル・デッドの特徴であり、デッド入門としては名曲の多い本作が最適ではないかと思う。本作が気に入れば『ヨーロッパ72』(‘72)や『凍てついた肖像(原題:Steal Your Face)』(’76)もぜひ聴いてみてください。

TEXT:河崎直人

アルバム『American Beauty』1970年発表作品
    • <収録曲>
    • 1. ボックス・オブ・レイン/Box Of Rain
    • 2. フレンド・オブ・ザ・デヴィル/Friend Of The Devil
    • 3. シュガー・マグノリア/Sugar Magnolia
    • 4. オペレイター/Operator
    • 5. キャンディマン/Candyman
    • 6. さざ波/Ripple
    • 7. ブロークダウン・パレス/Brokedown Palace
    • 8. 朝になるまで/Till The Morning Comes
    • 9. 人生の裏側/Atticts Of My Life
    • 10. トラッキン/Truckin’
『American Beauty』(’70)/Grateful Dead

OKMusic編集部

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