「今年のことは絶対に忘れない」――
LACCO TOWER主催フェス「I ROCKS 20
&21」完結。みんなの「家」を守り抜
いた後半戦、全13組を完全レポート!

2021.05.01 - 05.2I ROCKS 20&21後半戦@伊勢崎市文化会館
約1ヵ月のインターバルを置き、LACCO TOWERの自主企画イベントI ROCKS 20&21の後半戦が、バンドの地元・群馬県の伊勢崎市文化会館でおこなわれた。
4月9、10、11日に開催された前半戦(「これが新しいI ROCKSのはじまりです」――2年分の想いを込めたLACCO TOWER主催フェス「I ROCKS 20&21」 全13組を完全レポート!https://spice.eplus.jp/articles/286197)は、徹底した新型コロナ感染予防対策が施され、新規感染報告はゼロだったことが、オフィシャルサイトでアナウンスされた。その結果を受け、いっそう気持ちを引き締めて臨んだ後半戦だ。引き続き、会場では、検温、消毒、歓声の禁止、規制退場などの感染予防対策が強く呼びかけられるなか、開会宣言で、バンドのリーダーである塩﨑啓示(Ba)は、「今年のことは絶対に忘れない」と言っていた。2014年からはじまったI ROCKS、全7回の歴史のなかでも、おそらくもっとも悩み、正解が見えないなかで開催されたであろう今年の「I ROCKS 20&21」。それは、LACCO TOWERをはじめ、お客さん、出演者、スタッフ、その場所に集まった全員が一丸となり、新しいルールのもとでI ROCKSを成功に導くことで、一年に一度、みんなが帰れる「家」を守り抜く5日間だった。
以下のテキストでは、後半戦に出演した全13組のライブの模様をレポートする。
DAY 4 -5月1日(土)
後半戦は松川ケイスケと真一ジェットが幕開け!阿吽の呼吸で笑いの絶えない空間に
松川ケイスケと真一ジェット
鶴をシンボルに掲げるI ROCKSのバックドロップの前に、後半戦いちばん最初に立ったのは、LACCO TOWERから松川ケイスケと真一ジェットだ。ハイタッチしながらスタンバイ。ピアノデュオ形式で聴かせた「薄紅」はバンドとは趣を変えたスローなテンポ。真一の艶やかなピアノに松川の歌声がよく映える。演奏時間よりも喋りが長いことに定評のある松ジェらしく、MCも“舌”好調。真一の滑舌をイジり、聞き間違いをネタにした「ちょうどいいマジスティック」なる曲を即興で演奏して笑いを誘った。
松川ケイスケと真一ジェット
中盤は真骨頂のカバーコーナー。原曲の味わいのまま、語りかけるように歌った秀吉の「花よ」をはじめ、松川が「里菜ちゃんの歌はずっと好きだから、やれてうれしい」と伝えた片平里菜の「女の子は泣かない」、LACCO TOWERとも同名の中田裕二 「薄紅」では、一転してアダルトな雰囲気を作り上げた。それぞれ曲の締めには、真一がジャジャジャンジャンッとピアノの三本締めでオチをつけるところも松ジェ流の遊び心だ。笑いの絶えないライブは美空ひばりの「真赤な太陽」で締めくくった。松川がこぶしの効いた歌唱でボーカリストとしての凄みを感じさせると、締めはやっぱり真一のピアノによるジャジャジャンジャンッ、ヘイッ!。I ROCKS後半戦はゆるやかにスタートを切った。
松川ケイスケと真一ジェット
「故郷編」のニューカマーから「盟友」へ。KAKASHIが届けた共闘の歌
KAKASHI
I ROCKS開催初年度に「故郷編」枠で出演して以来、皆勤賞のKAKASHI。「去年までは地元バンドだから呼んでもらえてると思ってたけど、今日は違う気持ちでここに立ってます。盟友として呼んでもらえたんじゃないかって」。初出演時は結成2年目だった彼らのキャリアも9年目を数えるいま、堀越颯太(Vo/Gt)は、そのステージに立つ意味を噛みしめるように言った。「本当の事」にはじまり、斎藤雅弘(Gt)のメタリックなギターが駆け抜けた「初志」へ。ライブという場所でこそ、もっとも命を輝かせる生粋のロックバンドのエネルギーを、序盤から容赦なく爆発させていく。堀越が「幸せになる準備はできていますか?」と問いかけ、丁寧に歌を聴かせた「変わらないもの」と「ライフイズビューティフル」では会場から一斉にこぶしが上がった。悔しさや孤独を抱きしめながら、それでも前に進むことをあきらめないKAKASHIの歌には、「共闘」という言葉がよく似合う。
KAKASHI
終盤、「初年度にI ROCKSの打ち上げで、(啓示さんが)“いつか伊勢崎でやりたい”って言ってたんです。わかります? こんな時代でも夢を叶えたんですよ、LACCO TOWERは」と堀越。塩﨑のことを、敬意をこめて“あの人”と呼び、その背中を見て育ってきたからこそ、同じように夢を叶えたいと熱く伝えると、最後は、LACCO TOWERに捧げるように「ドラマチック」を届けた。その歌のなかで、堀越は「いままでは認められたくて戦ってました。でもいまは違う。あの人と、あなたと一緒に、この時代を戦いたい!」と叫んだ。その想いはきっと一方通行ではないはずだ。
同じ時代を歩むバンド同士の絆を見た、盟友NUBOのステージ
NUBO
三番手でステージに現れたのは、LACCO TOWERの同級生とも呼ぶべき盟友NUBOだ。tommy(Vo)が腕を前へと伸ばし、お客さんと手を結ぶように歌った「Circle」からライブはキックオフ。「この時間は俺たち、NUBOに任せろ!」という頼もしい開幕宣言を合図に、「Such one」の軽快なラテン風味で会場を一斉に踊らせる。続く「Colored」では、サブ(Dr)が繰り出す高速ビートにバンドの信念を熱く刻んだ。どんなときも人生に楽しみや笑いを見出だそうとするNUBOの陽性の音楽は、この苦難の時代にこそ力強いエネルギーになる。
NUBO
MCでは、「いろいろな制限があって、今年はスペシャルバンドができないんだよねえ」と、tommyが残念そうに切り出した。その日限りのステージを繰り広げるスペシャルバンドには、例年、一成(Vo)が参加して異彩を放ってきた。「人生でいちばん好き勝手できる場所がなくなっちゃった」(一成)、「あんなにネタを考えてたのにな。なのでこのあと、無観客・無配信でやります(笑)。」(tommy)。
NUBO
いつもとは違うかたちになったI ROCKSへの寂しさも冗談で笑い飛ばしつつ、「これからも一緒に年を重ねたときに、この年のI ROCKSがあったから、いまがあるんだなって言えるような日にして帰りたい」と言葉を続けると、その想いを「Present changes past」に託す。仲間を誇り、その晴れ舞台を祝福することに全力を注いだステージの最後に届けた「Man to Man」では、「これからも一緒にかっこよく生きよう」と呼びかけたNUBO。20年近くにわたり、同じ時代をサバイブし続けてきたバンド同士の絆を見た30分間だった。
アコースティックギターと歌声だけで魅了。片平里菜が残した明日への希望
片平里菜
松ジェがカバーした「女の子は泣かない」に触れて、「よく歌えるなと思って。キーが高めなのに。素敵でした」と、にこやかに感想を伝えた片平里菜は、5日間を通じて唯一の女性アーティスト。I ROCKSには5回目の出演だ。アコースティックギターの弾き語りで、まずは「女の子は泣かない」を軽やかに歌い、会場を自分色に作り替えていく。路上時代の想いを綴った「CROSS ROAD」では切実な歌唱でガラリと雰囲気を変えた。「松川さんが“歌詞を気に入ってます”と言ってくれた曲を。久々に引っ張り出してやります」と、この日のために用意してきたのは「山手通り」。ゆったりと刻む3拍子に優しく体を揺らして紡ぐメロディ。この歌の“山手通りが泣いている”というフレーズを、松川は「ずーっと(頭に)残っている」と語っていたことがある。ポップな曲調で客席からのハンドクラップを誘った「Oh JANE」、陽だまりのような歌の合間にI ROCKS開催への“ありがとう”を伝えた「オレンジ」。まるでアコギを体の一部のように操る片平の弾き語りは、バンドサウンドを彷彿とさせるほど表情豊かだ。
片平里菜
ラスト1曲を残して、「5年後、10年後がどうなっているかはわからないけど、このつながりは続いていくと思います」と伝えた片平は、一瞬、気持ちを集中させるように天井を仰ぎ見たあと、「明日には」を届けた。言葉数は少なく、その行間に希望を忍ばせるように聴かせた歌。それは、決して“出来ない”と決めつけず、今年のI ROCKS開催まで想いをつないだLACCO TOWERの在り方にも重なるような歌だった。
不屈のミクスチャーロックでI ROCKSに新たな風を吹き込んだFLOW
FLOW
ステージを所狭しと躍動するダイナミックなパフォーマンスを繰り広げたのは、I ROCKS初出演のFLOWだ。「後半戦楽しんでいこうぜ!」。KEIGO(Vo)の力強い掛け声を合図に、「衝動」からTAKE(Gt)の重めのギターがうなりを上げた。間髪入れず、開放感あふれる「DAYS」へ。メジャーシーンで20年近くにわたり唯一無二の存在感を放ち続ける、荒々しくも華やかなミクスチャーロックが、I ROCKSに新しい風を吹き込んでいく。
FLOW
会場には初見のお客さんも多かっただろうが、コロナ禍の逆境を打破するキャッチーなナンバー「新世界」の頃には、その熱に巻き込まれるように、客席からはたくさんの腕が上がっていた。会場をウェーブで一体にしたライブアンセム「GO!!!」まで駆け抜け、「やっぱこれですよ。ね? 同じ空間にいて、同じ時間を作っていく。これがライブだと思います」と声を弾ませたKEIGO。コロナ禍以降のライブでは、以前よりもバンドの譲れないものが強く浮き彫りになるように感じるが、FLOWの場合、それは「みんなで作る」ということだ。「こんなときだからこそ汗を掻いていこうかなと。止まらずにやり続けたいと思います」と言い、その決意の証として、5月26日にリリースする最新曲「United Sparrows」をライブで初披露して幕を閉じたFLOW。
FLOW
LACCO TOWERとはインディーズ時代から交流があったが、奇しくもこの状況下でI ROCKS出演を果たし、そのステージでKEIGOが語った「バンドがあるからつながっていける、俺たちはひとりじゃないって、LACCO TOWERから勇気をもらっています」という言葉は、深い部分で共鳴し合うバンドの不思議な縁を思わせるものだった。
音楽の素晴らしさが溢れたBRADIOのファンキーなパーティタイム
BRADIO
「レディース&ジェントルメン! 会いたかったぜー!」。真行寺貴秋(Vo)のファンキーなキメでBRADIOのショータイムが幕を開けた。1曲目は最新アルバム『Joyful Style』でもオープニングを飾る「Time Flies」。大山聡一(Gt)が刻むクールなカッティング、酒井亮輔(Ba)が生み出す泥臭いグルーヴにのせて、随所にファルセットを効かせた真行寺のハイトーンボーカルが一夜限りのパーティへと手招きする。
BRADIO
「イチャイチャしようぜー!」。豪快な誘い文句が飛び、様々な振り付けで会場を踊らせた「スパイシーマドンナ」に続き、ドープに展開する「幸せのシャナナ」まで終えたところで、はぁはぁと息を切らし、「有観客って言うんですか? 久しぶりでね」と、お客さんを前にライブができる喜びを伝えた真行寺。「やっぱり俺たち、みんながいないとダメだ」と漏らす本音に会場から温かい拍手が送られた。
BRADIO
昨年のI ROCKSが延期になった際、「おうち I ROCKS」で、LACCO TOWERが「Flyers」をカバーしたことに触れ、「本物を食らいたいか!」と繰り出した本家「Flyers」は圧巻。音楽の楽しさを、心踊る感動を、音楽をもって伝える。そんなBRADIOらしいステージの終盤、真行寺は「苦しかったり、つらかったりするときもあるけど、自分を許してあげてください」と、次の曲に込めた想いを伝えて、ゴスペル風のホーリーなバラード「愛を、今」につないだ。
BRADIO
自分へのラブソングのようなその歌を渾身のちからで届けた上げたあと、深く頭を下げ、ずいぶん長いこと拍手を受け止めた真行寺は、最後に生声で「音楽って素晴らしい! ありがとう!」と叫んだ。
LACCO TOWER、正解のない世界で戦い続けるロックバンドの意志
LACCO TOWER
ブルーのレーザー光線がホールの天井に神秘的な模様を描くなか、LACCO TOWERの5人がステージに現れた。「出せない声の代わりに手拍子をちょうだい」。松川ケイスケ(Vo)の言葉に導かれ、会場からは一斉に手拍子が湧く。
LACCO TOWER
重田雅俊(Dr)のパワフルなドラム。真一ジェット(Key)の華やかなピアノ。「未来前夜」から晴れやかにライブが幕を開けた。松川の「ギター!」という声を合図に、細川大介(Gt)の手数の多いギターが狂騒を加速させた「葡萄」では、逆サイドでどっしりと腰を落とした塩﨑のスラップも炸裂。「大好きな仲間が来てんねん!もっと見せてくれるか!?」と、すでに出来上がっている会場の熱をさらに焚きつけるような松川の煽りで突入した「火花」では、重田を除く4人がステージを自由奔放に暴れまわった。
LACCO TOWER
かと思えば、真一の幻想的なピアノでつないだ「遥」では一転、強く優しい歌を丹念に届ける。まさに黒と白。結成以来、現場主義の精神で鍛え抜かれたテクニックでそのステージに鮮烈なコントラストを描いていった。終盤、I ROCKS前後編を通じて、「場を作ること」の意味を考え続けてきたと語りかけた松川。「できないと言われることを最大限に掴んでいくのがロックバンドだと思う」と言い、「こんなふうにもがいてるやつもいるんだと、心に留めておいてください」と伝えると、最後は、弱さやを曝け出す「告白」で本編は締めくくった。
LACCO TOWER
アンコールでは、メンバーが一言ずつあいさつをするなか、真一は「I ROCKSのIは伊勢崎のIも含まれている」と、初の伊勢崎開催を喜び、「絶望だけじゃないよ」と、同じ言葉を2回繰り返した。本編で「告白」を演奏したときに、「バンドをはじめたときの記憶を思い出して、じーんときてました」と振り返った細川は、FLOWのKEIGOが語った「バンドをやってたからつながれた」という想いに共感したと言い、「音楽を続けてきて本当によかった」と結んだ。そして、本当の最後に披露された1曲は「夕立」だった。「もう泣く必要はないから」と言葉を添えた松川を中心に、バンドの意志をひとつにして鳴らされた万感のフィナーレ。やがて嘘ではなく“大丈夫”と言える日まで、こうしてLACCO TOWERは音楽を鳴らし続けるのだろう。
LACCO TOWER
DAY 5 -5月2日(日)最終日
最終日のトップバッターは秀吉、鳴り響く弱者のためのギターロック
秀吉
最終日のI ROCKSは雨予報が見事に晴れた。恒例の塩﨑の開会宣言では、「できる限り、今日は笑っていたいと思います」「心の奥底から幸せになって帰ってください」と、この5日間でもっとも「楽しむこと」を大切にした言葉が選ばれていたように思う。泣いても笑っても今日で今年のI ROCKSが終わる。そんな最終日のスタートを切ったのは秀吉だった。彼らもまた「故郷編」時代からの皆勤賞バンド。柿澤秀吉(Vo/Gt)の歌とギターではじまった「デクノボー」から、町田龍哉(Ba)と神保哲也(Dr)による推進力に満ちたリズム隊の演奏が前進の意志を後押しする「敗者の行進」へ。端正な美メロにのせて弱者の反骨精神が力強く歌われる。コロナ禍の新しいルールのもとでは歓声は禁止だが、「もともと秀吉は“声を出して”とか要求しないので(笑)。いつもどおり楽しんでください」と、マイペースにライブは進んだ。クールなグルーヴに揺れた「お気に召すままに」や「痛い」など、セットリストは新曲が中心。
秀吉
昨年開催予定だった最新作『ひかり』のリリースツアーが延期になったままの秀吉は、それらをお客さんの前で披露する機会を失っていた。だからこそ、「いろいろな人の努力があって、今日ここに立てていることは感謝でいっぱいです」と素直な想いを伝えた柿澤。“今この瞬間”を感じることの大切さを歌った「明日はない」まで、奇を衒わず、素朴に、健気に、人間を歌い続ける秀吉の存在はI ROCKSの良心だ。
高高-takataka-、ギター2本と歌声で伝えた「あきらめない」というメッセージ
高高-takataka-
アコースティックの概念を打ち破る、歪でスモーキーな「ASHTRAY」を1曲目に、意表を突くスタートを切った高高-takataka-。下手側に高瀬亮佑が立ち、その横に高田歩が着席したまま演奏するというスタイルで見せるのは、バンドでも、シンガーソングライター的なものでもない。2本のギターと歌声の可能性を限界まで引き出す「高高-takataka-」というジャンルの音楽だ。アコギのボディを打楽器のように叩き、まったく声質の違うふたりのボーカルが優しく交錯した「Ember」に続き、透明感のある音像がやがて熱を帯びていく「Shaft of light」へ。激しく弦を掻きむしり、シューゲイザーのように轟音が渦巻く展開は呑み込まれるほどの美しさだった。
高高-takataka-
MCでは、伊勢崎出身の高瀬が「伊勢崎、ただいま!」とあいさつ。「もうダメかもしれないっていうときに、あなたの背中をそっと支えてあげられる、そんな歌を置いていきたいと思います」と言うと、軽やかなメロディに悔しさをバネに立ち上がる闘争心を刻んだ「It's too late?」につなぐ。「SKIP THE WORLD」では、クイーンの「We will Rock You」でお馴染みのドンドンパンの足踏みとクラップで会場を一体にすると、ラストは、「こんなところで俺たち止まれないよね? 負けられないよね?」と語りかけた「WILL」。唯一この曲でハンドマイクになった高瀬は、何クソ精神を込めた歌詞の一語一句を噛みしめるように歌っていた。「あなたたちの味方です」。冒頭でそう宣言した高高-takataka-。彼らがI ROCKSに残したのは、決してあきらめないというメッセージだった。
DOOKIE FESTAの楽曲も披露。脱・シークレットを果たしたgoodtimesの本気
goodtimes
I ROCKS常連組が集結する最終日。会場のアットホームな雰囲気に拍車をかけたのがgoodtimesだ。ボーカル井上朝陽(Vo/Gt)は、前身バンド、シークレット出演を含めて、I ROCKS皆勤賞。今年はついに「脱・シークレット」だ。軽快なスネアのリズムに和テイストのメロディが弾む「サダメヨサダメ」、爽快なギターが口火を切ったポップな最新曲「シャボン」を皮切りに、どこまでも美しいグッドメロディが会場に沁み渡っていく。「ありがとう、おめでとう、よくがんばったね……何て言ったらいいかわかりません。いろいろなものが渦巻いて」と言葉を選びながら語りかけたMCでは、「LACCO TOWERのことを最高に愛しています」と力強く言った井上。「これからも素敵な場所が続きますように」と願いを込めた「君の待つ場所」は、次第にエモーショナルが加速する名演だった。
goodtimes
さらに「間違ってたら、ごめんやけど」と前置きをして、「今日、LACCO TOWERには、めちゃくちゃ楽しんでもらいたくて」と言葉を重ねた。思えば、コロナ禍の開催とあって、今年のLACCO TOWERは、例年以上に大変そうに見えた。だからこそ「楽しませたい」と言った井上の言葉は、こういう理解者に見守られているから、LACCO TOWERは8年にわたり、I ROCKSを開催し続けることができたのだということを改めて感じさせるものだった。そんな井上が「一緒に寝泊まりをしてた時期に戻りたいなと思って」と、LACCO TOWERを楽しませる秘策として用意していたラストは、前身バンドDOOKIE FESTA時代の「サアカズム」。最後に、皮肉を込めて歌い上げる“世界は素晴らしい”のフレーズを、この日ばかりは真っすぐに受け止めたくなる、奇跡みたいなエンディングだった。
コラボ名は「ジェークル」。結成20周年のircleに真一ジェットが参戦
ircle
「思いっきり解放していこうね」。河内健悟(Vo/Gt)の第一声からはじまったircleは、「あふれだす」から、すでにマックスのテンションだった。河内のシャウト気味のボーカルが鼓膜をビリビリと震わせ、次第に重なるバンドサウンドがその勢いを加速させる。「いまはもっともっと最高の時間がくる伏線だと思う。それがつながってつながって、神様すら覆すかもしれんやろ?」。河内が問いかけてから、感情を丸ごとぶつけるような「2020」へ。やがて未来へとつながるはずのいまを、泥臭く、決してきれいごとで誤魔化さずに歌い続けてきたircleのブレない言葉が心を揺さぶる。中盤、河内が「スペシャルゲストを呼びます」と言うと、ショルキーを掲げた真一がステージイン。たっぷり拍手を堪能しながら、ステージ上のキーボードに向かう真一に、河内が「早よ、位置についてくれ!」と急かす。ジェークルと銘打たれたこの5人でまず演奏したのは「ラストシーン」。
ircle
熱い衝動を滾らせたircleの音が真一のピアノによってドラマチックに彩られた。「LACCO TOWERに出会ってよかった。ircleもそう思ってもらえるようにがんばります」。河内の言葉を挟んで、最後はバラード曲「あいのこども」。これまで叫ぶように歌い続けてきた河内が優しくメロディをなぞる、1対1で温もりを手渡しするような深い愛の歌。それが結成20年を迎えたいまのircleにとてもよく馴染んでいた。演奏を終えたあと、真一は再びショルキーを抱えて退場していった。誰もが「ショルキーは使わんのかい!」と突っ込みたくなるオチ。やはり我らが真一ジェットはどこまでも愛すべきキーボーディストだ。
中田裕二、極上の歌とユーモアで作り上げた大人のトーク&ライブショー
中田裕二
「ロックバンド界No.1のイケメン、松川ケイスケに会いにきました(笑)」。ステージ脇で見守っていたであろう松川にニヤリと視線を送り、スタンバイした中田裕二。新曲「DIVERS」を手はじめに、渋いアコースティックギターと艶のある歌声で会場を大人の空間に染めていく。ムーディなライティングを浴びて、「Deeper」へ。中田が描く男の女の物語は甘く艶やかでありながら、とても上品だ。MCでは、「LACCO TOWERのバンド名の由来、なんでだろう?って考えてたんですよ」と切り出した中田。「ラッコの生態を調べてみました」と、絶滅危惧種であるラッコのサイズ、体毛の多さ、肉食、天敵はホオジロザメ……といった特徴を挙げて、ラッコとLACCO TOWERの共通点を考察しはじめると、客席からはクスクスと笑い声が漏れる。今年のI ROCKSはステージで熱い想いを伝える出演者が多かったが、まるで肩肘を張らない、自然体な姿勢が中田のやり方だった。
中田裕二
スタンダードナンバー「The Autumn Leaves」から「ウイスキーが、お好きでしょ」につないだメドレーのあと、「海猫」でその歌声がわずかに熱を帯びた。アラフォーの男が抱く過去への寂寥と、未来への“ぼんやりとした希望”。それをありのままに歌った「海猫」はいまの中田だからこその1曲だろう。「最後は僕の中ヒット曲を(笑)」と紹介した「誘惑」。静謐な雰囲気を壊すまいと遠慮がちに湧く手拍子に、「いいよ、手拍子しても。ありがとう」と、ほほ笑む。極上の歌にユーモアを交えた中田裕二のトーク&ライブショーは、温かな手拍子のなかで幕を閉じた。
活動休止前のHalo at 四畳半、I ROCKSに告げたしばしの別れ
Halo at 四畳半
「2年分の想いを込めて、千葉県佐倉市のHalo at 四畳半、はじめます」。渡井翔汰(Vo/Gt)の開会宣言。最終日、LACCO TOWERヘのバトンを直接渡す位置で登場したのはHalo at 四畳半だ。すでに活動休止を発表している彼らを、LACCO TOWERがトリ前に組んだのは偶然ではないだろう。1曲目は開放的なバンドサウンドが羽ばたく「イノセント・プレイ」。片山僚(Dr)が行進曲のように軽快なドラムを刻んだ「カイライ旅団と海辺の街」では、渡井の「I ROCKS!」の声を合図に、齋木孝平(Gt)と白井將人(Ba)がステージ際へと飛び出した。「大きい人(=重田)も言ってるでしょ? “今日は今日しかない”って。ほんとうにその通りなのよ」と、MCで語りかけた渡井。I ROCKSが意志を持って開かれるイベントであることに敬意を表して、「いま自分ができることを手渡して帰りたいと思います」と言うと、活動休止前のラストソングでもある最新曲「星巡りのうた」へつないだ。
Halo at 四畳半
ダイナミックな演奏にのせるのは、物事には必ず終わりが訪れる、そう歌い続けてきたバンド自身の物語だ。一瞬一瞬を噛みしめるような渾身の演奏のあと、最後の「シャロン」で、渡井は「少しの間、家を空けますけども、またこの場所に帰ってこさせてください。行ってきます!」と叫んだ。この5日間、「おかえり」と「ただいま」を交わした出演者は多かったが、「行ってきます」と言ったのはハロだけだったと思う。それは、LACCO TOWERのバンドマンイズムを真っ直ぐに受け継ぐ、ハロらしいI ROCKSへのしばしの別れの伝え方だった。
全25組で繰り広げた5日間の大トリ、LACCO TOWERが飾った感動のフィナーレ
LACCO TOWER
一人ひとりがゆっくりと楽器をスタンバイする。会場に漂うフィナーレ感。このステージが終わったら、今年のI ROCKSも終わる。寂しさと高揚感が入り混じるなか、大トリを飾るLACCO TOWERの時間がはじまった。「若葉」の瑞々しいイントロが響きわたり、「よく帰ってきたね、おかえり!」と、松川。
LACCO TOWER
重田が叩く祭囃子のようなドラムにのせて、細川と塩﨑がステージ際まで踊り出た「檸檬」では、鍵盤の上に立ちあがった真一が、I ROCKSのシンボルである鶴のポーズで踊った。「罪」でさらに加速していく狂騒。その熱を冷まし、深い思考の渦へと沈み込むような真一のピアノをインタールードにした「六等星」では、虚無感にも似た絶望を切々と歌い上げていく。「あぁ……終わるなあ」と、名残惜しそうにMCを切り出した松川。おそらく胸にはたくさんの想いが巡っているのだろう。「こぎれいに言葉を並べて終わろうと思うけど、無理」と言うと、「なんかね…」と、しばらく黙り込んだあと、「………やってよかった。ほんまにありがとうございました。本当に」とだけ伝えた。「最後は笑って帰りましょう」と言い、ステージが明るい光が包み込むなかで届けたのは「薄紅」。I ROCKS後半戦のスタートに松ジェで演奏した楽曲を、今度は5人で届ける番だ。細川は真一の横に寄り添って演奏し、塩﨑はマイクを通さずに大口を開けて歌っていた。その最後に、松川が「変わってしまったバンドを、ライブハウスを変わらずに愛してくれますか? これがいまのI ROCKS。元気な顔でいってらっしゃい!」と言い、本編を締めくくった。
LACCO TOWER
アンコール。この5日間で恒例になった「サンキューロッキュー」のコールで会場を湧かせた重田を皮切りに、メンバーが一人ずつあいさつをした。その最後にリーダーの塩﨑は、「これは言おうか迷ったけど」と前置きをして、「こんな苦労をしてでも、やっぱりやりたいなと思うので。また来年も会いましょう」と、I ROCKS 2022を期待させる言葉も残した。そして、総勢25組が出演した5日間のラストを飾ったのは、I ROCKSのテーマソングとしてずっと歌い続けてきた「星空」。お客さんがスマホのバックライトで美しい景色を作り上げるなか、“簡単に進めずに 簡単に生きられずに それでも僕たちは 少しずつほら輝いてく”と届けた歌は、6年前に発表された楽曲ではあるけれど、こんな時代になったことで、より強い意味をもって響く気がした。
LACCO TOWER
本編のMCで、松川は「できることに手を伸ばして、こじあけていくしかない」とも言った。それが、当たり前がなくなり、正解の在り処を摸索し続けた今年のI ROCKSで手繰り寄せた、揺るぎない答えだった。
なお、この5日間のライブの模様は「I ROCKS 20&21 ONLINE」として有料配信されることが決定した。5月16日[DAY1]のLACCO TOWERワンマンを除いて、アーカイブの残らない一度限りの配信となる。あの日一緒に会場で感動を味わった人も、残念ながら足を運ぶことができなかった人も、今年の「I ROCKS」が残した想いをぜひ受け取ってほしい。
取材・文=秦理絵

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