ハナレグミの
『音タイム』を聴いて考えた
バンドとソロとの
臨み方の違いについて

多彩な楽曲を落ち着いたアレンジで

分かり切ったことをくどくどと書いてしまって申し訳ない。『音タイム』のリリースが2002年で、ハナレグミ=永積タカシがヴォーカリストとして参加していたSBDが活動休止したのと同じ年にリリースされていることと、それぞれの作品の感触の違いを鑑みると、やはりバンドとソロとの違いに言及したくなるのである。ヴォーカリストは同じでも明らかに作品の質が違う。しかしながら、端的に言ってどちらもいいのである。お互いがお互いを否定しているような印象がもちろんまったくない。ハナレグミとSBDとは補完関係にあったのかもしれないが、それぞれがぞれぞれの代替ではないことがよく分かるのだ。

それは楽曲の中身以前に、楽曲のタイムからも察することが可能だと思う。過去に取り上げた『FUNKASY』を比較対象とすると、こちらには「FUNKYウーロン茶」と「エ!? スネ毛」という8分を超える長尺のナンバーがあるが、『音タイム』にはそこまで長いものはない。M5「Jamaica Song」が6分30秒でM8「ナタリー」で6分と、その程度。M2「雪の中」が5分28秒ではあるものの、その他は概ね4分前後である(しかも、M5はカバーなので、オリジナル曲としてはそこまで長い曲はないことになる)。これだけでもソロとバンドとでは目的が違うことが分かるのではなかろうか。その違いを乱暴に言えば、演奏の楽しさの違いということになるのではなかろうか──と、これもまた、勢いでそう言ってしまうのも語弊がある。ある意味で当たっているけれども、まったくそうだと言い切れるものでもなかろう。本作『音タイム』は全体的にアコギを基調としたサウンドが多い印象で、とりわけイントロではアコギの単音弾きがよく聴こえてくる。温かみがある音と言ったらいいだろうか。そうしたやわらかい音作りは本作の特徴ではあるものの、弾き語りアルバムではなく、バンドサウンドで構築されている。

それが最も分かりやすいのはM7「かこめ かこめ」。ご丁寧にメンバー紹介まで入れているのだから、ソロ作品ではあるものの、ひとりで作っているわけではないことをさりげなく強調したかったような印象がある。メンバーはオオヤユウスケ(Gu)、ミト(Ba)、坂田学(Dr)、原田郁子(Key)。この時点で坂田はPolarisに参加していたので(2005年に脱退)、Polaris、クラムボン、SBDによる豪華セッションであっただけでなく、2006年にオオヤ、原田、永積の3人で結成したヴォーカルユニット、ohanaの前身とも考えられるわけだが、いずれにしても、『音タイム』でのセッションはそこからの派生も含めて、永積の中ではソロもバンドもシームレスにつながっていることは想像できる。これもまたバンドとソロとの微妙な関係をうかがわせる、その実例のひとつと言えるのではなかろうか。

アコギ基調とはいえ、ジャンルも偏ったものではない。これもまた本作の特徴でありつつ、永積のやりたい音楽とはソロであれバンドであれ、その本質はそう変わらないということではないだろうか(筆者はSBDもハナレグミもohanaも、それら全てを聴いたわけではないのでお門違いな見解だったら御免)。分かりやすいところで言うと、まずM2「雪の中に」がレゲエ。続く、M3「明日天気になれ」は軽快なシャッフルビートのカントリー調。M5「Jamaica Song」がスカ。M6「Wake Upしてください」はセカンドラインのリズムが象徴的なニューオーリンズ風なナンバー。M7「かこめ かこめ」はジャズ風味と来て、M8「ナタリー」はスローバラードと、曲数こそそれほど多くはないが、ブラックミュージックに対する敬愛が感じられる、バラエティーに富んだアルバムと言える。いずれの楽曲も音数が少ないというか、ブラスセクションを取り込んだり、エレキギターを何本も重ねていたりするようなところがないので、『音タイム』はシンプルなアレンジのアルバムととらえられているようではあるけれども(それはそれで間違ってはいないのだろうけど)、だからと言って、まったく内容は薄くはないというか、音楽性が控えめにはなっていないのである。

OKMusic編集部

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