ハートウォーミングだけでなく
攻めのプレイが光る
アール・クルーの
『リヴィング・インサイド
・ユア・ラブ』

『Living Inside Your Love 』(’76)/Earl Klugh

『Living Inside Your Love 』(’76)/Earl Klugh

2021年の現在、アール・クルーがどういう位置付けなのかは分からないが、多くのギターファンはイージーリスニング的なフュージョン音楽のアーティストとして見ているのではないだろうか。確かに彼の音楽は1976年のデビュー直後から天気予報や道路交通情報のBGMとしてかなり使われているし、ガットギターを指で弾くというスタイルだけに、かなりソフトな曲が多いのは間違いない。特に日本でも多くの人気を集めた4thソロアルバム『マジック・イン・ユア・アイズ』(’78)あたりからはほぼイージーリスニング路線で勝負しているので、それ以降に彼の音楽に魅せられた人にとってはハートウォーミングな優しいギターが何よりの癒やしになっているのも事実だろう。しかし、ブルーノートからリリースしたデビューアルバムの『アール・クルー』(’76)や、2ndアルバムの本作『リヴィング・インサイド・ユア・ラブ』で聴くことのできる攻めのギタープレイは、ワイルドな瑞々しさにあふれている。

多くの充実したフュージョン作品が
リリースされた時代

アール・クルーはフュージョン(当時はクロスオーバーと呼んでいた)ブーム真っ只中の70年代中期に登場したギタリストである。同時期には、ジョージ・ベンソン『ブリージン』(’76)、ラリー・カールトンの名演が収録されたクルセイダーズの『南から来た十字軍(原題:Those Southern Knights)』(’76)、コーネル・デュプリーとエリック・ゲイルのふたりのギタリストを擁したスタッフの『スタッフ!』(’76)、『モア・スタッフ』(’77)、リー・リトナー『キャプテン・フィンガーズ』(’77)、同じくリトナーがジェントル・ソウツ名義でリリースした『ジェントル・ソウツ』(’77)など、ジャズ/フュージョンを代表する名盤が数多くリリースされていた。

当時、AORとパンクの2極化が進むロック界に見切りをつけたロックファンにとって、黎明期にあったジャズ/フュージョンの世界が受け皿となっていた(かく言う僕もそうだった)。新たに生まれたジャンルで一旗揚げようと、スタジオセッションで腕を磨いたミュージシャンたちは、こぞってジャズ/フュージョンの世界に流入し、それまでは裏方的存在であった高度な技術を持つアーティストたちに、一般リスナーから大きな注目が集まることになるのである。

ひと味違ったクルーのギターワーク

アール・クルーはリー・リトナーやラリー・カールトンと違って、セッションミュージシャン経験はなかったが、ガットギター(ナイロン弦を張ったクラシック・ギター)を得意としており、演奏技術はもちろん、その希少価値からかユセフ・ラティーフをはじめ、ジョージ・ベンソンやチック・コリアらジャズ界で名を馳せたアーティストたちに認められ、10代の頃から有名グループを渡り歩いてきた経歴を持つ。ガットギターの指弾きというスタイルはクラシックでは当たり前だが、当時はジャズ/フュージョン界では稀有な存在であった。彼が登場してからは新たなギタースタイルとして多くのプレーヤーが取り入れるようになったが、彼の特徴的な奏法を弾きこなすのは、ジャズ/フュージョン界では他にエリック・ジョンソンぐらいではないだろうか。

OKMusic編集部

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