高槻かなこインタビュー 初のアニソ
ンカバーEPを出す理由は「自分の世界
から踏み出すため」

3月3日、高槻かなこ初となるカバーシングル『King of Anison EP1』がリリースされた。
アニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』の国木田花丸役の声優としても知られる高槻は2020年10月、アニメ『100万の命の上に俺は立っている』のOPテーマ含むシングル「Anti world」でアーティスト活動を活発化。今回のEPはそんな彼女が発表するアニソンカバーCDだ。
その収録内容は自身のシングル表題曲「Anti world」と坂本真綾「プラチナ」、TK from 凛として時雨「unravel」の3曲。一線級の声優であると同時に、高校時代からアニメとアニメソングに親しみ、1500曲からのアニソンレパートリーを持つ高槻はなぜ今、名作アニソンを歌うのか? 話を聞いた。

――最近っていかがお過ごしですか?
ライブ活動をメインに仕事をしていたんですけど、新型コロナ禍でそれがなくなっちゃったので、ゆっくりおうち時間を楽しんでます。
――でも高槻さんのキャリアを追ってみると、中学時代には児童劇団にいらっしゃったし、2010年以降も半ばワーカホリック気味ともいえるくらいパワフルに活動なさっていた。
そうですね。
――そういう方が「歌っちゃいけません」「演じちゃいけません」って言われるのってどういう気持ちのするものなんだろう? ってすごく気になっていたんですけど……。
家にずっといることがあんまり苦にならない性格なので、すごく落ち込むっていうことはないですね。ゲームがすごく好きなので、ずっとゲームできるのは楽しいですし、編み物を始めてみたり、観たかった海外ドラマを観たりするのも面白いですし。あと去年の自粛期間は、ちょうどソロシングルの制作期間と重なっていたので、なにもできなくなっちゃったわけでもないんですよ。ゆっくり曲作りをしたり、けっこういい時間を過ごせたし、今も過ごせている気はしています。
――いい意味で大らかというか、状況に振り回されはしなかった?
世界中のみなさんが大変なんだから、私だけ腹を立ててもしかたないかな、と思ってます。
――そういう心境でいらっしゃったっていうことは、去年10月にソロアーティストとしてはリスタートとなるシングル『Anti world』をリリースしたときも慌てたり、困ったりはしなかった?
リリースイベントをオンラインで実施したり、たぶん一昨年の音楽の世界と比べるとベストとは言えない状況だったとは思うんですけど、そんなにネガティブにはならなかったですね。そのときできることを精一杯やっていた気がします。
■シングル収録のアニソンカバー曲の意味は
――そしてこのたび、そのシングル表題曲「Anti world」も収録されている「King of Anison EP1」がリリースされます。
はい。
――この盤には「Anti world」のほか、坂本真綾さんの『プラチナ』と、TK from 凛として時雨さんの「unravel」という2曲のアニメソングのカバーバージョンが収録されています。
高校時代にアニソンカフェっていうコンセプトカフェのキャストをやっていたくらいアニソンが好きなので。その頃……いや、小学生の頃から「いつか歌手になりたいな」って思っていたし、カフェのキャスト時代には「アニソンのカバーアルバムを出したいなあ」という夢をもっていたので、それを今回EPという形でリリースさせてもらいました。EPという形態ならフルアルバムよりも短い準備期間で出せるかな、と思って。
――なるほど。EPはフットワーク軽く音楽活動するためのメディアなんだ、と。
そうですそうです。歌いたい曲を何曲かずつパッと収録したEPを続けてリリースするシリーズにしていきたいなと思っています。
――過去のインタビューなどで高槻さんはカフェのキャスト時代、1500曲のアニソンを歌っていたとおっしゃっていましたけど、その数あるレパートリーの中でも、今回はなぜ『カードキャプターさくら』のオープニングテーマである「プラチナ」と『東京喰種トーキョーグール』のOPテーマ「unravel」をカバーしようと?
「プラチナ」は高槻かなこチームの音楽プロデューサーからリクエストされた曲で、「unravel」は自分で選んだ曲ですね。
――アニソンを1500曲歌える人にとって「プラチナ」ってどういう曲ですか?
本当に王道のアニソン。しかもアニメファンなら誰もが知っているし、私自身、カラオケで歌っていた曲なので、自分のアニソンに対する純粋な思いを出せる曲かな、と思っています。
――ではプロデューサーから勧められたときも……。
「いいじゃん!」って感じでした(笑)。そもそも歌ってほしいって言ってもらえる曲、聴いてみたいって誰かに思ってもらえる曲を歌えるなんて光栄なこともないですし。それにそういう歌、自分が思いもよらなかった曲を歌ったほうが自分の表現の幅が拡がると思っています。
――確かに自分が気付いていなかったけど、みんなが知っている高槻かなこの魅力があぶり出されそうですね。
なので、二つ返事でOKしましたね。「unravel」は男性の歌を歌ってみたから選んでみた曲です。すごく難しい曲なんですけど、だからこそカラオケでちゃんと歌えると本当に気持ちいいので、そういう私の声を楽しんでほしいな、と思っています。
――そして「プラチナ」と「unravel」のアレンジなんですけど、歪んだギターとピアノとストリングスをフィーチャーしたハードロックナンバー「Anti world」にずいぶん寄せましたよね。
はい。
――でも去年10月のシングル『Anti world』には渋いR&Bテイストの「I wanna be a STAR」や、かわいいディスコチューン「アイシテルは♡グラム?」も収録されていた。今回はなぜ、この3つのカードの中でも「Anti world」的なテイストをセレクトしようと?
なんでなんだろう?
――他人事?(笑)
あはははは(笑)。「プラチナ」も「unravel」もアレンジは宮崎誠さんにお願いしているんですけど、特に打ち合わせはしていなくて。宮崎さんには「アイシテルは♡グラム?」のアレンジもお願いしていたので完全に安心してお任せしていた感じなんです。だからちょっと他人事っぽいというか「宮崎さんの中では今の高槻かなこはこういうイメージなのか」という感じに鳴っちゃうんです。しかもどっちもすごくカッコいいアレンジですし。
――“高槻かなこのソロプロジェクト”なんだけど、プロデューサーのリクエストには応えるし、アレンジャーさんに自由にアレンジもさせている。実は我々の考える“ソロ”と高槻さんの考える“ソロ”にはちょっと差があるのかもしれないですね。
プロデューサーも作家さんもみんな信用できる方だし、なにがよくてなにが悪いのか、しっかり判断してくれることを知っているから、お任せしても特に不安はないんです。ただ本当にこだわりたい部分にはとてもこだわりますね。
――たとえばどんなところに?
今回のEPであればジャケットのデザインは全部私が監修しています。
――確かになんで高槻さんの写真をフィーチャーせずに抽象的な幾何学模様なんだろう? って不思議に思っていました。
初回限定盤
『King of Anison EP1』というシリーズだから、そのときどきの私の顔というバラバラのデザインじゃなくて、統一感のあるアートワークにしたかったんです。
――あと素人目には誰かの曲をカバーするのってプレッシャーはないのかな? という気がするんですけど……。
ないかなあ……。
――ただ、リスナーの中にはどうしてもオリジナルと比較する人も出てきますよね?
それは当然あることだと思いますが、歌って勝ち負けではないじゃないですか。
――それはそうですね。
だから「高槻かなこが『プラチナ』を、『unravel』を歌ったらこういう感じになるのか」って楽しい気持ちになってくれたらいいな、という気持ちしかないですね。私自身、どちらも原曲は大好きですし、おふたりとも好きなアーティストさんなので、本当にリスペクトの気持ちを込めて歌っています、その思いが聴いてくださる方の心に届くといいな、と思っています。
――そのボーカルスタイルってどうやってプランニングするものなんですか? 確かに坂本真綾さん、TKさんの持つテイストは残しつつも、間違いなく高槻かなこの歌声になっているから、相当理詰めで声を作っているのかな? という気もしました。
いや、完全に感覚型の人間ですね(笑)。アーティストとして原曲を聴き込んでいるうちに浮かんできた声色やボーカルアレンジのアイデアを大事にしていて。あまり深く考えたり意識したりせずに、その曲のグルーヴに乗っていて出てきた声をそのまま収録した感じなんです。実際、ボーカルはどちらも一発録りです。
――それはまさに感覚型というか、「センスいいなあ」という感じですね。
ありがとうございます(笑)。あと高槻かなこらしくなっているとおっしゃっていただけるのには、もうひとつ理由があって。私、モノマネがとっても苦手なんですよ(笑)。
――たとえばしゃがれ声で「こんばんは、森進一です」って行ったところで……。
高槻かなこになっちゃうんです(笑)。ただそれがボーカリストとしては取り柄だと思ってもいて。どれだけ原曲やアーティストをリスペクトして、なんならマネて歌ったつもりでも、自然と私のものになっているっていうのは良いことだなと思っています。
■高校生時代のひとりカラオケで培われていた高槻かなこらしさ
――その特徴にはいつ頃気付きました?
ひとりカラオケに行くたびに自分の歌声を全部録音するようにしていた高校時代ですね。もともとは自分の歌声を聴いてみたかったのと、あとはトレーニング用……その音声をあとで聴き返して「ここのピッチが甘いな」とか、次に歌うときのために録っていたんですけど、そのときに「あれ? この曲、すごいモノマネして歌ったつもりなのに私の声だ」って思うことがたくさんあったんです(笑)。
――それもスゴいですよね。高校時代のカラオケってほぼほぼ趣味ですよね?
そうですね。
――なのに自分の歌声を録って、あとで反省会やダメ出しをしている。自分の歌がピッチが外れていることを再確認させられるのってけっこうイヤなことだと思うんですけど……。
歌うことはずっと好きだったし、ずっとやってきたことだから、自分の歌声を聴き直すのはそんなに苦痛じゃなかったですね。それに昔はそんなに自信があったわけじゃないですから。失敗して当たり前だと思っていました。
――いつ頃、「あっ、私もプロの音楽の世界で戦えるかも」って思えるようになりました?
いや、今も歌が上手いから歌手になれたとは思ってないですね。
――え!? 言い方はアレですけど、これだけ歌えておいて?
あはははは(笑)。もちろんジャストのピッチで歌うといった最低ラインは超えなきゃいけないとは思っていますけど、そこから先にある歌の上手さについてはあまり意識してない気がします。それよりも自分なりのクセとか、誰かの心をグッと掴める歌い方を模索するほうが大事かな、と思っています。一発録りしたのにはそういう理由もあります。一気に歌ったほうが今の私のパッションを込められる気がしたので。
――確かに「プラチナ」も「unravel」も原曲に寄り添いつつも、ちゃんと高槻さん一流のエモーションを込められていますけど、そういうレコーディングスタイルだと、今後、ご本人がこの音源を聴いたとき……。
「私、こんな感じだったのかあ」ってなることはあるかもしれないですね(笑)。でもそれはお芝居もそうなんです。過去のアニメを今見返してみると「うわっ!」ってなることもあるんですけど、監督や音響監督がOKを出してくれているということは、その若さや勢いがハマっていたということだと思うので。
――実際、プレイヤーとしての発見や反省はあるかもしれないけど、『King of Anison EP1』だってリスナーは確実に楽しく鑑賞できる作品になっていますしね。
過去の作品を観たり聴いたりして反省することはあっても、後悔はしないようにしていますね。
――頼もしい! それとひとくちに「ボーカリスト・高槻かなこ」といってもソロシンガー、キャラクターソングの歌い手、ヴォーカル&パフォーマンスユニット・BlooDyeのメンバーと、いろんな横顔があるじゃないですか。
はい。
――それらの名義で楽曲を歌うときとカバー曲を歌うときって心境や使うテクニックに違いってあるんですか?
キャラクターソングはそのキャラクターとして歌うことになるので根本が違うんですけど、ソロ曲だから、BlooDyeの曲だから、カバー曲だからと歌い方や曲との向き合い方を変えることはないですね。ひとつひとつの曲に対して真摯に向き合って、その歌詞やメロディやアレンジをどう解釈するかを考えています。
――その解釈って楽しい? それとも大変なことですか?
「楽しい」しかないですね。1曲1曲が持っている物語やメッセージを自分の中に落とし込んでいくことは、作業……いや、それは作業っていうほどのものでもないくらい私にとっては自然なことですから。
――もはやごはんを食べるとか歯を磨くとか風呂に入ると同じ生活習慣になっている?
そういう感じかもしれないですね。テレビで流れてきた曲が気になったら「自分だったらどう歌うだろう?」ってイメージしたりしますし。で、ごはんや歯磨きと違うのは、数を歌うのが全然苦にならないことなんですよね。本当に好きなことなので。
――まさに作業的、義務的なものではない、と。
野性の勘みたいなもので歌っている気がします(笑)。
――となると、今後の展開……『〜EP2』、『EP3』において、高槻さんの野性はどんな曲を選び取るのか、すごく気になるんですけど……。
今回は平成の曲2曲を選んだので、昭和のアニソンだけをピックアップしてみても面白そうだし、アニソンっていろんなジャンルがあるじゃないですか。
――確かにアニソンって実は音楽ジャンルの名前じゃない。アニメの中で流れる楽曲という流通形態の名前だから、アニメに乗っていればどんな楽曲もアニソンたりえますよね。
なんでもアリなんですよね(笑)。だから私もジャンル問わず歌えたらいいな、と思っています。今回ハードなロックだったけど、ダンスミュージックを集めてみたりしても面白いと思いますし。高槻かなこのソロ曲ではやっぱり高槻かなこの世界を守りたいんだけど、いろんな歌を歌いたい自分もいるので。今回アニソンカバーEPを作った一番の理由はアニソンをたくさん歌いたかったからなんですけど(笑)、もうひとつにはソロシンガー・高槻かなこの世界から一歩はみ出すことができるからっていうのもありましたから。ジャンルも性別も時代も問わず、いろんな曲……しかも大好きなアニソンを歌える上に、自分の良さも引き出せるからこそ「やるしかない」「続けていかなきゃ」と思っています。
――ところで『King of Anison』ってもともと高槻さんのアニソンカバーライブのタイトルだったんですよね?
2019年にやったライブのタイトルですね。私のあだ名が「きんぐ」だから「アニソンの私」「アニソンの王道」という意味を込めてこのタイトルにしました。そして今回、同じ名前でEPをリリースさせてもらえたので「King of Anison EP1」は高槻かなこのもうひとつのブランドにしていきたいんです。アニソンカバーライブもやるし、アニソンカバーCDも出すという感じで。
――ファッションブランド・PRADAと、そのセカンドブランドのmiu miuみたいな関係? 同じように洋服や靴を作るし、デザイン的にもどこか通じるものはあるんだけど、やっぱり別モノ。PRADAだからできること、miu miuだからできることがある、という感じで。
そうですそうです。高槻かなこではなく『King of Anison EP1』ブランドだからこそできることってきっとあるはずですから。
――たとえばどんなことをしてみたいですか?
海外のアニソンフェスに出るとかかなあ。海外でアニソンを歌う人になりたいというのは夢のひとつだし、『King of Anison EP1』がそれを叶えてくれるブランドのひとつは思っています。
取材・文=成松哲

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