新たなオンライン動画教材サービス
「creatone」がスタート! 仕掛人・
宮越悠貴&上野耕平が描く音楽学習の
未来像とは

サクソフォン、トランペットなどの学習者や指導者らが、オンラインを通じてプロから演奏技術を学ぶことができる「Creatone(クリエイトーン)」が2020年8月よりサービスをスタートさせた。月額3,278円で、全ての楽器・アーティストの動画が見放題のオンラインレッスンを考案したのは東京藝術大学同窓生で構成したThe Rev Saxophone Quartet(ザ・レヴ・サクソフォン・クヮルテット)のメンバーとしても活躍するサクソフォン奏者の宮越悠貴。定額でさまざまなアーティストのノウハウを学ぶことができるサービスは「僕自身も学ぶことが多い」と語り、「ここに答えを求めるのではなく、自分だけの答えを探すツールとして活用してもらえたら」と呼びかけている。宮越と同じくレヴの一員として活躍し、また同サービスに講師として出演するサクソフォン奏者の上野耕平とともに話しを聞いた。
――「Creatone」発案のきっかけは?
宮越:演奏技術を向上させるための正しい情報が、ひとつのプラットフォームの中にまとめられていたら便利だなと思ったことがきっかけでした。僕はサクソフォン、フルート、クラリネットを吹くのですが、例えばそれぞれの楽器の構え方を見直したいと考えたとき、最初に情報を探す場所は書籍やYouTubeだったりする。そこではいくつもの情報を見つけることができますが、それが正しいか間違っているかなど、自分で判断しなくてはいけない。なので、情報が集約されている場所を作ろうと思いました。
――オンライン上でサービスを展開することにしたのはなぜですか?
宮越:知りたいことがある度に、先生のことを調べたり、レッスンを予約をすることは大変です。遠方であれば約束をすることも難しいですよね。でも、サイトの中にまとまっていれば、時間も場所も関係なく、いつでも欲しい情報を取り出して、しかも繰り返し見ることができます。以前から「あったらいいな」と思っていましたが、「ないならば、作ってしまえ」と思い今年5月から動き始めました。
――現在(2020年9月)は、何人くらいの奏者が参加しているのですが。
宮越:サクソフォンが上野さんと齊藤健太さん。フルートは、林広真さん。クラリネットは、篠塚友里江さん。ファゴットが、皆神陽太さんの5名です。奏者も増やしていきますし、楽器もトランペット、オーボエ、ユーフォニアムなど全10種にまで拡大していく予定です。
――どのようにして学ぶことができるのでしょうか?
宮越:サクソフォンであれば、「基礎・音色作り」、「タンギング&アーティキレーション」、「ヴィブラート」、「特殊奏法」、リードの管理法などを教える「その他」の5項目があり、それぞれ解説しています。同じことを説明していても上野さんと齊藤さんではアプローチの仕方が異なるので、その考え方を比較することができることが特色です。マンツーマンのレッスンは、手取り足取り最適な答えを提供してくれますが、Creatoneは奏者ごとに違う情報を得ることができるんです。
上野:マンツーマンのレッスンは、「ここがうまくいっていないから、この練習をして」と最短で目的地に到着できるように講師が答えをくれますが、Creatoneには、ひとつの問題に対して、A先生の場合、B先生の場合といくつもの解答がある。だから、いろんなプレーヤーの情報を得た上で、自分に合うものを取捨選択できることが大きな魅力だと思います。いろいろ探っていく中で、自分流を見つけてほしいです。でも、講師が言うこと全てをできるようになる必要はありません。できないと分かること。そして、なぜできないのかを考え、できるようになるためにどうすればいいのか考えることが一番の収穫だと思います。
宮越:僕は10代のときに、数人の先生に教わっていて、それぞれ教え方が違うことに悩んでいたことがありました。まだ子どもでしたから、「大人が言うことは世界の全て」というような感覚もあって、「言われたから、やる」と苦しんだ時期がありました。だから、問題に対してアプローチの仕方や、答えがひとつではないということは、いまの僕にとっても学べることが多いなと思っています。
上野:情報がたくさんあるいまは、特にそうですよね。合う、合わないを取捨選択できるということが、今後のレッスンのスタンダードになっていけばいいなと思います。
【Introduction】Saxophone 上野耕平
――上野さんは現在(2020年9月)までのところで、25項目を配信していますね。「姿勢」、「息のエクササイズ」、「チューニング・音程について」などの基本的なところから、「音楽補正の替指」、「音楽的な替指」、「ヴィブラート」、「タンギング」など応用編まで、さまざまあります。どんなことを考えて、お話しをなさっているのでしょうか。
上野:「こうすれば間違いない」というようなものはなく、全て上野流です。今の僕にとって大切なことですが、見て下さった人にはそうではないこともある。もっと言うと5年後の僕が、今の僕を見たら「ちょっと違うな」と思ってしまうこともあると思う。なので、聞いたことをうのみにするようなことはせず、「何、言ってんだよー。そんなことできないよー」と笑いながらリラックスして眺めてもらえたらと思っています。
僕が大切にしているのは、「技術は音楽のためにある」ということです。日本は、例えば吹奏楽などは、コンクールで結果を残すことなどを目標にされている場合、「うまくなること」が大切とされていて、「その音楽の意味」を教えていないことが多いなと感じるんです。コンクールが単なる「技術比べ」になっているといいますか。音を整えて、突き詰めて、高い水準の演奏力を身につけていても、音楽の意味を理解しないでいることは、もったいないことです。
――日本は吹奏楽部人口が120万人とも言われていますが、高校卒業と同時に辞めてしまう人も少なくありません。
上野:コンクール至上主義の部分は残念に感じています。学生時代に「燃え尽きる」という表現もされますけれど、音楽は燃え尽きるものではないですし、音楽の意味を理解し、その楽しさを知れば、もっと突き詰めて行きたくなるはず。Creatoneがその意識改革につながればいいなと思います。
宮越:そうですね。サイトの中では、楽器の手入れの仕方なども話しているので、楽器の演奏の前に、楽器との向き合い方も考えて欲しいです。ボロボロのバットで練習しても、ヒットは打てないですからね。
――上野さんが「音楽の意味」について考えるきっかけは、どんなことでしたか。
上野:僕は小学校2年生(8歳)のときに、吹奏楽部に入ったことがきっかけで音楽を始めました。それまではピアノも演奏したことがありませんでしたし、楽譜だって読めませんでした。でも、小学校2年生の始業式で吹奏楽部の演奏を見て「かっこいい。やってみたい」と入部を決めたんです。最初は1番目立つトランペットをやりたいと思っていましたが、顧問の先生に『あなたはアルトサックスね』と言われて、サックスを担当することになりました。(演奏をするときに使う)リードが、タケノコの炊き込みご飯みたいな味がしたので、「まぁ、いいか」と。音楽の意味について考えるようになったのは、音楽の面白さを知ってしまったからですね。
――音楽の面白さ?
上野:作品の魅力ですね。5、6年生のときにクラシックを聴いてはまってしまったんです。当時は特に、旋律と空気感が美しい(アレクサンドル)ボロディンに魅了されました。ボロディンが生まれたロシアには行ったことも、その景色を見たこともありませんでしたが、そこがどんな場所なのか音楽を聴きながら想像することが楽しかった。時空を超えていく面白さがあったんです。
――浮かんだイメージを音にしていくことが、上野さんにしか紡ぐことができない音につながるんですね。
上野:単旋律で無伴奏の曲であったとしても、その裏側に何があるのか、透かして行くんです。そして感じた音が、どこに向いているのかを探っていく。前向きか、後ろ向きか。そういうイメージを持たないと音にならない。音楽をより魅力的に伝えることが、僕たちの仕事。ただ音を並べるのではなくて、その音をどう表現していくのか。その気持ちは5、6年生のときから持っていました。
宮越:僕は、中学1年生のときに出場したコンクールで、上野さんの演奏を聴いたことがあるんです。上野さんは前年の入賞者でゲスト出演なさっていたのですが、「表現ってこういうものなのだな」と感じたことを覚えています。
上野:浜松アクトシティー・中ホール。あのとき大好きだった、(クロード・)ドビュッシーの『ラプソディ』を演奏したんですよね。覚えています。実家にDVDもあります。
宮越:「音楽って表現なんだ!」と圧倒されました。こんな中2、どこにもいない。あまりにもすごすぎで、頭がおかしいんじゃないかなと思ったぐらい(笑)。
上野:「頭がおかしい」! いただきました(笑)。僕にとっては一番の褒め言葉。すごいうれしいです。
――音を並べるのではなくて、唯一無二の表現を身につける。Creatoneに触れた人には、上野さんや講師陣の熱い思いが伝わると良いですね。
宮越:そうですね。自分の楽器はもちろん。登録をすれば、自分のパート以外も自由に再生できるので、ほかの楽器の人がどんなことを大切に思って演奏しているのかを知ることもできます。僕にとっては、それも大きな学びでした。「いままで知らなくて、ごめんね」と思うぐらい。
上野:いろんなスキルを知りたい、学びたい!と思っている人には、Creatoneは楽しすぎて眠れないと思います。それから、奏者に対して見られる部分って、一般的にはステージに上がって演奏をしている〝完成形〟ですけれど、Creatoneでは、そこに至るまでの頭の中をのぞくことができます。経験者の人たちにとっては、そこが楽しいところかなと思います。
――お二人とも幼少期から、楽器を続けていらっしゃいます。続けられた秘訣などはありますか?
上野:人間の喜怒哀楽、光りと陰。自分が伝えたいと思うことを聴き手と共有できたときに、とんでもない喜びがあるんです。自分の旋律を吹くために、音程の揺らぎを、音楽に結びつけていくためのポルタメントなどを大切にしていて。そういうこまごまとした努力はいまでも苦手ですが、共感できた喜びを知ってしまうと離れられなくなってしまうんですよね。
宮越:僕は小学1年生のときに父の勧めでサクソフォンを始めました。上野さんのように吹奏楽部ではなくて、東久留米市民吹奏楽団に所属し活動をしていました。大人たちに混じって演奏をするのは大変でしたが、ほめてもらうとうれしくて、それがもっとうまくなりたいというモチベーションにつながっていったと思います。
――最後に、Creatoneの魅力について教えて下さい。
宮越:自分が憧れているアーティストから、楽器についての解説や、こだわっているところを聞くことができる機会はなかなかないですよね。動画の撮影や編集をしていく中で、プロの奏者は、経験や積み上げてきたものが違うなと感じました。対面のレッスンの横に置いておいて、「あ、そういえばあの人、こんなこと言っていたな」と、自分の引き出しの一つとして活用してもらえたらいいなと思っています。まだやりたいと思っていたことの1割ぐらいしか実現できていないので、成長を楽しみにして欲しいです。5、10年後には、いま配信をしている講師陣に再登場してもらいたいとも思っています。
上野:全然違うことを言っているかもしれないよね。でも理想はどんどん変わっていくから、変わらなきゃダメだと思うし。そうやって、アップデートされていくのだと思います。人間の素直な欲求として、「基礎練習をやりたい!」とはならないけれど、そうやって積み重ねていまがある。僕だって、練習なんてしなくていいなら、(趣味の)乗り鉄をしていたいけど(笑)、そうはいかない。自分のパート以外の講師の考えにも触れて、視野を広げ演奏表現の幅を広げてもらえたらいいなと思います。
取材・文=Ayano Nishimura 撮影=池上夢貢

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