空と大地と人がつながる、新設ホール
から贈る特別な一夜 『辻井伸行《自
作&クラシック》オンライン・コンサ
ート』レポート

2020年7月26日(日)、ピアニスト・辻井伸行による『TACHIHI presents 辻井伸行《自作&クラシック》オンライン・コンサート』と題した配信公演が、イープラス・Streaming+にて行われた。
本コンサートは、東京・多摩地区に今春誕生した、空と大地と人がつながる次世代型エンタテインメントステージ「TACHIKAWA STAGE GARDEN」のオープンを記念して、同月25日(土)に開催されたコンサートの様子をオンライン配信したもの。辻井は、ホール開館にあたり立飛ホールディングスから委嘱された新作「Green Springs」を初披露したほか、ヴァイオリンの三浦文彰らとともに、ショパンの「ピアノ協奏曲第2番[室内楽版]」を演奏。約1時間20分、美しい旋律を響かせ、聴衆を魅了した。
『TACHIHI presents 辻井伸行《自作&クラシック》オンライン・コンサート』
オンライン・コンサートの1曲目は、4月に開館したばかりのホールの誕生を祝い、辻井が書き下ろした新作「Green Springs」。演奏後に辻井から語られた解説によれば、ホールができる前の現場を見に行ったり、立飛ホールディングス社長と対談したりといった過程を経て、この曲は作られたのだという。「自然がたくさんあって、とても素敵なホールをイメージしながら作りました」との言葉のとおり、木々の芽吹きや、優しく差し込む光りを感じさせる澄んだ音色に、始まりの喜びが感じられる一曲だった。
演奏を終え、たくさんの拍手を送られた辻井は、「みなさま、こんばんは。本日はコンサートにお越しいただき、ありがとうございます。今回は新しくできた、TACHIKAWA STAGE GARDENからお届けします。前半は自作曲、後半は三浦文彰さんをはじめ、豪華メンバー5人と共にショパンのピアノ協奏曲第2番をお届けします。最後まで、ごゆっくりお楽しみください」と立ち上がってあいさつした。
『TACHIHI presents 辻井伸行《自作&クラシック》オンライン・コンサート』
続く2曲は、未だ続く新型コロナウイルスの現状に対し、収束の祈りと医療従事者への感謝を込めた曲目。まずは、「1日も早く新型コロナウイルスの混乱が収束するように」と願い作曲した「笑顔で会える日のために」。平穏な日々が戻ることを祈る、慈愛に満ちた曲に、ひとときの安らぎを感じた。続いて、辻井が初めて手掛けた映画音楽「神様のカルテ」。映画『神様のカルテ』は、医者を主人公とする物語で、作曲にあたり辻井は、原作や台本を点字化し、制作に半年を費やしたという。祈りを感じるこの曲は、人のつながりの大切さを込めたといい、演奏する前には、「いま大変な思いをされている医療従事者の人には本当に感謝しています」と呼びかけていた。
4曲目には2018年に公開された映画『羊と鋼の森』のエンディングテーマとして久石譲が作曲し、辻井が演奏を手がけた「The Dream of the Lambs」を演奏。辻井は主演の山﨑賢人が調律師を演じたことに触れ、「僕のとって調律師は切っても切れない大切なもの。音楽に関わる映画に携わることができて嬉しかった」と振り返っていた。
『TACHIHI presents 辻井伸行《自作&クラシック》オンライン・コンサート』
続いて演奏されたのは、菅野よう子が作曲し、昨年天皇陛下ご即位を祝う国民の祭典で演奏した奉祝曲「Ray of Water piano solo main theme」。昨年11月に皇居前広場で開催された国民の祭典で演奏した曲は、天皇陛下が長年研究している「水」をテーマに生み出されたもの。豊かな音色は、大地を満たす命の水を思わせた。
続くMCでは「前半最後にイタリアとスペインを訪れたときに作った曲を2曲演奏します」と呼びかけ。「次に演奏する「風の家」は、テレビの収録でスペインのマヨルカ島を訪れたときに、作曲家のショパンと恋人のジョルジュ・サンドが暮らしていた「風の家」というところに行きました。そこは小高い丘の上にあって、とても気持ちいい風が吹いていて、ショパンが幸せだった頃のことを想像しながらこの曲を作りました。もう1曲は、「コルトナの朝」。この曲は音楽祭でイタリアのトスカーナのコルトナという小さな町に行ったときに作った曲です。朝、窓を開けると気持ちいい風が吹いていて、小鳥の鳴き声が聴こえてきて、あたり一面オリーブ畑がたくさんあって、とても気持ちがいいところでした」と曲が生まれた背景を説明。
辻井の言葉通り、「風の家」の音符には、サンドとの暮らしに穏やかさを見つけようとしたショパンの思いが刻まれているよう。ループする音には、病の中で日常が繰り返されていくことの尊さを感じさせた。繊細なピアノの音が印象的な「コルトナの朝」は、辻井が耳にしたという小鳥の鳴き声も五線譜に刻まれている。中盤では、豊かに茂ったオリーブの葉が、風に揺れている情景、音楽祭に高揚する町の様子も浮かび上がってくる。
『TACHIHI presents 辻井伸行《自作&クラシック》オンライン・コンサート』
『TACHIHI presents 辻井伸行《自作&クラシック》オンライン・コンサート』
興奮が収まらないままの後半。ヴァイオリンの三浦文彰、同・川久保賜紀、ヴィオラの鈴木康浩、チェロの遠藤真理、コントラバスの加藤雄太とともに舞台に戻った辻井は、ショパンの「ピアノ協奏曲第2番[室内楽版]」を披露。ショパンが初恋の女性、コンスタンツィア・グワドコフスカを思い制作した一曲だ。躍動するピアノは変化する心を、わき起こる衝動は情熱的なヴィオラ、きしむコントラバスの音は苦しい思いを、繊細なヴァイオリンはショパンが1年半の間、大切にしていた恋心を表していた。
『TACHIHI presents 辻井伸行《自作&クラシック》オンライン・コンサート』
「TACHIKAWA STAGE GARDEN」客席数は、多摩地区最大級の約2,500席(スタンディング時は3,000人まで収容可能)。しかし、今回のコンサートでは、感染症対策のため、席数を約500席に減らし行われた。
500人の大きな拍手で迎えられステージに再登場した辻井は、中央で両手を合わせて観客に感謝。「今日はお越しいただき、ありがとうございました。今回、今年できたこのホールで演奏することができて、大変嬉しく思っています」と笑顔を見せた。拍手を送り続ける客席に向かい、「冒頭で演奏した、「Green Springs[室内楽版]」を、みんなで演奏して締めたいと思います」と語ると、再び6人で演奏。ヴァイオリン、ヴィオラなどの音が重なった曲は、自然の中に生きる動物や植物など、たくさんの生命の存在を感じさせる温かなものだった。
本コンサートチケットは、7月29日(水)23:00まで発売中。配信映像は、8月2日(日)20:00まで視聴可能だ。
取材・文=Ayano Nishimura

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