スガ シカオが一人でアコギをかき鳴
らす特別なショー『Hitori Sugar To
ur 2020-セトリ再現ライブ‐』に見た
、混乱の2020年から再起の2021年への
希望の炎

SUGA SHIKAO Hitori Sugar Tour 2020 –セトリ再現ライブ- Supported by J-WAVE Mercedes-Benz THE EXPERIENCE

2020年12月4日(金)昭和女子大学 人見記念講堂<2部>
スガシカオが観客のいるステージへ還ってきた。『Hitori Sugar Tour 2020-セトリ再現ライブ‐』は、タイトル通り、2月で中断してしまったツアーのセットリストを完全再現した有観客&配信ライブだ。すでにライブを体感した人も、中止で涙を飲んだ人も、ちょっと見てみようかというライトなリスナーも、配信ならば誰でもウェルカム。アコースティックギターだけで新旧の代表曲を歌いまくる、2020年の終わりを飾る特別なショーの開幕だ。
クリスマスツリーを思わせる豆電球を飾ったマイクスタンド、キーボード台、ドリンクとタオルを置く台、ギタースタンド、ステージにはそれだけ。にこやかに手を挙げて登場したスガシカオが、おもむろにギターを抱えてファンキーなカッティングを決める。1曲目は「労働なんかしないで 光合成だけで生きたい」。声が良く出てる。張り切ってる。歌える喜びが、体全体から滲み出してる。
「一人で最後までアコースティックギター1本でやり通しますので、最後までよろしくお願いします」
エフェクターやサンプリングマシーン、足で操るフットパーカッションなど、機材をひととおり紹介したあと、早速ギターのボディを叩く音をサンプリングしてビートを刻む「午後のパレード」へ。ステップを踏みながらステージ前に躍り出たり、わざと歌を止めて観客の反応を煽ったり、伸び伸び歌う姿を見るだけで嬉しくなる。フォーキーなのにグルーヴィーな、「真夜中の虹」を聴きながら自然と体が揺れてくる。
ウクレレに6本の弦を張った「ギタレレ」に持ち替えて歌った「サヨナラホームラン」は、自ら振り返るコロナ禍での生活と奇妙にシンクロする1曲。そこから「黄昏ギター」「Hop Step Dive」と続けた3曲は、ひとりの部屋でうつむいていた男が立ち上がりギターをつかみ、希望の未来へ歩き出すさまを描く、まるで3部作のように響く。アコギ1本だから歌がよく聴こえる、歌詞がよく聴こえる、メッセージが深く伝わる、それが『Hitori Sugar Tour』の醍醐味だ。
ここで、昨年に制作し、通販とライブ会場のみでリリースした作品集『ACOUSTIC SOUL 2』の紹介をしながら、“奥田民生さんのような”と自称する1曲「1+1」を軽くワンコーラス。奥田民生のつもりが全然そうならなかったと笑う、自虐に見せかけた強烈な自己主張がスガシカオらしい。小林武史と共に作った「ぼくの街に遊びに来てよ」も、原曲のピアノアレンジではなく、むき出しのアコギ1本のおかげで“スガシカオ度”がぐっと上がった。さらに「坂の途中」から「Progress」へ、プロフィールを彩る代表曲たちを、マスクをして会場に駆け付けている観客には申し訳ないが、ひとりの部屋のPCの前ならば画面を見ながら一緒に口ずさめるのが嬉しい。
キンモクセイの甘い香りに包まれたラブソング「発芽」は、フットパーカッションを使ってリズミカルに。ストレートに明日への希望を伝える「アストライド」は、打ち込みのリズムを使って躍動感いっぱいに。そして“ヤグルトさん”とは、御年80になるスガシカオの母親の愛称で、「ヤグルトさんの歌」は母への感謝をそのまま歌詞にした、プライベート作品集『ACOUSTIC SOUL 2』の中でもとりわけパーソナルな1曲だ。天真爛漫な母親のエピソードをユーモラスに、しかし思いを込めて歌う言葉に愛がにじむ。スガシカオの純情と優しさの側面をまとめたような、この3曲の並びは意図的だろう。セトリの流れが本当にいい。
いよいよライブは終盤、通常ならば総立ちになるところだが、今日は座ってゆっくりと楽しもう。いつどこでどんなスタイルで聴いても心打たれる名曲「黄金の月」をゆったり歌い上げると、派手なストロボ照明をバックにアグレッシブに盛り上げる「コノユビトマレ」へ。上着を脱ぎすてタンクトップ姿になると、妖しく激しく毒気たっぷりの「19才」では、ディストーションを効かせた強烈なギターソロを決めてみせた。観客は歓声の代わりに、手拍子と手ぶりで熱演に応える。さらにこの日の17曲目「ストーリー」、全編一人でギターを弾いて歌いまくった疲れなど微塵も見せず、「今日のメンバー紹介します! ギター、スガシカオ! ボーカル、スガシカオ!」と叫ぶ声も、パワーが有り余っているように聴こえる。10か月の空白をまったく感じさせない、素晴らしいパフォーマンスだ。
そして、アンコールは2曲。子供の頃の家族との思い出を軸に、人生のせつなさとえぐみをたっぷりと乗せたバラード「深夜、国道沿いにて」は、2019年。躍動するファンク+ポップの理想形ヒットチューン「アシンメトリー」は、2002年。長いキャリアのすべての時期に、聴き直すべき名曲がある。スガシカオの豊かなプロフィールを一望できる、まさにプレミアムとしか言いようのない2時間だった。
「みんなのパワーでグルーヴしていく。これだよこれ、これがライブだよ!と思いました。早くみんなで一緒に楽しむ日が来ることを願って、また遊びに来てください」
混乱の2020年を超えて、再起の2021年へ。たった一人でアコギをかき鳴らし、希望の炎をぶち上げた『Hitori Sugar Tour 2020-セトリ再現ライブ‐』。見逃し配信は12月7日(月)11:59までだ。忘れずにチェックしてほしい。
また、12月10日からは、この公演のライブダイジェストやドキュメンタリーやインタビューなどがセットになったプレミアムアーカイブ配信が行われる。チケットは12月31日21:00まで販売中。
取材・文=宮本英夫
撮影=田中聖太郎・渡邊玲奈(田中聖太郎写真事務所)

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