【FM802×SPICE ヘビロな人のヘビロ
曲~あの人のルーツはこの10曲~】1
2月度ヘビーローテーションアーティ
スト・羊文学編

大阪のラジオ局、FM802が自信を持って1ヵ月間毎日、特定の楽曲をOAするヘビーローテーション。そのヘビロアーティストに、自身のルーツとなる楽曲のアンケートを取り、その話を交えながらFM802DJがインタビューする企画【FM802✕SPICE ヘビロな人のヘビロ曲~あの人のルーツはこの10曲~】。今回は、2020年12月のヘビーローテーションアーティスト・羊文学の塩塚モエカ(Vo.Gt)にインタビューを敢行。12月9日(水)にリリースしたメジャーデビューアルバム『POWERS』に収録されている「あいまいでいいよ」が12月度のヘビ―ローテーションに選ばれた。今回の対談はFM802で『MIDNIGHT GARAGE』毎週月曜日24:00-27:00)と『EVENING TAP』(毎週水・木曜日18:00-21:00)を担当しているDJの土井コマキが、アルバム『POWERS』についてはもちろん、塩塚モエカのルーツを通して羊文学の生み出す楽曲の魅力について迫る。
塩塚モエカ(Vo.Gt) 撮影=川島悠輝
●並んだ時に「見た目で羊文学の世界を描く」というのは意識しました●
ーー番組ではよく紹介させていただくのですが、やっとゆっくりお話するチャンスがいただけて嬉しいです。
こちらこそ直接お話できて嬉しいです!
ーー改めて、羊文学をはじめた経緯をお伺いしたいのですが、そもそもどういうキッカケでバンドを組んだのですか?
15歳の頃、バンドをやりたいと思っていた時に、「テニス教室が一緒の子とバンド組むから入って欲しい」と誘われて始めたのが羊文学の基盤ですね。
ーー実は羊文学というものが生まれてからは長いんですね。
そうですね。組んでから活動するまで間はありましたが、今年で9年目になります。
ーーバンドのキャリアは長いんですね。ずっと音楽をやってらっしゃったんですか?
服を作ったりしていた時期もあったのですが、今でも続けているのは音楽だけですね。
ーー服ですか! それはどういうキッカケで作っていたんですか?
バンド始めたいのに学校の友達も音楽を好きな人が居ない環境だったので全然始められなくて。だから何か他のこと始めようと思って、当時流行っていたmixiで面白そうなことをやってる友だちを探したんです。そうしたら偶然高校生の子たちが服を作る団体をやっているのを見つけて、参加したのがキッカケですね。原宿に集まって、代々木公園でランウェイの練習したりしてました。
ーー好奇心というか行動力があるんですね(笑)。
ネット中毒気味なところもあって「これがやりたい」と思ったらめちゃくちゃネットで調べるんです。そこで生まれた人脈がキッカケになったりもしますし、あと、やりたいことを他人に「あれがやりたい!」と凄く言うんですよ。だから「あの人はあれがやりたい人だ」と広まって、同じ気持ちの人に誘ってもらったりもします。なので自分で動き出すと言うよりは誘ってもらって動き出すということが多いかもしれないです。
ーー羊文学はもちろん、モエカさん自身も色んな表情を見せてくれている人だなと思っていたんですが、そういう気質が影響してるんですね。
そうかもしれないですね。やりたいと思ったら、すごい言います。言ってるうちに自分も洗脳されますし、叶いやすくなる気がするんです。
ーー羊文学は、メンバーチェンジもありつつ、今のメンバーになったわけですが、3人の立ち姿を見ただけで、「これからどんな空気がここに生まれるのか」というのがイメージできますよね。
わぁ! ありがとうございます。
ーー新しいメンバーを探す時に、メンバーが並んだ時の絵も、ある程度イメージをしていましたか?
そうですね。細かく意識して、並んだ時に「見た目で羊文学の世界を描く」というのは凄く気にしていました。
ーーそれぞれどういうイメージで探していて出会ったんですか?
ドラムは、元々の子がシンバルを独特な叩き方で使っていたので、シンバルを多めに使ったフレーズがキレイに叩ける人を探していたんです。そんな時に今のフクダヒロアが他のバンドで叩いてる動画を見て、叩き方も綺麗だし、見た目も男性か女性かわからないところがイメージに近くてお願いしました。ベースは、私が基本的にギターをコードでジャカジャカ弾く感じなので、ちゃんと特徴的なベースのフレーズをうまく作れる同世代くらいの女の子というイメージで探していた時に、河西ゆりかちゃんと出会ったんです。
●アイドルに憧れていた時期もありました●
羊文学 撮影=川島悠輝
ーーそんな羊文学が12月9日(水)にリリースしたアルバム『POWERS』に収録されている楽曲「あいまいでいいよ」が12月のFM802の邦楽ヘビーローテーションとして一か月間お世話になっております。
ありがとうございます。本当にありがたいです。
ーー羊文学って、一言では括れないんですよね。「こういうところがすごい素敵なんだよ」というのが言葉にしにくくて。でも今回事前に選んでいただいたルーツとなった10曲を、全部まとめて聴いてみたら、ものすごく腑に落ちたんです。
本当ですか! 何か嬉しいですね。
ーー羊文学は独特な余白や余韻の部分、あと熱伝導の仕方、そこに可愛らしさや、ポップな表情が重なる感じが魅力的で、その魅力の源がこの10曲にあるんだなと思うと、楽しかったです。
このリストを作っていて自分でも色々聴いてきたんだなと思いましたね。
ーーまずディズニー映画『リトル・マーメイド』の楽曲「パート・オブ・ユア・ワールド」が入っていることにビックリしました。
これは音楽がやりたいとか思う前に聴いていた曲なんです。小さい頃『リトル・マーメイド』が大好きで、海の中で自由に歌ってるアリエルの姿にすごい憧れていましたし、「どうやったら人魚になれるんだろう」とかも考えていました。特にこの曲が流れるシーンが凄く好きで、よく歌っていましたね。
ーーアリエルみたいに伸びやかに歌いたい気持ちがあったわけですね。
そうですね。声の響き方も真っ直ぐで、声を出してて体が気持ち良さそうだなと思っていました。
ーー羊文学でもいつかそういう歌が歌いたいと思います?
羊文学はバンドなので、こういう歌を歌うのはなかなか難しいと思いますが、気持ちよさそうに歌うという、歌に対する姿勢はずっと憧れています。この10曲には入りきらなかったんですが、SPEEDさんがテレビでダンスしながら歌ってる姿を見て「これアリエルじゃん!」と思って、アイドルに憧れていた時期もありましたね。
ーー今回の『POWERS』を聴いた時に、すごく気持ちいい風が吹いている感じがしたんですが、もしかするとその伸びやかさや気持ちよさを求めるような気持ちが、ボーカルに出てるのかもしれないですね。
曲にもよるのですが、壮大な音楽が好きだったりするのはこの曲が影響してるのかなと思いますね。
ーーそしてもう一つビックリしたのがYUIさんの「Find me」。バンドのイメージがあったので、シンガーソングライターや弾き語りは通っていないのかと思っていました。
YUIさんはめちゃくちゃ世代なんです。そもそもギターを弾きたいと思ったのもYUIさんがキッカケですね。小学生の時に「CHE.R.RY」が流行っていて、同級生の子にギターを借りて弾いたりしていました。
ーーそうなんですね! そのYUIさんの楽曲の中でもこの「Find me」を選んだのは何故ですか?
シングル曲ももちろん好きなんですが、YUIさんのアルバム曲とかシングルのカップリング曲もすごい好きなんです。この曲は特にサビの伸びやかさがすごく耳に残ってよく聴いていました。
ーー羊文学ってノイズのあるギターが鳴っているのに全然陰気さがない、真っ直ぐ伸びてくる歌声が好きなんですけど、YUIさんがルーツと聞いて納得しました(笑)。
●羊文学の曲が長くなったのはこの曲の影響です●
フクダヒロア(Dr) 撮影=川島悠輝
ーーそしてASIAN KUNG-FU GENERATION「ソラニン」もありますね。
アジカンさんは、羊文学以外のバンドでも、羊文学でも沢山カバーしました。中でも「ソラニン」は、最初に5人いたメンバーが3人になったタイミングで、このまま続けるか辞めるかを話していた時期に、公開されていた映画の主題歌で。「この曲をカバーしたいし、もう少し3人でやってみようか」と話して、結果的に音楽を続けるキッカケになった曲ですね。高校生の時はオリジナルソングと同じくらい大切に演奏していました。
ーーそんなアジカンさんの「触れたい確かめたい」という楽曲ではモエカさんがボーカル参加されてましたね。歌詞と二人の声のバランスが素晴らしい曲でした。あれはモエカさんの歌声じゃないと成り立っていなかったと思います。
本当に素晴らしい曲ですよね。歌わせていただくこと自体嬉しかったですし、自分でも歌っていてしっくり来る楽曲で忘れられない経験ができました。
ーーあと中島美嘉さんの「朧月夜〜祈り」。「朧月夜」は元々童謡ですよね。
この「朧月夜〜祈り」は、小学生の時に聴いていたのですが、最初童謡だと知らず、他とは明らかに違う歌詞に惹かれていました。あと、和風なアレンジとか、そういった世界観がすごい好きで印象的で。なんというか……「日本の魔法」ぽくないですか?
ーー分かります。オリエンタルな感じといい、この世のものじゃない感じがしますよね。
そうなんです! そんな不思議な空気感が小さい頃から好きでしたね。
ーーそこに食いつくのはおませな小学生ですね(笑)。そしてサカナクションの「目が明く藍色」。これも意外でした。
サカナクションさんは、テレビ神奈川で放送されていた『saku saku』という番組で曲がかかってるのを聴いたのが出会いなんですけど、それを聴いたお母さんもハマっちゃって一緒にCDを聴いていました。学校でサカナクションが好きと言ってたら、サカナクション好きな子と話すようになって、「山口さんの演奏は響きが綺麗だよね」とか語っていました。
ーーその頃にはもうギターは始めていたんですね。
そうですね。その頃にはバンドを始めていました。自分で曲を作る時に、この曲からインスピレーションを受けたりしているくらい好きな曲です。
ーーなかなか衝撃的な曲ですもんね。私も初めて聴いた時、こんな曲聴いたことないってビックリしました。
突然曲調が変わるところとかめちゃくちゃ好きなんですけど、お父さんがプログレ好きだし、お母さんもクイーンがすごい好きだったので、その影響もあるかもしれないですね。羊文学の曲が長くなったのもこの曲の影響です。
●まだまだやりたいけど出来てないことが沢山ある●
河西ゆりか(Ba) 撮影=川島悠輝
ーー海外のアーティストも何組か挙げてくださってますね。ヤックの「Get Away」は個人的に凄く納得のリスト入りです。
これは、全然洋楽とか分かんない時に聴いたんです。タワレコが好きで、よく2、3時間位かけて色んな音楽を試聴していたのですが、その時に「店員さんイチオシ!」みたいな感じで展開されてたのがヤックだったんです。試しに聴いてみたら、それまで聴いてたギターのサウンドとはまた違う「洪水」みたいなサウンドというか。「なんじゃこれは」と衝撃を受けてすぐ買ったのを覚えてます。タワレコのヘッドホンは良いヘッドホンだから、余計凄さを感じられたのかもしれないです。
ーーシューゲイズ感みたいなものには、ここで出会った訳ですね。
そうですね。こういう感じの音にしたいと思っていたので、このCDに封入されているブックレットに写り込んでいた「Big Muff」というエフェクターに憧れていました。
ーー配信で音楽に出会うことが増えてきたこのご時世に、CD封入のブックレットの話って、もはや愛おしいエピソード! めちゃいい話ですね(笑)。そしてシガー・ロス。これもやっぱり入ってきたなという印象です。
蒼井優さんが好きで、蒼井優さんが主演の『たまたま』という映画のエンディングテーマがこの曲だったんです。初めて聴いた時に、これまで聴いてきたのと違う音楽だという衝撃があって、YouTubeで彼らのライブとか見漁りました。楽団だったり、ボウイング奏法といった独特な演奏だったり、とにかく壮大だし、見たことないものばかりで感動しました。こんな美しい音楽をいつかやりたいと思っています。
ーーあと海外アーティストだとザ・エックス・エックス「Angels」とジェイムス・ブレイク「Lindisfarne I」。これはどういった出会い方だったんですか?
この2曲もタワレコで出会った楽曲ですね。ちょうどこの2組が夏フェスで来日していた時に、夏フェス特集みたいな形で展開されていたんです。ジェイムス・ブレイクは、分厚いというか、絞ったら果汁が出てくるんじゃないかというくらい重厚なシンセの音が衝撃的でした。ザ・エックス・エックスもギターなのか分からないくらい、1音1音がキラキラした宝石みたいな……なんというか「球のようなギター音」といえるような感覚が素晴らしいんです。しかもこの2曲とも音が少なくて、こういう音楽もあるんだなと、ニヤニヤしながら聴いてました。
ーーこの2曲ともじわじわ芯から温められる感じが共通しているなと思っていて。その熱伝導の仕方が凄く今回のアルバムにも出てるなと「ghost」を聴いて感じました。
本当ですか! まさに「ghost」は、ザ・エックス・エックスをなんとなくイメージして作ったので、そこを感じていただけて嬉しいです。
ーー音の作り方も丁寧だなと思っていて、かなりこだわって作ってらっしゃいますよね。
毎回ギターの音作りは、時間をかけるんですけど、今回はいつも使っているアンプ以外にも別のアンプを用意してみたり、色々試行錯誤しながら作りましたね。
ーーその辺りの作り込みもとても感じられる素晴らしいアルバムだなと思いました。タイトル曲「powers」のコーラスもユニークで面白いですよね。
そうなんですよ。あのコーラスも「決まったラインを歌わなくてもいい。自由に声を出してみるって楽しい」という気持ちになってほしくて、メンバーとスタッフに「ラインとか無いから適当に歌って」とお願いして収録しました。皆で遊んでる感覚で撮れましたね。
ーー今回お話を聞いていて、これからも羊文学はどんどん色んなものを取り込んでチャレンジしていくんだろうなと思いました。これからの羊文学が楽しみです。
まだまだやりたいけど出来てないことが沢山あるので、どんどん広げていきたいですね!
ーールーツの10曲も全部羊文学の音楽に通じるポイントがあって面白かったです。本日はありがとうございました!
羊文学 撮影=川島悠輝
文=城本悠太

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