Editor's Talk Session

Editor's Talk Session

【Editor's Talk Session】
今月のテーマ:
音楽シーンの循環を救うために、
今、自分ができること

“国に頼らない”
なんてことはあり得ない

千々和
ただ、“今の状況を変えるためにはどうしたらいいのか?”の“どうしたら”が少しずつ見えてくると同時に、変わるまでの道のりが長く感じた一年でもありました。
スガナミ
まず国の方針として補償はしないっていうのがあって、昨年3月の時点で“補償”って言葉をすごく嫌がったんですよね。無利子・無担保の貸付があるからそれを使ってくれの一点張りなので、『SaveOurSpace』の署名も“補償”ではなく“助成”って言葉に変えました。行政のマインドとして“自分たちの責任ではない”というのが基本にあって、“体力のある人たちは応援しますよ”という姿勢が一貫してあるので、どの省庁に行っても開口一番に“補償はできませんが、新たな取り組みには支援します”って言われるんですよ。例えばドイツだと、従業員50人までの企業に対しては、前年同月の売上高の75パーセントが補償されるんですね。それは基本的には雇用を維持するために使ってほしいお金で、別で家賃の補償もあるからすごいなと。何でそういうことができないのかなって思うんですよ。GoToトラベルもそうですけど、人の流れを作ったり、新たな取り組みを支援するっていうのはコロナ収束後のV字回復期にすべき政策なんですよね。冬に感染が拡大してしまって2度目の緊急事態宣言を発出することになり、外出自粛を働きかけているなかで、政策の方向性が大きく矛盾してきていると思います。不確定な未来ではなく、なぜ今を救うことができないのかといつも感じます。
石田
GoToトラベルを推奨すれば、誰もが“もう動いていいんだ”って思いますよね。GoToトラベル自体がどうって話ではなくて、スタートさせる時期に問題がある。しかも、このタイミングで旅行に行く余裕がある人しか恩恵を受けない。
スガナミ
そうなんですよ。日本はこの何十年で体力のある人が残るような仕組みにしちゃったから、それがもろに出ちゃってるというか。新たな取り組みの支援って、もう潰れてしまっている人たちのことは無視している。それがすごく残酷だってことをみんな気づいたほうがいい。すでに潰れてしまったお店や職業を失ってしまった人のことを見てないというか、はなからいないものになってるんです。『SaveOurSpace』の中でも『SaveOurLife』っていうコロナで影響を受けてる人の暮らしと仕事を守る署名活動もしてて、その記者会見の時にいろんな業種の人に出てもらったんですね。飲食店やアパレル、看護師の人だったり、生活困窮者支援をしてる人とか。それぞれ状況が違うけどみんな困っているんですよ。
千々和
毎月music UP’sを作っていると、給付金を上手に使ってCDのプロモーションをしているアーティストも何組かいたんですけど、逆に“国に頼らない”という考えを持っている方もいますよね。
スガナミ
個人的な意見ですけど、それはめちゃくちゃ間違ってると思います。例えばライヴハウスってライヴハウスだけでは営業できてないんですよ。音楽をやる、楽器に触れる、ライヴをする、ライヴを観に行く…全部が誰かの仕事に関わっていて、その循環で成り立っているわけだから、“国に頼らない”なんてことはあり得ない。自分の店がコロナ禍を乗り切れたとしても、スタッフの人たちを前みたいに雇えなかったら意味がないし、アーティストにギャラが返せなかったら成り立たないじゃないですか。自分の仕事がなくならなかったからって抜けられたわけではない。全部誰かが支えになってやれていることなので。あと、“国に頼る”という考え方も間違っていて、そもそも自分たちが税金を国に預けているんですよ。だから、預けているお金をちゃんとこっちにも返してくださいっていう話をしているわけで、それが全体の循環を救うことになるって思わないと。自分だけ助かればいいとか、諦めちゃっている時点で文化を救えているとは思えないし、それは自分本位すぎる。
千々和
署名活動をしているからこそ、そういった根本的な考えを感じることも多いですよね。
スガナミ
街で署名活動をしてたんですけど、“うちはそういうの頼らないから”って言う人、“そもそも貯金してない人が悪いじゃん”っていう人もいるんですよ。仮に飲食店がひとつあっても、お客さんをはじめ食物を届けてくれている業者さんとか関わってる人がたくさんいるわけじゃないですか。“あなたはその人たちも救えるのですか?”って。ひとりでやってるって思ったら絶対にダメで、全部の仕事は誰かのためになっていて、誰かと関わってやってるわけだから。自分ができてるからって人に押しつけてもダメだし、たまたまコロナ禍の影響を少なくできてるだけで、もし別の災害が起きても同じことが言えるかって話なんですよ。そういうのが新自由主義的な発想につながっていくからすごく危ないんですよね。自分の近くに困っている人がいるっていうことまで想像できないのは、今の日本の社会の怖さだと思いますよ。僕は福島県出身で、東日本大震災の影響をもろに受けたんですけど、そういう時もライヴハウスはドネーションのイベントをやろうって集まったり、被災地に物資を届けたり、避難所として開放してたじゃないですか。でも、今回は人が集まることが制限されてるからそういったことができない。そんなこと誰も想像してなかったわけだし、今は大丈夫であっても、いつかピンチに陥る可能性があるんだから、“できてない奴が悪い”って言ったり、国を変える気がないのに“国は当てにならない”って言ってる時点でダメです。やさしさがない。
千々和
コロナ禍をきっかけに視野が広がるのはいいことだけど、コロナ禍以前の時からどんな考え方をしていたのかで動きや意見が全然違うんでしょうね。
スガナミ
あと、性格もあるのかな? 難しいですけどね。今って困ってる人たちをどう支えるかだと思うんです。それをしないと全体が沈むから。結局は回り回って自分にも返ってくるし、そう思って動いてないと続かないと思うんですよ。でも、経産省が出したJ-LODliveでは“配信事業に対して支援をします”っていうのが最初の立てつけでしたけど、例えば老舗の小さなジャズクラブ が急に“配信しろ”なんて言われても難しい場合もあるじゃないですか。もうそこから始まっちゃっていて、言ってしまえば足切りですからね。配信は別物だし、デジタルに乗れない人を淘汰するようなハードルをいきなり持ってくる流れって結構あるんですよね。
石田
言ってしまえば、マイナンバーもそうですからね。
スガナミ
そうですよね。署名活動で紙にQRコードとメールアドレスを書いて持って行ったんですけど、老舗の居酒屋さんで“どうやって署名すればいいの?”って訊かれましたからね。QRコードもメールも分からないって言われた時に“確かにそうだな”って思いましたよ。次の日に全部手書きのものを持って行ったんですけど、自分でも知らぬ間にいろんな人のことを排除しちゃってると実感して怖くなりました。リモート会議も基本的にできる前提でやってるけど、それへのハードルを忘れちゃっているというか。全ての人にそれができるのかって考えたら、そんなの現実的に無理ですよ。“たまたま自分はできてるだけ”って思ったほうがいいですよね。できない人もいるし、その人もちゃんとともに生きられる社会にしないといけない。そこに大切なものが詰まってると思うんですよ。“これはリモートで済む”って分かったことがあるのはいいんですけど、その中で振り落とされる人がいると社会全体としては決して良くないと思います。
石田
確かに。そこに目を向けるってことは大事ですよね。

OKMusic編集部

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