甲本ヒロトと真島昌利が
新バンドに臨んだ想いを、
今『THE HIGH-LOWS』から見出す

歌詞に見る想像の余地

さて、最後に歌詞の話をして締め括るのが当コラムの恒例でもあるので、今回も『THE HIGH-LOWS』の歌詞について述べたいところだが、正直言って、本作はM1「グッドバイ」以外、これが何について書かれたものなのか、はっきりとその内容が分かるものは皆無だと思う。いや、「グッドバイ」の内容も筆者の想像でしかないのだから、全部その意味が分からないと断言してもいい。ただ、“意味が分からない”と“意味が通じない”とはまた別の話で、何について歌っているのか分からないけれども、言葉の意味そのものが分からないのはM9「ヤ・バンバ」のタイトルくらいで、英語もほとんどないので(あってもカタカナ英語)、何を歌っているのか判別は付く。だからこそ、そこに想像の余地が生まれる。これは『THE HIGH-LOWS』、引いてはこのバンド、もっと言えばヒロト&マーシーが手掛ける作品の特徴であって、個人的にはとてもいいところではあると思う。

《このまま どこか遠く 連れてってくれないか/君は 君こそは 日曜日よりの使者》《たとえば 世界中が どしゃ降りの雨だろうと/ゲラゲラ 笑える 日曜日よりの使者》《きのうの夜に飲んだ グラスに飛び込んで/浮き輪を浮かべた 日曜日よりの使者》《適当な嘘をついて その場を切り抜けて/誰一人 傷つけない 日曜日よりの使者》(M12「日曜日よりの使者」)。

《世界中が どしゃ降りの雨だろうと/ゲラゲラ 笑える》や《誰一人 傷つけない》などからすると、この“日曜日よりの使者”には悪い印象を抱かない。だが、どんな人なのか具体的なことはまったく分からないし、“使者”とあるから人と想像するけれども、人物を指しているのかどうかは定かではない。だからこそ、これはかなり有名な話だあるが、この“日曜日よりの使者”は松本人志ではないかという都市伝説も生まれ得る。これはこの楽曲が当時放送されていた『ダウンタウンのごっつええ感じ』のエンディングテーマであったことや、松本人志がTHE BLUE HEARTSのファンであったことなどを誰かが一緒くたにしてところから始まったものであるようで、このコラム同様に空想の果てのひとつであろう。まぁ、ヒロトが日曜日に松本人志のテレビ番組を観たことで自死を止めた…というところまで話が広がっているようで、正直言ってそれはどうかとは思うけれども、何かを想像させたり、想起させたり、気分を高揚させたりする──音楽に限らず、それがアートである。“日曜日よりの使者=松本人志”説が広まったことは、↑THE HIGH-LOWS↓が提示したロックがアートの領域に入っていることを、図らずも証明した格好だろう。

TEXT:帆苅智之

アルバム『THE HIGH-LOWS』1995年発表作品
    • <収録曲>
    • 1.グッドバイ
    • 2.ママミルク
    • 3.ミサイルマン
    • 4.BGM
    • 5.ジュー・ジュー
    • 6.ツイスト
    • 7.スーパーソニックジェットボーイ
    • 8.なまけ大臣
    • 9.ヤ・バンバ
    • 10.ビッグ・マシン
    • 11.バナナボートに銀の月
    • 12.日曜日よりの使者
『THE HIGH-LOWS』('95)/↑THE HIGH-LOWS↓

OKMusic編集部

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