L→R キダ モティフォ(Gu&Cho)、吉田雄介(Dr)、中嶋イッキュウ(Vo&Gu)、ヒロミ・ヒロヒロ(Ba&Cho)

L→R キダ モティフォ(Gu&Cho)、吉田雄介(Dr)、中嶋イッキュウ(Vo&Gu)、ヒロミ・ヒロヒロ(Ba&Cho)

【tricot インタビュー】
私たちにとって“10周年”は
ただの“今日”でしかない

2020年1月発表のメジャーデビューアルバム『真っ黒』から9カ月というスピードでリリースされるニューアルバム『10』。結成10周年を迎え、閃きと遊び心に満ちたオルタナロックは、ここに来てさらに成熟した印象も。その理由をメンバーに訊く。

変わったバンドに
思われることに甘えていた

前作の『真っ黒』から9カ月振りというのは、なかなかのスピードですね。

中嶋
新型コロナウイルスの影響でライヴを含め、表に出る活動が厳しくなって曲を作る時間があったのと、外に向けた活動という意味ではCDを出すしかないと思ったんです。本当は来年の1月に出す予定だったんですけど、avexから“10月に出しましょう”と提案があって、“ぜひそうしましょう”となりました。

コロナ禍は今回の制作に何かしら影響を与えましたか?

中嶋
これまではスタジオに集まってみんなで作曲してたんですけど、外出自粛で集まれなかったのでまったく違う作り方になりました。各々が家で作ったフレーズを提出して、そこに歌を乗せてみたり、ギターをつけてみたり、どんどん重ねていって、ある程度重なった状態で、“あっ、これは良さそう。もうちょっとアレンジしてみよう”とリモートでミーティングしながら進めていったんです。

そういう作り方はいかがでしたか?

キダ
これまでは私が作ったギターのフレーズから作ることが多かったんですけど、今回はそれぞれがフレーズを考えていることもあって、ギターからじゃない作り方をしている曲も結構あるんです。そういう作り方じゃないと出てこないフレーズが出てきたことが新たな発見で面白かったです。やってみて良かったと思いました。

では、曲や演奏の幅が広がったという実感もあるわけですね?

中嶋
そうですね。楽曲をゼロから作る作業をそれぞれに違う人がやっているだけで、そこに後から乗っかるか、先に作るかで結構気持ちも違いますし、自分がタネを作ったものに関しては、他のメンバーに“こうしてほしい”という気持ちが湧いてきたりもして。全然考えずに“この曲がいいね! この曲もいいね”と並べていったはずなのに、出来上がってみたら、ひとり2曲ずつぐらい作っているせいか、バラエティーに富んだアルバムになったと思います。

ところで、今回、大々的に10周年と謳っているわけではありませんが、タイトルが“10”で、アーティスト写真も10周年のお祝いっぽいですね。多少なりとも10周年ということは意識されていると思うのですが、結成からの10年を振り返ると、どんな感慨がありますか?

中嶋
私の記憶では、ずっと楽しかったというポジティブな思い出しかないんですけど、一個一個の出来事を振り返ってみると、別にポジティブじゃないこともいっぱいあったはずなんですよ。ドラムが最初から見つからなかったり、入ったけど脱退したり、また全然見つからなかったり(笑)、海外でのすごく過酷なツアーをみんなで乗り越えたり…いろいろしんどいことはあったけど、まるで他人事のようにいい思い出しか残ってなくて。あっと言う間でしたね。10周年ってもっと噛み締められると思ったけど、ただの“今日”でしかない(笑)。このまままた続いていくんやろなって思うし、今回の曲からも10周年感とか集大成感とかって感じ取れないと思うんですよ。まさに自分の気持ちがそのまま出たと思います。
ヒロミ
10周年だからこうしようみたいなことはまったくなかったですね。“楽しい事とか、新しい事とかまたしたいね”みたいな感じで今回も作りました。歳はとったと思いますけど(笑)、バンドにおいては通過点でしかない。いい意味で何も変わってないと思います。

吉田さんは17年の11月に正式加入したのでまだ3年ですが、メンバーとしてすっかりバンドに馴染んでいるようですね。

吉田
メンバーとしては3年ですけど、サポート期間も含めると5年くらいになるんですよ。tricot史上では一番長く叩いているらしいです。まぁ、10周年に関しては“おめでとうございます”って感じなんですけど(笑)。
中嶋
“勝手にやってろ!”って感じですね(笑)。
吉田
僕としては馴染んでいると思ってますけど…どうでしょうね?(笑) でもまぁ、楽しくやってますよ。
中嶋
馴染んでいるというよりは、ケツを叩かれているような感じですけどね。吉田さんは技術があるから、私たちに歩み寄ることもできるはずなんですけど、それよりはもうちょっと先を見ているような感じなので“怖いなぁ〜”って。いつシバかれるか分からない(笑)。吉田さんはあとから入ったというのもあるかもしれないですけど、4人の中で一番新鮮なものを追い求めている感じがあるから、いい刺激になってますね。音楽的な面でも詳しいし、経験も私たちよりも多いので頼もしいです。
吉田
そう思っていただけてたら幸いです。
中嶋
怖い怖い(笑)。

tricotはもともといろいろな要素を持ったバンドですが、あるタイミングからファンクをはじめ、ブラックミュージックの影響が表れてきましたよね?

中嶋
吉田さんのせいじゃないの? でも、先輩(キダの愛称)もそういう感じでしたよね。
キダ
途中からそういう要素が出てきたとは自分では思ってなくて。もう最初から…例えば『爆裂トリコさん』(2011年8月発表の会場限定1stミニアルバム)に入っている「アナメイン」では自分的に出してたつもりだったから、もともとあったとは思うんですけど、それがより濃く出てきているのかもしれないです。
吉田
まとめ方が上手になったのかもしれないですね。
中嶋
伝わるようになった。
吉田
バーン!ってなってたのが、狙いがしっかりしてきたがゆえにそういう要素がより表に出てきたという印象はあります。
中嶋
先輩が醸し出しているブラックミュージックみたいなところを汲み取れる人が現れたというか、吉田さんがちゃんとそれをとらえて合わせているから、CDで聴いてくれてる人にも感じてもらえてるんだと思います。ただ、私はジャンルに明るくないのもありますけど、“今回はブラックミュージックに寄ってきたな”と思って歌をつけることができなくて…感じたまま、中嶋として歌ってますけど(笑)。
吉田
でも、全員がブラックミュージックに寄せたら面白くなくなるんで、あまり強要しないようには心がけています。そもそもブラックミュージックにしたいわけではないですしね。

それはもちろん。

吉田
そういう要素もあるけど、ブラックミュージックにまとめすぎちゃうとそういうバンドになっちゃう。そのバランスは常に一曲一曲大事にしたいと思ってます。

ブラックミュージックの影響という魅力もありつつ、中嶋さんとして歌っているからこそtricotの音楽になると思うし、そこが魅力だと思うのですが、ジェニーハイに加わってから中嶋さんの名前を含め、tricotの存在が音楽ファン以外にもかなり知られたじゃないですか。それによって何かしらバンドの活動に返ってきたものはありますか?

中嶋
tricotでまだ経験したことがないところに立たせてもらったり、テレビも経験させてもらったりして、ジェニーハイでの経験がなかったらつかなかったような度胸がついたと思います。tricotでももちろん大きな舞台に立ちたいと思ってるので、その時に堂々としていられるような経験にはなったとすごく感謝しています。
吉田
歌がうまくなったもんね。
中嶋
最近、よく言われるんですよ。
吉田
人が作った歌を歌ってるからね。
中嶋
そうですね。自分の脳みその中にあるゴールしか目指すことがなかったので、人の脳みその中にあるゴールを汲み取って、そこを目指すことが勉強になって、自分の甘さを痛感しました。自分に甘えてたなと思うし、tricotの音楽にも甘えてたと思うし。一見、変なバンドって思われるじゃないですか。変わったバンドと思われることに甘えて、技術をちょっと軽視していた部分があったので、今の段階で気づけて良かったと思います。女性ということもあって、これから勢いだけでやれるものじゃなくなってくるんで、ちゃんと実力と自信を持って音楽を続けていくためには、いいタイミングでハッとさせてもらえましたね。

今作を聴いた時、さっき話題にしたブラックミュージックも含め、tricotが持っているいろいろな要素が以前よりもはっきりと出てきたと感じたのですが、それに加えてバンドの成熟をすごく感じました。変わったバンドと思われることに甘えていたと中嶋さんはおっしゃいましたが、もちろんそういう魅力もまだまだありつつ、今回のアルバムは曲としてどの曲も魅力的で、全10曲で36分ちょっとという長さもあって、何回も繰りかえし聴きたくなるようなところが良かったです。

中嶋
ありがとうございます!

「體」を10曲目に持ってきた終わり方も絶妙で。“もう一回、1曲目から聴かなきゃ気持ちが収まらないぞ”ってなるんですよ(笑)。

中嶋
そうですね(笑)。今回、時間もあまりなかったので、曲順を決めるのは任せてもらったんですけど、普通やったら9曲目の「Laststep」で締め括ると思いながら、アルバムに対して締めたくなかったというか、逆に続いていくようにしたかったから…それに10周年感が出すぎたら恥ずかしいし、一番よく分からへん曲で、みなさんを不安にさせたまま終わろうって(笑)。“これで終わらへんで!”っていう気持ちになってもらうのが一番いいと考えたんです。

まんまとそれにハマってしまいましたが(笑)、アルバムを作るにあたってはどんな作品にしたいと考えたんですか?

吉田
今回は“ロックバンドだよね、僕らは”って思いながらやりました。きれいに作ることをやめるというか、自粛中にリモートで作りましたけど、リモートでやってくと音を重ねられる分、打ち込みを入れたり、いろいろな楽器を入れたりして、グリットに沿ったすごくきれいな音楽を作っていく流れになっていっちゃうんで、そこには最後まで抗いたくて。みんなと会えないけど、そこはロックバンドなんだから、ちゃんと生の空気感を持ったアルバムを残したほうが、のちのち絶対に良かったと思えると。エンジニアさんともそういう話をして、サウンド感もきれいに聴こえるよりはUKロックみたいにちょっと膜のかかった感じが全体的に続いているものにしたいと、1曲目を録る時から言ってましたね。楽曲の内容は僕としては何でもいいという感覚で、どんなジャンル、どんなことをやってもロックバンドという軸を持って僕は作ってました。
L→R キダ モティフォ(Gu&Cho)、吉田雄介(Dr)、中嶋イッキュウ(Vo&Gu)、ヒロミ・ヒロヒロ(Ba&Cho)
アルバム『10』【CD+Blu-ray】
アルバム『10』【CD+DVD】
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OKMusic編集部

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