cali≠gari、20年の時を経て進化した
名盤『ブルーフィルム -Revival-』は
どのようにして生まれたのか?

cali≠gariがニューアルバム『ブルーフィルム -Revival-』を9月30日にリリースした。今作は、2000年にリリースされた、ファンの間で“エロアルバム”と呼ばれている現在入手困難なアルバム『ブルーフィルム』を全曲新にレコーディング、さらに新曲&カバー曲を追加したもの。cali≠gariの原点のような作品を、最新モードで生まれ変わらせた『ブルーフィルム -Revival-』について、そしてcali≠gariという唯一無二のバンドの現在について、桜井青、石井秀仁、村井研次郎の3人に話を聞いた。
――秀仁さんが加入してから20年。今だからこそ感じる、cali≠gariというバンドの面白さは、メンバー自身ではどのように感じていますか?
桜井青(Gt,Vo):(お互いが)干渉しないところですかね。自分が10代の頃から憧れていたバンド像みたいなものがあって、ちょっと上の世代とかは、みんな熱いイメージだったんですよね。「ロックとは!」みたいな(笑)。でも、自分がもう50手前になって、干渉しないことで成立するバンドというのも、あったんだなぁっていうことを感じてますね。一度、このバンドは終わってますけど、そのときも、もっと熱く行かないとダメなんじゃないかみたいなことを外野から言われ、自分もそこに感化されたんですよ。ただ、やっぱり何か違う感があって。多分、うちの3人はそういう感じじゃないと思うんですね。この適当な距離感というのが、すごく大事なんだなって。干渉しなくても、いいものは作れるんだなって。
――気持ちで何とかする、みたいなところは昔からありましたよね。
桜井:精神論じゃないって感じですよね。今は集まってプリプロとかもしないバンドも増えたって聞きますけど、それこそうちは、グループラインというものができた瞬間に、嫌な予感はして(笑)。グループラインに音を入れたら、「あとはみんなよろしくお願いします」みたいな感じでまったく会わない。実際、今回の『ブルーフィルム -Revival-』の制作期間で顔を合わせたのはドラム録りのときだけだったんですよね。まぁ、それはもういつものことですけど、それでも、今回、「あぁ、いいものができた」と思っちゃってるんですよ、会わなくても(笑)。
――ただ、それができるバンドと、できないバンドもあると思うんですよ。
桜井:いい意味で、投げちゃえるんですよ。作曲者の意向として、こうじゃないと嫌です、こうベースを弾いてください、こう歌ってください、こうドラムを叩いてくださいってことが、よくあるじゃないですか。cali≠gariの場合、基本的にないんですよ。あるとすれば、自分が歌詞を後から書き換えて、「ごめんなさい、こっちに変えてください」とか、迷惑なことしか頼まないので(笑)。
石井秀仁(Vo,Gt):自分は10代の頃からライブハウスに出たりしてたんですけど、そのときに今言ったような、その手のやり方っていうのに嫌気が差してやめたことが結構あったんですよ。自分が作りたい音楽って、こういうものじゃないなと思って。研次郎くんもまったくそういう人じゃないから(笑)、自然とこういう流れになってるんじゃないですかね。
村井研次郎(Ba):「バンドたるや、こういうもんだ」みたいな感じじゃないのがいいんですよね、cali≠gariは。いるんですよね、プライベートまで干渉するような人も。何か理想像がある人って、現実は上手くいかないんですよね。だから、cali≠gariぐらいの感じでみんなやればいいのにって思うんですけど、逆に上手くいかないんですかね?
――そうかもしれません。何かしら音楽そのものは形になると思いますが、それが多くの人を惹き付けるものになるかどうかは、また別ですからね。
村井:同じ方向を向いてないのがいいんですかね? 俺たちどっちに向いてるかって、確認しあう人っていますよね。必要なんですかね? 不思議ですね。珍しいと言えば珍しいんでしょうね、cali≠gariみたいなのは。
――そうでしょうね。ただ、そういった臨み方から、個性的なcali≠gariならではの音楽が生まれているんだろうなと思います。今回の『ブルーフィルム -Revival-』は、いつ頃から制作を考えていたんですか?
桜井:切り替えたのがホントに6月ぐらいで、それまでは全部新曲のニューアルバムを出すつもりだったんですけど、全国ツアーというのは、ニューアルバムを引っ提げて行くものじゃないですか。でも、このご時世、全国を廻れるほどの耐久力がないなと。要は、やればやるほど赤字になってしまう。配信でやればいいというものでもない。であれば、ツアー本数を極端に減らすしかない。とはいえ、オリジナルアルバムのツアー本数が少ないというのは、利益的に非常によろしくないんですよ。じゃあ、どうしようかなという話をしていて。ちょうどそのタイミングで、もう20年も経ったし、『ブルーフィルム』をリマスタリングして出そうかななんて考えも、ちょっと頭の中にあったんですね。ただ、インディーズで出したものをビクターから出すって、どうなんだろうって考えてたら、『ブルーフィルム』ぐらいだったら、新録で全部イケるんじゃないかっていうように頭が切り替わって。そこでメンバーにも話して、ビクターさんにも話してみたら、「それもいいですね」「いきましょう」みたいな感じで、わりといい返事がいただけたんですよ。そこから突貫というわけではないんですけど、2ヶ月ぐらいでササッと。
――それは早いですね。
桜井:まぁ、長くやってる曲ですからね。ただ、やっぱり、どんなバンドも、セルフカバーアルバムというのは、オリジナルを超えられないというジンクスがあるじゃないですか。それは多分、自分たちが何を言っても、やはり同じ結果になると思うんですね。だから、オリジナルもいいけど、これもいいでしょって言わせるものにするために、新曲を足したり、過去の音の素材をそのまま使ったり、いろいろ考えたり、どっぷり2ヶ月、締切を守らずみたいな感じで作りましたね(笑)。たとえば、新曲を入れないんだったら、ぶっちゃけ、1週間で作れるだろうなぐらいには思ってましたね。実際、この中の4曲ぐらいは、ドラムと一緒にギターも録っちゃってるんですよ。研次郎くんの曲とか石井さんの曲は、スタジオではなく、ここ(事務所)で録ってますし。新曲のアコギを録るときには、またスタジオに行ったり、そういうふうにバラバラでやった感じですね。
――研次郎さんと秀仁さんは、リレコーディングのアイディアを聞いて、どう思いました?
村井:リレコーディング、cali≠gariは多いんですけど、時期的にアリかなと思いますよね。ライブができないですからね、なかなか普通に。でも、ちょっと意味合いが重いですよね。ただ録り直すって感じじゃない。実は3回目なんですよね、『ブルーフィルム』を出すのは。最初にリリースした後にセカンドプレスが出てるんですけど、そのときにベースを弾き直し……いや、覚えてないな。
桜井:セカンドプレスでは、別に僕は何もやってない。
村井:歌も録り直してるんですよ、何曲か。
石井:「ブルーフィルム」と「ポラロイド遊戯」とかだった気がするけど、あまり覚えてない。何でその2曲を録り直したのかも、いまいち覚えてない。
村井:セカンドプレスの『ブルーフィルム』って、何かが違うんですよね。まぁ、でも、今回は真っ白な状態でやってますけど。
石井:僕は(リレコーディングすることに対して)特別なんとも思わなかったです。普通にフルアルバムを出すのが状況的に難しくなって、その代わりにという話だったんで、なるほどという感じで。
――みなさんにとって、『ブルーフィルム』は、どんなアルバムなんでしょう。秀仁さんにとっては、このバンドに入って最初の音源ですよね。
石井:そうですね。ホントに入った直後だったんで、音楽的にはほとんど何もやってないんですよね。逆に一番関わってないというか、単純に乗っかった感じだったんで。歌詞を何曲か書いたりはしたんですけど、それでも何となくのイメージとか世界観を伝えられて、それで何となくやったみたいな。でも、今は当時と比べたら、僕もcali≠gariのことを理解してますんで(笑)、わざとらしく大袈裟に変えたりするのではなくて、今の歌唱力とかスキルとかで、ライブでずっとやってきた感じで、お客さんの頭の中にもある世界がちゃんと音になればいいなって感じですかね。
村井:『ブルーフィルム』を出した頃っていうのは、微妙な時期でしたからね。人生、どうなっちゃうんだろうって。だから、ある意味、自分が音楽を続けるキッカケになったアルバムではありますね。ちょうど僕、学校を退学した直後で、「さぁ、バンドを頑張るぞ」ってときだったんですよ。そこで秀仁くんを(新しいボーカリストとして)勧誘した感じで……そういう意味では、思い出深いですね。人生の岐路となったアルバムかな。とは思いつつ、当時はエンジニアさんにレコーディングしてもらってましたけど、今回は全部自分で録ってるんで、心持ちは違いますけどね。時代が変わったなと思います、パソコンで録るなんて。
桜井:まぁ、研次郎くんと同じで、cali≠gariの行き先というか、生き様というか、それが決定づけられたアルバムですよね。前任のボーカルの方がやめる段階で、もうアルバムを出すということは言ってしまっていたので、出さないわけにはいかないし……。当時は発売延期だとか、そういう感じのものはよくわからなくて、とにかく出さなきゃいけないと思ってたから、もう誰が歌ってもいいよぐらいの勢いにはなっていたんですよ。でも、石井さんと合わせてみたら、どうせダメになるなら石井さんがいいなって……この失礼な言い方ですよ(笑)。どうせダメになるなら石井さんがいいと。
――2回言いましたね(笑)。
桜井:はい(笑)。歌が上手い人に歌って欲しいと。ここがポイントなんです。でも、ダメ元というよりは、出来上がってみたら、変な自信というか、気分的に「これは上手くいくんじゃねぇの?」みたいな感じになったんですよ。最初に石井さんと中野のマッドスタジオに入ったときに、これしかないってやっぱり思いましたからね。ホントに研次郎くんが言ったみたいに、「これはバンドで食えるんじゃねぇ?」とちょっと思えるぐらいの気持ちにはなりましたよね、実際。
――事実、これが新たな始まりになった。
桜井:そうですね。あのとき、ちょうどCDも在庫が一瞬でなくなるぐらい一気に売れて。それに『SHOXX』さんのオムニバス盤『SHOCK EDGE』の1曲目に入れてもらったりとか、当時は研次郎くんが、あっちゃこっちゃ媒体さんにいろいろやってた時期なんですけど、うちのバンドって、こんなにいろんなところから声がかかるバンドだったっけ? っていうふうになるキッカケではありましたよね、この『ブルーフィルム』というのは。そういう意味では、ホントに思い入れが強いですよね。
――「こんなバンドがあったのか!?」という見え方だったんだと思うんですよね。
桜井:あの当時はこういうバンドがなかったから、余計にそう見えたんじゃないですかね。今はもう、こういう感じのバンドは山のようにいるんで(笑)。
桜井青(Gt,Vo)
入門編としては、とても素晴らしいアルバムじゃないかなという感じはしてます。ジャケットをレジに持っていくハードルはかなり高いですが(笑)。
――ある種、cali≠gari路線というとおかしいですが、cali≠gariをお手本にしたような際立たせ方というのは、その後の世代に認知されたところはあるでしょうね。いいアルバムができたという話もありましたが、完成してみて、この『ブルーフィルム -Revival-』はどのように捉えているのでしょう?
桜井:自分的にはすごくいいなと。20年経ってみても、新曲を2曲足してみてトータルで聴くと、客観的にもこれは面白いなと思いますね。
――cali≠gariはかねて多様な音楽性を持っていましたし、新曲も含めて、それが改めてわかるところもありますね。ただ、1曲目から驚かされつつ、笑わされつつですよ(笑)。まさか「Sex On The Beach」を採り上げるとは……。
村井:この曲、知ってました?
桜井:うちのバンドは、僕以外、誰も知らなかったんです。当時はラジオとかでも結構かかりましたよね?
――ええ。セルフカバーのアルバムなのに、その1曲目に他のアーティストのカバーを入れるという発想が、普通は思いつかないとも思いますよ(笑)。
桜井:もともとの1曲目は「エロトピア」でしたし、復活したときのライブの1曲目も「エロトピア」でしたし、相当やってきたことなんで、『ブルーフィルム』ときたら「エロトピア」ってなるのが、もう何か嫌だったんですよ。かといって、また1曲目に来るものをわざわざ作るのも、何か違うなと思ったんです。そんなときに、「Sex On The Beach」をいつかやったら面白いだろうなというのが、どこか頭にあったんですよね。そこでこれが1曲目だったら、ちょっと面白いかなって。cali≠gariで初めての英語の曲というのも、BUCK-TICKの『TABOO』における「ICONOCLASM」みたいでいいなぁと思いながら(笑)、そのぐらいのノリですよ、ホントに。
――新曲を書いたのかと思って聴いてみたら、あの曲でした(笑)。
桜井:ははは(笑)。国内アーティストもカバーしてる方がいますけど、原曲に近いカバーの仕方をしてるので、こういう使い方をする人はそうそういないでしょうと。
――cali≠gariがやるからこそ面白いですよ。
桜井:楽しく作れました(笑)。
石井:原曲もホントに知らなかったし、原曲を聴いたところで何とも思わなかったんですよ。何でこれがそんなに有名なのか、ヒットしたのかもよくわからないし。でも、青さんが完全にこの状態のものを作ってきて、それを聴いたときに、普通にcali≠gariっぽい感じの曲だなと思って、面白そうなので、「そうですか」と(笑)。
村井:未だにわからないですよね、正解が。僕も原曲を知らないんで、“「Sex On The Beach」をカバーしたのか、すげー!”って反響があるのかどうかも……。
石井:後から原曲を聴くと、何が面白いのかわからないというのはあるよね。
村井:わかんない。1年後ぐらいにジワジワくるかもしれないですけど(笑)。
石井:ああいうのって、ヒットしたその瞬間というか、そのときの状況を知ってないと……全然、いい曲とかではないから。
桜井:いい曲ですよ!(笑)
村井:20年ぶりのアルバムだから、いろいろ考えたんですよ。これは20年前にヒットした曲なのかなと思って調べたら、8年前っていう中途半端で、特に20年前という意味合いもないし。
石井:でも、8年前だったら、そんなに有名な曲を何で知らないんだろうね?
村井:そう。でも、絶対にこれがいいって青さんが言うんで。
桜井:他に候補が2曲あったんですよ。ジョージ・マイケルの「I Want Your Sex」とジェームス・ブラウンの「Sex Machine」。でも、石井さんが「Sex Machine」を歌う姿の想像はつくけれども、テクニック的にギターはできないし(笑)、「I Want Your Sex」も聴けば聴くほど難しいんですよ。「Sex On The Beach」が一番やりやすいなと(笑)。セックスをテーマにした曲って、意外と日本には多くないんですよね。
石井:これはセックスをテーマにした曲なの?
桜井:そう。“Sex On The Beach”というお酒の名前を借りた、やることを目的としてる曲なので。
石井:そうなの? それすらわからなかった(笑)。何か「パッとやろうぜ」みたいな感じで、ずっとカクテルの名前を言ってるのかなみたいな。
桜井:そういう感じでもありますけれども(笑)。
村井:俺、日本で一番、セックスって言ってると思いますよ。かつては1回のライブで100回ぐらい言ってたし、cali≠gariでも、ずーっとセックスって言ってるじゃないですか。
桜井:お客さんにしてみたら、日常的にはそうそう口にする言葉じゃないじゃないですか。だから、うら若き乙女たちとか、中学生とか高校生とか、本来だったら、言うことによって後ろめたさを感じる言葉を、おおっぴらに言わせることができる環境って、とても素敵だと思うんですよ(笑)。昔、僕はそれが好きで言わせてたんで。最初はみんな恥ずかしそうだけど、みんなが言ってるから自分も言っていいんだっていう。
村井:昔は伏せ字でしたよね、テレビとかでも。
桜井:昔はセックスって単語自体が、『11PM』とかでも、そうそうテレビに乗っからなかった。
村井:でも、青さんが言わせようとしているだけで。俺だって、未だに全然恥ずかしくないわけじゃないですよ。やっぱり、ちょっとは恥ずかしいですよ。
桜井:この温度感ですよね。僕はまったく思わないんで。二丁目とかに飲みに行ってても、男の話か、金の話か、アイドルの話ぐらいしかないんだけど、「あんた、誰とやったんだって?」「また今日もセックスでしょ」って、普通に日常茶飯事で使ってる言葉だから(笑)。
村井:秀仁くんとかも言わされてる感があるのがいいんじゃないですか? 絶対に普段の会話の中では出てこないけど、歌詞だったら、歌わざるを得ないじゃないですか。だって本人が歌詞を書いたら、セックスってワードは絶対に出てこないですからね。青さんの歌詞とかは、セックスだの何だのっていっぱい出てきますけど。
桜井:ないよ、多分、初めてだよ(笑)。
石井:意外とないよね(笑)。
桜井:石井さんにセックスって言わせたことは1回もないよ(笑)。タイトルに入っているものはあっても、歌詞の中には入れない。
村井:あれ? 何かいっぱい言わされてる雰囲気があるんですよね。
桜井:ないない(笑)。自分の線引みたいのがあって。
村井:ついに? 解禁したの?
桜井:いや、カバーだから(笑)。こういう恥ずかしい言葉は率先して自分で言っていこうと。
――それこそ、代表曲でもある「エロトピア」にしてもそうですし、「デリヘルボーイズ!デリヘルガールズ!」なる新曲も今回は入っていたり……。
村井:変わらないですよね、確かに。
桜井:今は別に普通じゃないかなと僕は思ったりしますけど。
村井:デリヘルって、昔、ホテヘルって言ってませんでした?
桜井:言ってた。『デラべっぴん』って雑誌があって、98年ぐらいにその中で確かデリバリーヘルスって言葉が使われ始めたと思うんですよね。僕、その頃、『デラべっぴん』の広告を作ってたから、何か覚えてるんですよ(笑)。ちょうどダイヤルQ2が終わるぐらいの頃で、みんなバタバタしはじめたぐらいのときに、「このシステムは画期的!」みたいな感じで、デリヘルって言葉も広まっていって。
――勉強になります(笑)。その「デリヘルボーイズ!デリヘルガールズ!」がまたいい曲なんですよ(笑)。
桜井:いい曲を作ろうと思って頑張ってます(笑)。茶化すとかじゃなくて、純粋にいい曲を作ろうと。昔からこういうのを作りたいなと思ってて。ただ、こういうのって普通のアルバムに入れられないよなっていうのが実際あったんですね。今回、『ブルーフィルム』を作り直せるというタイミングがあるなら、ここしかないなという感じで入れたんです。友達にも、男女問わず、性産業に関わっている方が多いので。まぁ、これは古くからある文化なんですよ。僕が生まれる前からあるんじゃないかな。若くしてやめる子もいるし、それで財を築いちゃった子もいる。いろんな生き方があるんですけど、仲のいい友達で、50近いのにデリヘルやってる人がいるんですよ、旦那に内緒で。
――歌詞の中にも人妻って出てきますよね。
桜井:そのプライベートなエピソードを使っていいかって聞いたら、「全然いいわよ」って、ちゃんと許可を取って(笑)。この設定って、ホントにリアルだなと思うんですよ。特売の時間があるから、午前中から4時までとかって(笑)。そういった風俗産業の話は、聞けば聞くほど、みんな真面目だなぁ、凄いなぁと思うんですよ。
――曲調も興味深いですよね。クレジットを見たら、白石元久さん(SOFT BALLETとも縁のあるエンジニア/プレイヤー)が編曲に関わっているようで。
桜井:編曲というほどの編曲はこれはしてもらってないですね。シンセアレンジかな。基本は僕が最初から最後までまるっと作って、白石さんに「80年代っぽいシンセを打ち込んでください。ちょっとぶっ壊れた感じのポップスがいいんです」ってお願いして。出来上がってみたら、めちゃめちゃカッコよくなったなっていう、いい例ですね。想像もつかなかったんで。最初に僕がデモを作って渡したときはベースも入ってないし、シンセも入ってないから。
石井:わりとやりやすい、歌いやすい感じの曲ではありましたね。結構、青さんの書く曲は、メロディも難しくて、歌いにくいものが多いんですけど、そういう中で解釈がしやすいというか。解釈は違ったみたいですけど、最終的には(笑)。でも、自分的には、特に迷いはなく、自然にやりましたけどね。世界観みたいなものは、ずっと青さんの歌詞を歌ってるから、特別何が来ても驚くこともなくという感じですし。楽しくやりました。
村井:いい曲ですよね……って他人事みたいですけど、気になることがいっぱいありますよね。そもそもデリヘルって何なんだろう? 何でヘルスなんだろう? とか、言葉の由来とかね。コーラスもネイティブな人が発音してたりしてるんで、凄いなぁと思いつつ。でも、デリでヘルは多分、和製英語じゃないですか(笑)。
――ある意味、オルタナティブですね(笑)。
村井:真面目なのか、そうじゃないのか。曲はだいぶエッジがあるんじゃないですかね。
石井秀仁(Vo,Gt)
「ブルーフィルム」は、cali≠gariに入ったときに一番、理解できない感じの曲だったんです。どう解釈すればいいのか、相当長いことわかってなかった。
――一方で「さかしま」という曲を秀仁さんが書き下ろしてますね。
石井:「デリヘルボーイ~」が、そういう曲になるというのを事前に聞いていて、タイトルとかも聞いていたので、それとは反対側に持っていけるようなものをという気持ちで作りましたね。何か端と端になるような。結果的にそうなればいいかなと思って作ったら、そうなったのでよかったなと。
桜井:単純にタイトルが来たときに、あぁ、澁澤龍彦が訳したJ・K・ユイスマンスの小説なのね、デカダンの経典が来ちゃったね、みたいに思いましたね、マジエロだって(笑)。ただ、曲を聴いて、この曲で“さかしま”なんだっていう(笑)。むちゃくちゃいい曲だなと思った反面、まったくもってコードが全然わからなくて。レコーディング直前に曲をもらったので、かなりテンパってましたね。
――ちょっと専門的になりますが、ギターはどうやって重ねたんですか?
桜井:いや、1本ですよ。12弦(ギター)に聞こえるように作ってるんです。石井さんのご注文が12弦だったんですけど、時間的に用意できなかったんですね。
石井:12弦のアルペジオだけで作ろうと思って、そうやって進めてたんですけど、12弦が用意できないことになっちゃったんで、ストロークに変えて。そこで全体的にも開放弦がずっと鳴ってるような感じで、それっぽく聞こえるようにというふうに作りましたね。
桜井:石井さんが、僕が12弦でアルペジオができると思っているところが凄い(笑)。
――そんな(笑)。12弦ギターっぽい鳴りがするんだけど、12弦を弾いてる音とは違うなと思ったんですよね。
村井:この曲はベースが入ってないんですよ。だから、ライブではどうしようかなと思ってて。ギター弾こうかな。6+6で12弦(笑)。
石井:それ面白いね。
桜井:それでもいいですよね。めちゃめちゃいい。
村井:ギターは弾けなくもないんですよ。でも、ピッコロベースって知ってます? ギターの弦みたいなのを張っちゃうんですよ。そうすると、ほぼギターに近いことを同じベースでできちゃうはできちゃうんですよね。とかいって、直前にやめちゃいそうな気がするんですけど(笑)。
――いえ、それはぜひ観たいです。アルバムの最後には、聴き応えのあるタイトルトラック「ブルーフィルム」が待ち受けていますが、これはcali≠gariにとって、どのような意味を持つ曲なんでしょう?
桜井:最初の話に戻りますけど、やっぱり“決めた曲”かな。「エロトピア」と「ブルーフィルム」はちょっと特殊ですよね。今後もやっていく曲なんだろうなって。大事な曲ですね。
村井研次郎(Ba)
何でこういう歌詞を書くのかな? ダメだよこういうことを書いちゃ、と思ってたんですけど、それを20年後もこうやってまたレコーディングできることは、やっぱり続けてよかったんだなって。
――「エロトピア」にしても「ブルーフィルム」にしても、このタイトルに冠された言葉自体が、今や通じない世代が多いですよね。
桜井:悲しいですね。まぁ、ブルーフィルムは、当時でもそんなに通じる言葉ではなかったと思うんですけど、エロトピアは、「エロトピア!?」って当時の人はみんななったので(笑)、いい言葉だなと。山に行くと必ずどこかに落ちてたり(笑)、うらびれたドライブインの自動販売機の中に、夜になると煌々と輝いていたり(笑)。
石井:過去にやっていたバンドでも、結構ニューウエーブ色が強い音楽をずっとやってきたから、どっちかというと、「エロトピア」みたいな曲調はそうでもなかったんですけど、「ブルーフィルム」は、cali≠gariに入ったときに、一番、理解できない感じの曲だったんですよ。cali≠gariのこのタイプの曲は、どう解釈すればいいのか、相当長いことわかってなかったんですよね。だから、どういうテンションで歌っていいのかもわからなかったし。でも、ようやく、再結成して、ここ数年ぐらいで……やり続けたから理解できてきたのかわからないですけど、こういうことなのかっていうのがわかってきて。なので、今回、ようやくちゃんとまともに歌も乗っかったかなって思いますね、感情的にも。
村井:「ブルーフィルム」の歌詞に、《全部、義手だったんですけどね。》ってあるじゃないですか。この間、ビクターの方と、当時はレコード会社からしたら、こういう言葉も伏せ字にしてたのかなっていう話をしたんですよ。
桜井:でも、当時は当て字にしてましたね。“疑手”と書いて。今回は一応確認して。
村井:今だと通っちゃう。時代の流れを感じるなぁと思いつつ、すごい歌詞だなと当時思ってたんですよ。何でこういうことを書くのかな? ダメだよこういうことを書いちゃ、と思ってたんですよ。
――それが世間一般的な感覚でしょうね。
村井:そう。それを20年後もこうやってまたレコーディングできることは、やっぱり続けてよかったんだなって。この1行、強烈ですよね。気になりますよね。今でもちょっとわからないんですけど、映画館にいて、握ったら義手なんですよね?
桜井:違う、そういうことではない(笑)。
村井:そうじゃないの? どういう意味なの?
桜井:とりあえず、誰でもいいから抱いてよみたいな状況になった人が、誰でもいいから寝てみたら、結局、自分の体目当てで、全然自分に優しくなんて誰もしてくれなかったっていうことです。
村井:あぁ。でも、義手って書いちゃうとねぇ。
桜井:だから、それはたとえだって(笑)。映画館に行って、手を握ったら、全員義手だったって、ホントにそう思ってたら、ちょっと僕も怖いんだけど(笑)。
――それも解釈としては面白いですよ。
桜井:でも、そういうことを言ってるわけではない(笑)。
村井:それでPVを作ったら、俺バージョンの「ブルーフィルム」は凄いことになりますよね。客席にいる人が全員義手で。
――今回もこの曲のミュージックビデオを撮るんですよね?
桜井:そういう方向性ですね。20年前も作ったので、20年後ももう一回作ってみようかと。
――『ブルーフィルム』は現在のcali≠gariの原点のようなアルバムでもありますから、cali≠gariというバンドを初めて知るという人が、今回の『ブルーフィルム -Revival-』からcali≠gariを聴き始めるのは最適とも言えるでしょうね。
桜井:入門編としては、とても素晴らしいアルバムじゃないかなという感じはしてます。自分で自分のアルバムを褒めるのも変ですけど、cali≠gariを聴いたことない人にもお薦め出来るというのが自分でもまず珍しいし、こんなバンドなんだってわかってもらえると思うんですよね。ただジャケットをレジに持っていくハードルはかなり高いですが(笑)。
――ものすごく濃密ですからね。いろんな世界が飛び出してきて……惑わせる(笑)。さて、リリース後には東名阪でライブが行われますが、どんな形態になるのでしょう?
桜井:普通のシンプルな形態ですかね。でも、ソーシャルディスタンスなので、お客さん(の数)は3分の1。
村井:早く普通にライブしたいですね。同時に配信もするんですけど、そっちはちょっと映像に凝るんですよ。
桜井:声を出しちゃいけない分、どうしたらお客さんを盛り上げることができるか。これはとても難しいところですけどね。
取材・文=土屋京輔
※このインタビューは2020年9月11日に実施しました。

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