眉村ちあき 奔放で才気あふれる“弾
き語りトラックメイカーアイドル”が
初武道館でみせた姿

日本元気女歌手~夢だけど夢じゃなかった~ 2020.12.17 日本武道館
“弾き語りトラックメイカーアイドル”眉村ちあきが、初の日本武道館公演『日本元気女歌手~夢だけど夢じゃなかった~』を開催した。
2020年1月に2ndアルバム『劇団オギャリズム』をリリース。アルバムを伴ったツアーは新型コロナウイルスの影響により中断せざるを得なかったが、配信イベント、インスタライブなどを数多く行うと同時に(9月にはゴールデンバー、10月には広瀬香美との配信ツーマンも実現!)、新作の制作に突入。12月9日には今年2作目となるフルアルバム『日本元気女歌手』を発表するなど、信じられないハイペースで活動を続けてきた。
有料配信&有観客で行われた武道館公演でも、眉村ちあきの独創的なクリエイティブが炸裂。曲の良さ、歌の上手さ、突拍子もないアイデアが詰め込まれた演出、天真爛漫で奔放なキャラクター、そして、ファンを愛する気持ちに溢れたステージを繰り広げた。
オープニングはショートムービーから。朝起きると、いつも泣いている。“誰かの声を探している”という感覚があって、耳からヘンなものが出そうな……と悩んでいると、公園のベンチで謎の老人に出会う。「ゴストファーのヘソのゴマ、ペロリンポコの根っこ、黄金に輝くひまわりを混ぜた薬を飲むと治るだろう」と告げられた眉村は、3つのアイテムを探すために冒険に出る——というRPG的な設定だ。ファンタジックな古城を模したステージセットが左右に開いて眉村ちあきが登場、新作『日本元気女歌手』の収録曲「冒険隊 ~森の勇者~」によってライブはスタートした。
これまでのライブと同様、ステージは眉村ちあき一人だけ。“自分でトラックを鳴らし、アコギを弾いて歌う”という基本スタイルを貫いていたのだが、さすがに初の武道館、冒頭から“これをやりたかった!”と言わんばかりの演出が目白押し。「顔ドン」で早速トロッコに乗ろうとすると、なぜか眉村の母親(本物)がトロッコで登場してアリーナを1周(「顔ドン」は、知人が付き合っていた勘違い元カレの言動をディスる歌なので、母親とは全然関係ない)。さらに社会のなかで戦う決意を歌った「ナックルセンス」では「みんなの祈りを捧げて!」と観客に呼びかけながらフライングを披露、空中で刀を振り回し、“ゴストファーのヘソのゴマ”をゲット。「前半に畳み込みすぎなのよね」と自分にツッコむことも忘れない。
先鋭的なトラックと現代音楽的な音響が一つになった「リアル不協和音」からは、眉村ちあきの多彩な音楽性を体感できるコーナーへ。<私にしとけば/あの子よりもずっと 丁寧に愛せるわ>と切ない恋愛感情を歌った「マーメイドボーイ」、ナンセンスな歌詞とクラブミュージックが融合した「おばあちゃんがサイドスロー」など、ジャンルを超えたポップワールドが広がる。
「次の曲のオチサビで“壁ドン”のポーズして」と呼びかけた「シュビデュバ・オブ・クラティー」ではキーボードのソロも自分で演奏。「壁見てる」ではキュートなダンス・パフォーマンスを披露するなど多才ぶりをどんどんアピールする。声出し禁止の観客にヘンな振り付けを真似させておいて、自分で手を叩きながら爆笑するコミュニケーションの取り方も楽しい。
子どもダンサー4人と協力して「ペロリンポコの根っこ」を引っこ抜いた後で歌われた「手を取り合うねからね」も強く心に残った。STAY HOME中のファンに向けてSNSからコーラスパートの募集を呼びかけ制作されたこの曲は、モータウンを想起させるビートと解放的なメロディとともに<手を取りあ合うからね 僕ら手を取り合うからね>というフレーズが響くハートウォームな楽曲。<いつか思い描いた景色 今一緒に観に来たよ!>と歌う彼女の笑顔は、この日のライブの最初のハイライトだった。
支えてくれる人達と一緒に歩んできた軌跡を描いた「夢だけど夢じゃなかった」を高らかに歌い上げ、5分間の“換気時間”を挟み、ライブは後半へ。青のワンピースに着替えた眉村は、センターステージでアコギの弾き語りを披露。「顔面ファラウェイ」「ツクツクボウシ」などをマッシュアップさせ、観客を惹きつける。
家族に対する深い思いを(涙をこらえながら)歌った「Dear My Family」、ミラーボールの光と美しいメロディが溶け合う「本気のラブソング」で大きな感動を生み出し、「音楽と結婚ちよ」では「本気で寂しかったんだからね! おまえらはインスタライブでこっちの顔見てるけど、私は見れなかったんだから!」と叫ぶ。「ここから盛り上がっていくぞ!」と煽った直後に切ないバラードナンバー「36.8℃」を切々と歌い、「やさいせいかつ」ではステージに再現された森のなかで丸太に座って足をぶんぶん振りながらアコギをかき鳴らす。楽曲ごとに世界観が様変わりし、観客を翻弄しながら巻き込んでいくステージは、まさに眉村ちあきの真骨頂だ。
「偏差値2ダンス」では、“黄金にかがやくひまわり”を掲げたヤンキールックの玉屋2060%がサプライズで登場。3つ目のアイテムを手に入れた眉村は、カラフルなトロッコに乗って「ビバ☆青春☆カメ☆トマト」を気持ちよく歌い上げ、ライブはクライマックスへ。
観客の手拍子や床を足で鳴らすと音でコミュニケーションを取ったあと、彼女はゆっくりと話しかけた。路上ライブで「やめちまえ」と言われたり、レーベルのスタッフとケンカしたり、イヤなことがいっぱいあったこと。テレビに出て、「眉村ちあき、キャラ作ってるよね」と言われたこと——。
「そんなことがあって、自分を出さないようにしてた時期があったのね。でも、そうすると魅力がなくなるなって」「いちばん魅力的なのは、情緒不安定な状態なわけ。この等身大の眉村ちあきが、いちばん魅力的だと思うの」「そんな勇者がね、みんなに“がんばって冒険してみようかな”と思ってもらえるように、全身全霊、心を込めて歌います」
という言葉に導かれたのは、「大丈夫」。豊かな声量、広いピッチ、濃密な表現力を備えたボーカルは本気で圧巻。“何があっても大丈夫。自分らしくやっていこう”という歌に込められた強い思いにも心を動かされた。
アンコールも意外性に溢れたステージを展開。高揚感のあるサウンドとともにステージ下からポップアップで登場したと思ったら、すぐさま「キャハハハ! 楽しい! もう1回やって!」と要求。再びステージ下から勢いよく飛び出し、「奇跡・神の子・天才犬!」をパフォーマンス。最後は「ピッコロ虫」。<車の中 こぼした愚痴>とアカペラで歌い出し、<こんな赤ちゃんはいつまでだろう>とラップに移行……と思ったら、左右の人差し指と小指を合わせて頭上に掲げ、「ねえ、こうやって。私たちはこうやってその場しのぎで生きていこう」と笑いを取る。さらにハイトーンの歌声を高らかに響かせ、「ピッコロ虫」を最後まで歌い切り、ライブはエンディングを迎えた。
本人がステージを去った後、スクリーンに映像が映し出される。武道館の外に立った眉村が「あー楽しかった。また遊ぼうね!」と語り掛けると、会場全体から大きな拍手が巻き起こった。
ジャンルを超越した音楽性、ナンセンスと深いメッセージを一瞬で行き来する歌詞、そして、高い歌唱力と天性のパフォーマンス能力に裏打ちされたステージ。眉村ちあきの才能と魅力をたっぷりと体感できる、大充実の初・武道館だった。

取材・文=森朋之 撮影=Ryo Higuchi

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