King Gnu・勢喜遊×ODD Foot Works・
Pecori。井口理の実家での田植え、ラ
イブ共演を経て、フィーリングで共鳴
し合うふたりによる初対談!

King Gnuの超絶ドラマー・勢喜遊とODD Foot Worksの絶対的なラッパー・Pecori。このふたりというと、2019年8月に下北沢ガレージで行われたODDのライブにサポートドラムとして勢喜が参加したところからタッグを組んでいるわけだが、その3度目のライブとなる2020年12月30日リキッドルームでのODDのワンマンが素晴らしかった。Pecori、Tondenhey(G)、SunBalkan(B)というODDの3人に加え、数々のアーティストの楽曲プロデュースを手掛けるトラックメイカーでありながら、DJとしての現場の経験も豊富なYohji Igarashiを加えた新編成に勢喜が入ることにより、とてもダイナミックで肉体的なグルーヴが生まれ、5人それぞれの良さがふんだんに発揮されるという大きな進化が見られたのだ。

King Gnuとしてもmillennium paradeとしても、既存の枠を壊すような新たなグルーヴを創造する勢喜。そして、自主レーベル「Tokyo Invader」を立ち上げ、EP『Qualification 4 Files』を配信。引き算された音楽性を得たことにより、音もラップもよりシンプルにかっこよさが際立つというフェイズに突入したODD。ふたりの初対談をお届けする。
――さっきお互いの服について何か言ってましたね(笑)。
Pecori:いや、遊くんから「今日、絶対かましてくると思った」って言われて。
勢喜遊:うん、そう思った(笑)。
Pecori:俺そんなにビジュアル面で遊くんを意識してないんですけど。昨年末のリキッドの前に髪切って、真ん中は紺にして、横は赤でそこをちょっと長く残すような髪型でリキッド行ったら、会うなり「それ、俺が前してた髪型」って言われて。とりあえず一回ウンコつけてくるみたいな(笑)。
勢喜:あははは。
Pecori:それで一気に恥ずかしくなっちゃって。
勢喜:いや、俺も別に自分が意識されてるとは思ってないんだけど、かっこいい髪型っていうのを突き詰めるとそうなる時あるよね?って思ったから(笑)。
──(笑)そのリキッドでのライブがすごく良くて。勢喜さんはODDのサポートとしては3回目だったわけですが、ODDは2020年にメンバー3人にDJのIgarashiさんを入れた4人体制をスタートさせていて。
Pecori:元々曲の根本として、シーケンスでトラックもので、あくまで土台はヒップホップの流儀にギターとベースがいるっていう感覚でやってたんで、そこに生ドラムが固定メンバーとしているのはなんか違うなと思ってたんですね。でも色々な編成をやってみたいので、その都度信頼できるドラマーにサポートをお願いする形でライブをやってきて。でも勢喜遊と初めてガレージでやった時に、ODDのライブ感のバランスとバイブスがばっちりハマった感じがしたんです。「今までと全然違うわ」って思いました。遊くんのビートに俺らが引っ張られた印象が強かったのと、単純にビートと楽曲がめっちゃ合うって思って。それによって引き出された部分がすごくあったんですね。
勢喜:そのガレージのライブは、ODDがこれから定期的に実験的なライブをやっていくから試しにやってみない?って感じで誘ってもらって。それで実際やってみて、手応えと同時に、もっと良くできるはず、と思いましたね。
──2020年はコロナ禍ということもあって、一緒にやったのはリキッドだけ?
勢喜:そうですね。何回か可能性はあったんですけど、情勢的になかなか厳しいものがあって。ODDのマネージャーの三宅さんにガレージで飲みながら、「ODDのライブ参加できなくて悔しいです!」って言ったら、「King Gnuがライブができてないっていう状況だってことは、遊くんは今はODDもやるべきじゃないってことだから。今後深く関わっていくためには今は我慢しよう」って言ってもらって。その時、俺は酒を2本くらい飲んでたんですけど、その熱い言葉に「こんなにサポートの自分のことを考えてくれる現場もないな」って思って、勢い余って倒れました(笑)。
Pecori:マジで?(笑)。 酔っぱらって?
勢喜:そう(笑)。それで年末に久しぶりにできて。ODDっていう自分が叩けるところがあるっていうのは、すごくありがたいなと思いました。大事な場所だなと思いましたね。
──そのリキッドはODDの3人にIgarashiさんと勢喜さんが加わるという編成としては初のライブだったわけですが、グルーヴもすごく肉体的だし、洗練されてるし、あと5人それぞれの良さが発揮されたバランス感が最高だなと思いました。
Pecori:俺もバランスが最高だなと思いました(笑)。最近、ODDは音作りがよりグループっぽくなってるというか、俺としては任せられるところは任せてて。そういうところが曲とのつなぎ目とかにうまく出たなっていうのプラス、ステージ上の5人の感じがビジュアル的にも完璧だなって思いました。(ステージ衣装で)5人で同じチョッキ着て、DJもいて生ドラもいてっていう。そこも含めてめっちゃ良いライブだったと思います。
勢喜:今DJやってるYohjiはリアルタイムでエフェクトとかかけられるんで、刹那的な音楽としてすごく良くなったなって思って。そういう方向性でこれからもっとやっていきたいなって思いましたね。
Pecori:以前はその場その場での連携がなかなか難しくて、刹那的なライブ感があまりなかったんですよね。でもYohjiは現場のDJが本職だから、参加してもらった当初からそういう方向性ですぐ馴染んで。俺も昔から、そういうリアルタイムでエフェクトかけるみたいなライブをやりたくてしょうがなかったので、かなり良くなったと思ってます。リキッドでは遊くんがシーケンスも手伝ってくれて。サポートとして来てくれてるんだけど、ライブ制作の中心となって動いてくれたんですね。だから申し訳なさもあって(笑)。
勢喜:はははは。
Pecori:サポートの垣根って人それぞれだと思うんですけど、遊くんは「サポートだからこれ以上関与しない」みたいな垣根が全くないし、作業してる感覚としてはほんとメンバーって感じでした。
勢喜:今回、同期の整理は主にSunBalkanがやってたんですけど。何回書き出し直しても、どこか変なことになってて(笑)。頭が切れてたり、ちょっとずれてたりするのが永遠にあって。そのまま放っておくにしてはなかなか怖かったので(笑)、それを解決するためにうちで作業したんですね。午後2時にふたりで集まって、思いのほか時間がかかって夜の12時に終わって。ちょっと頑張りました(笑)。でも、そんなことすることもなかなかないので、いい機会だなって思いました。
Pecori:ほんとありがたいです(笑)。俺もライブ前日、リハ終わった後に、Yohjiとふたりでズレの補正とかを夜中までやって。そのあと3時くらいまで人狼やってたんですけど(笑)。その直前まで詰めるっていう熱量が、文化祭じゃないけど、普通のライブとはなんか違って。「あれだけみんなで詰めたよな」みたいな想いも含めてのライブだったので、熱かったですね。
勢喜:うん、部活感っていうか、合宿感あった。密な数日間だったね。
Pecori:ライブ来てくれたお客さんにはそんなことまでは伝わってないと思うけど、5人の中では共有されてる、すごく良い感覚があったんですよね。
■遊くんが入ることによって、ラップのアプローチについて意識させられた(Pecori)
──Pecoriさんはドラムが勢喜さんだという要素によってラップのアプローチを変えたりはしてるんですか?
Pecori:自分は普段、この編成だからこういうラップとかあまり意識しない方なんですが、遊くんが入ることによって意識させられたって感じですね。自分は自分として目の前を見てラップするって感じだったのが、振り向かされた。遊くんはどう思ってるかわかんないですけど、ラップをビートにはめて、それに対するドラムのビートアプローチを結構入れてくれるんですね。それは遊くんしかやってないし、遊くんしかできないって感じがした。そういうアプローチをやってくれることで、ライブ中、自ずと対面で向かい合ってラップしたくなりましたね。
勢喜:自然とそうなったんだよね。そういうアプローチが好きっていうのもあって。
──セトリはODDのメンバーで決めたんですか?
Pecori:俺らが決めて、遊くんに投げました。はじめから覚えなきゃいけない曲が結構多かったよね。
勢喜:そう。メドレー方式で、1コーラスだけやってどんどん次の曲にいくっていうショートバージョンミックスが今回セットに導入されてたんですけど。最初曲名だけ送られてきたから、数がすごく多くて。「俺こんなに1から曲さらわないといけないのか」って絶望的な気持ちになった(笑)。
Pecori:遊くんから「ちょっとさ~」で始まるLINEが来て(笑)。「曲多くない?」って書いてあった後、大泣きしてる顔があって(笑)。
勢喜:あははは。最初はそう思ったんだけど、大丈夫だった。他にもやりたかった曲いっぱいあったし。結局20曲以上やったんだよね?
Pecori:そうだね。でも今回ショートミックスやったのも遊くんだからっていうのもあるんだよね。YohjiのDJのスタイルとして、スポットでミックスすることもあるんだけど、それに対応するドラムってなかなか様にならないのに、遊くんは様になるし。あと、俺らの曲を好きでいてくれてるから、たくさん曲をやりたかったっていうのもあったんだよね。
■サポートをひとつもやってなかったので焦りもあった(勢喜)
──そもそもサポートのきっかけは、2019年6月に行われたKing Gnuの井口さんの実家の田植えだったそうですが、具体的にどういう状況だったんですか?
Pecori:(理から)田植えに誘ってもらって、実家に行ったんですよ。そうしたら、King Gnuが前日にフェスに出てた関係で遊くんが泊ってて、裸で歯を磨いてて(笑)。その時はちょっと面識あるくらいだったんですけど、楽しかったので俺も一泊させてもらって、翌日バスで帰ることになって。
勢喜:帰るタイミングがたまたま一緒だったから、バスで隣同士だったんだよね。そこで「ODDは今どんな感じなの?」って聞いたりして。俺、その時サポートをひとつもやってなかったんで、「叩くよ?」って言ったら、「じゃあお願いしたいかも」って流れになった。ちょっとした焦りもあったんですよね。新井和輝はめちゃくちゃいろんな現場に呼ばれてサポートやってるけど、俺は全然ないなって(笑)。
Pecori:そこに俺が救世主として現れたっていうね。
勢喜:(笑)でもその時俺、ODDの曲全く知らなくて。なのに「サポートやるよ」って、今思うとヤバいんですけど(笑)。それで、ライブの音源を参考音源として送ってもらって、それを車で聴いてたら、たまたま横に座ってた常田大希が「絶対、遊に合うよ」って言ってくれて。それが結構自信になりましたね。
Pecori:へえ、そうだったんだ。昔、King Gnuと同じイベントに出てたこともあって。しかも歳も近い同世代だから「一緒に頑張っていこう」みたいな感じもあって。それですごい売れたから「すごいなあ」って(笑)。曲も良いし。でも、遊くんのことはKing Gnuだからっていうのより、普通に良いドラマーだからサポートをお願いした感じなんですね。あと、うちがバックDJっていう形態で生ドラ入れやすいっていうのも大きくて。
勢喜:まあでも田植えの時、Pecoriがすごいおもしろくて良い奴だったんで。大体そんなもんですよ(笑)。
Pecori:(笑)タイミングと関係性が重要だよね。でも、田植えの時はあまり喋ってはいないよね?
勢喜:そんなに喋ってはないんだけど、なんか踊ってたじゃん(笑)。
Pecori:ああ、踊ってた(笑)。それで遊くんもダンスやってたからって、一緒に踊ったりして。
勢喜:うん、おもしろかった。
Pecori:そう、体でコミュニケーションしてみてね(笑)。好きな音楽の話もあまりしないんですよね。会話の流れとか、曲の聴き方とかノリで、共通で好きなものだったり、ルーツが自然とわかるみたいなところもあるかもしれない。
勢喜:ああ、そういう点では、俺はほんと勉強させてもらってるって感じがしてるかな。
■かっこいい音楽をやろうと思って実際できてるアーティストは意外と少ない(Pecori)
──King GnuもODDも、多様な音楽的な引き出しを持ちながら革新的なことをやりつつ、マスにもコアにも刺さる表現をやっている印象があるんですが、それについてはどう思いますか?
Pecori:かっこいい音楽をやろうと思って実際できてるアーティストって意外と少ないと思ってて。でも、2組ともそれができてると思ってます。ODDはこれからマスを刺しにかかろうかなって思ってて、みんなの首元をうしろから包丁で狙ってる状態(笑)。ほんとこれからだと思ってるんで、それもあって年末にああいう良いライブができて本当に良かったなって思ってますね。
──年末に配信されたEP『Qualification 4 Files』の楽曲を使ったショートフィルム「鳶飛蝶躍」のディレクションをPERIMETRONのOSRINさんが担当していて。その繋がりもありますね。
Pecori:そう、OSRINとも田植えで繋がって。
勢喜:やっぱ田植えデカかったね。
Pecori:確かに(笑)。
──勢喜さんが「鳶飛蝶躍」を観て、「誰かこのシーンの意味教えて! 最後お母さんが泣いてるとこにコンビニの制服と仮面がかかってる意味!」とツイートしてましたが(笑)。
Pecori:だから、遊くんはそういうところが優しいですよね。あのシーンの意味なんてどうでもいいんですから(笑)。
勢喜:あははは。
Pecori:でも、ああやってツイートして作品を拡散してくれるっていう。そういう風に僕は解釈してます(笑)。
勢喜:(笑)いや、あの映像はほんとすごかったし、本当に意味を知りたかったから。そうしたら、それらしい答えをいっぱい返してくれた人がたくさんいた。OSRINあるあるなんですけど、あの映像もいろんな解釈をしてOKな許容範囲の広い作品だと思うので。リリックに明快な意味があるわけじゃないけど、世界観はしっかりあって。そこにOSRINが作る映像がかみ合ってて、すごく良いと思いました。
Pecori:そう。受け取ってくれた人それぞれの解釈が違うので全然良いし。だから、そう受け取ってもらえてほんと良かった。
──EPの曲が断片的に使われているコンセプチュアルなショートフィルムで。あそこまでのものをよく作ったなと思ったんですが、どういう狙いがあったんですか?
Pecori:あのタイミングで自分たちでインディーのレーベルを立ち上げて。そこから出す1発目の映像だったから、安っぽかったり適当な仕上がりだとナメられるっていうのもあるから豪勢にいこうってなって。それで色々と話していくうちに、映像にしようかってことになりました。元々ショートフィルムっぽいのはいつか作りたいと思ってたんですね。それでOSRINに「EPの4曲を全部使う映像を作ってほしい」ってお願いをして。だから、次の2発目も大事ですよね。アイディアはたくさんあるので、それをどう出すかっていうことを今考えてるところですね。
■大希の「音楽の前ではみな平等なんだ」っていう発言が救いになった(勢喜)
──ODDは編成的にも、TondanheyさんもSunBalkanさんもボーカルを取ってどんどんミックスされていってますが、millennium paradeも常田さんを筆頭にパートもボーダーレスだし、人も編成もどんどんアップデートされていくおもしろさがあって。枠を設けずに新しいものが生まれていくワクワク感というか。
Pecori:そう、そういう意味ではギタリスト然としたギタリストってODDに合ってないし、Tondenheyは「フランク・オーシャンになりたい」って言ってるくらいで。これからあいつはソロ作品も出していくだろうし、そうやって各々でも活躍しつつ、最終的に還元される場所がODDになればいいって思ってるんですよね。2年くらい前から半分ジョークで言ってるんですけど、ODDのメンバー100人いても良いっていう(笑)。それくらい流動的なのが良いと思ってるんですよね。
勢喜:そういうところはこの世代の特徴なのかなって気がしてますね。
──ミレパもどんどんメンバーというか、参加者が多くなってますもんね。
勢喜:確かに。でも、増やすっていうよりは、曲ありきで参加するメンバーが変わったり増えたりしてて。どんどん家族になっていくっていう感じなんですよね。大希が前インタビューで言ってたんですけど、音楽を前にした時には自分のエゴとかは本当にどうでも良くて、皆平等なんだって。それを自分のmillennium paradeでの立場に置き換えると、俺は昔から石若駿のことを知ってて。駿は昔から神童って言われるくらいすごいドラマーで。例えばフォロワー数でいうと俺の方が多いかもしれないけど、そういうのとかKing Gnuのメンバーだからとか全く関係なく、駿と俺を平等に扱ってくれることが、俺としてはすごく救いになったんですよね。
──わかりました。またODDへの勢喜さんの参加はありますかね?
Pecori:あります、あります。
勢喜:やりたいと思ってます。なかったら悲しいです(笑)。俺、未だにリキッドのライブ映像観返してますからね。
Pecori:ありがたいですね(笑)。
取材・文=小松香里 撮影=岩澤高雄(The VOICE)

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