美弥るりか、一年延期となった『MIY
A COLLECTION』にかける思いを語る

2019年6月、17年間にわたって在籍した宝塚歌劇団を退団し、独自の個性を活かした活動をスタートさせた美弥るりか。このたび大阪と東京で上演されるthe wonder『MIYA COLLECTION』は、昨年2月に上演予定だったが公演延期となっていたエンターテインメント。一年の時を経て待望の舞台に立つ美弥に公演への意気込みを聞いた。
――一年越しの上演実現となりました。
昨年は公演直前で中止となってしまい、仕方のないこととはいえ非常に残念に思っていました。もちろん、希望としてはまた上演できたらと思っていましたので、こうして公演のアナウンスをすることができて、この一年、待っていてくださった方に感謝の気持ちでいっぱいです。昨年のお稽古はタイトなスケジュールの中で、内容についても楽曲についても、とにかく形にしていくという毎日でした。なので、今回、改めて時間がある中でていねいに向き合えている部分があるなと。延期となってから、この間、配信番組『ミヤコレからの贈り物』もさせていただいたので、観劇をしてくださる皆さまにも、昨年の公演時は、まだ謎の部分があったと思いますが、今回、作り上げる過程を一緒に楽しんでいただけているんじゃないかなと思います。
――公演のコンセプトについておうかがいできますか。
演出の河原雅彦さんとは、コンサートじゃない形のものにしたいねというお話をしていて。河原さんご自身、音楽ジャンルの演出をされるのが初めてで、私も宝塚退団後初めての舞台ということで、いろいろ未知なところがありました。ストーリー性、メッセージ性のあるパフォーマンスにしたいなとは考えていました。一曲ずつお届けするのではなく、何かテーマのようなものをお届けできたらと。鏡の中の自分とそれを見ている自分、そのどちらが真実なのか――というところからスタートします。芝居部分とコンサート部分とがうまくミックスされて、鏡の中に入った自分がさまよい続ける――といった趣向になっていて、観ている方も、自分の心の中を知る部分があるんじゃないかなと。それで、最後に何か感じるものが見つかっていく。その過程を皆さまと一緒に楽しんでいけたらと思っています。リラックスして観ていただき、客席の皆さまともしっかりコミュニケーションをとっていきたいですね。
美弥るりか
河原さんは舞台作品の演出を手がけていらっしゃる方なので、せっかくなら何か心に残るものにできたらおもしろいですよねというお話をして。何度か打ち合わせをする中で、お互いに好きな音楽を出し合いました。河原さんはとても音楽に詳しく、海外の曲もよくご存じで、お互いお勧め曲を出していったときに、おもしろいステージになりそうだなと思いました。今までいた宝塚の雰囲気があまりないようなショーにしたいねというところで、お互いの気持ちが一致しました。
第一部は5場面くらいあり、それぞれのカラーが異なります。振付の方々にも、それぞれの得意ジャンルで作っていただいて。初めて振付を受ける方もいたので、非常に刺激的でした。今まで踊ったことのないジャンルの振付もあって、必死でしたね。宝塚時代はどうしても硬めのダンスが多くて、しなやかさだとか、そういったニュアンスをあまり踊ったことはないので、身体が驚いてました(笑)。
――この公演も一度は延期となりましたが、コロナ禍において、舞台に立つということについて、改めてどんなことを考えましたか?
舞台に携わっている方は誰もが考えたと思うんですけれども、やはり、こういうときに自分に何かできるのかという…。何もできなくなってしまった瞬間、その最初の頃はとても無力に感じてしまったというか、自分が誰の何の役にも立てない瞬間があるということを、受け入れるのにやはりとても時間がかかりました。でも、いい意味で、舞台に立つということを改めて考え直しました。当たり前だと思っていたことが当たり前ではなくなり、舞台という、皆さんと会える場所に立つまでにこんなにもいろいろ難しい問題ができてしまったということ、表現するということについて改めて考えました。そして、自分が本当は何をしたいのかということだけが最後に残った、そんな期間だったと思います。それまでは、舞台に立つこととは、お芝居がしたい、歌いたい、ダンスがしたい、自分が好きだからやりたいという、その思いを表現することで満たされていたかもしれません。しかしそうではなく、一人の人間として舞台に立ったときに、誰かに喜んでいただける存在になりたいなと。人生を見つめ直し、自分の人生を豊かにすることで、舞台に立ったときに表現が豊かに分厚くなるんだとも思いました。芸事だけではなく、自分自身、魂、生き方を磨くことで、観劇に簡単に行けない時代だからこそ、一回一回の舞台で、皆さまにもっと充実感、納得感、幸せ感、チケット代以上の何かを届けられる人でいたいなと改めて考えました。
美弥るりか
――そのあたりの心境の変化は、今回の公演にどのような影響を与えそうですか。
昨年の公演は、とにかく形にして舞台でやるぞ! という感じで勢いよくお稽古を進めていて、その勢いで舞台稽古に走っていったところがありました。今回はもう少し、一場面ずつ、歌、パフォーマンスに対して、自分の中でもっと深められるものが確実に生まれていますし、私以外の出演者にとってもいろいろ変化があった一年だと思うので、絶対に去年お届けするはずだったステージとは異なる舞台になると思っています。
――今回、日替わりで東山義久さん、平方元基さん、伊礼彼方さんと、3人のキャストの方が登場されます。
ゲストの方とコラボさせていただく場面があって、出演作などの共通点があれば、その作品の曲を歌いますし、同じ作品に出ていない方であれば、こんなコラボをしたいなという希望をかなえていただいたり、ご提案をいただいたり。去年だったらお話しするのに緊張していたところがあったのが、この一年で、舞台を拝見したり、配信のときにコメントで出ていただいたりして、それぞれの方と少しずつ接点が増えてきているので、トークもより楽しく進めていけるんじゃないかなと思っています。
東山さんは、宝塚にいたときからご縁があって、舞台をお互いに観たりしていて。舞台では東山さんにしか出せない色気、不思議な空気感が魅力的な方なのですが、お話しするととてもおもしろい方で、そのギャップが楽しいですね。東山さんのダンスもすごく好きなので、一緒にコラボさせていただくのですが、思っていた以上にしなやかで、曲線の美しさがすばらしくて、見入ってしまうほどなんです。
伊礼さんは、今回出ていただくことが決まるまでお話ししたことはなかったのですが、舞台はもちろん観ていて。すごく端正で彫刻のようで、リアル王子様のような方だなと思っていました。『王家に捧ぐ歌』を拝見して、男性でこんなにラダメスが似合う方がいるんだ…と思っていたのですが、伊礼さんもお話しすると非常にユーモアのある方で。一緒に歌稽古させていただくたび、伊礼さんの声量や表現の大きさを近くで体感し、すばらしいなとすごく刺激を受けました。とにかくついて行かなくちゃ、頑張ろうという気にさせてくれる、引っ張っていくエネルギーが強い方だなと思います。
平方さんとは昨年8月の『SHOW-ISMS』で初めてご一緒したのですが、稽古場で何気なくお芝居したシーンで、同じ出演者なのにすごく感動したことがありました。ミュージカルって、芝居と歌とが奇跡的に一致している瞬間があるから、人の心に響くんだということを感じて、とても尊敬しています。一緒にステージに立つことが本当に勉強になるなと思いました。平方さんもユーモアがあって温かい方なんです。

美弥るりか

――演出の河原さんについてはいかがですか。
すごく独特の空気がある方で、温かくて優しい方ですね。私の意見をまず受け入れてからご自分のご意見を言ってくださって、一緒に作っていこうという気持ちをすごく感じます。宝塚時代は、台本も曲もすべて決まっていたので、何がしたいのかと聞かれても、最初のうちはわからなかったんです。何を歌いたいのか言っていいんですか? という感じで。最初は恐る恐るだったんですけれども、河原さんにだんだん引き出されていきました。私の意見を尊重しつつ、河原さんのこだわりをしっかり言ってくださって、優しさの中に芯をもっていらっしゃる方なんですよね。稽古場では、みんなをリラックスさせてくださる、人に緊張感を与えない方で。そうやって、いいパフォーマンスができる環境を作ってくださっているんだと思います。
――自分から発信していく局面が増えた感じですね。
この一年で自分の意見を言うことにようやく慣れてきましたね。最初は、考えたこともなかったというか、自分が本当にやりたいことと向き合う機会もなかったので、自分の心と対話すること、自分の中に眠っているものを引き出すのにすごく時間がかかりました。でも、それって一番大切なことだったなと思って。自分の個性、本質、自分は他の人と違う何ができるのか、私の舞台を観たい人は何を観たいと思っているのか、そういうところを深く追求していかなくてはというのが、宝塚を卒業してからの課題ですね。初ライブをしたり、ディナーショーをしていく中で、トータルバランスを考えていくのがけっこう好きな自分に気づきました。どういう順番にするかを考えて、観ている方が気持ちを高めていけるような構成をあれこれ考えたり。前々から、最前列の方と最後列の方とで同じ気持ちになっていただきたいという思いがあるんですね。そのための演出をすごく考えるのが好きで、考えていると幸せだなと思えて。宝塚時代は忙しすぎて、いろいろ精いっぱいだったんだと思うんです。退団してより、皆さんとの関係性、つながりを考えるようになりました。
美弥るりか
――劇団に所属していたのがお一人になって、心境の変化はいかがですか。
宝塚では、団体だからこそできる総合的な団体美があって、みんなで足並みを揃えて、その中で自分の個性をどのように出していくか、列は揃えながらもその中で「美弥るりか」をどれだけプロデュースできるかということを大切にしていました。退団して最初のうちはとても孤独を感じましたし、一人で舞台に立つことが怖くて。不安もあったんですけれども、そんな私をこのような状況下でも観に来てくださる方々がいるということを知った今は、想像していた以上に良いものを見せるためにはどうしたらいいのか考えるようになりましたね。もちろん演出家の方々のお力もお借りした上で、自分の意見もたくさん投影させていく、その上では、自分も発言できるだけの熱量や情報量がないと成り立たない世界だなと思ったので、今まで以上にアンテナを張るようになりました。世界の流れ、エンターテインメントの流れ、その中で自分ができる新しいことは何か、それを生み出していくためには、情報を集めていかないと遅れてしまいそうになるなと。これからのエンターテインメントの変化に自分も遅れずついていきたいなと思うようになりました。
――男役からの転身についてはいかがですか。
男役をやっているときもあまり「男役」と意識していなかったというか、演じているうちに、男役という枠には一応いるけれども、何かを演じることに性別は関係ないということに気づいてきていて。演じるのは自分の魂で、人を愛するとか憎むなどは男性も女性も関係なく、みんな心がありますよね。男だからこういう風に人を愛するとか、そこに変なこだわりをもつことで、すごく硬い鎧を着てしまう感じというか、表現がすごく小さくなるんじゃないかなと思っていたので、宝塚の最後の方はあまり自分を男役と思っていませんでした。なので、退団してもそんなには変わっていないのかもしれないですね。これからも性別にこだわらず、活動していきたいと思っています。
美弥るりか

ヘアメイク=清原貴絵 KIE KIYOHARA スタイリスト=清原愛花 AIKA KIYOHARA
ジャケット 36,000円(税抜)/BASE MARK(エム) その他/本人私物
問い合わせ先:エム(TEL:03-3498-6633)
取材・文=藤本真由(舞台評論家) 撮影=池上夢貢

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • PunkyFineのそれでいきましょう!~V-MUSICジェネシス日記~
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • Tsubasa Shimada presents / 「Wet Crate」
  • SUPER★DRAGON / 「楽楽★PAINT」
  • OLDCODEX / 「WHY I PAINT ~なぜボクがえをかくのか~」
  • みねこ美根 / 「映画の指輪のつくり方」
  • 高槻かなこ / 『PLAYING by CLOSET♪♪』

新着