サザンソウルの完成形とも言える
オーティス・クレイの
圧倒的な傑作『愛なき世界で』

本作『愛なき世界で』について

そして72年、「イズ・イット・オーバー」とほぼ同じメンバーで録音(ロイヤル・スタジオ、ミッチェルのプロデュース)されたのが本作『愛なき世界で』である。収録曲は全部で10曲。タイトルトラックの「愛なき世界で」は全米R&Bチャートで24位のヒットとなるのだが、この曲を愛する多くの日本人が1位になってもおかしくないと思っているはずだ。それぐらいの名曲・名演である。クレイのソウルフルなヴォーカルはもちろん、ドナ&サンドラ・ローズ、チャールズ・チャルマーズの白人3人によるあっさり目のバック・コーラス、南部フィールいっぱいのホーンアレンジ、テンポ、メロディー、どこをとってもサザンソウルのエッセンスに満ちている。この曲はイーグルスの「ロング・ラン」の下敷きになっているし、カバーしているアーティストも少なくない。

続くこれまた名曲の「アイ・ダイ・ア・リトル・イーチ・デイ」では、メンフィス・ストリングスが登場(ストリングス・アレンジもミッチェル)し、このスタイルこそがハイ・レコードの特徴的なサウンドである。ジャッキー・ムーアの「プレシャス・プレシャス」はO.V・ライトの名唱が知られているが、クレイのバージョンも負けず劣らずの名演である。ローラ・リーの極め付けの名演で知られる「ザッツ・ハウ・イット・イズ」は、ティーニー・ホッジズのギターとホーンアレンジが素晴らしい。「ホーム・イズ・ホエア・ザ・ハート・イズ」は、シングル曲を集めたクレイの2枚目のアルバム「アイ・キャント・テイク・イット」(’77)にもなぜか収録されている。

ということで、結局どの曲も甲乙付け難い仕上がりとなっていて、これだけレベルの高いアルバムにはなかなかお目にかかれないだけに、聴いたことがない人はぜひ聴いてみてほしい。70年代にこのアルバムと出会った当時の若者たちと同じように、きっとサザンソウルが好きになるはずだ。

代役としての初来日公演

1978年、急病のO.V・ライトの代役として初来日したクレイは、その圧倒的なステージで観客を魅了し多くのファンを生むことになる。その時のコンサートの模様を収録した2枚組LPはすばらしいできで、サザンソウル・シンガーとしては破格のセールスを記録したことでも知られている(2014年に完全版がCD化されたが、残念ながら現在は入手困難である。再発を!)。

TEXT:河崎直人

アルバム『Trying To Live My Life Without You』1972年発表作品
    • <収録曲>
    • 1. 愛なき世界で/Trying to Live My Life Without You
    • 2. アイ・ダイ・ア・リトル・イーチ・デイ/I Die a Little Each Day
    • 3. ホールディング・オン・トゥ・ア・ダイイング・ラヴ/Holding on to a Dying Love
    • 4. アイ・キャント・メイク・イット・アローン/I Can't Make It Alone
    • 5. ザッツ・ハウ・イット・イズ/That's How It Is
    • 6. アイ・ラヴ・ユー・アイ・ニード・ユー/I Love You, I Need You
    • 7. ユー・キャント・キープ・ランニング・フロム・マイ・ラヴ/You Can't Keep Running from My Love
    • 8. プレシャス・プレシャス/Precious Precious
    • 9. ホーム・イズ・ホエア・ザ・ハート・イズ/Home is Where the Heart Is
    • 10. トゥー・メニー・ハンズ/Too Many Hands
『Trying To Live My Life Without You』(’72)/Otis Clay

OKMusic編集部

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