松下洸平×河原雅彦「洸平くんは割と
乱暴者で(笑)」の言葉の意味とは!
? 舞台『カメレオンズ・リップ』イ
ンタビュー

2021年4月より上演される、KERA CROSS第三弾『カメレオンズ・リップ』。本作は、劇作家・演出家ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)の数々の戯曲の中から、選りすぐりの名作を、才気溢れる演出家たちが新たに創り上げるシリーズ、「KERA CROSS」の第三弾。本作では演出に河原雅彦、キャストには、松下洸平、生駒里奈、ファーストサマーウイカ、坪倉由幸(我が家)、岡本健一ほか、話題の布陣が顔を揃えて上演される。
そんな本作について主演の松下と演出の河原に話を聞いた。
ーー松下さんと河原さんのタッグって音楽劇『魔都夜曲』以来ですよね。当時について印象に残っていることはありますか?
松下:あの時はとにかく時間がなかったなって記憶が……。
河原:台本も稽古が始まった頃はまだ1幕分しかなかったからなぁ。あと、キューブ主催公演ということで事務所の若手の子たちも多かったから……。まったく手がかからない素敵な俳優さんたちと、これからの子たちが混然一体と化していてね、まあまあカオスでした(笑)。そのなかで洸平くんはポジション的にはベテランチームでも新人チームでもなく。若いけどキャリアをしっかり積んでいる枠でしたね。
(左から)河原雅彦、松下洸平
松下:芝居の経験が少ない若者たちと村井國夫さんら、大先輩のちょうど間にいましたね、僕は。
河原:だから洸平くんは最初から手がかからない芝居をしてくれるだろうと思っていたんですが……これが割と乱暴者で(笑)。
松下:(笑)。
河原:勝手に思っていたイメージとかなり違ってたんです。芝居へのアプローチも理論派でシュッとした感じをイメージしていたんですが、意外と本能的な、動物的な俳優さんで(笑)。まずはあれこれ暴れてみて、そこからいろいろ考えて作っていくタイプでしたね、その時は。
松下:今もそうですけど、やっぱりまだ演劇について学びの時期という気がしていて、当時は特にいろいろなことをやってみて、そのなかから自分的にも河原さん的にもしっくりくるものを見つけようとしていたんです。その結果、頭で考えるよりまず動こう、としていましたね。
ーー多くの演出家さんにこれまで揉まれてきたかと思うんですが、その中でも河原さんとはどんな演出家さんだと思っていますか?
松下:とってもとっても丁寧。若手の一人ひとりについても根気強く接してくださった記憶があります。あの芝居は20人くらいキャストがいましたから、結構な大所帯を一つにまとめて舵取りして下さいました。
ーーそうなんですね。では、今回の『カメレオンズ・リップ』の話を。河原さんにこの作品の演出を、というお話が来た時の率直な感想はいかがでしたか? KERAさんとは真逆の立ち位置だと以前話していらっしゃったと思いましたが。
河原:正直な話、同じ事務所じゃなかったらこの話は僕のところにはこなかったでしょう(笑)。KERAさんの芝居は若い頃からたくさん拝見して楽しませてもらっていますが、お互い作ってきたものはいい意味で水と油くらい真逆だし、趣向的にもそんな感じだと思うんです。例えるなら僕にってはフォン・ド・ヴォーみたいなもの。食べると美味しいことは知っているけれど、自分の生活圏にはなかなかないというか。合わないとかではなく、自分とは距離があるもの。普段の僕の食卓にはまず並ばないメニューだなって。
(左から)河原雅彦、松下洸平
ーーそれでも、そのフォン・ド・ヴォーを今回は河原さんが作ることになった訳ですね。
河原:本場のフォン・ド・ヴォーを食べたいならKERAさんが作ったモノを食べたら? って思うんです。この手の企画ってとかく「やっぱあの人の演出で観たかったー」って言われがちでしょ? 本場の味を求めるなら、うちの店では出せませんよって言いたい(笑)。戯曲はあくまでKERAさんだからヴォー的なモノにはもちろんなるけど、ウチなりのヴォーを楽しんでいただける方ならどうぞってことですかね……ってメシ屋の話になってないかコレ(笑)?
松下:アハハハ。
河原:KERAさんの作品って基本アテ書きが多くて、俳優さんを見て、そこから物語を創作されているんだと思うんです。そんな作品を預かる方としてはそもそもが難しいんです。フォン・ド・ヴォーを作るんだとしたら犬山(イヌコ)さんや生瀬(勝久)さんを呼ばないとならない訳で、100歩譲って犬山さん「っぽい」人を呼ばないとならない。でも自分が演出をやるとしたら、いっそいろいろなジャンル、感性を持った人を集めて、KERAさんのフォン・ド・ヴォーの「ヴォー」の部分からその人たちが何を発想するのか、今回の『カメレオンズ・リップ』ではその点を作品にフィードバックした方が楽しくなるんじゃないかなって思うんです。でもまだ何ができあがるかは僕も、誰も分からない。ただ『カメレオンズ・リップ』は必ずやるので、この作品のセリフ、一字一句好きな人は是非観に来ていただきたいですね(笑)。
ーーそんな河原さんの言葉を受けて松下さんは本作でどのような絵を描きたいと思っていますか?
松下:僕は初演版をDVDで見たフォン・ド・ヴォーのフォンド? ヴォー? の部分(笑)を堪能させていただいたんですが、河原さんがおっしゃったように初演をなぞる必要はなく、けれど「ヴォー」の部分は壊さずに、新しい『カメレオンズ・リップ』を作っていかないとなって思いました。『カメレオンズ・リップ』はものすごい完成度だったし、それは素晴らしい作品だった。けれど僕がそれをやるからには、今回のために集まってくれた方々と一緒に、芝居を通して感じたことを素直に演じていきたいですね。
とはいえ、役の作り方については皆と一緒に顔を揃えてみないと本当に分からないんです。現段階で僕がこうしようああしようと考えても今はなかなか決められない。だからこそ、そこが芝居の楽しみなんですが。蓋を開けてみないとどうなるか分からない。相手がどんな顔でどんな声で台詞を言ってくるのか分からないですから。その時僕の中にある物、感じたことを素直に演じるしかないなって。
過去にも僕が演じる前に他の俳優さんが演じられたことのある作品は何度かありましたが、始まる前は、前にやった方の演技がちらつくかなって思ったりもしたんですが、まったくそんなことはなく、むしろそんなことを考えている暇はないというか(笑)。自分のことだけで精一杯なんです。大事なのは、僕が演じるルーファスを河原さんがどうご覧になるかだと思うんです。初演の堤(真一)さんのルーファスは一度僕の中で消化して、僕だからこそのルーファスはまた別にあるんだって思っています。
(左から)河原雅彦、松下洸平
ーー今回、会場の違いやコロナ禍の影響などもあって、初演とは異なる演出になるのではないかと思うんですが、その点はどうしようと思っていますか?
河原:コロナの影響というよりは予算かな?(笑)。初演ではすっごいお金をかけてやっていたんです。まー羨ましいくらいお金をかけているんですよ(笑)。回るセット、雨、そして生きた魚とかも。水槽できれいな魚が泳いでいるんですが、魚ってメンテナンス大変なんですよ。地方に行くときの維持費とか、ただ車に乗せてよしって訳には絶対いかないから。加えて映像やら特殊効果やら仕掛けも盛り沢山でね(笑)。当時、KERAさんという演劇界の才能あふれる演出家を初めてシアターコクーンに招くからにはと、豪華キャストを集めて予算も潤沢に取って……。いい時代ですよね。
とはいえ、今回「あ、これは(初演と同じには)できないな」ってビシビシ思えたのが逆に良かったです。割り切って一から発想できる分、別の自由度が生まれるんですよ。実は今回、KERAさんの劇団健康時代の作品から延々たどって、『カメレオンズ・リップ』という結果にいきついたんです。初期のデタラメで前衛的な舞台にもとっても惹かれたんだけど、この作品も面白そうだなって。
ーーその「おもしろさ」をもっと具体的にうかがいたいのですが……!
河原:ええっとね……洸平くん、先に答えてててよ。 こういう質問がくるかと思って心の準備はしてきたんだけど、言葉をまとめるのにもう少し時間がかかりそうだから(笑)。
松下:ええっ(笑)!?  ……演劇自体がものすごくエネルギッシュだなと感じさせてくれましたね。この作品のDVDの特典映像にKERAさんがカメラを回して男性楽屋に潜入する企画があるんですが、堤さんや(山崎)一さんたちが話されているその空気感が「すごい、カッコいい!」って胸が熱くなったんです。作品全体からも、またお一人お一人からもエネルギーがバシバシ伝わってきたんです。それと共に僕がこの作品をやるにあたって、自分が持っているエネルギーをどれくらいこの作品につぎ込めるかなと思い、またそれが存分に表現できるのがこの作品だと思うんです。
この作品にはたくさんの嘘が描かれていて、話が進むにつれ、それが削がれて最後には生身の人間だけが残る……そうなった時にキャストたち、そして僕がどんな気持ちになるのか。ただのヒトになった人たちが放つエネルギーが生の舞台だからこそ感じることができるのが面白い部分だと思うんです。
河原:えーと、まとまってないまましゃべりますね(笑)。初演には2004年の、若かったKERAさんの筆の勢いってあると思うんですよ。あえて整合性を取らずに書いている所もあると思うんです。騙し騙されという面白さで引っ張っていると見せかけて、ディープな沼に引きずり込んでいくような芝居なんですが、何度DVDや台本を見てもストーリー全体を理解できているか自信がないんです。観る側をケムに巻いているような作品なんです、これって。そこが魅力的なのかなぁ。観客もケムに巻かれて何が何だか分からないうちに、最終的にいい男といい女が大雨の中抱き合っている。それを観ているほうが「なんだかいいもん観た」と思いつつも、話全体の筋としてはイマイチ理解が追いつかない部分もいっぱいあって。そういう意味では、決して分かりやすくは書かれていない。僕の中ではそのへんの得体のしれない感じが当時のKERAさんの野心作として心惹かれたというか。
(左から)河原雅彦、松下洸平
ーーそんな作品に今回、生駒里奈さん、ファーストサマーウイカさん、「我が家」の坪倉さんなどバラエティに富んだキャスティングがされているもの興味深いです。
河原:この前(初演に出演していた)生瀬さんと同じ現場だったので、「今度『カメレオンズ・リップ』をやるんですよ」って話をしたら「坪倉に僕のアクは出せないだろう~!」って(笑)。「いえ、生瀬さんの役はオカケン(岡本健一)です」って言ったら「……イメージできん!」っておっしゃってました(笑)。そのリアクションって、僕としてはとってもいい感じで。オカケンとは同い年でずっと昔から知り合いなんですが、一度も一緒に仕事をしたことがなくて。アクの強さはさて置き、むしろ生瀬さんがやった役をいい男がやったらどうなるだろうとワクワクしています。またウイカちゃんとコンビの役なので、これもまた想像がつかない。変な夫婦になるんじゃないかなぁ。それも楽しみです。僕が大好きな野口かおるも申し訳ないくらい贅沢な使い方になってるし、シルヴィアさんもなにかとやっちゃってくれる人だし。
生駒ちゃんについてですが、初演の堤さんと深津絵里ちゃんがきょうだい設定という「演劇マジック」でした(笑)。今回洸平くんが先に決まっていたので、当初は役柄相応の年上のおねえさんを想定していたんです。ところが生駒ちゃんと一緒に仕事をしてみたくて、試しに台本を読んでもらったらすごく芝居が“おねえちゃん”なんですよ! 洸平くんは逆に凄く弟感あるでしょ? だから初演をあえて周到して「演劇マジック」二人でやっちゃえって(笑)。どうなるかわかりませんが、トライする価値は十分ですよね。音楽を担当してくれる伊澤一葉東京事変the HIATUS)さんもね、古い知り合いなんですけど今回の作品にマッチするんじゃないかって。オファーを受けてもらえてすごい嬉しかった。
松下:この顔ぶれだと、過去ご一緒したことがあるのはシルビア(・グラブ)さんだけなんです。ウイカさんも岡本さんも話をしたことはありますが、舞台の仕事では初めてで。だからこそ僕の方からああしようこうしようと思うことは一切考えてないです。皆さんの第一声や河原さんの演出で大きく変わるはずだと思うので。僕はひたすら台本を読んでこの世界観を感じていようと思います。僕は心配性で、だからちゃんといろいろ準備してしまうんですが、今回はそういうことをあまりせず、その場で起こることを新鮮に感じたい。それが今回の自分の課題でもあると思うんです。それを鍛えるという点でも今回のキャストは楽しみなんです。
生駒さんの名前を観た瞬間、なんとなく納得感がありました。彼女と共演したことはないので、勘なんですが、一緒に芝居をしたら楽しそうだなって感じました。外見はおとなしそうだけど内面は何かが燃えたぎっている感じがして、それが爆発していく様を目の前で見てみたいと思っています。パーンって破裂した瞬間どんな破壊力があるんだろうって。また、それがいかんなく発揮できるのが『カメレオンズ・リップ』という作品であると思います。
(左から)河原雅彦、松下洸平
ーー河原さんは松下さんに本作で求めているものはありますか?
河原:ワイルドな推進力。主演として大胆にストーリーを引っ張ってってくれるような。KERAさんの脚本は、「この世界観はこうやると面白くなる」という方程式が読み取れるほど完成度の高い本なんです。だからその方程式の中でどこまで暴れられるかが見どころ。それ故に、そんなに器用さとかは求めないです。とはいえ踏まえなきゃいけないところももちろんあるので、その狭間をね、いかに生き生き演じるか。
たとえばKERAさんはこの作品でも笑いをたくさん散りばめていますが、今回それもあまり突き詰め過ぎなくていいかなと思ってるんです。単純に笑いは観客を飽きさせないし、演者的には笑いが起きれば観客が芝居についてきてるぞって「サイン」にもなるんですけどね。それが無くてもこの作品には十分な引きがあると思うし。とにかく、今までより俳優を信じてやっていきたいと思っているんです。俳優の感性というものを。何なら稽古も2、3日に1回くらいの感覚で自主練したものを見させてもらおうかなって。新しいでしょ!?
松下:(笑)。凝り固まってしまうか、演者同士で罵り合って一日が終わるかもしれないですよ(笑)。
河原:それはそれでいいじゃない(笑)。意外と生駒ちゃんが皆をまとめてくれているかもしれないよ? ウイカちゃんと野口かおるはずっと猥談してる気がするけど(笑)。

(左から)河原雅彦、松下洸平
■松下洸平
スタイリスト:渡邊圭祐
ヘアメイク:五十嵐将寿

衣装クレジット:
中綿シャツ ¥36,000、パンツ ¥33,000 /ともにエドウィナホール(問エドウィナホール ジャパンTEL03-3704-3536)

取材・文=こむらさき  撮影=寺坂ジョニー

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