カワカミー賞発表! [Alexandros]川
上洋平、2020年のベストムービーやベ
ストアクターを語る【映画連載:ポッ
プコーン、バター多めで PART2】

大の映画好きとして知られる[Alexandros]のボーカル&ギター川上洋平の映画連載「ポップコーン、バター多めで PART2」。今回は特別編として、独断と偏見で選ぶ「2020年カワカミー賞」を発表。ベストムービーに加え、いくつかのジャンルに分けてのそれぞれのベスト作品やベストアクターを発表します!
ベスト泣いた賞:『ロマンスドール』
主人公はラブドールを作ってる職人なんですけど、そういうエロティックなアイテムを作ってることに引け目を感じてて、奥さんに対してずっと自分の仕事のことを隠し続けてるんですね。そういった背景を主軸にした夫婦愛の物語で。お互いを信頼している夫婦同士だとしても、踏み入れられないテリトリーがあって隠し事が存在しているっていうことが、なんかリアルでしたね。
前半では、主人公がラブドールのモデルとして仕事場に来た女性に一目惚れして、自分の職業を隠してまで付き合いたいっていう気持ちが描かれていてきゅんとしましたね。それで告白して付き合うことになって結婚して。そこからは夫婦愛のあれこれが描かれるんですが、僕は結婚してないのでそこからは「夫婦ってそういう感じなのかな」って思ってちょっと引いて観たというか。だから、ラブストーリーとしては結婚前が描かれた前半の方が感情移入しましたね。
『ロマンスドール』より
僕がこの作品に一番共鳴したのは、こういうエロティックなアイテムに仕事として情熱を注ぐことの素晴らしさでした。ラブドール職人ってあまり光が当たりにくい職業でもあると思うんですけど、そこにスポットライトをあてるのが良いなって。僕、会社員時代に厚木に勤めていたことがあったんですけど、そこにコンドームのサガミオリジナルで有名な相模ゴム工業の工場があったんですね。厚木っていろんな会社の開発部門が集まってて、ある意味日本の技術が集結してる場所でもある。そこに相模ゴム工業の工場がどんってあって、ちょっと誇らしげな雰囲気もあって。「ここで日本製品の品質が守られてるだな」って思いながら(笑)、眺めてたんですよね。『ロマンスドール』を観た時期が『全裸監督』を観た時期と近かったんですが、『全裸監督』もAV業界っていう社会の陰の部分とも言えるところで情熱にあふれる人たちが描かれている。そういう趣旨の作品には惹かれるところがありますね。
『ロマンスドール』より
ベスト笑った賞:『僕のミッシー』
とにかく笑いましたね。主人公の会社員のことを好きになるミッシーを演じるローレン・ラプカスの演技がすごくはっちゃけてて。『ジュラシック・ワールド』では管理棟のかわいい感じのスタッフ役だったんですけど、『僕のミッシー』では、かわいいを通り越してぶっ飛んでるというか、すごくユーモラスなファニーフェイスをするんです。ミッシーに好かれる主人公役のデヴィッド・スペードも『サタデー・ナイト・ライブ』のレギュラーだったりコメディアンとして活躍してる人ですけど、『僕のミッシー』はローレン・ラプカスありきだと思いました。これだけ振り切った演技はなかなかない。身長が180cm近くあるってこともあって、動きにもいちいち迫力があるんですよね。コメディアンとして活動してる方でもあるんですけど、「これだけされたら笑うわ」って思いました(笑)。
僕、『ハングオーバー!』シリーズとか『世界の果てまでヒャッハー!』とか、わかりやすいコメディ映画が好きなんですけど、コメディって「アクションがすごい」とか「CGがすごい」っていうのより、どれだけ役者が振り切って体を張るかとか、どれだけおもしろい顔をするかっていうところにかかってるのかもしれない。一番人間力が試されるというか(笑)。そういう意味でも、ローレン・ラプカスが演じるミッシーには人間の喜怒哀楽をすごく感じたし、観てて単純に元気になりましたね。
『僕のミッシー』より
今僕は『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』っていうドラマでラブコメっぽいことやってますけど(笑)、どんなコメディでもぐっとくるシーンがあって、それによって作品にコントラストができる。『僕のミッシー』も、最初はずっとミッシーのエキセントリックな部分がギャグ的に強調されて、それに対して主人公は「この子、怖いな」「こういう子が彼女だったら嫌だな」とか思って引いてるんだけど、自分のことをすごく好きでいてくれるから、だんだん愛おしく思えてくる。それでしっとりするシーンもあったりして、最終的には“僕のミッシー”ってなる。その見せ方がうまいなって思いました。その展開によって喜怒哀楽の幅が生まれて、どれだけ笑えても、どこか切なさが醸し出されていくんだなと。こんな真面目な話するような映画じゃないんですが(笑)、笑いの深さが凝縮されてる作品だと思います。
チャップリンの言葉で「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇だ」って名言がありますけど、コメディ映画を観てると、ほんとその通りだなって思う。物語が進むにつれて登場人物のキャラクターに親近感が湧いて、笑いの中にもの悲しさを感じたりするんですよね。
『僕のミッシー』より
ベストアクション賞:『悪人伝』
主役のヤクザの組長役を演じるマ・ドンソクが素晴らしいです。僕が初めてマ・ドンソクを観たのは『新感染 ファイナル・エクスプレス』なんですけど、あの作品は脇役で。主演で初めて観たのは『犯罪都市』ですね。それが最強におもしろくて。そのあと観た『グッバイ・シングル』も『ザ・ソウルメイト』も良くて。マ・ドンソクが主人公だと、大体同じような流れで本領発揮の映画になるというか(笑)。何も考えずに安心して観れるし、絶対楽しませてくれるっていうヒーロー感がありますよね。マーベルの新作『The Eternals』にも出るみたいですけど、ハリウッドがほっとかないと思う。もちろん演技も素晴らしいんだけど、マ・ドンソクが出てるならなんか観ちゃうっていう、そういう力を持ってる役者さんですよね。
『悪人伝』より
『悪人伝』はヤクザの組長と刑事が手を組んで殺人鬼を追う話で。そこで信頼関係が生まれる設定もおもしろいなと。韓国映画は設定がおもしろい作品が多いですよね。この前観た『ヒットマン エージェント:ジュン』はヒットマンがマンガ家になるっていう話で笑えました。『エクストリーム・ジョブ』も、麻薬捜査のために捜査官がフライドチキンのお店の偽装営業をしていたら、そのお店が繁盛しちゃって捜査がおそろかになっちゃうみたいな話で。そのぶっ飛んだ設定ってどういう風にして決まるんだろうって(笑)。「麻薬捜査官がフライドチキン屋さんになって~」「それ、いいね!」みたいな会議を経て決まったのかと思うと微笑ましい。想像力がすごいなと。
あと、『悪人伝』は刑事役のキム・ムヨルも良い役者さんですよね。設定が近いですけど、警察とマフィアの内通者同士が手を組む『ディパーテッド』にも出てるマーク・ウォールバーグにすごく似てて。多分意識してる気がします(笑)。あと、僕がよく観る輸入中古車サイトの動画に出てくる本部長の顔にも似てます。
『悪人伝』より
ベストサスペンス賞:『聖なる犯罪者』
以前、この連載でも取り上げた殺人罪で少年院に入っていた主人公が仮釈放されて、嘘をついて聖職者になって、街の人たちに尊敬されていくというストーリーのポーランド映画ですね。淡々としてるけど、心にハンマーをゆっくり打つような、力強さとスリルをはらんだ映画。決して明るくないんだけど、僕としてはすごく希望が見え隠れする映画だと思ってます。いやらしさが全くないのが良い。
聖職者になる資格がない前科者が神父になりすましてるので、素性がいつかばれてしまうんじゃないかっていう緊張感がずっとある。そこがサスペンス的で楽しめました。近いものを感じたのが、『ウルフ・アワー』っていう映画で。ナオミ・ワッツが演じる落ちぶれた小説家の家のブザーが鳴って、出ても返事がなくて、「誰?」ってなるところから入るんですけど、サスペンスにどんどん違うテイストが入っていく。『聖なる犯罪者』も最初はサスペンスとして観てたんですけど、途中から人間ドラマの様相を呈していきます。そこは主演のバルトシュ・ビィエレニアの力量も大きいと思います。坊主頭っていうのもあるんだけど、『トレインスポッティング』のユアン・マクレガーを思い出す、ちょっと危なっかしくて儚い、少年から青年への移り変わりを切り取ったような印象があってすごく惹かれました。彼が演じる神父さんは、他にはない独得の雰囲気を持っていて、村人の心をつかんでいくのにも納得しますよね。
『聖なる犯罪者』より
ドキドキしながら謎が解決されて緊張感が解かれるっていうのもサスペンスだけど、この映画みたいに緊張感が終わった後もずっと続いていく映画もそうなんじゃないかと思ってて。グザヴィエ・ドランの『トム・アット・ザ・ファーム』もすごい好きなんですけど、あれも緊張感がずっと続く映画で、サイコサスペンスみたいな感じがありますよね。
『聖なる犯罪者』はポーランドの歴史や今の社会問題が垣間見えるのもおもしろい。村っていう閉鎖的な場所に、その縮図が落とし込まれているというか。そういう側面もあって社会的な評価も高くて、ポーランドのアカデミー賞とされているORL Eagle Awardsでいくつも賞を取っているし、アカデミー賞国際長編映画賞にもノミネートされています。でも、その年のアカデミー賞は『パラサイト 半地下の家族』の年だったので、それは『パラサイト』が取るなと(笑)。
『聖なる犯罪者』より
ベストぼんやり賞:『ハイウェイの彼方に』
僕の中でぼんやり映画って、ちょっと疲れてる時に観たくなる、割と淡々とした映画のジャンルなんですね。何年か前のカワカミー賞の作品賞をジェイク・ジレンホール主演の『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』が取ってるんですけど(笑)、その映画だったり、あと同じくジェイク・ジレンホール主演でボール・ダノの初監督作品の『ワイルドライフ』もすごく淡々としてて良い。抑え目な演技、抑え目な演出、すべて抑え目な感じで進んでいく。でも気付いたら心に沁み渡っていて、「わかるな~」っていう映画。映画館で観るのはやっぱり大画面だからこその大作が良いんだけど、そういうぼんやりした映画が観たくなる時もたまにあるんですよね。心のちょっとした休憩どころ、サービスエリアみたいな映画ジャンル。『ハイウェイの彼方に』は、そういう映画としてすごく良かったです。
イーサン・ホーク演じる主人公は、20年以上服役した後に仮釈放されて。20年も留置所の中で過ごしていたので世間についていけないんですね。そこで孤独を感じてる時に捨てられた赤ちゃんを見つけて、思わず拾ってしまったことで、だんだん変化が訪れる。その過程で、「え、そこで?」みたいな展開が何回かあったりするんだけど、「1個1個紡がれてきた出来事がこういう風に1個1個終わっていくんだ」っていう心地好い新鮮さを感じました。
20年間刑務所に入ってたから、親にもずっと負い目を感じていて。でも、最後故郷に帰って、もう亡くなってしまった両親とちゃんと繋がりが持てる。その展開も良かったです。人生を早く進めたいんだけど、自分の中では時が止まってて。でも、明日なんていらないっていうくらい明日に向かってるっていうか(笑)。ロードムービーの雰囲気もあって、やっぱり最後はこうなっていくのねっていう良いエンディングでした。
『ハイウェイの彼方に』より
ぼんやり映画でいうと、ソフィア・コッポラの『SOMEWHERE』もすごく好きです。自堕落な生活をホテルで送るハリウッド・スターが織りなす淡々とした感じがたまらないですね(笑)。あと、テレンス・マリック監督の『聖杯たちの騎士』の主人公の自暴自棄な感じも好きですね。一回燃え尽きたようなところから、生きる意味や希望を見出し始める。人生って決して順風満帆ではないわけで、何かを探してる時期もあるし、探してなくて別に何もないすることがない時期もある。それでもなんか生きる意味を見出そうとしちゃうところが、悲しくもあるしかわいらしさもある人間の性質だと思ってて。
どんな職業でもそういう感覚はあると思いますけど、僕の場合、例えば1曲できると、「ああ、ひと仕事終えた」って思って、どこか空っぽになるんですね。充足感というよりは、喪失感にも近い何ともいえない感じというか。それで、メンバーも誰もいないところにふわっと行きたくなる。そうやって漂いたくなる感覚を、ミュージシャンになって初めて血の通った仕事を成し遂げた後に感じたんですね。一生懸命何かをやるとこういう感覚になるのかなって。
『ハイウェイの彼方に』も『SOMEWHERE』も『聖杯たちの騎士』も、主人公にそういう感覚を感じるところに共鳴するんですよね。例えるとしたら、グラスでワインを飲んでる時は派手なアクション映画とかで。そのグラスを洗ってる時は人間ドラマで、洗って乾かしたグラスが棚に置かれてる時の映画がぼんやり映画だと思います(笑)。ただ何かを待ってるのみというか、待ってなくてもいいかもしれない。そこにただあるだけの映画っていう感じがします。
『ハイウェイの彼方に』より
ベストアクター:イーサン・ホーク(『ハイウェイの彼方に』)
今回ベストアクターに3人選ばせてもらったんですが、まずは『ハイウェイの彼方に』のイーサン・ホークですね。ずっと良い役者さんとして歩んできてる感じがします。メインストリームにいそうでいなかった人だから、ブラッド・ピットやレオナルド・ディカプリオとかのアイドルスターみたいなところから脱したかった人なのかなと思ってて。「イケメン枠におさまりたくない」みたいな。『インデペンデンス・デイ』の出演オファーを断ったって明かしてましたけど、実際『インデペンデンス・デイ』が公開されたらすごい話題になってて、当時の彼女と映画館に観に行ったらものすごい人気で、「俺はこれを見抜けなかった」と後悔したっていう(笑)。冗談で言ってるのかもしれないけど、王道のところから脱したかった人なのかなって思ってます。
『タイタニック』のオーディションを受けてたり、大作に興味があった時期はあったのかもしれないけど、どっかでディカプリオやブラッド・ピットにはかなわないし、メインストリームじゃないところを狙っていこうって思ったのかもしれないですよね。
『ハイウェイの彼方に』より
ベストアクター:仲野太賀(『すばらしき世界』)
『すばらしき世界』は2021年2月公開ですけど、僕は2020年に観たので入っています。元々仲野大賀さんはすごく好きな役者で。顔もタイプだし。仲野太賀さんを見てると、なんでこんな普通の青年感を醸し出せるんだろうって思うんですよね。お父さんも俳優さんで、芸能界っていう華やかな世界にいる方なわけで。ご本人とお会いしたことがないので実際のところはわからないんですけど、東京に住んでるおぼっちゃんって感じがしないっていうか。地元の相模原にこういう青年いたもん(笑)。最近の若手俳優さんって、僕としてはちょっと派手な存在感がある方が多いイメージなんですけど、仲野太賀さんはそういうタイプとは違って、控えめなんだけどどの役でもちゃんと強い印象を残す。かなり稀有な存在だと思ってます。『タロウのバカ』でも『MOTHER マザー』でも『生きちゃった』でもすごく良かった。この『すばらしき世界』もすごく控えめな役で、途中からアジカンの後藤さんにしか見えなくなったんだけど(笑)、それもまたすごいっていうか。年齢はだいぶ違うけど、僕の中ではジェイク・ジレンホールに近い魅力を感じてます。
『すばらしき世界』より
ベストアクター賞:ローレン・ラプカス(『僕のミッシー』)
僕の好みですけど、やっぱり2020年のベストアクター賞はローレン・ラプカスですね。コロナ禍ってこともあって、笑いを作るのが難しかったり、自分もあまり笑えなかった年だったと思うんです。でも『僕のミッシー』のローレン・ラプカスは、2020年映画を観てる時間の中で一番笑えました。だから、感謝を込めてベストアクター賞を送りたいと思います。おめでとうございます(笑)。
『僕のミッシー』より
ベスト作品賞:『アルプススタンドのはしの方』
最後のベスト作品賞なんですが、『アルプススタンドのはしの方』は本当に良い映画でした! 手作り感があって、『カメラを止めるな!』的な感触も感じましたね。内容を知らずに家で観たんですけど、すごく引き込まれて、ちょっと泣きそうになりましたね。高校演劇の戯曲を映画化した作品で、夏の甲子園の観客席で、試合を観ながらの高校生同士の会話を軸に話が展開されていきます。実際の野球の試合は最後まで映らなかったり、そういうところも舞台感が強い。出演者は若手の良い役者さんばかりだし、終わり方もすごく良かった。最後、「矢野ー!」ってみんなで叫びたくなる感じ(笑)。映画館で観てたら、みんなで拍手したくなるっていうか。とにかく心に残ったし、ライブ感がある映画で。コロナ禍で、ちょっと下北や吉祥寺に行って舞台観たいなとか、ライブハウスに行きたいなっていうのがなかなか難しくなってしまって。でもこの映画は、すごく良い生の舞台の臨場感や瑞々しさがあったので、「ありがとう」という気持ちを伝えたいですね。
『アルプススタンドのはしの方』より
2020年は映画を観た本数は103本で、他の年に比べると少なかったですね。やっぱり映画館に行くからこそ映画が観たくなるっていうところもあって。あと、時間がない方が合間を縫って映画館に行こうとするんですよね(笑)。2021年は200本は観たいと思ってます。
取材・文=小松香里
撮影=河本悠貴 ヘア&メイク=青山志津香(vicca)
アレキ像制作=しげたまやこ

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