『GRIP』は日本のパンクシーンを
形成してきたHUSKING BEEの
決意が詰まった瑞々しい一作

まさにエモーショナルな音

さて、ここからは、そのHUSKING BEEの1stアルバム『GRIP』へ話題を移す。彼らに限らず、それこそHi-STANDARDを含めて、この辺のパンクは、メロディックハードコア=いわゆるメロコアと言われている他、ポップパンク、パワーポップ、あるいはエモと呼ばれているようである。“メロディック”や“ポップ”が付くと何となく分かるが、エモーショナルハードコアから転じたとも言われるエモは、その言葉だけで見たら分かったような分からないような感じだ。もっとも、HUSKING BEEが結成された当時はそんな言葉はまだ使われておらず、[後にエモ等のアーティストを多数輩出するDOUGHOUSEより海外版をリリースすることにより、徐々に日本においてもエモの先駆者という扱いを受け]たというし、他媒体のインタビューによると本人たちにもHUSKING BEEはエモだという明確な意識はなかったらしい。だが、『GRIP』を聴いてみると、ここで鳴っている音楽に“エモーショナル”との形容が付与されたのも納得である。

躍動感。『GRIP』のメロディー、サウンドはこの言葉に尽きるような気がする。もっと簡単な言い方をすれば、歌も楽器の音もとても活き活きとしているのである(馬鹿っぽい言い方ですみません…)。ただ、その躍動感にあふれた音、活き活きとした音を、HUSKING BEEはこの時点では3人のメンバーで出していることに注目せねばなるまい。磯部正文(Vo&Gu)、工藤哲也(Ba)、平本レオナ(Dr)(※2000年に平林一哉(Gu)が加入して4人編成となり、以後、解散~再結成後はメンバーチェンジを経て、現在は磯部、平林、工藤で活動中)。もちろん、M8「QUESTION」ではピアノなど外音もあるし、ギターをダビングしたものもあるだろうが、ライヴでの再現を考えたのか、もともとライヴを通して仕上げてきた楽曲であるからか、3ピースというロックバンドとしては最少の音で最高に仕上げる工夫が随所で感じられる。ほぼ全編でそうなのだが、以下、個人的に“おっ!?”と思った楽曲をいくつか上げてみたい。

まず、アルバム中盤に位置するM4「THE SHOW MUST GO ON」、M5「DON'T GIVE A SHIT」、M6「SHARE THE JOY OF OUR TOUR」辺り。これは1~3曲目では、そのサウンドの疾走感とメロディのセンスに惹かれて、冷静に楽曲の構造を分析するに至らなかったという、こちら側の問題(?)もあろうが、曲順にもリスナーを飽きさせないような配慮もあったのではないかと想像する。M4~M6はいずれもより激しいビートで迫る攻撃的なナンバーであるが、若干リズム隊の手数が減ってサウンドをグルービーに聴かせる箇所があったり、ブレイクがあったりする。この辺は演奏しているメンバーにとって気持ちの良い瞬間ではあろうが、リスナー、オーディエンスにとっても実に気持ちの良い瞬間である。単調に聴かせない工夫に加えて、音楽的快楽を与えていると言ってもいい。M9「ONLY WAY」もそう。パッと聴き、これもアップテンポかつポップなメロディーを持つ実にメロコアらしいナンバーなのだが、展開がわりとめまぐるしく変化していく。それが楽曲全体の疾走感をどんどん上げていっているようで、単純にカッコ良いし、単純にアガる。

メロディーだけに話を絞れば、1990年代のパンクシーンを代表する一曲、M3「Walk」はもちろん決して聴き逃してはならない代物だが、ここはやや変化球ではあるものの、M11「GO IT ALONE」を推してみたい。この曲も全体には十分にメロディアスで、サビは突き抜けるようなキャッチーさを有しているが、イントロのポップな感じに反して、マイナー調に展開していくBメロが何とも言えず良い。こうしたメロディー展開は、上記サウンド部分で述べたようなリスナーを飽きさせない工夫でもあるだろうが、それ以前に、“本当に歌が好きなんだろうな”と思わせる旋律である。何と言うか、個人的にはこういうメロディーを書く人は信用できるという印象だ。コードの合わせ方も絶妙で、この辺からも歌メロを大切に扱っていることがうかがえて心憎い。

OKMusic編集部

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