ACIDMAN大木、アジカン後藤、テナー
ホリエらが弾き語り “クローズドな
空間”をテーマにした新たなオンライ
ンフェス

11月28日、オンライン音楽フェス『Fanicon Private Fes. 2020』が開催された。
『Fanicon Private Fes. 2020』は、コミュニティ型ファンクラブ「Fanicon(ファニコン)」が初主催するオンラインフェス。新型コロナウイルス感染拡大の影響によってライブエンタテインメントが大きな打撃を受けた2020年、様々なアーティストが配信ライブを行い、オンラインのフェスやイベントも少なからず開催されるようになった中、『Fanicon Private Fes. 2020』が見せてくれたのは、“クローズドな空間”をテーマにしたオンラインフェスの新たなアプローチだった。
出演アーティストは、キュレーターとMCをつとめた大木伸夫ACIDMAN)をはじめ、後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)、ホリエアツシストレイテナー)、菅原卓郎9mm Parabellum Bullet)、フルカワユタカ(ex,DOPING PANDA)、荒井岳史the band apart)という計6組。ほぼ全員が同世代、00年代から今に至るまでそれぞれに切磋琢磨しながら円熟のキャリアを積み重ねてきたバンドマンたちだ。昨年までなら夏の野外フェスにバンドとしてラインナップに並んでいるような面々だが、今回はアコースティックのスタイルでの出演となる。とはいえ、単なる“弾き語りイベント”というよりも、親交も深く、気心の知れた6人の関係性もあって、どこか“プライベートな時間の共有”を感じさせてくれるような親密さに満ちたフェスとなっていた。
開演は17時。場所はライブハウスではなく普段レコーディングやリハーサルに用いられている音楽スタジオだ。落ち着いたムーディーなフロアに6人が並んで座り、まずは挨拶がわりのトークパートからイベントはスタート。運営側からの熱のこもった働きかけを受けて仲間のミュージシャンに声をかけたと、大木がフェスの開催に至る経緯を語る。Fanicon内でファンコミュニティを開設している大木、菅原卓郎、荒井岳史、フルカワユタカの4人は、それぞれのファンコミュニティで普段生配信している内容やムード、ファンとのコミュニケーションなどについても語り合う。
画面にはファンからのチャットによるコメントも並び、タブレットでそれを見たアーティストがリアルタイムで呼びかける場面も。配信中の売上の全ては参加アーティストにゆかりのある全国のライブハウスに寄付されるとのことだ。
■荒井岳史
木の壁をバックに観葉植物の置かれたスタジオに画面が切り替わり、一番手に登場したのは荒井岳史だ。先ほどまでのリラックスしたムードとは一転、張り詰めた空気の中で歌い始める。まずはmajikoに提供した「Learn to Fly」のセルフカバーから、普段は弾き語りではあまりやらないというthe band apartのナンバーの「for get me not pt2」を披露。リズミカルなプレイに穏やかな歌声を響かせ、ソロ名義の楽曲「ダンス・ウィズ・ザ・ワールド」へと続ける。
荒井はFaniconの「荒井の会」で普段から雑談しながら弾き語りを配信しているとのことで、「ライブをすること自体が心の支えになっていた部分が大きかった。それが無くなったときに、コミュニケーションをとったり、誰かが聴いてくれている場所ができるようになったことに救われました」と、コロナ禍以降の心境を語る。
さらには、今年に入って作ったというタイトル未定の新曲も披露。朗らかなメロディに乗せて再会への希望を歌った曲だ。「自分自身も音楽に救われている、自分が歌うこと自体に救われているという、音楽の中に光を見た瞬間があった」と、熱く語る。最後には「希望」を披露し、伸びやかな歌声を響かせてパフォーマンスを締めくくった。

■フルカワユタカ
再び画面が切り替わり、続いてはフルカワユタカが登場。ハート型のサウンドホールがキュートなアコースティックギターを抱え、まずは「Yesterday Today Tomorrow」を披露。シャッフルビートに乗せた軽快なナンバーを歌い上げると、続けて畳み掛けるようなフレーズでラテンなムードを醸し出す「密林」をプレイ。どちらも今年3月にリリースされたソロのベストアルバム『傑作選』に収録された新曲だ。
「フルカワユタカがどんな風に生きてきて、どう歌を磨いてきたのかを見せられるのが嬉しいです」。そう一言告げると、そこからはMCを挟まずストイックに歌と演奏を連ねていく展開。DOPING PANDA時代の代表曲「Crazy」に続けて、「busted」から疾走感あふれる「シューティングゲーム」「ドナルドとウォルター」と、ソロの楽曲を続けて披露する。
2020年には全都道府県コンプリートツアーを弾き語りとバンドセットの2形態で予定していたフルカワユタカ。コロナ禍で全公演が中止になったが、それでもオンラインに場所を移して活動を進めてきた。Faniconのコミュニティ「星が降る町」では生配信ライブも展開してきた。そんな活動の充実を感じさせるパフォーマンス。「歌もギターも止めようがないです」と告げ、ラスト「farewell」を高らかに歌い上げてライブを終えた。

■菅原卓郎
続けては菅原卓郎が登場。「ハートに火をつけて」からライブをスタートし、色気に満ちた歌声を響かせる。激しくアグレッシブなバンドサウンドが身上の9mm Parabellum Bulletの楽曲だが、アコースティック・ギターのアレンジでは哀愁に満ちた歌謡曲のようなメロディが引き立つ。
続いては「この曲を作ってよかった。音楽に自分たちが救われたと思う曲」と告げて「名もなきヒーロー」を歌い上げる。去年にリリースされた『DEEP BLUE』に収録された、心を奮い立たせるようなフレーズを持ったエモーショナルな“応援ソング”だ。さらには今年9月にリリースされたトリビュートアルバム『CHAOSMOLOGY』でストレイテナーがカバーしたバージョンで披露した「カモメ」、初期の「The World」と熱唱を見せる。
9mm Parabellum Balletは今年3月から『カオスの百年〜Never Ending Tour 2020〜』と銘打ったツアーを予定していた。トラブル続きだったここ数年を経て、リリースやバンドの編成にこだわらない文字通りの「終わらないツアー」を始めようとしたところで、16公演が中止となった。そんなバンドの状況を語り「置かれている状況をそのまま書こう、と作った曲です」と、9月にリリースした新曲「白夜の日々」を歌い上げる。そしてラストは「The Revolutionary」。ブルースハープを吹き鳴らし、妖艶な歌声で魅了した。

■ホリエアツシ
大木のMCを挟んで、ホリエアツシが登場。まずはレディオヘッドの「High & Dry」のカバーからライブをスタートする。アコースティックギターの弾き語りのスタイルにリバーブ音が加わって、独特の荘厳なサウンドを奏でる。そこから「Boy Friend」「タイムリープ」と2018年にリリースしたストレイテナーのアルバム『Future Soundtrack』からミドルテンポの楽曲を続ける。
さらには、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの「無限グライダー」のイントロを弾き、歌い始める素振りを見せ「やらないんですけど――」と、演奏を止め笑顔を見せる。「やろうと思えば全員と一緒にできる感じなんですけれど、一人ひとり徹しようということで」と語り、「REMINDER」を披露。シンプルな弾き語りのスタイルで、歌声に宿る真っ直ぐな力が伝わってくる。
「次にやるときは、一人一人ひな壇みたいなところにいて、基本トークベースみたいなものもやってみたいな」と語り、続いての「Toneless Twilight」は鍵盤の弾き語りで披露。このスタイルで歌うのは初めてだという。ピアノの優しい音色に乗せ、切ないメロディを歌い上げる。
「最後の曲はみんなのささやかな幸せを願って」と「灯り」を歌ったホリエアツシ。12月2日にはストレイテナーのニューアルバム『Applause』もリリース。心温まるようなパフォーマンスとなった。

■後藤正文
画面が切り替わると、まずは口笛が聴こえてくる。後藤正文のライブはASIAN KUNG-FU GENERATIONの「荒野を歩け」からスタート。アコースティックギターを抱え身体を揺らしながら、あっという間にその場の空気を掴むような歌を響かせる。「観客が目の前にいないのは異様な感じするし、ドキドキもする。でも、楽しくやれればいいなと思います」と語り、続けて「今を生きて」を歌う。言葉とは裏腹に、どことなくリラックスした佇まいも見える。
続けて披露したのはGotch名義のソロ曲「Wonderland / 不思議の国」。トーキングスタイルに近い歌い方にも、ブルースハープの演奏にも、どことなく土の匂いが漂う。「楽屋のテレビモニターでみんなで観てるんですよね。いろんなツッコミが入ってると思うんだけど、それが聴こえないのがさみしいです」と語り、続けては先ほどホリエアツシが披露しかけた「無限グライダー」を歌うかと思いきや――「アコギじゃできないんだよね」とイントロで止めて、「もう一曲ソロの曲を歌います」と「A Girl in Love / 恋する乙女」へ。さらには10月にリリースされたばかりの新曲「触れたい 確かめたい」を歌った。
「みんなも切実に生きていると思うんですが、どこかでハグできたり握手できたり、ライブハウスで、みんな笑顔で『いい夜だったね』って言えるような日を願いながら」と語り、ラストは「ボーイズ&ガールズ」。静かに抑えた歌い出しから徐々に熱を込めて、最後には力強いハイトーンのシャウトで歌い上げた。じわじわと情感がこみ上げてくるような熱演だった。

■大木伸夫
イベントのラストに登場したのは、フェスのキュレーターとMCもつとめた大木伸夫だ。椅子に腰掛けたスタイルで、まずは「FREE STAR」からスタート。丁寧にメロディを辿る歌声に情熱的な響きを宿らせ、「何度歌っても毎回違う。歌にはそういう不思議な力がありますね」と語る。続けてはデビュー当時の楽曲「赤橙」。爪弾くギターの優しい音色は、レンガの壁と観葉植物をバックに机には小さなランプを置いたインテリアも相まって、とてもムーディーな雰囲気を醸し出す。
続けては、弾き語りのライブではたびたび披露しているというビートたけし「嘲笑」のカバーを披露。ビートたけしの詩集「KID RETURN」に収載されていた詩に感動した玉置浩二が曲をつけたことで生まれたという一曲だ。ACIDMANでもたびたび宇宙をテーマにした楽曲を作り、Faniconのコミュニティ「ある証明」では「宇宙講座」も行っているという大木。星をテーマにした曲を探していたときにこの曲に出会い、ビートたけしの書いた詩に共感したという。
さらには「世界が終わる夜」を、熱を帯びた声で歌い上げる。アコースティックギター1本で壮大な情景を思わせるようなバラードだ。感動的な余韻を残し、ラストは「Your Song」。ポジティヴなフィーリングを響かせての終演となった。
「長丁場、本当にどうもありがとうございました」と告げると、そのまま大木は「お時間のある方はこの後もお付き合いください」と、ノーカットでカメラと共に打ち上げ会場に移動する。そこには次の仕事の予定に移動した後藤正文以外の出演者たちが待ち構えており、ビールでの乾杯から打ち上げがスタート。ライブとは一転、お酒を飲みながらの和やかなムードの雑談もそのまま配信するというスペシャルな展開となった。
打ち上げ配信は1時間以上におよび、ファンのコメントを見ながら語り合う場面も。コミュニティ型ファンクラブであるFaniconらしい、まさに“プライベート”な空間でアーティストのパフォーマンスと素顔を身近に感じられるようなオンラインフェスだった。

取材・文=柴那典 撮影=本間裕介

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