『みねこ美根の“映画の指輪のつくり方”』

『みねこ美根の“映画の指輪のつくり方”』

『みねこ美根の
“映画の指輪のつくり方”』
- 第四十七回 -
「ラ・ラ・ランド」の指輪

2017年から本格的に活動を開始したシンガーソングライター〈みねこ美根〉が大好きな映画の世界から作り出す紙粘土細工と指輪の制作過程をお見せします。ミニチュア好きな方、アクセサリーづくりに興味のある方は是非見ていってください。指輪はライブ会場にて展示しております。

動画監督・撮影・編集・演奏・文:みねこ美根

「どうか乾杯を。厄介な私たちに。夢追い人に。(2016「ラ・ラ・ランド(La La Land)」)」

3月。怒涛の令和二年度(~2021年3月31日)が終わる。去年の今頃は春を感じる間もなかったが、今年は花が咲いてきたとか日差しが温かくなってきたなと、(まだまだ油断はしちゃいけないが)ほんの少しだけ去年より多めに春っぽさを感じているような気がする。新年度から新たな場所へ行く人も、そうでない人も、上を向ける映画を紹介したいと思う。ところで最近鼻息が荒いのが悩みです。
「ラ・ラ・ランド」は公開当時とても話題になっていて、手掛けたデイミアン・チャゼル監督の「セッション」という映画に圧倒された私は、最新作は映画館で!と思い、走って観に行った(実際には歩いて行った)。(「セッション」で鬼教師を演じたJ.K.シモンズが本作にちょい役で出てきたとき恐怖を思い出して震えた)

俳優になる夢を追いかけ、ハリウッドのカフェで働きながらオーディション続きの日々を送るミア(エマ・ストーン)。ジャズを愛し、いつか自分の店を持ちたいと夢見ているが、今ジャズは流行らないと言う周りとの温度差に苦しむ売れないジャズピアニストのセブ(ライアン・ゴズリング)。夢を追いかける二人が出会い、恋をし、お互いの未来を応援するようになるが、季節の移ろいとともにそれぞれの人生に変化が訪れる。ざっくり言うとこんな感じのストーリー。
今回指輪にするために見直したら、公開当時に見たときよりぶっ刺さった。今見れて良かった。観る時期によって、感じることや見えるものが違うから面白いよね。

ミュージカルは急に歌いだすから苦手という人もいるが、この映画は、もちろん歌いだすからには突然なんだけど、「歌うぞー!」という曲始まりではなく、気持ちの延長線上に歌があるので、とても自然に曲が始まる。最近見た映画で「8人の女たち」というミュージカルがあるのだが、それと見比べると面白いよ。良し悪しではなく、「8人の女たち」は、本当に突然歌いだす(笑)。それが面白さでもあるんだけどね。「ラ・ラ・ランド」では、自然な歌いだしが、功を奏し、物語から逸脱せずに一つの世界の中で、ミアとセブの人生を見守ることができる。

時代感が良い意味で“無い”、というのも面白いなと思った。登場人物がスマホを持ってるから現代なんだろうけど、映画館やプラネタリウム、ジャズバーなど、現代的すぎないロケーションが使われ、さらに古き良きミュージカルのオマージュ的シーンの切り替わり、カットも多く使われていることも面白い。ネオンの看板の中を行くシーンとかね。ぼんやりした時代感覚が、生活の生々しさを軽減し、「ラ・ラ・ランド」独特の世界観に誘ってくれていると思った。(日本で、夢追う若者の映画を撮ったらどちらかが恋人に依存して、すごい退廃的な痛々しい若さと生活感の世界になりそうだなって妄想。…妄想しといてあれだけど絶対見たくない(笑)。)

映像の仕組みもとても楽しい。ワンカットのように見せる最初の圧巻のミュージカルシーン、全身が映るような、昔のタップダンスとかを真横から撮るミュージカルを彷彿とさせる引きのカット、広い画角の“日常”から次第に主人公だけが照らされ視点を集中させるライティング。切り張りしたりエフェクトを付けたりしてもいいものを、普段の生活からグッとフォーカスされる映画ならではの世界観が、映画を見終わった後に歌いだしたい気持ちにさせてくれる!自分の生活も1つの作品のように思えてきてワクワクする。
そしてそして話したくなっちゃう、ストーリーのテーマ。私は恋愛映画って苦手なんですわ。でも「ラ・ラ・ランド」のロマンスは好き。二人を応援したくなるし、幸せなシーンは一緒に温かい気持ちになれる。何故かなって考えたときに、二人の関係性に“依存”がないからなのかな、と思った。「このままで居ようよぉ(ナレーション:しかし世は諸行無常なり)」みたいな痛々しい若さとかって、見てて辛くなってしまう質なのですが、それがない。お互いに夢を追い、夢を愛する相手の姿が好きで、お互いが相手の成功を願ってやまない。その清々しさが良いんだよね。性的な描写がないのも映画の世界観を損なわないから良い。この映画は、色恋がテーマではないと思う。二人のロマンスは描かれるけど、それぞれの夢があっての二人の出会いなのだ。

この「夢を追うこと」という一つのテーマが胸を締め付けてくる。夢を追うことを続ける、ということ。情熱、覚悟が問われる。オーディションに落ち続けるミア、自分の曲や、やりたい音楽が認めてもらえないセブ。自分は必要な人間なのか?誰かに届いているのだろうか?自分の才能を信じたまま進んでいいのか?

ミアは自分の才能を信じて突き進むも人から受けた評価を言い訳にしてしまう。こう言われたからもうダメだ、とか、こんなにもうまくいかないってことは才能がないんだ、とか、見おろす空席とか、聞いてんのか分からない審査員とか、くじけそうになるミアの気持ちがとてもよく分かる。セブは、プライドが高く、卑屈な性格が見え隠れする。自分を応援してくれている人の声が届かないことも多い。これも分かる。大人になるまで、私に何か言ってくる大人は全員敵だと思ってた…反省、猛省。自分の世界を守りたくてそこに力を注いでしまうけど、その力は誰かに届けるために、夢を実現させるために使わないといけない。

ミアの葛藤、セブの葛藤をお互いが見守り、お互いの夢が叶うようにと願い、助言し、行動する。出会いが夢への扉を開かせる。ひとりでも、自分を信じてくれる人がいるなら、自分を信じるべきだ。

俳優たちの好演(エマ・ストーンの大きな目と発音が好き、表情の繊細さがすごいのよ、あとソノヤ・ミズノの出演作も静かに追いかけてる)、最初のオープニングの曲「Another Day Of Sun」、「City of Stars」、「Audition」といった高揚感と切なさのある素晴らしい楽曲たち、車の中でそれぞれひとりなんだけど、同じように夢を見る人々、子どもの頃の純粋な“好き”に溢れた部屋を眺めるミア、プラネタリウムで浮き上がる二人、終盤近くの「巴里のアメリカ人」風なシーン、「シェルブールの雨傘」を彷彿とさせる展開が追い打ちをかける。あのシーンは、アナザーストーリーなのか、描いた夢なのか、後悔なのか。本当にすごいな、この映画。このラストだから良いんだよね。愛だ。人生賛歌だ!観てない人はやく観て!クラクションがね、最初と最後で違う意味になっていくのも確かめて!
人生は過ぎ去っていく、あっという間に。だからこそ、出会いを大切にしたい。出会えたから広がっていく世界。君と出会えた素晴らしい人生、そう思える日々を送りたいね。大丈夫、私の夢も、君の夢も叶えよう。
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音楽:「Another Day Of Sun」Justin Hurwitz , Benj Pasek & Justin Paul
「City of Stars」Justin Hurwitz , Benj Pasek & Justin Paul
モチーフ:夕焼けの中踊る二人、星空の中踊る二人、高速道路、SEB’Sの看板、トランペット、セブの宝物の椅子、ピアノ、ショルダーキーボード、レコード、ミアが舞台で使ったランプ、青いパーティードレス、緑リボンのついたプリウスのキー、ハリウッドの舞台セット
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みねこ美根情報
3月8日に新曲「離れてる間のため」を配信。すごくストレートにいま伝えたいことを唄った弾き語りの音源になります。
3月末には楽曲が生まれる衝動から作ったCDアルバム『avant-title2』を通信販売ライブ会場で販売します
3月20日南青山マンダラにて久しぶりにサポートメンバーと一緒にライブします。
なんでも質問は minekomine@powerpop.co.jp まで
みねこ美根 プロフィール

ミネコミネ:6歳の時にピアノで初めて作曲、11歳からはギターでの作曲も開始し、現在はピアノとギターを用いてライヴ活動中。2019年1月リリースの配信EP『心火を従えて愈々』で楽曲のクオリティの高さ、世界観が注目を集め始める。サウンドプロデュースを手がける誠屋の小名川高弘氏とともに日々楽曲を制作しており、21年3月に自主制作アルバム『avant-titleⅡ』を発売。4月には「さよなら起承転結」、6月には「我にかえれ」を配信シングルとしてリリースした。みねこ美根 オフィシャルHP

OKMusic編集部

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