東啓介1st Musical Concert『A NEW
ME』ライブレポート~「ここからの僕
の成長を見て欲しい」

2020年11月28日(土)、東京・山野ホールにて開催された東啓介初のソロコンサート『A NEW ME』。俳優デビューから7年、舞台をホームグラウンドに活躍する中で着実に育まれた“ミュージカル愛”をまっすぐカタチにして届けてくれた充実した時間。その模様をレポートする。

客席の灯りが落ちる。大きな時計が映し出されたステージの上でバンドが演奏するのは、耳慣れたミュージカルナンバーのフレーズをつなぎ合わせた“序章”。そして始まるのは東啓介が歌で綴る自身の過去・現在・未来。ここにしかない束の間の歌の時間旅行の幕が開いた。
スーツ姿の東が登場し、最初に披露されたのは『マイ・フェア・レディ』より「君住む街角」。丁寧な歌い出し。やがて客席から手拍子が起こり、自身も共に手を叩きながら場内をゆっくりと眺めやる。緊張と照れくささと嬉しさが混ざり合ったような表情の東。客席もまだ少し緊張感が漂う。この初々しい空気はファーストコンサートならではの“宝物”だ。ここにいる誰もがこの先もきっとこの感触を忘れることはないだろう。
1曲目が終わり、まずは最初のごあいさつ。続いて初めて夢の帝国劇場に立った『スカーレット・ピンパーネル』の思い出を語り、「ひとかけらの勇気」、そして初めて夢の帝国劇場に立った『ダンス・オブ・ヴァンパイア』より「サラへ」を披露。この2曲が東にとっての“PAST”。本格的なミュージカル作品へとその一歩を踏み出していった頃の気持ちと、「自分は今、みんなに歌を届けているんだ」という喜びを乗せた歌声が、柔らかくも強く響いていく。
(写真:岩村美佳)
「では、時を未来に進めましょう。僕の目標、僕の夢の楽曲です」と、“FUTURE”パートに選んだのは『モーツァルト!』「僕こそミュージック」。とても素直なボーカルで、♪このままの僕を愛してほしい のフレーズがぴったり。『Moulin Rouge!』「Your Song」、『Dear Evan Hansen』「For Forever」は英語詞にトライ。特に「For Forever」は思い入れの強いナンバーとのことで、「まだ日本で上演されていませんが、気になった方はぜひ調べてみてください!」とMCでも強くお勧めしていた。
「ここからの僕の成長を見て欲しい」と自身も言っていたように、3曲ともテクニックよりも「好き」が勝る荒削りな部分もあったが、そのパッションはあくまでも心地がいい。また「確かにここからさらに洗練されていったら…」と想像しながら聴いていると、取り繕うことなくスタートラインに立った東のブレない魂に触れられたようで、なんだかワクワクとした気持ちになった。
“PRESENT”と命名されたお楽しみパートではサプライズゲストの尾上右近が! 公演中止を余儀なくされたもののコンサートとして開催された『ジャージー・ボーイズ』ファミリーの登場だ。チームは違ったがコンサートのおかげでグッと仲良くなったふたりのトークを挟み2ショットでの「Decenber ‘63(Oh What a Night)」が始まると、再び大きな手拍子が起こりオーディエンスの温度もワンアップ。さらに尾上がソロで「Can’ t Take My Eyes Off of You」をホットに歌い上げ、「東啓介さん、みなさんに負けないくらい好きです(笑)。共に応援しましょう!」のメッセージを寄せてステージを後にした。
(写真:岩村美佳)
歌にMCにとノンストップでステージに立っていた東もここでちょっとクールダウン。質問コーナーで客席とのコミュニケーションを楽しみ、さらには「一番緊張する〜」と、ギターの弾き語りも披露。「ストレートな歌詞とギターの音色が合っててすごく好き」な阿部真央の「嘘つき」。ミュージカルナンバーとは違うJ-POPへのアプローチ、愛する切なさと痛みが刻み込まれる歌の情景が心に刺さり、こういう歌も似合うなぁとしみじみ。
(写真:岩村美佳)
再び仕切り直し、ラストスパートへ。「現在の僕を表す2曲です」と、まずは『ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド』から「独白」を。3月に5公演だけ上演が実現した忘れられない一作。主演の三浦春馬から「とんちゃんは歌が上手いから大丈夫」などたくさん声をかけてもらったこと、そして「春馬君の思いを継いでこの曲を届け続けたいと思い選びました」の言葉に続き、人間の生きる尊厳を問うようなビッグナンバーを、勇壮さを持ってドラマティックに歌い上げる。
もう1曲は『マタ・ハリ』「普通の人生」。キャリアから見れば“現在”よりも“過去”なのだが、それでもここで歌おうと決めたのは「今の自分の成長をみなさんに感じてほしかった」から。加藤和樹とのWキャストに抜擢されがむしゃらに取り組んだものの、最高音が出ない、任された楽曲を歌いこなすことができないという結果に満足できずにいた当時の自分にも報いるためのナンバーだ。ありふれた穏やかな暮らしへの思いを綴る曲の世界観に寄り添う太くあたたかな歌声、曲と向き合った時間の長さと自信が感じられる着実な歌唱。歌い手自身の人柄も伝わってくるようだ。
(写真:岩村美佳)
鳴り止まない拍手の中でいよいよラストナンバー、『ジキルとハイド』「時が来た」が流れる。♪迷いはない 運命が動いていく 今こそ見果てぬ夢 手に入れる時だ…。今日ここで夢の実現に向けて力強い一歩を踏み出した自身の思いにこれ以上ふさわしい曲はないセレクト。清々しく堂々としたオーラと伸びやかなロングトーン。スポットライトに照らされ、チャンスは自らの手で切り開き掴んでいくんだという若者の“正しい野心”が眩しい。
公演前のインタビューでも語ってくれていたように、このコンサートは東がミュージカルの世界で生きていくことへの決意表明。未来に向けありのままの今の自分を届ける、全世界への真摯なプレゼンテーションだ。完成形ではないからこそのピュアな魅力、溢れ出す歌への情熱をひたすらに届けてくれた直球のステージはまさに可能性のアソート。これからの活躍も大いに期待させる迷いのない“NEW ME”、この特別な瞬間の姿をしっかりと記憶に刻み込んでおこうと思う。
(写真:岩村美佳)

取材・文=横溝由香

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