The Songbards 三部作の第二章『AU
GURIES』完成、“個から社会へ”と歩
みを進めたバンドの現在地

昨年9月にミニアルバム『SOLITUDE』をリリース、三部作リリース企画を始動させたThe Songbards。約8ヶ月を経て今回発表されたミニアルバム『AUGURIES』は、三部作第二章にあたるもの。“孤独”をテーマにした前作に対し、今作は人と人との繋がり、助け合いの心をもう一度見つめ直すような内容になっている。個から社会へ、という歩みを感じさせる二作のテーマ性は、人生で出会ういろいろなものに当てはめられそうだ。例えば、“別々の考えを持つ個人が集まり、同じ目的に向かって一緒に進む”という構造のバンドもそう。一つのバンドとリスナー一人ひとりと出会っていく過程にしてもそう。以下、制作を振り返ってもらうインタビューからも、この4人なりの他者との関わり方、The Songbardsというバンドの在り方を垣間見ることができた。
――前作『SOLITUDE』の時点で「三部作をリリースします」というアナウンスがありましたが、今回リリースされる『AUGURIES』が二作目にあたるミニアルバムということで。
松原有志(Gt,Vo):次の作品(三作目)はミニアルバムにするかフルアルバムにするか、まだ決まってないんですよね。タイトルだけは先に3つとも決めたんですけど。
――そうなんですね。
松原:今回のテーマは、ざっくり言うと“助け合い”ですかね。『SOLITUDE』では、一対一の関係性を扱い、内面の変化次第で世界の見え方も変わるんじゃないかというところを描きました。だけど『AUGURIES』では一対一以上の人間関係、社会や世界との関係を扱っています。自分だけではなく、考える人が他にもいっぱいいるという環境の中で、他者との関係性を作りながら、いいエネルギーで世界が回せるとしたら?ということを、自分たちなりにがむしゃらに考えつつ。このコンセプトやテーマは、『SOLITUDE』と同じ時期に考えました。
――つまり“次の作品では助け合いをテーマにする”というところまで考えたうえでの『SOLITUDE』だったと。
松原:僕らが作品を作る場合、“自分の人生はこうだったな”というのがスタートにあるんですよ。26~27歳のここまでの人生を振り返った時、例えば学生時代は、自分の内面的なところに深く入ってしまっていて、周りが見えない状態になっていたこともありました。だけど、そこから何が大事なのかを模索し始めて、社会に出れば、不条理や理不尽に揉まれて。
――個の断絶、そして共生というのは今の時代を反映したテーマにも見えるけど、『SOLITUDE』の時にも仰っていたように、そことの符合はある種偶然で。
松原:そうですね。自分たちの人生経験に基づいて作ったものが、もしかしたらコロナ禍の人々の考え方の順序にそのまま当てはまる可能性もありますが。
岩田栄秀(Dr,Cho):元々『SOLITUDE』と『AUGURIES』の構想自体も新型コロナが広まる前から話していました。
松原:サウンドや歌詞のテーマ性において、多少影響を受けたことは間違いないですけどね。
The Songbards/松原有志(Gt,Vo)
自分が音楽をやっているのは、もはや“自分がやりたいかどうか”だけじゃないということに気づけた。“音楽をしていていいんだな”と思わせていただけた。
――全体的に『SOLITUDE』よりもオルタナ感が増した印象を受けましたが、これは“孤独”から“社会”へというテーマの変化をサウンド面にも反映させた結果ですか?
松原:そうですね。『SOLITUDE』はちょっと稚拙な感じを出したかったので生々しいバンドサウンドにしたんですけど、今回は『SOLITUDE』よりもごちゃごちゃとしているイメージというか。面白い要素をいろいろと入れてみてもいいのかな、掴みどころがないような部分もあってもいいのかな、と思ったんです。それで今作では、楽器以外のSEも入れたりしています。リズム隊とも“こういう音像でいきたい”“俺ら(ギター)はこういうことを勝手にやるけど、ベースドラムの邪魔はしないから”みたいにやりとりしながら進め。
――音を聴いて、わりと楽しげな空気で制作期間を過ごせていたんじゃないかと想像したのですが、その辺りはいかがでしょうか。
松原:“遊び心を入れようとして作っているんだから楽しくないとね”という雰囲気はあったと思います。
上野皓平(Vo,Gt):曲の中に入れるSEを探して、実際に当てはめる作業は今までにない新しい楽しさがあって。それと、歌詞を(上野と松原で)半分ずつ書いた曲があるんですけど、それも楽しんでやれた覚えがあります。
松原:今回『SOLITUDE』と同じレコーディングスタジオで、同じレコーディングエンジニアさんで録ったんです。そのおかげでトントン進んでいく場面も多かったし、制作期間は短かったですけど、いい雰囲気のままどんどん決められた感じはありました。あと、前作に比べて、お互いに任せられることが増えましたね。ベースドラムのミックスをしている間に、僕と晧平が別の部屋で歌詞を考えたりとか。僕とギターテックの方とエンジニアさんで別室に入って、音作りをいろいろと試しながら楽しんだりとか。
――いいですね。
松原:元々任せられることは任せたい派なんですよ。その方が自分にないアイデアが化学反応的に生まれることをお互いに期待できるし、自分一人の枠組みを超えたもののほうが面白いなと単純に思うので。優れているかどうかじゃなくて、面白いかどうかだということですよね。もしも“ちょっと違うんだよなあ”と思うことがあったとしても、自分の考えが正解というわけじゃないし、任せられる部分は任せてみる。今回は特にそういう制作の仕方をしました。
The Songbards/上野皓平(Vo,Gt)
4人で話す機会は日常的にあって、そのうえでインタビューを通じて初めて聞くこともあれば、インタビューでは聞かれないけど4人で話すこともある。
――ここからは各曲について訊かせてください。まず1曲目の「ビー・ヒア・ナウ」はどういうふうに作っていったんですか?
松原:普段アイデアを思いついたらボイスメモに録るようにしているんですけど、その中から、何かのライブ前に録音していたやつを掘り出してきて。単音じゃなくて掻き鳴らすようなギターリフをやりたいなと思いながらいろいろやっているうちに、メロディが思い浮かびました。歌詞のテーマを考えたのはそのあとです。前に皓平が『ビー・ヒア・ナウ』という本(※ヨガや瞑想、東洋の精神性をアメリカに普及させた心理学者、ラム・ダスの最も有名な著書。1970年代に爆発的なブームを呼んだ)を貸してくれたんですけど、その本から受けたスピリチュアルなイメージがこの曲に合いそうだなと思いながら、SEの部分を作っていきました。1曲目ならではの飛び出す感じを出したいなと思いながらバンドでアレンジしていったんですけど……この曲はベースドラムが結構手こずりました。レコーディングのギリギリまでやりとりしていたんですけど、僕がイメージを上手く伝えられなくて。
岩田:有志がたまに庵野(秀明)監督みたいになるんですよ。“なんか違う”みたいな(笑)。
一同:(笑)
松原:“なんか違う”の“なんか”が何なのか分からなかったんですよ。メンバーに対する礼儀として“ここがこう違う”“だからこうしてほしい”とちゃんと言うべきだとは思います。だから自分が思った方法で“16分と8分をずらしてみたら?”と伝えてみたんけど、実際やってみたらイメージと違って。
岩田:ビートは結構いろいろ試したんですけど、最終的にデモにあった最初の形に戻ってきました。
松原:その間にもいろいろ考えてくれていたので、本当にごめんという感じですけど。さっき化学反応とか言いましたけど、いつもそれができるとは限らないので、こういうこともあります(笑)。
The Songbards/柴田淳史 (Ba,Cho)
普段からコミュニケーションをとっている分、誰がどんなことを考えているかはだいたい分かっている。
――2曲目の「Engineered Karma」は短いながらもインパクトのある曲です。
上野:“人間の仕事が機械に取って代わるかもしれない”という問題や、人工知能と人間の違い、“人間らしさとは何なのか”というイメージから広げて作っていった曲です。「ビー・ヒア・ナウ」より前だったよね?
松原:そう。僕が“SEを入れた曲を作りたいな”と思っていた時に、皓平が「Engineered Karma」のデモを聴かせてくれて。その時既にSEが入っていたので、“あ、同じことを考えてるやん”と思った覚えがあります。とはいえ、手法は全く違うんですけど。この曲は具体的ではないですよね。今、皓平が話したことも、歌詞に全然入っていないし。
――1分53秒しかない曲ですからね。
上野:“もうちょっと延ばした方がいいんじゃん?”というアイデアもあったんですけど、機械がショートするみたいなイメージがデモの時点からあったのと、曲の世界観として気に入っていたので、このまま通させてもらいました。
――そして3曲目が「Monkey Mind Game」。
上野:瞑想関連の本を読んでいる時に“モンキーマインド”という単語が出てきて。瞑想中に集中できずに心が散漫になってしまう様を“モンキーマインド”と言うんです。それを知った時に、自分もそういう経験めちゃくちゃあるし、単語自体が面白いなと思ったので、単語の通り、集中できずサルみたいに騒ぎまくってるみたいな曲があったら面白いんじゃないかなと思ったんです。そのイメージを頼りに考えていった曲です。
松原:今回の5曲の中では一番新しい曲です。
柴田淳史(Ba,Cho):確か、俺らが聴いたデモの段階ではサビがなかったんですよ。だけど僕がこの曲を好きで、リズミカルでテンポもよくてノりやすいからやりたいなと思ったので、後からサビをつけてもらいました。
松原:アレンジは“バンドサウンドを楽しもう”という方向性でしたね。
――はい、その楽しさはすごく伝わってきました。4曲目の「ブルー・ドット」はSFのような世界観の曲です。
柴田:実際に起こらないと思っていても“いつか起きるんじゃないか”と空想するような、すごく遠い話でありながらも、すごく身近でもあるようなことを唄っている曲なんじゃないかなと僕は思っています。
上野:ちょうど僕が『スター・ウォーズ』にハマっていた時期がありまして。宇宙をテーマにしたバンドサウンドの曲を作りたいとずっと思っていたので、作り始めはそのイメージからだったと思います。
The Songbards/岩田栄秀 (Dr,Cho)
『ミックステープ』は、2バンドそれぞれのグッドなポイントをいい感じに共有できたらいいな。“音楽っていいね!”と全員で言えたらなと思います。
――確かに、超ハイテクな世界というよりかは、1970~1980年代のSF映画で描かれている未来を彷彿とさせるサウンドです。
上野:そうですね。まさに今言ってもらったことをしばっちゃん(柴田)も言っていて。
柴田:うんうん。
上野:その時代に自分が憧れていたからこそ、こういうサウンドになったんじゃないかと思います。この曲は、SEを入れたり抜いたりという試行錯誤が多くて。宇宙っぽいものを入れれば様になるというわけでもないんですよ。“これや!”と思って入れてみたら“あれ、思ったのと違うな?”という感じになることもあって。
松原:サビ前に“キラキラキラ!”みたいな音を入れようとしていたよね。
――確かにそれは嫌かも(笑)。
松原:“これ合いそうだよね”とか話してたんですけど、実際に入れてみたらとんでもないことになりました(笑)。

――そしてラストを飾るのが「夕景」です。
松原:神戸に住んでいた時からあった曲なので、この中では一番古い曲です。始まりは『インターステラー』という映画を観て、親子の関係、いわゆる無償の愛情というものを表現できないかと思ったところだったと思います。神戸には山陽電車という海沿いを走る電車があるんですけど、それに乗って夕暮れを見ていると、時間がなくなるような感覚になるんですよ。その無時間的な感覚が、宇宙旅行中の感覚に近いんじゃないかと思って。
――おお、そう繫がるんですね。
松原:だけどそれを音楽にしてみんなに伝える時、『インターステラー』のように大きなスケールにするのは違うかなと思って。電車に乗っている時のような、なぜだか分からないけどみんながノスタルジーを感じる時間にある包容力に、映画で描かれていた無償の愛情を重ねて作り始めた曲ではあります。
――鍵盤の音が入っている曲はThe Songbardsでは珍しいですよね。
松原:これはローズピアノという楽器の音ですね。デモでは皓平が伴奏的なものをつけてくれていたんですけど、プロデューサーとして横山さんに入っていただき、アレンジを加えていただきました。ライブでは自分たちでも弾きたいなと思っています。
――ライブの話になったので、8月に開催される 『ミックステープ ツアー編』についても訊かせてください。
岩田:『ミックステープ』はゲストを呼んで一緒に楽しくやろうという対バン形式の自主企画なんですけど、今回はツアーをまわれるということで。
――コロナ以降、対バンライブというものが変に貴重なものになってしまった感じもしますが。
岩田:そうですね。お客さんの目線で言うと、どうせライブに行くなら大好きなバンドのワンマンに行きたいと思うのも分かるんですけど、2バンドそれぞれのグッドなポイントをいい感じに共有できたらいいかなと思っています。『ミックステープ』では毎回僕ら4人と対バンのメンバーのみなさんの好きな曲をフリーペーパーにまとめて、来場者全員に配っているんです。それはもちろん今回も作る予定で。“音楽っていいね!”と全員で言えたらなと思います。
――そういえば前回のインタビューで、松原さんが“コロナ禍になっても自分は音楽に救いを求めなかった”という話をされていましたが、その辺りの考えは今も変わっていないですか?
松原:変わってはいないですね。今でも“音楽の力なんて、全然”と思ったままです。ただ、自分が音楽をやっているのは、もはや“自分がやりたいかどうか”だけじゃないんだなということに気づけたというか。3月にツアーをした時に“しばらくライブしていなかったのにこんなに来てくれる人がいるんだ”と思って。コロナ禍でどれくらいライブに来たいという人がいるのかとか、そういうことを自分は見誤っていたなとは思いました。それは単純に嬉しかったし、逆に言えば、“音楽をしていていいんだな”と思わせていただけたという感じもあって。それが前とは確かに変わったところです。でも、音楽とか映画、いわゆる娯楽と言われているものがいらないという状態になった方が、世の中的にはいいんだろうなと。例えば、何かしらの救いを求めて音楽を聴いている人がいるのだとすれば、それは“今豊かなものを感じられていないから音楽を聴いている”ということになると思うんですよ。そういう考え方が僕の根本にはあるんだと思います。僕にとっては音楽はもちろん必要なので、矛盾したままやってます。
――こういう話ってメンバー同士ではよくするんですか?
柴田:一つのトピックについて深く考えよう、自分の意見を出し合おうという時間を取るようなことはしていないんですけど、会話を通してコミュニケーションを取ることは日頃からしていますね。
岩田:でも、他のバンドと比べたら全然する方だと思う。
上野:4人で話す機会はわりと日常的にあるよね。そのうえで、インタビューを通じて初めて聞くこともあれば、逆にインタビューでは聞かれないけど4人で話すこともあって。
――“この人はこういうふうに思っていたんだ”ということを知った時、それが自分には理解できないものだとしたら、そこからケンカに発展したり、反発しあったりしてしまうことはないですか?
柴田:それはないですね。普段からコミュニケーションをとっている分、誰がどんなことを考えているかはだいたい分かっているので。初めて聞いたことだとしても、“ああ、確かにその発言は誰々っぽいな”と思うぐらいですね。
岩田:相容れないと思うことももちろんありますけど、相容れなくていいと思っているというか。さっき有志が言っていたことも、途中までは分かったけど、どうしてそういう着地になるのかは僕には全然分かりません(笑)。でも、まあ、4人とも同じ意見になるよりかはそれぞれが別々のことを考えている方がいいのかなと。
――メンバー全員同じ考えだとしたら、融通が利かないし、集団としての対応力に欠けるし。
松原:それは常々思いますね。だから“方向性の違いで……”というのは自分たち的にはしっくりこない。それぞれの違いを分かり合えるような関係を今まで築いてきたと思っているし、何か問題が起きたとしても、“答え出るまで話そっか”という状態に今はあると思います。バンドをやっていると、4人の足並みが自然に揃う瞬間と、コミュニケーションをとりながら足並みを揃えようとする瞬間とがあります。結成してからしばらくは“自然に揃う”だけでやってこれましたけど、特に最近は“揃えようとする”ことも必要だなと思うんです。それはなぜかというと、やっぱり、(The Songbardsを)好きだと言ってくれる人がいるから。コロナに入ってから、“ライブだけじゃなくて制作に打ち込めばいいや”と思っていた時期もあったんですけど、いざツアーをまわってみたら、音楽が好きな人、ライブを望んでいる人がこんなにいるんだなということが分かって。その人たちのことを僕らはちゃんと大事にしなきゃいけない。改めてそう思いました。だから本当に仕方ない理由以外ではバンドをやめちゃいけないなと思いますし、自分たちの関係性をいい状態にしておくというのもバンドの仕事だと思っています。なので、そこは心配しないでください。誰に言ってるのか分からないですけど(笑)。
取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=菊池貴裕

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