関西大学応援団吹奏楽部の新たな挑戦
ーーどんな状況もチャンスに変えてき
た部が挑む、初の有料配信にかける想
いとは

12月6日(日)に関西大学応援団吹奏楽部が、イープラスが運営する有料ストリーミングサービス「Streaming+」を使用した配信公演を実施する。2020年、関西大学応援団吹奏楽部は、2月9日に開催された『シンフォニックジャズ&ポップスコンテスト』で金賞&個人賞を獲得、その勢いのまま2月11日に開催された『アンサンブルコンテスト』関西大会でも金賞を獲得し、全国大会への出場が決定するなど、他団体からも「今年の関大は一味違う」と言われる期待の年になるはずだった。しかし3月以降、新型コロナウイルスの影響で全国大会が中止となり、予定されていた大会がすべて中止に。だが、そのような状況でも全く悲観的にならず、むしろ新しいことに挑戦するチャンスだと、部として初の有料配信を開催するに至った。有料配信は『クリスマスコンサート』『定期演奏会』の部史上初めての1日2公演となり、演奏会を配信するだけでなく、自分たちが今できることの可能性を探り「応援チケット」制度や、映像制作のプロによるドキュメンタリー映像など、今やりたいこと、できることを詰め込んだ今年一年の集大成となっている。今回SPICEでは、関西大学応援団吹奏楽部の松田康士郎部長にインタビューを行い、今回の配信公演の実現にも繋がった松田部長の、どんなことにも楽しんで飛び込む性格を表すエピソードを交えつつ、今回の配信公演を決めた経緯や、配信公演にかける並々ならぬ想いを訊いた。
関西大学応援団吹奏楽部 松田康士郎部長 撮影=田浦ボン
●コロナ禍だからこそ経験できたことがあるし、更にこれから伸びていく部だと思う●
ーー関西大学応援団吹奏楽部は、基本的にどのような活動をされているのでしょうか?
私たちは夏に行われる『吹奏楽コンクール』のほかに、2月に東京で行われる『シンフォニックジャズ&ポップスコンテスト』や『アンサンブルコンテスト』などいろいろな大会に出場しています。2020年は『シンフォニックジャズ&ポップスコンテスト』で念願の全国大会金賞、個人賞としても3年生の部員がベストベーシスト賞を頂きました。さらに『アンサンブルコンテスト』の関西大会で金賞を頂き、21年ぶりに関西代表として全国大会出場が決まっていました。
関西大学応援団吹奏楽部 撮影=田浦ボン
ーーその『アンサンブルコンテスト』は吹奏楽部にとって、どのような立ち位置のコンテストなのでしょうか?
『アンサンブルコンテスト』は『吹奏楽コンクール』に並ぶ全日本吹奏楽連盟が主催している大きな大会で、予選があり、そこを勝ち抜いた代表が全国大会に出場することが出来る、という大会です。ですので、その全国大会で金賞を取るということはとても価値があり、私達も毎年そこを目指して出場しています。出るメンバーも部員全員というわけではなく、部内選考会で代表を決定し、選ばれた人間が大学の名前を背負って出場することになるので、部員は皆そこに賭けて本気で取り組んでいます。
ーーその大事な大会で全国大会出場をつかみ取ったというのは本当に素晴らしい結果ですよね。『シンフォニックジャズ&ポップスコンテスト』も初めて金賞、さらにベストベーシスト賞を3年生の瀬古さんが取られています。
彼女は、実は本格的にベースを始めて約半年だったんです。もともと多少経験はあったかもしれないですが、当初は「とりあえず曲を弾けるようになろう」というところからスタートして、努力した結果、賞に結びつきました。金賞はもちろん嬉しかったのですが、部員が個人賞を取ったことが本当に嬉しかったですね。
関西大学応援団吹奏楽部 『OSAKA GENKI PARK』での集合写真
ーー2020年はかなり結果が出ている年だったんですね。
そうなんです。今年はすごい乗りに乗っていたというか、他の大学からも「今年の関大は今までとはひと味違う」と言われるような、自分たちでもワクワクする年でした。だからコロナの影響で大会が出来なくなって、悔しいという思いはあるのですが、だからこそ経験できたこともありますし、運営体制も整ってきたので、これからさらに伸びていく部だと思っています。
ーー関西大学応援団吹奏楽部といえばもう一つ、『OSAKA GENKi PARK』での矢井田瞳さんとのコラボが話題になりましたよね。
本当にあのステージがキッカケで、更に注目度が上がったというか、他の吹奏楽部の方や、関係者の方から連絡をたくさん頂いたので、モチベーションアップに繋がりましたね。
ーー関西大学出身の矢井田瞳さんと同じステージに立つというのは、やはり得るものは大きかったのではないですか?
アーティストの方と共演するなんてお金を払っても出来ないことなので、本当にいい経験をさせていただきました。僕の担当する楽器(ファゴット)は野外では演奏出来ないので、サポートとして観ていましたが本当に皆楽しそうでした。
ーー4月以降演奏する機会がないなかで、初めての有観客ステージでしたが、いかがでしたか?
「本番って良いな」と改めて感じました。観客に向けて演奏する楽しさを再確認できたので、あの本番があったからこそ部全体で頑張ろうという意識が何段階も上がったなと思います。新入生と一緒に立つことが出来た本番としても最高でした。改めて魅力に気づいてくれたというか「この吹奏楽部はこんな本番ができるんだ」という実感を与えることが出来たのは嬉しかったですね。
●過酷な環境に飛び込むのが好きというか、新しいことに挑戦するのが好きなんです●
関西大学応援団吹奏楽部 松田康士郎部長 撮影=田浦ボン
ーー新入生にとっての初ステージが『OSAKA GENKi PARK』で、しかも矢井田瞳さんとのコラボ。確かに印象に残る初ステージですね。ちなみに部員数は現在何名で活動されているのでしょうか?
92名です。部員数も少し前までは35名くらいだったのですが、ここ数年で急増したんです。
ーーかなり増えましたね(笑)。急増の要因はどういった部分にあるのでしょうか?
特に大きいのは4年前から音楽監督に伊勢敏之先生に来て頂いていることだと思います。大阪音楽大学の特任准教授をされている方なのですが、中学校や高校に指導に行かれている方でもあるので、そこで「またあの先生の下で演奏したい」と思った学生が入部してくれているんです。
ーー魅力的な先生なんですね。
音楽的な指導や運営的なところはもちろん、学生と距離がすごく近い先生で、私達とご飯に行ってくださったり、一緒に遊びに行ったり、様々な面でとても親身になってくださる先生です。
ーーちなみに松田さんは入部前には伊勢先生のお名前はご存知だったんですか?
いえ。実は大学に入学するまで、運動部だったので吹奏楽の経験はなかったんです。
ーーそうなんですね! なぜ吹奏楽部に入部されたんですか?
もともと新しいことにチャレンジするのが好きで、大学でも何かやったことのないことにチャレンジしてみようと探していた時に、たまたま友人の誘いで吹奏楽部の練習を見学したのがキッカケですね。その時、初めて生で演奏を聴いたんですが、それが本当に衝撃的で、感動的で。すぐに入部を決めました。
ーーちなみに運動部での経験は生かされてるなと感じる瞬間はありますか?
ありますね。大学の吹奏楽部は未経験で入る人がなかなか少なくて、ましてや運動部から吹奏楽部に入るという人も少ない方だと思うのですが、その分、染まってない意見というか、長く吹奏楽をやっている方とはまた違った視点からの意見が出せるというメリットはあったのかなと思っています。
ーー長く続けている方からすると、型破りに感じる判断が出来たということですね。ただ未経験だった部活動の部長を務めるのはなかなか勇気が必要ですよね。
そうですね。あえて過酷な環境に飛び込むのが好きというか、新しいことに挑戦するのが好きなんです。部長を務める時も、新しいことをやるからには色んな経験を最前線で味わおうと思って立候補しましたし、自分の成長=部の成長に繋がればいいなと思っていました。
●配信サービス開始のニュースを見た瞬間、とにかく動きたくて誰にも相談せずにメールを送りました●
関西大学応援団吹奏楽部 4年生集合写真
ーー新しいことといえば、今回定期演奏会を「Streaming+」で配信されるということなのですが、配信公演を決めたのはどのような経緯だったのでしょうか?
コロナウイルスで3月以降、色んな公演が中止・延期になっていくなかで、定期演奏会ももしかしたら出来ないんじゃないかなと思っていて。何かいい方法は無いかと探している時に、イープラスさんが「Streaming+」という配信サービスを開始するというニュースを見たんです。それを見た瞬間「これしかない」と思い、誰にも相談せずにすぐメールを送りました。もちろん手続きなどはあとで皆に相談しようと思っていましたが、その時はとにかく動きたくて(笑)。結果的にドキュメンタリー映像を作成する等の提案などたくさん頂くことが出来たので良い公演にすることができそうです。本当に頼んで良かったなと思っています。
ーーとにかく動きたくてメールを送るというのは、さすがの行動力ですね(笑)。今までも衝動的に動いてしまうタイプだったのですか?
僕自身もそうですし、ここ2、3年は「常識にとらわれず、何でも挑戦しよう」というのを部のスタイルとしてやっていて。僕達の部活は推薦入部がないので、いわゆる音楽エリートは居ないんです。いわば雑草集団。だからこそ何でもチャレンジして、型破りなことをやって、良い結果に繋げようと思って活動しているんです。音楽は勝ち負けではないと思いつつ、やるからには他の大学よりも魅力を感じてもらえるようにしようと、みんなで取り組み続けています。
ーー松田さんをはじめ、皆さんのチャレンジ精神が部全体に浸透している結果ということですね。今回の定期演奏会で配信以外の部分で新しくチャレンジしたことはありますか?
今回、チケット販売のパターンを「レギュラーチケット」「応援チケット」「応援プレミアムチケット」の3パターン用意しました。応援チケットの売上金は、私達の新しい楽器購入などに当てさせていただくとともに、残りの全額を日本ユニセフ協会に寄付をすることになりました。コロナ禍で大変な中、演奏会が開催できるのはとてもありがたいことですし、配信の実現まで携わってくださった多くの方に感謝するのはもちろんなのですが、それだけではなく、私達の演奏が「もっと多くの人に感動や喜びを与えられたら」という話にもなって。その方法の一つとして、大金になるわけではないですが、寄付によって世界の子どもたちの力になれればと思ってます。
ーー配信関連以外の部分の取り組みで良かったなと思えたことは他にありますか?
結果が出たことでいうと、チケット販売関係ですね。これも2、3年位前から「チケット販売促進チーム」というものを部内に作りました。今まで販売、広報、座席設定を別のチームがそれぞれでやっていたので、あまり戦略的なものはなくて、定期演奏会も満席にならなかったんです。でも販促チームを作って戦略的な部分を整えて行くことで、年々お客さんが増えて、昨年の定期演奏会は数年振りにホールが満席になって。約1,700席が満席になった会場でいただく拍手の音は鳥肌が立ちましたね。
●今回の配信公演はテレビ番組やドキュメンタリー映画を観る感覚で楽しんでいただけると思います●
関西大学応援団吹奏楽部 練習風景
ーー先程も少し仰っていましたが、今回定期演奏会の配信だけでなく、ドキュメンタリー映像の放映もあるそうですね。こちらはどのようなものになるのでしょうか?
映像は、定期演奏会の開演30分前から配信で流す予定になっていまして、当部の映像制作チームが、映像のプロの方に全面的な協力をいただきながら本格的なものを作っています。ただ基本的に当部の映像制作チームは3年生が中心になっていて、内容に関しては全く把握してないというか、させてくれないというか。
ーー内容を教えてくれないんですか?(笑)
そうなんです。というのも4年生にサプライズ的な要素もあるらしくて。それも含めて今から完成を楽しみにしています。
ーープロの方と一緒に映像を製作するというのはなかなか出来ない経験ですね。
当初はプロの方が製作してくださるのかと思っていたのですが、もちろんサポートはして頂きつつ、当部の映像チームが中心になって部員へのインタビューや、演奏風景の撮影などを行っているので、部としてもとても勉強になっています。本番ではドキュメンタリー映像の他に、いわゆる中継のようなものも挟むとも聞いています。
ーー本当にテレビ番組のような形になるということですね。
そうなんです。普通に演奏会を配信するのではなくて、演奏会を普通に観るだけでは体験できない楽しみ方ができるというか。「どんな人達が、どんな道を辿ってこの演奏会までたどり着いたか」というストーリーを観た上で、演奏を聴いていただくという形になっているので、私達のことを全く知らなくても、それこそテレビ番組やドキュメンタリー映画を観る感覚で楽しんでいただけると思っています。
ーー定期演奏会だけでなく、当日は15時からクリスマスコンサートも開催されます。こちらにも配信ならではの映像は放映されるのでしょうか?
せっかくの配信なのに何もないというのは寂しいので、何かしらのシンプルな映像は流したいと話しています。この公演は、そもそも1日2公演自体、当部史上初めてでして、お昼に開催するからこそ、今まで演奏会を観たことがない方々にも楽しんでいただけるものにしたいと考えています。
●総勢92名のアツい気持ちを、画面を超えてお伝えできるような演奏をします●
関西大学応援団吹奏楽部
ーー初めて吹奏楽の演奏会を観る方に対して、演奏する楽曲の選曲ポイントなどありますか?
楽曲はとてもポピュラーなゲーム音楽や、ルロイ・アンダーソンの「タイプライター」などユーモア溢れるような楽曲で楽しんで頂き、少し早めのクリスマス感を味わってもらえる構成にしています。どんな方に観ていただいても楽しいコンサートになると思います。
ーー現在発表されている楽曲も『スーパーマリオブラザーズ』などすぐにイメージできる楽曲が並んでいますよね。当日2公演目となる定期演奏会についてはいかがでしょうか?
定期演奏会は、本当に私達の集大成というか、全国大会に向けて色んな曲を練習していたので、そういう曲を含め、吹奏楽の良さであったり、格好良さであったりを思い切り発揮できるステージを作っています。クリスマスコンサートよりは、専門的な曲や耳馴染みのあまりない曲があるかも知れないですが、僕が入部を決めたあの瞬間に感じた「めちくちゃカッコ良い……!」と思ってもらえる曲を沢山揃えました。特に2部はシンフォニックジャズという分野に特化したステージになっていて、古くからある曲から最近話題になった曲まで、シンフォニックジャズの歴史を共に旅できるようなものになっています。ザ・シンフォニーホールという全国的に見ても有数の素晴らしいホールで演奏させていただくので、会場に負けないくらいの格好いい公演を目指し、吹奏楽に興味ある無しに関わらず、憧れてもらえるような演奏をします。
関西大学応援団吹奏楽部 撮影=田浦ボン
ーーこの一年間、良いこと、悪いことを含めて、これまでにない経験をした上で開催される定期演奏会は、ただの集大成に留まらない想いが詰まっているような気がします。
そうですね。コロナ禍で「すごい大変そう」「大会ができなくて可哀想」という声もよく頂くのですが、私達は全然そういうふうに感じていないんです。むしろ「こういう状況でもこんなに楽しんで前を向いているんだよ」というメッセージを、ドキュメンタリーと演奏を通して、できるだけたくさんの方に届けることができればと思っています。他の団体もきっとみんな前しか向いていないと思いますし、試行錯誤しながら様々なことに取り組んでいると思います。 私達の演奏会をキッカケに、そういった団体ももっと沢山いるということも知っていただければ幸せですね。
ーーこの状況もあって、どうしても同情的な気持ちが出てしまうかもしれないけど、そうではないということですね。
そうですね。今できることを全力でやっているこの瞬間が幸せなんだということが証明できる演奏会にします。配信という形ではありますが、総勢92名のアツい気持ちを、画面を超えてお伝えできるような演奏をしますので是非観て頂きたいです。
ーー全てに対して、全力で、しかも楽しみながら取り組んでいる大学生ならではのアツさがきっと伝わる公演になると思います。本日はありがとうございました!
取材・文=城本悠太 撮影=田浦ボン

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