Eins:Vierが傑作と自負する
『Risk』に刻まれた
ライヴを重ね熟成した
バンドアンサンブルの妙味

『Risk』('94)/Eins:Vier

『Risk』('94)/Eins:Vier

2017年の再始動後、待望の新作であるミニアルバム『five sights』を11月25日にリリースしたEins:Vier。今週は今年結成30周年を迎えた彼らの作品を取り上げる。とは言っても、いつもとは若干趣向を変え、筆者が独善的に選ぶのではなく、メンバーに直接、自らの名盤をピックアップしてもらった。筆者にとっては少し意外だったが、彼がほぼ満場一致で選んだ作品をとは──。

メンバー自身の思い入れが強い

先日、21年振りの新作『five sights』についてEins:Vierの3人にインタビューさせてもらったのだが、その際にせっかくだから、直接この『これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!』にもご協力いただこうと企てた。メンバーに自身のアルバムの中からベストな作品を選んでもらおうという試みだ。当コラムでチョイスする作品はある程度キャリアのあるアーティストのものであることがほとんどで、発売からわりと長く時間が経っている作品が多く、バンドが存続していないケースなども少なくないし、それゆえに作者の直接話を聞く機会がなかったりする。千載一遇…はさすがに大袈裟だが、こんな機会はそうそうあることではない。新作の話をうかがったあと、少し時間をいただいて、Eins:Vierの名盤をメンバー自身に訊いた。
■Eins:Vier 『five sights』インタビュー
https://okmusic.jp/news/403667/
そうは言っても、彼らが何をチョイスするのか、こちら側もまったく当りをつけないわけではなく、ある程度は何が出てくるのかは想像して臨んだ。それと言うのも、今回の『five sights』にはボーナストラックとして、「Staying and Walking」のセルフカバーが収録されている。これはEins:Vierのメジャーデビューアルバム『WALK』の中の一曲。《僕達は止まる/行き場もなく/裏切りを捨て/憎しみも捨てここで/僕達は歩く/行き先もなく/憐れみを抱き/願いを持ち明日へと》(「Staying and Walking」)。決して派手なナンバーではないけれども、浮足立つことなく進んで行こうといったような、彼らのスタンスが歌詞にも表明されているようで、『WALK』が発表された1995年当時から個人的には印象に残るナンバーであった。それがこの度、25年を経て再収録されたわけで、『WALK』はさぞメンバーにとっても思い入れが強い作品ではなかろうかと──当りをつけたというよりも、勝手にそう思い込んで話を訊いてみたのだが、彼らから出てきたのは(少なくともその時の自分にとっては)意外なタイトルであった。

“Eins:Vierの過去作から一作品をメンバー自身に挙げてもらうとするとどのアルバムになりますか?”。その質問に“『Risk』!”と即答したのはLuna(Ba)。“もちろん全アルバムに思い入れはあるんですけど…”と前置きしつつ、その理由を語る。“『Risk』の前に『CHAOS MODE』というミニアルバムを出しましたけど、あれはまだライヴをやっていない中で作ったものだったので。そこからライヴを積み重ねた結果できたのが『Risk』。だから、ちゃんとした初めての作品という気がしてて。今聴いたら情けないくらいに稚拙なんですけど、勢いがあって…”という。“僕も『Risk』ですかね。拙いんですけど、自由にやれたというか”とYoshitsugu(Gu)も続けたが、その台詞にすかさずLunaが反応。“そう。自由にやれたんですよ! なぜなら、プロデューサーがいなかった。だから、好きなようにできた。そこから先(『Risk』以降のアルバム)は全部、大人がついてましたから(笑)”とつけ加えた。ちなみに今回の『five sights』もセルフプロデュースである。これも当然のことながら“自由にできた”と笑う。

ふたりが『Risk』を挙げたことをこちらが意外に思っている雰囲気が伝わったのか、そこでHirofumi(Vo)が“そこで俺も『Risk』って言ったら、全員がインディーズのアルバムを上げるのか!ってことになるよな”と少しおどけながら語ったのは、何とも明るいキャラクターの彼らしい。こう続けた。“『WALK』も良かったし、『timeless words』(1996年発表のメジャー2nd)も良かったですよ”と振り返る。“1st以降はほんま苦しかった。でも、苦しんだ時期のアルバムはどれも今は自分の中では大切になってます”。そんな前向きな姿勢もHirofumiらしさではあろう。ただ、その一方で、彼もまた“思い入れで言うならば、やっぱり『Risk』とか『WALK』になる”と、そこに『Risk』を挙げた。多数決であれば、メンバー3人のうち凡そ2.5人がインディーズでのフルアルバム『Risk』を自身の傑作と挙げたわけで、これはもうEins:Vierの名盤は『Risk』で決まりだろう。筆者に異論などあろうはずもない。唯一、インディーズ作品だけに“家に音源あったかな?”という不安は若干あったけれども、担当編集者から後日“『Risk』、送りますね”と音源が届いた。流石である。

OKMusic編集部

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