朝夏まなと×加藤和樹が対談で語る互
いのこと、作品の魅力とは ミュージ
カル『ローマの休日』

オードリー・ヘプバーンとグレゴリー・ペックの二人が、永遠の都ローマをバックに繰り広げる、たった一日の恋物語。世界中で愛される映画『ローマの休日』、その世界初のミュージカル版が、初演から20年の時を経て再び上演される。ヒロイン・アン王女を演じる朝夏まなとと、新聞記者ジョーを演じる加藤和樹が、作品の魅力について語った。
ーーお二人は8月の『The Musical Concert at Imperial Theatre』で初共演を果たされました。
加藤:初めてデュエットさせていただいて、とっても楽しかったです。やっと一緒にできる! という感覚がありました。『ローマの休日』に先がけての共演だったので、お互いの感じや雰囲気もそのときつかめた気がして。正直なところ、もっと一緒にやりたかったなと思うくらいで。同い年なんですよ、僕ら。同年代の人がいるというだけでも嬉しいんですけど、第一線で活躍されている方なので、自分にとっての励みにもなりますし。同じ感覚を共有できる同士、仲間という意識もあって、それだけでもテンションが上がりますし、今も稽古していて毎日楽しいです。
朝夏:初めて一緒に歌いましたが、加藤さんは舞台ではよく、革命していたり、怪物だったりというイメージがあったので……。
加藤:整った服は着てなかったりね(笑)。
朝夏:(笑)。コンサートでは『ガイズ&ドールズ』の「はじめての恋」を一緒に歌ったんですが、スーツ姿というのが新鮮で。
朝夏まなと
加藤:自分でも、何か少し変な感じがしました(笑)。
朝夏:新鮮だったのと同時に、ハモるのがすごく楽しかったんです。だから、俄然『ローマの休日』が楽しみになりました。
ーーそれまでのお互いの印象はいかがでしたか。
加藤:朝夏さんは舞台にいるだけで輝きを放つ方、という印象で。コンサートのときも、他のナンバーを歌っている姿を観ていても、本当にいろいろな表情をもっていて、この人は何にでもなれるんだなという印象をすごく受けました。だから、今回のアン王女もすごく楽しみで。
朝夏:知り合ってから、共演が実現するまで時間があったんです。最初は、すごく年上の方かなと思っていたんです。同年代でも、男の人の方が若く見えたりすることもありますし。だけど、加藤さんはすごく落ち着いていらっしゃるから、同い年だと思っていなくて……。今回ご一緒してみて、お茶目な部分もあるし、周りがすごくよく見えている方だなという印象を受けました。引いたところで、作品を全体から見ていて、ここはこういう風にした方がいいのかなとか仰っていて。私もそういう風に見るのが好きなので、同じ感覚をもっていらっしゃるんだなという発見がありました。それと、動じることがないから、そこにすごく救われます。
加藤:……動じない?
朝夏:どしっと舞台にいるという。客席から観ていてもそれは感じるんですけど、一緒に舞台に立って、ますますそれを感じたので、頼もしい安心感があるなと感じます。
加藤:その言葉、そっくりそのままお返しします。こんなに頼もしい相手役はいませんから、すごく心強いですよ。今回も、お芝居のことに関しても、お互い意見をこうかなと言いながら作っていますし。振付稽古でも本当に頼りにしていて。「ここ、こうしたらいいよ」とか言ってくださるので、助かります! という感じで……。振り覚えもとにかく早いですし、セリフの中の芝居の修正だったりとかも、感性がすごく鋭いというか。そこが見ていてすごいなと思います。なるべく自分もそうありたいという気持ちがあって、ダブルキャストの方が芝居をやっているときにいろいろ俯瞰して見て、自分だったらこうだな、ああだなということは考えるんです。同じ感覚と今言われて、そうだなと。
加藤和樹
ーー「動じない」と言われて反応していらっしゃいました。
加藤:本番中はそうあるように心掛けているんですが、稽古中はあわてふためいてしまう場面もありまして……稽古場では本当にご迷惑おかけしております。
朝夏:全然そんなことないですよ! 毎日の稽古が本当に楽しいです。けっこう進むのが早いんですよ。
加藤:早いよね。
朝夏:その中で大事なことをキャッチして一緒に作り上げているという、そのことがもう楽しくて、私たちがこの状況で何カ月かできなかったことをやれているんだというのが本当に幸せです。
加藤:すごく充実感があるよね。
(左から)朝夏まなと、加藤和樹
朝夏:すっっごくある! そして、一日が終わるのが本当に早い。それくらい集中して、いい環境で稽古できている気がします。お芝居に関して言えば、今回のやり方として、最初に演出の山田和也さんが、ここはこういうセットだからと説明してくださって、お芝居は自由にやらせてくださるんです。こんな感じかなと思ってやっていることが、けっこう加藤さんと噛み合ったりする、よね?
加藤:びっくりするぐらいかみ合うんですよね!
朝夏:こういう動きで来るならこう行こうとかっていうのが、一回目から同じで……。呼吸が合うというか。それがすごく面白いです。
ーー『ローマの休日』という作品についてはいかがですか。
加藤:王道のラブロマンス、そして、笑えるところもありながらも、ときめきだったり、女性がキュンと来る瞬間が多いです。映画版のグレゴリー・ペックがとにかくかっこよくて。でも男性目線からすると、やりすぎじゃないの!? というところもあるんですよ。いちいちキザっぽいポーズだったりするので。
朝夏:そこ、全然大丈夫じゃないですか。
加藤:いや、まず恥ずかしいんですよ! 日本男児がやると(笑)。グレゴリー・ペックとか、海外の男性だったら様になるなということを感じながら、我々はいつもミュージカルをやっているわけですから。でも、そのキャラクター性が物語をつくっていて、どうしたら自分も自然にできるのかと考えると、もっと作品に入り込まないといけないと思うんです。こうありたいというイメージを固めるというか。あの作品においての理想像はこうなんだなと思わせてくれる、お手本になるような男性像をグレゴリー・ペックは見せてくれていますよね。そこはなるべく忠実にやりたいなと僕は思っていて。自粛期間中に映画を見返して、いろいろな要素がつまっていて、ときめきだけではなく、ジョーも、アン王女も、ひとりの人間としての成長も共感できる作品なんだなと改めて思いましたね。
朝夏:似合いますよ、日本のグレゴリー・ペック!
加藤:舞台上でスーツって、数えるくらいしか着てないので。どちらかというと、はだけてたりとか、裸とかの方が(笑)。
朝夏:すごくジェントルマンですよ。私もお稽古に入ってから感じているのは、あの映画の世界が一つずつ現実になっているという感覚です。一場面一場面の「あ、ここ観た、映画で観た観た」みたいなところに、一個一個現実の自分が入っていって、こういう景色なんだ……と思ったり。その気持ちが、アンのそのときの気持ちなんだろうなと毎日思ってます。私自身、毎日ワクワクするし、世界が見えてくると、自然にその中に入っていける感じです。
朝夏まなと
加藤:一幕の感じでは、アン王女に、ちょっとイラッとする部分もありつつ(笑)。
朝夏:(笑)。それで正解~。
加藤:そう。それなのに、どこか憎めないというか、見ていてこっちもワクワクする感じで。客観的に見たとき、何かかわいらしいなとすごく思いますね。ワクワクするって言っていたけれども、それが、観ている側にもすごく伝わるアンだなと。
朝夏:加藤さんのジョーは、座るときとかもすごくスマートで。最初のうちはアンがジョーを振り回すんですけれど……。
加藤:振り回されてます。
朝夏:その振り回されっぷりがすごくチャーミングで。いやいやなんだけれども、こっちだぞとか言ってくれるときは、優しさを感じて、紳士だなって。自分が組んでいないときに見ていると、本当にグレゴリー・ペックみたいだなって。素敵です。
加藤:(照れ笑い)。
ーーミュージカル版の魅力についてはいかがですか。
加藤:歌とダンス・ナンバーが本当にいいんですよね。とにかくいい楽曲ばっかりなんです。改めて、自分たちが歌ってこの世界に入ることで、より魅力的に感じられるというか。難解なメロディではない分、それをいかに聴かせるものにできるかという意味では、歌うのがすごく難しいんですけど。メロディが流れた瞬間、お客様がその世界に入り込める楽曲の力があるので、そこが魅力だなと。歌詞もいいんですよね。
加藤和樹
朝夏:ローマの街にアンが初めて出て行ったときのミュージカル・ナンバーだけで、ローマってこういう街だなと思えるような、にぎやかで、情熱的で、パッションがあって、堅苦しさは一切なくて、というのが一気にわかる感じで。舞踏会のワルツのシーンではがらっと変わって、上流階級の人たちの集まりという雰囲気だし。映画との一番の違いはやっぱり、カラーで情景が見えるというのが魅力かなと思いますね。
加藤:人との出会いというものがものすごく重要なんだなということを改めて感じさせる作品でもあります。ジョーはジョーなりに、アメリカに帰って自分の目標を達成したいという野望があるわけで。でも、その信念を変えるような出会いになってしまう。ラスト・シーンの後、ジョーがどう生きていったかということについては描かれていませんが、アン王女との出会いは、たった一日にして、彼の人生に大きな影響を与えたものだったんだろうなと。そんな出会い、あります? と自分でも思うんですが、でも、ジョーには確かにあったんです。王女からすれば、夢のような一日だったのかもしれないし、そういうセリフもありますけど、とにかく、濃密な時間、これが本当に果たして一日だけなのかということも、演じていると忘れちゃいがちになるんですが……。舞台上でもそんな濃密な時間を作れたらいいなと思います。
朝夏:アンは、自由を求めていて、それまで頭の中だけで思い描いていたいろいろなことが現実になった、それをかなえてくれる人と出会った。その人が自分にこんなにも尽くしてくれる、他人である自分にこんなにも優しくいろいろなことを教えてくれる、人のために……ということをジョーから学んで、自分の置かれている立場、自分の生き方を考える。彼と過ごした一日によって、大人になるということなのかなと思っています。前半の子供っぽいところと、最後に見せる大人の顔と、そのバランスをどうもって行けるかなということを考えながら演じています。
加藤:演出の山田さんも仰っていたんですけど、ラストで舞台上の二人が幸せであればあるほど、音楽の力や空間の力によって、お客様はぐっと切なくなるという感情の差が生まれます。もちろん、観客の感情に寄り添うものをこちらが提示するシーンもあるんですけれど、それと真逆なのにお客様は切なくなるという、おもしろい表現方法だなと思っていて。僕は以前、『レディ・ベス』という作品でも、王女に対して同じような状況になる役柄をやっているんですが、ジョーには仕事がちゃんとあって、ジャーナリストとして、その後も王女の記事を書くこともひょっとしたらあるかもしれない、関わりがなくなるわけではないと思っていて。そう考えると、とても前向きなラストだなと僕はとらえています。
朝夏:私、映画版で、アン王女の映像で終わらずに、会見場を後にするジョーで終わるのがすごく好きなんです。
(左から)朝夏まなと、加藤和樹
加藤:わかります。
ーーコロナ禍による自粛期間中に、舞台に立つことについて改めて考えられたこととは?
加藤:当たり前のことじゃないんだなというのはすごく感じています。舞台にしろライブにしろ、いろんな人の苦労だったり、仕事があったりするおかげで、人の生活は成り立っているんだなということを、この期間中にすごく感じました。なので、今回、上演を決めてくれた制作の方にも感謝ですし、じゃあそれをどうしたらよりよいものにできるのか考えてくれているスタッフの方にも感謝ですし、そして、その舞台を観に来てくださるお客様への感謝というものが一番大きいなと。自分たち一人だけではやれることが少ない。でも、こうやって一致団結して同じ方向を向いて徹底して感染予防対策をしてやりましょう、となったときの人の絆の強さというものを感じています。今はすごく希望をもっていますね。自分はやっぱりお芝居するのがすごく好きなんだなって思いましたし。立って稽古しているだけで、生きてるなって感じるんです。それがなかった時期、歌にしても、家で一人で歌っているだけでは感じられない高揚感だったりとか、人に直接聴いてもらってようやく成り立つものなんだなと感じました。それは、お芝居も然りですけれども。やっぱり、お客様に観ていただいて初めて完成するものだなと思いました。
朝夏:本当にそうですよね。生きてるなって思います。今も、稽古場にいるすべての人が、本当にキラキラしてるんです。スタッフさん含め、「自分たちの仕事はこれだ~!」とみんなが全力でやっていて。やることがうれしい! という思いを端々から感じて、それだけで涙が出てきます。だからもう絶対成功させなきゃいけない、幕を開けなきゃいけないって、改めて強く思います。
(左から)朝夏まなと、加藤和樹

■朝夏まなと
スタイリスト=加藤万紀子 ヘアメイク=根津しずえ
■加藤和樹
スタイリスト=立山功 ヘアメイク=江夏智也(raftel)
ベスト ¥14,000、パンツ ¥14,000/CROWDED CLOSET(tel 048-930-7224)、シャツ ¥13,000/MEN’ S BIGI (tel 03-5428-0378)

取材・文=藤本真由(舞台評論家) 撮影=ジョニー寺坂

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