a flood of circle、新たななグルー
ヴを手に入れたバンドの存在感 最新
アルバム『2020』が最高を更新した理
由とは

バンドならではのグルーヴに回帰した『CENTER OF THE EARTH』から1年7か月、a flood of circle(以下、フラッド)がリリースする10枚目のアルバム『2020』(ヨミ:ニーゼロニーゼロ)を、彼らの最高傑作とすることに異論があるというリスナーは、まず一人もいないだろう。もちろん、筆者も最高傑作と呼ぶことを躊躇する気持ちはこれっぽっちもない。

その『2020』、聴きどころはいろいろある。
バンドがついに手に入れた新たなグルーヴもそうだし、バラードも含む曲の多彩さや、その中で改めてポピュラリティを獲得するに違いない所謂、歌ものの魅力もそうだ。普遍性と図らずも同時代性を兼ね備えた歌詞のメッセージもフラッドというバンドの存在感を際立たせているし、佐々木亮介(Vo,Gt)のソロ活動からのフィードバックとも言えるヒップホップのマナーのさりげない導入ももちろん聴き逃せない。
そして、そんな『2020』の最大の聴きどころは、それらが混然一体となって、フラッドが持つロックンロールバンドとしての圧倒的な姿を見せつけているところに他ならない。
今回、バンドを代表してインタビューに応えてくれた佐々木も大きな手応えを感じているようだ。バンドの新境地を語る佐々木の言葉を聞けば、誰もがフラッドのこれからがより一層楽しみになるはずだ。『2020』を彼らの最高傑作とする気持ちに変わりはないが、それが更新される日はそんなに先のことではないようだ。佐々木も更新していく気満々だ。
彼らは来年、結成15周年を迎える。
――いやぁ、困りましたよ(笑)。
困りました? ハハハ。新しい一言目だな。何を困らせました?(笑)
――新作を聴くたび、気持ちが無闇にアガッたり、無性に泣けてきたり、感情を揺さぶられすぎて、冷静でいられないですよ。
あぁ、なるほど(笑)。それはうれしいです。作ってよかったです。
――大好きなアルバムです。でも、僕だけじゃなくて、今回、いつも以上に評判もいいようですし、バンドとしてもかなり手応えはあるんじゃないでしょうか?
そうですね。『NEW TRIBE』(2017年1月発売)と『a flood of circle』(2018年2月発売)を、ザブ(ザビエル・スティーブンソン)っていうイギリスのエンジニアと作った時は、手探りの方向が外側に向いていたというか。(アオキ)テツ(Gt)がちゃんとメンバーになる前だったっていうのもあるんですけど、ギタリストが固まっていない状態のまま、それでも進んでいって、新しい形とか、音とか、もっとないのかなと思いながらやっていた時期を経て、前作の『CENTER OF THE EARTH』(2019年3月発売)ではテツが正式に加入したんですよね。で、あいつもバンドに入ったと認識してから作ったアルバムだったんで、ピースが揃っている状態っていうのが、何ていうのかな……バンドをやっているからそこに思い込みがありすぎるのかもしれないけど、やっぱりサポートとして仮契約みたいな状態でやるよりも、こいつと最後まで行くんだって気持ちでやっているほうが自分の気持ちも固まるというか。新しい何かを探る方向が外じゃなくて、内側に向くというか。こいつらと何かを作ることにフォーカスしている感じがあって、それが前作から今作は繋がっているんですけど、そのモードが今、自分にとってすごく大事なんですよ。
――それは佐々木さんだけじゃなくて、メンバー全員がそう思っているんじゃないですか?
それはすごく感じます。たとえば、テツが曲を書いてくるようになったのもそうだと思うんですけど、「Whisky Pool」っていう曲の真ん中のパートは歌詞も含め、テツが書いているんですよ。俺以外のメンバーが、俺が頼まなくても、何か書いてくるって初めてで。そういう部分でも成長していると思うし、メンバーが固まる前はバンドの状態が不安定だったから、自分が“こうだ”ってスタイルを決めてないとやっていられなかったのかなと思っていて。姐さん(=HISAYO/Ba)は衣装や髪型も含め、決まったスタイルじゃないとフラッドはやらないみたいなところがけっこうあったんですよ。でも、今回はスタイリストやデザイナーに勧められるままに髪型を変えたりとか、サングラスを掛けたりとか、むっちゃ細かい変化なんですけど(笑)、そんなふうにキャパが広くなってきている印象があるんです。音だけじゃなくて、姿勢というか、態度というか、そういうのもキャパがどんどんデカくなっている。このバンドでやっていくって腹が決まっているからこそ、外から何かやってもらうのではなく、自分たちから変えようってことが、人の提案を受け入れることも含め、できるようになってきていると思います。
――今回のアー写を見て、HISAYOさん、髪の色を抜いたんだと思っていたところでした。
そうなんですよ。ほんと細かいところなんですけど、髪の色を抜くとか、髪を巻くとか、そういうことさえも前までは提案されても、フラッドでの私は違うな、みたいな感じだったんです。今回、「天使の歌が聴こえる」っていう、姐さんにいつも以上にコーラスをがんばってもらった曲があるんですけど、このままいけば、姐さんがリードボーカルの曲もそのうち1曲ぐらいはイケるんじゃないかと思っていて(笑)。
――あ、それは楽しみです。
来年結成15周年なんですけど、来年のアルバムぐらいまでには……。
――あ、アルバムをリリースするんですね(笑)。
いや、勝手に思っているだけで、まだわからないですけど(笑)。来年、アルバムを出せるなら、今のこのモードを続けたいと思っているんです。
――なるほど。
そこでテツが入ってからのスタイルが1回、完成してくれれば、またロンドンに行ってもいいし、誰か呼んでもいいし。音を広げようと思うかもしれないけど、今はもっともっと自分たちに向き合って、バンドを育てたいという気持ちなんですよ。
――今回、やりきったんじゃないかと思っていたので、次のアルバムはまた全然違う方向に向かうんじゃないですかと聞こうと思っていたところでした。でも、そうじゃないんですね?
今はそうですね。それが明日になったら変わっているって可能性はゼロじゃないし(笑)、他の3人がどう思っているのか確認したわけじゃないから、何ていうかわからないですけど。今、新曲もぼちぼち書いていて、そろそろ“みんなはどう思う?”って聞こうと思っているところなんですけど。
願わくば、このアルバムに入っている曲たちが1曲でも多く、今後のライブのセットリストに生き残ってほしい。
――前作を作る時にバンドならではのグルーヴにもう1回フォーカスするというテーマがあったじゃないですか。ただ、アルバムを完成させた時点では、まだグルーヴは得られていないと佐々木さんはおっしゃっていました。今回、そのグルーヴを得られたという手応えもあるんじゃないでしょうか?
その意味では、前作を出してからのツアーも含め、ライブがすごく大事でしたね。これでいいんだというタフさも身につけられたと思います。だから、シングルという形で先行リリースした「Beast Mode」はライブを意識して作りたかったんです。本当だったら、オーディエンスの歌声を入れたりとか、ライブハウスだけで売ったりとかやりたかったんですよ。そんなふうにライブを意識して何かをやるというモードに入っていて、それはグルーヴを獲得することとすごく繋がっていたはずなので、“コロナ、この野郎!”って感じなんですけど(笑)。今はどっちとも言えるかな。そういうモードになっていたから、アルバムの前半を2月にレコーディングして、後半を今年の5月ぐらいまでに録り終えるつもりだったんですけど。緊急事態宣言が5月いっぱい続いて、レコーディングを6月にずらしたので、そこで1か月ぽっかり空いちゃったんですよ。いつもはライブをやりながらレコーディングしているので、けっこうギリギリの状態というか、仕上がっていないままレコーディングしていたんです。もちろん、仕上がっていないからこそ、現場で出来上がっていく何かがあって、それはそれでいいと思っているんですけど、今回は1か月空いちゃったことによって、仕上げてからレコーディングに臨めたので、それが良く作用したところはあるかもしれない。ライブがなかったらなかったで、アレンジを詰めたり、それぞれに練習したりすることができたので、それはそれでよかったと思います。
――今回、メンバーの演奏が、会話しているように聴こえる瞬間がけっこうあって、バンドの調子がすごくいいんだなと思いました。
それはマジ、あると思います。テツはサポートの時よりもみんなの音を聴きながら演奏していることがわかるし、ナベちゃん(=渡邊一丘/Dr)も――ナベちゃんはけっこう自分の世界に入ることが多いんですけど、それでも何ていうか、ほんと会話ですよね。ドラムのフィルを決める時も、ギターの流れがこうなっているから、こういうフィルを叩く、みたいに意味があるっていうか。意味がないことが気持ちいい時ももちろんあるんですけど、バンドみんながそういうモードに入れているという気はしますね。お互い、こういうアクションをしているから、ここは退くとか、合わせるとかって脳みそになってきている。それはライブがないから、デモで録音していたフレーズを、みんなが聴き合ってチェックできているってこともあると思うし、ライブしながら培ってきたところもあると思うし。それは俺もうれしいというか、バンドってこういうところがいいんだよなっていうところがけっこうありますね。
――ところで、2月に前半のレコーディングを終えていたということは、今回のアルバムの曲そのものは去年のうちに?
大体揃っていました。最初に12曲、こんな感じでって曲の役割とか、テンポ感とか、キーとか、なんとなく枠を決めておいたんです。ただ、半分録ったら、さらに何が必要なのか見えてきたので、書きかえた曲もありますけどね。
――1曲目の「2020 Blues」は、いつ作ったんですか?
デモは去年からあったかな。歌詞もなんとなくは。「Beast Mode」が出来上がった時にアルバムの1曲目、2曲目をセットにするというか、知らずに聴いたら同じ曲に聴こえるぐらいにしたいと思ったんですよ。それはやっぱり自分が聴いてきたロックバンドのかっこよさというか、アルバムのかっこよさというか、アルバムでちゃんと魅せることをちゃんとやりたいと思ったからなんですけど。だから、こういうアルバムを作りたいというイメージがまずあって、それに合わせて作ったという感じですね。
――それで、最初に12曲の枠組みを決めたわけですね。どういうアルバムを作りたいと考えていたんですか?
資料に書いてある“圧倒的なロックンロール・アルバム”っていうのは前からずっと続けていることですけど、それに対して、迷ったり、疑ったりせずにフラッドはこれだろって強く思っていたので、まずはそれを忘れないことですよね。せっかくメンバーが固まってきたんだから、ギター、ベース、ドラムで勝負するってシンプルに思っていたことと、あとは、一応、このメンバーでずっとやっていくはずなんだから、a flood of circleの、この4人以外の形っていろいろ変わっていってもいいと思うんですよ。だから、アルバムごとに燃え尽きるのではなくて、続けていくからこそ、ここまでのストーリーと、前回できなかったことをちゃんとクリアしていきたいという気持ちがあったので。継続していくというか、繋がっているというか、相当かっこつけて、《転がり続ける》って言葉を歌詞では書いていますけど、転がし続けるというか、そういうことを考えていました。
――「2020 Blues」は最初に聴いた時に明らかにコロナ禍に対するリアクションとして書いたんだとばかり思ったのですが、でも、曲は去年からあったそうで。
歌はコロナ禍になってからのレコーディングでしたけど、たとえば《マスク》みたいな言葉は全然入れる気はなかったです。結果的に、コロナ禍に対するリアクションに聴こえるっていうのは、不思議っちゃ不思議だけど、いい曲ってことなのかな(笑)。願わくば、このアルバムに入っている曲たちが1曲でも多く、今後のライブのセットリストに生き残ってほしくて。新曲を書き続けていると、入れ替え続けなきゃいけないし、過去の曲もあるから、今回のアルバムのライブが終わったら、この12曲全部をライブでやり続けることはほとんどないと思うし。これからも新曲を作り続けて、今回の12曲を超えていきたいとは思っているけど、今は超いいと思っているから1曲でも生き残ってほしい。それにコロナが終わっても、コロナとはまた別のネガティブなことって絶対に起こるに決まっているから――生きている限りは、生きていくつもりがあるなら、しかもそれに対して目をつぶる気がないなら、だから、そういうことが起こった時に、いい曲に聴こえたり、その時の気持ちに入っていったりするものが書けていたら、きっといい曲なんじゃないかと今、思っていて。それは普遍性みたいなことかもしれないんだけど、願わくば、自分が書いている曲がセットリストって意味でも、他の人が聴くという意味でも、長く生き残ってくれたらいいと思っています。
――コロナ禍のことを歌っていないのであれば、なぜ、《世界の終わりの闇の中で》と感じているのか気になるのですが。
だって、トランプ政権がシリアにミサイルを撃ちこんだりしているじゃないですか。それだけでもマジで!?って思いましたけど。どこまで自分のことと思うかって話ですよね。令和になったとき、平成は戦争がない平和な時代だったと言っている人がいて、ウソでしょ?って思ったというか。あっただろって俺は思ってるし。日本の中はもちろん、世界中に、これは変わったほうがいいとか、闇ってませんか?ってことがいっぱいある。もちろん、そんなことを考えない、いい日もあるし、空とか海とか木々が美しいと思える日もあるし、音楽サイコーと思うだけでぶっ飛べる日もあるけど、闇の中って感覚は物心ついた時からずっとありますね。
――そういう感覚を持って、ずっと歌い続けてきた佐々木さんとフラッドの存在や、歌ってきたメッセージって、コロナ禍の今だからこそ、より際立つんじゃないかなと思ったりもして。
そうかもしれないですね。ネガティブな状況がバネになるところはありますよね。もちろん歌詞にそのまま反映することはしないかもしれないけど、でも、考えることがあまりないのにアートする意味はあるのかな。これ、どうなんだろう?って思うことが身近な世の中で起こった時に反応することって、俺にとっては音楽を作る上で当たり前だし。その時に思ったことを音楽を通して伝えることは文化的に意味があると思いたい。今、コロナ禍ということだけで輝きたいとは思っていないけど、俺たちの音楽にキラッとするものを感じてくれたら、うれしいはうれしいです。
――今回のアルバムには今だからこそ響く言葉がいっぱい詰まっていると思います。もちろん、本来のメッセージがコロナ禍だからということにすり替わっちゃいけないとは思うんですけど。
聴く人がコロナ禍だからこそのメッセージだと思ってくれても全然OKだと思います。そこは、俺の意図はあまり気にせずに聴いてもらって全然かまわないです。
――ロックバンドが歌うこともこの状況をきっかけに変わってくれたらと思うんですよ。だって、最近の若いバンドが歌うことって、自己憐憫ばかりみたいなところがあるじゃないですか。
でも、ジョン・レノンも「イマジン」を歌いながら、うじうじしたラブソングを歌っているし、(忌野)清志郎さんもザ・タイマーズをやりながら、信じられないくらいパーソナルなラブソングがあるし、それが普通だと思いますけどね。テレビを見ていておかしいと思うこともあるし、失恋することもあるし(笑)。全部、自分だから、どれか一つだけ自分だと決めずに全部、表現しちゃえばいいと思います。俺は全部を表現しちゃう人を見て、気持ちいいと思うから。逆に、それがないとというか、仕事だと思ってやっちゃうと、仕事の顔になっちゃうと思うんですよ。それはビジネスマンとしてはアリかもしれないけど、俺が知っているアーティストはそうじゃない。せめて、歌や文化においては、いろいろな顔をしている人がアリだといってほしいと俺は思いますけどね。
――なるほど。おっしゃるとおり、確かに今回のアルバムもいろいろな顔が入っていますね。バンドのグルーヴや演奏の熱の高さももちろんなんですけど、歌詞も含め、曲の多彩さも聴き逃せない魅力です。ただ、その多彩さは、そんなに意識したものではない、と?
そうですね。曲を作る時は意識していませんけど、フラッドの中の幅については意識することはあります。ギター、ベース、ドラム、あとはこの声という枠が決まっているので、それを生かすというか、持ち物はこれしかないんだから、その中でどれだけバリエーションを出せるのかということは考えるかな。だから、今回の12曲、曲順も自分で決めたんですけど、この4人でできるマックスの幅は出したいと思いながらトライしました。
――その曲順ですが、終盤に向けて、8曲目の「Rollers Anthem」から後半、曲調が1曲1曲、変化しながらカオスになっていく流れがすごいですね。
11曲目の「欲望ソング(WANNA WANNA)」は意図的にむちゃくちゃにしているかもしれない。9曲目の「ヴァイタル・サインズ」以外はレコーディングの時、クリックを聴いているので、ちょっといい子っぽくなるのがイヤだと思ったんですよ。曲順も決めていたから、イントロもアウトロも意図的にバラバラにできたし、流れも考えながら作れたので、なんかしっかりしすぎていると思って、「欲望ソング(WANNA WANNA)」は敢えて壊そうと思いました。バランスを取りすぎているのもバランスが悪いなって思ったんですよ。
――「ヴァイタル・サインズ」を聴きながら、こういう佐々木さんもいるんだと思いましたが。
そうですね。もうちょっとかっちり録るパターンもあったんですけど、後半まで出来上がってきたとき、さっきもいったとおり、いい子にしたくなかったので、ヨレヨレのグルーヴでいいからクリックを聴かずに録ってみようってなって。歌詞も無理やりポジティヴなことを歌う必要もないと思ったんです。“今日どうでもいいわ”って日もあるじゃないですか(笑)。そういう自分も入れておきたかったんですよ。
――歌詞をそのまま受け取ると、三丁目でゲロ吐いたことがあるんですね?(笑)
ありますね。ハハハ。
――ところで、1曲目の「2020 Blues」と最後の「火の鳥」の歌詞に合唱曲として有名な「大地讃頌」が出てきます。これは意図的なものなんですか?
いや、全然考えていないんですよ。「大地讃頌」は好きなんですけど、なんでかな。そもそも今回のアルバムってあまり狙ってなかったけど、歌について歌っている曲が多くなっちゃって。
――ああ、なるほど。
たぶん、自分にとってスタンダードなのかな。「大地讃頌」が。最初と最後でオチをつけようと考えたわけではなくて、これ以外の曲のデモにも「大地讃頌」という言葉を入れたものがあって、普通に考えたら外すべきでしたね。
――いやいや、外さなくてもいいと思いますけど(笑)。
結果、最初と最後に入っていることによって、まとまっちゃったから、ま、いいかって思ったってだけで、“うまいことやってやったぜ”なんて全然思ってない。もしかしたら、「Beast Mode」の“ビースト”もそうなんですけど、本能とか、大地とか、そういう方向に自分が向かっているのかもしれないですね。「ヴァイタル・サインズ」もそうですけど、歌詞で自分を曝け出そうとしているようにも思えるというか、技術で美しさを見せるのではなくて、コンクリートをめくったらその下は全部、草が生えているはずだ、みたいな方向に向いているというか。それを忘れちゃいけないという気持ちになっているのかもしれない。今、話しながらそう思いました(笑)。
――自分を曝け出しているという認識があるんですか?
あったと思います。バンドをやりながら、メンバーの意見も聞いてっていうふうになりすぎると、それはそれでつまらないというか(笑)、ほんと絶妙なバランスの話ですけど。フロントマンでボーカリストで曲を書いている奴がバランスを取りに行くだけってつまらなくない?って思ってる俺もいるってことでしょうね。4人でやっているし、みんなの意見も聞くけど、もっと爆発している部分がないと、やっていても、聴いていてもつまらないかなって気もするんです。
――いつ頃からそう感じていたんですか?
この感じの言葉で言うようになったのは、今年に入ってからというか、むしろ今だと思うんですけど(笑)。でも、その繰り返しで、自分のアートが爆発してなきゃと思っている時の反動で、“いや、バンドの良さってそこだけじゃない”ってみんなの意見を聞きにいったりする(笑)。で、そっちに行きすぎると、“あれ、これってつまらないんじゃない?”って思ったりする、みたいなことだと思うんですけど。その行ったり来たりで上っていったらいいですよね。
コロナがなくなったとしてもコロナじゃない何かは絶対起きると思うから、起きようが起きまいが、俺たちはとにかく行くぞっていう気持ちでいますね。
――たとえば、今回、自分ことを一番曝け出している曲というと?
「火の鳥」ですね。
――あ、そうなんだ。
俺、曲を作るとき、タイトルを決めることが一番大事だと思っているんです。タイトルが決まると、全部が決まる。そのタイトルにふさわしい主人公が生まれ、ふさわしい曲調が見えてくるんです。今回、それを1曲目から11曲目まで積み重ねた後に、要するに主人公を設定した11曲を作ってから、その中には自分の成分も入っているとは言え、未来永劫いつ聴いてもいいものにするにはフィクションだけでは説得力が弱いような気がしたんです。だから、「火の鳥」を最後に入れるにあたって、そこだけは自分を主人公に書こうと思いました。
――そういうふうに言われると、新たな興味が湧いてくるのですが、歌詞について根掘り葉掘り聞くのは、想像するという聴き手の楽しみを奪っちゃうかなと思いつつ聞くんですけど、《「俺マシンガン向けられたことあるんだぜ」って得意気に語った9歳の友達》は、じゃあ実在するんですか?
そうですね。その頃、ベルギーにいたんですけど、ブリュッセルのサッカーチームに入っていて、いろいろな国の子がいたんです。港もあるし、EUの本部もあるし、地理的にいろいろなものが集まってきやすい場所で。その友達はコロンビア出身だったんですよ。
――ああ、南米の。
その話を聞いた時は、“おおっ”と思いましたよ。俺はそれまで千葉県にいて。8歳の夏まで。だから、ベルギーに行くだけでもものすごい体験で、フランス語ってマジ、何言っているかわからないって感じだったんですけど。それでも段々、ちょっとした会話ができるようになってきた時に、ベルギーとはまた違うコロンビアの治安の悪すぎる話を聞いて、自分と同じくらいの年齢の子が、そんな経験をしているんだって驚きだったし、それをけろっと自慢してくる感じがタフだなって(笑)。それぐらいから、いろいろなことを考えることも含め、物心がついたと思うんです。当時、彼と『ドラゴンボール』を一緒に見ながら、こんなに違う経験をしていても、同じものを楽しめるんだ、それってすごいと思ったんですよ。それって、めちゃめちゃチープな言い方をすると、文化的なものは国境とか、イデオロギーとかを超えるってことを初めて認識した経験だったのかなって。今回、歌のアルバムになっちゃってたから、そのことを書くのはふさわしいと思ったんですよね。
――なるほど、2番の《婆ちゃん》のエピソードも含め、そのリアリティが火の鳥にたとえた歌に対する思いをより切実なものにするわけですね。最後に、思ったようにライブはできない状況ですが、結成15周年を迎える来年に向けて、フラッドはどんなふうに活動していきたいと考えているのか聞かせてください。
アルバムのツアーができないので、11月25日に恵比寿LIQUIDROOMでお客さんをちょっと入れて、配信ライブをやります。来年、ツアーができるようなったら配信ライブはやらないと思うから、今のうちにそれを楽しもうと思っています。どこにいても今回のアルバムのライブを見てもらえるのは悪いことじゃないので、楽しんでほしいというのが一つあるのと。もう少し先のことを言うと、15周年があるんですけど、テツが5年目とか、姐さんが10年目とか、バラバラなんですけど(笑)、でも、15周年って言ったら、やる理由ができるから(笑)。ライブとか、イベントとか、リリースとか。15周年の15っていう数字に紐づけたおもしろいことをやろうと思っています。どこまでコロナ的なことを意識しなきゃいけないのかまだ見えていないけど、わくわくできる計画だけは超いっぱいしているんで、1個1個やっていこうと思います。今回のアルバムを出して、ちょっと間を空けてなんて、まったく考えていないのでガンガンやっていくし、たぶん隙間にソロとかコラボとか、いろいろやると思うし。コロナがなくなったとしてもコロナじゃない何かは絶対起きると思うから、起きようが起きまいが、俺たちはとにかく行くぞっていう気持ちでいますね。
取材・文=山口智男 撮影=横井明彦

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